幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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アフタースクール

上条と貴音が学校の外へ出ると、見慣れた少女が見慣れぬの少女と一緒にいるのを見た。

 

「・・・何してんだインデックス?」

「あ、とうま。聞いて、友達」

「は? ナニ? 人の高校に勝手に来て、相変わらずあなたは顔が大きいですね?」

「黙ってろよ貴音・・・。友達って・・・どちらさま? その制服霧ヶ丘女学院の物だろ? 何? お前姫神と一緒に転校してきたの?」

「あ、えっと・・・」

「ひょうかって言うんだよ!」

「ひょうか?」

 

評価・氷菓、上条の中で『ヒョウカ』という単語がグルグル回る。

 

「あ、あの私。風斬氷華、です」

「あ、そう。俺は上条当麻」

「榎本貴音です」

「んで? どこへ飯食いに行く? もう予定変更だ。今日一日は外で遊びます」

「え? 家でご飯食べないの?」

「このまま遊ぶんだから、帰って集合とか面倒臭いだろ? だから食べに行きます」

「わーい! そうだ、ひょうかも一緒に行こう?」

「え・・・いいの?」

「断る理由なんかないよ。ねえ、とうまもたかねもいいよね」

「だな」

「ですね」

 

二人が一秒すら待たずに即答すると、風斬は少し驚いたような顔になった。

 

「えっと・・・・・・ありが、とう」

「んー。一日遊ぶんならちょっと金がいるか。悪い、ちょっとコンビニで金下ろしてくるから、ここで待ってろ」

 

彼はそれだけ言うと、学校のすぐ近くにあるコンビニへ向かい、入り口の側にあるATMを操作する。

学園都市の生徒はもれなく奨学金制度に加入される。月に一度、まるで給料日のようにお金が振り込まれるのだ。

一見するとかなり便利な制度に聞こえるが、実は能力開発の人体実験の契約料、と受け取る事もできる。名門であればあるほど、レベルが高ければ高いほど奨学金の額も高くなり、それだけ重要な研究に関わっている、という訳だ。

 

『特別な待遇を受けている』少年を除けば。

 

書庫では無能力者。平凡な高校に通っているはず上条だが、下手するとあの一方通行より多く奨学金を受け取っていたりする。

 

(・・・・・・ま、表向き人体実験っつっても聞くほど物騒な話じゃねえけどな)

 

彼は適当に考えながら、お金を財布に入れつつコンビニを出る。

と、不意に横合いから声がかかった。

 

「おいおいちょっとー、そこの少年。無用心じゃんよー」

「・・・・・・ゲッ。黄泉川」

「・・・なんだ。風紀委員のクソガキじゃん。それでも一応注意しとく、ATMの近くで財布を見せながら無防備に歩くんじゃないの。奪ってくださいと言ってるようなもんじゃん」

「は? 心配されることじゃねーよ」

「用心するに越した事はないじゃん」

「いやー。俺から財布取ろうとする馬鹿なスキルアウトはここらにはいませんからね」

「それでも次からは気をつけるんだぞ」

「はいはい・・・」

 

上条は呆れながらそう言うと、インデックス達の方へ戻ろうと歩を進める。その時、服のすそをチョイチョイと引っ張られた。

 

「ん? 姫神か。転入おめでとう」

「別に祝われる事じゃない」

「だよなー。あ、そうだ。姫神は『風斬氷華』って知ってるか?」

「名前は。霧ヶ丘でも見た事がある」

「名前は・・・って事は実際には見た事ないってことか」

「・・・そう。誰も彼女を知らない。名前だけなら、いつもテストの上位ランクとして発表されているのに」

「他に情報は?」

「先生に一度教えてもらった、風斬氷華は『正体不明(カウンターストップ)』と呼ばれていると。いわく、風斬氷華は虚数学区・五行機関の正体を知るための鍵だと」

 

上条は眉をひそめた。

虚数学区・五行機関。今はどこにあるのか誰も分からないとされる、学園都市最初の研究機関。そして現在の最新技術でも再現できない多くの『架空技術』を有していると言われ、ウワサでは学園都市の運営を影から掌握しているとされる、この街の深い暗部だ。

確かにそこにあるはずなのに、誰もそれがどこにあるか分からない謎の機関。

 

「先生の話では、風斬氷華には彼女個人の能力を調べるための研究室(特別クラス)があるという話だった。個人のために研究室を用意するなんて滅多にないから。実はそれは『正体不明』ではなく、虚数学区・五行機関の正体を探るための研究室だって」

「虚数学区・五行機関の正体・・・。誰もどこにあるか知らない。か・・・・・・」

 

上条がそう呟いた時、グワッ。と世界が歪むような感覚に襲われる。

 

「何だ? 今の」

「どうかした? 上条君」

「は? 今何か感じなかったか?」

「ううん。何も」

「とうまー!!」

 

遠くからインデックスの声が聞こえる。上条はどうした! とちょっと大声で問いかける。

 

「たかねが! たかねが!」

「は!?」

 

全力で、ほぼ数歩でインデックス達の所へ帰った上条は信じたくない光景を見た。貴音が、いつもディスプレイの向こう(たまにそのまま出てくるが)で見るエネの姿でうわ言のように何かを言っている。

 

「貴音! エネ!! おい。どうした!」

「――― 一一から二〇までの結界(セキュリティ)の解除を確認。第三段階(フェイズスリー)に移行。掌握開始―――」

「インデックス! 何があった」

「えっと。たかねがひょうかと話してて、ひょうかをバシバシって叩いたら急に姿が変わって・・・。どうなってるの?」

「・・・ちっくしょう!」

 

上条は乱暴にスマホを取り出すと、スマホに学習装置と呼ばれる人の頭に機械のプログラムなどデータ化されたものを人工的にいれこめる機械を接続し、片方を首のチョーカーにぶっ挿す。

そして、上条の頭の中にスマホにインストールされたモバイルエネから、現在の貴音の状態が流れ込んでくる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は? AIM拡散力場に自動アクセス? 主導権移行中? ・・・って事はまさか―――っ!」

 

上条は背中に悪寒を覚え、未だにブツブツ言っている貴音を右手で掴むと、風斬に向かって怒鳴るように、

 

「風斬! お前、何ともないか!?」

「え、う、うん」

(・・・じゃあ風斬と貴音の状態は関係ないのか・・・? いや、まさか・・・)

 

可能性を捨て切れず上条が唸る。インデックスは自分が何をしていいか分からず、オロオロしていた。

 

「――――全てのプロセス終了を確認・・・。固体名“榎本貴音”とその主“上条当麻”を、我が主と認めます。よろしくお願いします。マイマスター」

「・・・・・・はい?」

 

そう言い終わると、貴音の目にハイライトが戻る。

 

「・・・・・・ご主人? どうしたんですか、そんな変な顔をして」

「違和感はないか? 何か体に異常とか」

「ありませんよ? ただしいて言うなら・・・」

「しいて言うなら?」

「今ならご主人以外なら誰でも勝てる気がする・・・」

「いやいつも通りだろ」

 

上条は何となく、さっきの事は忘れよう。などと考え、三人を連れお食事に向かった。


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