幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
始まりの夜 Good_Bye_Yesterday.
鼻血が出た。
深夜。上条はおもむろに鼻を押さえる。スマホの中で私に興奮したんですかー?なんて言っているエネをスマホごと風呂の淵に避難させ、上条はバスタブから出る。
(あー。バスタブの中にもティッシュいるかなー)
と、考えながら暗い部屋の中で正確にティッシュの箱を手に取った。
そして、頭を冷やす目的でベランダへ出る。丸めたティッシュを鼻に詰めて・・・
「・・・・・・わっしょいっ!」
・・・一枚無駄にした。
「・・・大丈夫ですか? ご主人」
「ああ。何とかな」
「・・・何してるのかな、とうま、たかね」
「ご主人が夏の暑さで鼻血を出したので、頭を冷やしているんです」
「・・・分かってるよ、分かってるよとうま。とうまはそんなことする人じゃないもんね」
「とか何とか言いつつ信じてねェだろその目」
「そうですよご主人。私の体に興奮したって言えばいいんですよ?」
「言うかボケェ!!」
「しー。とうま、今何時だと思ってるのかな?」
「非常識ですよ」
「あのなぁ・・・」
「ほら、そんなにうるさくするからあそこ歩いてる白い人もこっち見てるよ」
「あー、そりゃ悪いことしたな。知ってる人だったら今度謝っておこう」
白い人、というのは、服が白いのだと思っていた。この学生の町、白髪なんてなかなかいない。
ただ、学園都市第一位はどうも違うようで。今まさに下を歩いているのはその人だった。
「・・・白夜じゃねェか」
「はくや? あれ、その後ろの裸の女の子は?」
「は? 女の子が裸って何だよ」
「ほら、後ろ。裸に布巻いただけの子が何か言ってるでしょ?」
「どれだよ・・・」
インデックスには見えているらしいが、もう少し明るい場所に出てくれないと見えないな。と上条は思う。
「どうして無視するのかな、ってミサカはミサカは憤慨してみたり」
「・・・・・・あー?」
見えなくても分かる。
一度聴いたら忘れられないあの独特の話し方は。
「
「らすとおーだー?」
「御坂妹の姉で、妹みたいな容姿の奴だよ」
「ふーん? 何で知ってるの?」
「そこはほら、企業秘密って奴だよ。・・・ってマジで裸じゃねーかよ」
「どうするの?」
「補導だな。行くぞ貴音巡査インデックス巡査!」
「「いえーい」」
上条達が外へ出ると、いまだにミサカはミサカはと聞こえてくる。
おそらく白夜は音を反射しているのだろう。
見た感じなんかかわいそうだった。とりあえず。の精神で上条が二人の所へ向かおうとした時に、白夜が打ち止めの方を振り返った。
深夜。誰もいな道の為、離れた所にいた上条達にも会話が聞こえてきた。
「―――いやーなんと言うかここまで完全完璧無反応だとむしろ清々しいというかでも悪意を持って無視しているにしては歩いているペースとか普通っぽいしこれはもしかして究極の天然さんなのかなーってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
「・・・・・・、くっだらねェ」
「ブツクサ言ってる間にどんどん距離が開いていくんだけどミサカの事は見えてないの妖精さん扱いなのほらミサカはここにいるよー、ってミサカはミサカは自己の存在を激しくアピールしているのに存在全否定?」
「・・・・・・」
「おーい、だからミサカはここにいるんだって───あれ、ひょっとしてなかった事にされてる? ってミサカの首をミサカらしく傾げて・・・・・・む? 今、何回ミサカって言ったっけ、ってミサカはミサカは思考の泥沼にはまってみる」
「待て・・・・・・、ミサカだと?」
「おおっ、ようやくミサカの存在が認められたよわーい、ってミサカはミサカは自画自賛してみたり。我思う故に我ありなんて言葉は嘘っぱちだねやっぱり主観だけでなく客観で何者かに存在を認めてもらわない限り自己なんてありえないね、ってミサカはミサカは間違った知ったかぶり知識でコギト=エルゴ=スムを全否定してみる」
「ちょっと待てコラ今すぐ黙れ。オマエのその頭から被ってる毛布取っ払って顔見せてみろ」
「って、え? えと、えっと、えーっとまさかこんな往来で女性に衣服を脱げというのは些か大胆が過ぎるというか要求として無茶があるというか───って、あのー、ミサカはミサカは尋ねてみるけど。ほんき?」
「・・・・・・、」
「わあ黙った。本気と書いてマジと読む目だよこの人ってやめて毛布を引っ張らないで。この下はちょっと色々まずいんだからってミサカはミサカは言ってるのにぎゃああ!?」
「・・・・・・。あァ?何だこりゃあ、───ってか何だァそりゃあ!?」
大声を上げる白夜。その片手に毛布を持って。
「はい、そこの人。おとなしくしてねー」
「動かない、動かないでねー」
「少女を往来で脱がすような人は逮捕ですのー」
「早く毛布も返してあげるんだよ」
「・・・・・・あァ?」
「早く毛布返して、ってミサカはミサカはギャラリーが増えたことに危機感を抱いてみる」
「・・・・・・ホラ」
白夜の手から打ち止め打ち止めの頭へと毛布は投げ返される。
「・・・・・・で? 何の用だァ?」
「誰かさんが裸の女の子を従えながらウチのベランダを凝視してたら怪しいと思うに決まってるだろ?」
「・・・・・・ハァ。めンどくせェ」
「・・・・・・。初めまして、打ち止め」
「あれ、何でミサカの名前を知ってるのでもよくよく顔を見てみたらこの人ははヒーローさんそれでもミサカの事を知ってるのは・・・・・・、ってミサカはミサカは混乱してみたり」
「はは。俺は上条当麻ってんだ。そんでこっちがインデックス。そしてこっちが榎本貴音よろしくな」
「よろしくなんだよ」
「よろしくです!」
「よろしくー、ってあれ一方通行は? ってミサカはミサカは一方通行がいつの間にかいなくなってることに驚いてみたり」
「あ? ・・・・・・っと、もうあんなとこにいやがる。ちょっと連れ戻してくる」
そう言って上条は一方通行の元へ駆け寄る。
「おい、どこ行くんだよ」
「どこってオマエ、アホ? 今何時だと思ってやがる。帰ンだよ」
「何で?」
「ハァ?」
「何で帰んの?」
「・・・・・・何か変なもンでも食ったか?」
「はいはい言い訳はしなくていい。お前は毛布一枚の女の子を引き連れ、さらに道端で脱がせた。これは犯罪だ。この時間警備員や風紀委員なんてそうそう動かない。だからそれまで俺が話を聞く。・・・・・・つまり、今日は俺ん家でお泊まり会だ! って言ってなかったっけ?」
「今更だが、オマエ本当に頭大丈夫なのかよ」
―――上条家。
なんだかんだで、今は全員リビングに居た。
全員とは、もちろん 上条、インデックス、貴音、打ち止め、白夜のことだ。
「・・・・・・何で俺は・・・」
「どうせ帰っても寝るだけだったんだろ? しかも脱がせた女の子と二人で。ふいー危ない危ない」
「ぶっ殺すぞ」
「おー怖い」
「あれー、ミサカネットワークに今のこと自慢したいのに能力が出せないや、ってミサカはミサカは割と危機的状況なのに呑気に言ってみたり」
「つまりそういうことだ、白夜」
「・・・・・・チッ」
「あ、そういえば自己紹介してもらってないんだよ。あなたの」
「そうだったそうだった」
「えーと、ミサカの検体番号は二○○○一号で、『妹達』の最終ロットとして製造されたんだけど、ってミサカはミサカは事情の説明を始めるけど。コードもまんま『打ち止め』で本来は『実験』に使用されるはずだったんだけど、ってミサカはミサカは愚痴ってみたり。ところがどっこい見ての通り『実験』が途中で終わっちゃったからミサカはまだ体の調整が終わってないのね、ってミサカはミサカはさらに説明を続けたり。製造途中で培養器から放り出されちゃって何だかチンマリしちゃってるの、ってミサカはミサカは・・・・・・聞いてる?」
「・・・・・・ケッ」
「俺は長い話が苦手でね」
「ご飯でも作りましょーか―?」
「?? ・・・・・・んーと、とりあえずよろしくね、打ち止め!」
「おっと全員聞いてなかったのね、ってミサカはミサカは憤慨してみたり!」
「何を言うか、ちゃんと聞いてたさ。な、インデックス? ほら、やってやれ」
「えーと、ミサカの検体番号は二○○○一号で、『妹達』の最終ロットとして製造されたんだけど、ってミサカはミサカは事情の説明を始めるけど。コードもまんま『打ち止め』で本来は『実験』に使用されるはずだったんだけど、ってミサカはミサカは愚痴ってみたり。ところがどっこい見ての通り『実験』が途中で終わっちゃったからミサカはまだ体の調整が終わってないのね、ってミサカはミサカはさらに説明を続けたり。製造途中で培養器から放り出されちゃって何だかチンマリしちゃってるの、ってミサカはミサカは・・・・・・聞いてる?」
「す、すごい・・・・・・。完璧なんだけどなんか棒読みじゃないかな、ってミサカはミサカは・・・・・・」
「で?」
「・・・・・・本当に理解してるのか疑問に思ってみたり───い?」
「それで俺にどォしろってンだ」
「アナタは『実験』のカナメであるはずなので研究者さんとの繫がりもあると思うから、できうる事なら研究者さんとコンタクトを取ってもらいたいかな、ってミサカはミサカは考えてる訳。今のミサカは肉体も人格も製造途中の不安定な状態なので、希望を言うならもう一回培養器に入れてもらって『完成』させて欲しい訳なの、ってミサカはミサカは両手を合わせて小首を傾げて可愛らしくお願いしてみるんだけど」
「他ァ当たれ」
「いえーい即答速攻大否定、ってミサカはミサカはヤケクソ気味に叫んでみたり。でも他に行くアテもないのでミサカはミサカは諦められないんだから」
「・・・・・・、何なンだコイツは・・・・・・。この頭のおかしいヤツにでも頼めよ」
「え、でも俺研究者とか変なのしか知り合いにいないぜ?」
「居ンのかよ」
上条の頭の中にあるのは『近所に住んでる親戚並みの仲』のネジが飛んだ科学者一族。
「というかよ」
「あン?」
「打ち止めは途中で放り出されたんじゃなくて、それで完成だとかいう事はない訳?」
「どうして、ってミサカはミサカは尋ねてみる」
「だって『実験』はあの樹形図の設計者の演算の元で行われてたんだろ? だったら打ち止めみたいな二○○○一号───つまり予備を作る必要はないんじゃないか? それに予備が一つだけってのもおかしい。あの時点で一万近く残ってたのに予備はいらないだろ」
「ふむ・・・・・・そう言われるとそうなんだけどじゃあ何でミサカが作られたのかって話になるわけで、ってミサカはミサカは疑問を感じてみたり」
「それは・・・・・・司令塔的な何かじゃないですか? 例えば二万のミサカが実験を拒否して研究者に反逆しそうになったらそれを止めるための命令を出せるヤツが必要でしょ?」
「じゃあミサカがちんまりとしちゃってるのは?」
「それは・・・・・・、何ででしょう?」
今、自慢げに語ってたのに、貴音は突然上条の方を振り返る。ものすごい救難信号を受け取った上条はため息交じりに、
「・・・その話が本当なら、その司令塔が反抗できるレベルで強かったら意味ないだろ」
「つまりそれはミサカがちんちくりんで弱っちいって言ってるのかな、ってミサカはミサカは地団駄を踏んでみたり!」
「何だこのミサカ。めンどくせェ・・・・・・」
「ま、自己紹介も終わったんだし、寝るか。俺も明日はちょっと忙しいからな」
「・・・・・・上条待て。俺"も"だと?」
「お前も研究者に連絡取ったりで忙しくなるだろ?」
「オイコラもう一回言ってみろ」
「おやすみー」
「おやすみー、ってミサカはミサカは一方通行の優しさに感動しつつ布団に入ってみたり」
「おやすみー、ってインデックスはインデックスは今まで無視され続けてきたことにちょっと怒りを覚えつつでも別に今の会話覚えてるからいっかって無理やり納得してみたり」
「・・・・・・明日の夜は外食にしよう」
「わーいとうま大好きー、おやすみ」
「・・・・・・クソがああああ!」
「「「「うっさい」」」」
「・・・・・・壁のシミにすんぞコラ」
「・・・懐かしいネタだな。オイ」
「・・・起きてンのかよ」
「・・・・・・もう寝る」
「・・・修学旅行の夜と行こうぜ」
「・・・やだよ」
「・・・お前好きな奴いるゥ」
「・・・お前完全に無理してるだろ」
「・・・無理してませン」
「・・・寝ろ」
「・・・うわーいるわー。修学旅行で喋る気分じゃない奴いるわ」
「・・・寝ろ」
「・・・寝てください」
「・・・うるさい」
「・・・邪魔―ってミサカはミサカは~ムニャムニャ」
「・・・へこむぞ」