幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
とりあえず不満タラタラの状態だがステイルが『上に掛け合ってみる』と言ってくれたのでインデックスの再教育が行われることを願いながら、上条は個人的に『三沢塾』に向かってみることにした。
「とうま?」
しかし、上条はここで少し後悔した。
基本上条は一週間ほどなら不眠不休で動いても問題ない。深夜に行動した方が良い時もあるからだ。さて、何故インデックスが寝静まってから動かなかったのだろう。うるさいのは分かっていたのに、
「とうまってば?」
「ん? 何だインデックス。俺はこれから光力科学御某裁断五角研究所に行ってくる。え、ついてくる? やめとけやめとけ。お前電子レンジすらまともに扱えない機械音痴だろ? 超磁力大脳皮質検出機構再現能力開発機の使い方とか分かんないだろ? そんなことじゃセキュリティー付きの自動ドアのオートロックに閉じ込められるぞ。そこはセキュリティーレベル四だし、アイデンティフィケーション未登録者のお前が行くとお前アンチスキルに捕まって即刻ジャッジメントだぞジャッジメントですの―――ッ!!」
と、上条が適当文字の羅列を早口でまくし立てると、インデックスは専門用語(笑)の嵐に知恵熱を出してしまった。
「じゃ、とにかく行ってくるから。晩ご飯は冷蔵庫に入ってるからチンして食べること。電子レンジん中にスプーン突っ込んで火花で遊んだり冷蔵庫のドアを開けて涼んだりしないように」
「え? あ、う・・・・・・電子レンジは、苦手かも」
お前科学の街に住むなよもう。魔術ばっかりの安心安全イギリスで暮らせよコラ。と言いたいのをグッとこらえて上条は出かけようとして、
気付いた。
「こら。テメェ服の中に何隠してる? より正確に言うならお腹の辺り」
「えっ?」
ギクリ、とインデックスは上条を見た。
「な、何にも隠してないよ? 天にまします我らの父に誓って、シスターさんがウソをつくわけないんだから」
そう言った瞬間、インデックスのお腹から『みー』という子猫の鳴き声が聞こえてきた。
「ダウトォ! テメェの信仰心はその程度かシスターもどき! 思いっきり誓い破ってんじゃねーか! 何でも良いからさっさと服ん中に隠した野良猫出しやがれ!」
「む。と、とうま、この服は『歩く教会』って言うんだよ?」
「知ってるよ。ぶっ壊したのも直したのも俺だかんな」
「教会は迷える子羊に無償で救いの手を差し伸べるのです。よって路頭に迷ったスフィンクスは教会の手で保護しました。アーメン」
「よし、その教会もう一度俺の右手でぶっ壊してやるからちょっとそこになおれ!」
「また裸に引ん剥くつもり!?」
「教会さえ無くなっちまえば迷える子羊もいなくなんだろーがァ!」
「悪魔! とうまは悪魔なんだよ」
「なんとでも言え。お前は動物を飼う難しさと辛さを分かっちゃいねぇ」
そう言った上条の手には野良猫がいた。
「?!」
「
「待つんだよとうま! いくらとうまでもそれをやったら許さないかも!」
「許されなくて結構だよ! 計画性も甲斐性も無いくせにワガママだけ言うガキに買い与える器量は俺には無い!」
「ばかっ! とうまのばかばかそのこは絶対飼うって決めたんだもん!」
「じゃあ選べ! この猫捨てて
「うっ・・・・・・。とうまの意地悪! 大っ嫌い!」
「勝手に嫌っとけ」
上条はドアロックと玄関の鍵両方掛けた状態で、猫を連れて外にテレポートした。
連続で空中を飛びながら、上条は影の中に猫をしまう。
「さて・・・どこに捨てようか・・・。後味悪いけどな」
しかし錬金術ねぇ。と上条は三沢塾近くのビルの上で呟いた。
そもそも上条はエネに教わった限り、物質創造能力と行って無から何かを作る力を持っている。それが恐らく一種の錬金術だろう。イメージしやすいように最初は手を叩いてから力を使っていたものだ。
ましてや物質を変化させるだけの行為などそんなに珍しいものなのだろうか。いや、魔術世界ならかなり珍しいことなのだろう。似たような能力なら実際に学園都市にもある。
「しっかし、この塾。おかしなところだらけだ。不自然な空間や明らかに必要ない場所がある」
『・・・そういう風な作りにする必要がどこかにあるんでしょう』
「起きたのか。エネ」
随分寝ていたと思う。ステイルとあって少ししたらいつの間にか彼女は寝ていた。何度呼び掛けても返答が無かったので放っておいたのだが、どうやら起きたようだった。
『ええ。おめめパッチリです』
「そうか。良かった。何故ならこれから吸血殺しに会いに行くんだからな」
『え?』
「さて。幻想殺しが今行くぜ!」
『・・・まぁ、頑張ってくださいな』
エネは呆れた様子でそう言った。さあ、愚か者達の舞踏会の始まりだ。
次回はアウレオルスさん登場させられるかな・・・?