幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
「錬金術師・・・? それってあれか? 原子配列そのものを組み替えるヤツか? それとも
「方法なんてどうでもいいんだ。重要なのは、その錬金術師が『三沢塾』を乗っとった理由さ。ま、一つは簡単だ。元々ある『三沢塾』って
けどね、とステイルは小さく息を吸って、
「錬金術師のそもそもの目的は、『三沢塾』に捕らえられていた
吸血・・・殺し!?
上条は背筋が凍るかと思った。そんな物が存在するとしたら吸血鬼にとっては最大級の天敵だ。交わらなければ良いと言うが、恐らくグール達の状況からしてその存在は吸血鬼を殺すためのホイホイだ。蚊取り線香・ゴキブリホイホイと似たような調子で吸血鬼を集め血を吸わせ、殺す存在なのだ。
「元々、『三沢塾』では巫女としての役割を持たせるために監禁していたらしいけど。ま、女をダシに位の高いものを呼び出すって言うんだから巫女で間違いないとは思うけどさ」
「・・・・・・、」
どうやら女らしい。もっと悪魔的なヤツかと思ったが、まあ妖艶な女の方が引きつけやすいのか。
「かねてから吸血殺しを狙っていた錬金術師なんだけど、一歩先に『三沢塾』が吸血殺しに辿り着いたわけだ。いや、ヤツにしても面倒だったはずさ。誰にも気付かれずに吸血殺しを奪って学園都市から逃げる計画のはずが、『三沢塾』が派手に動いたおかげで全部水の泡になったんだから」
「つまりそいつは強引な手を使って『三沢塾』から手柄を奪い返したってわけだ」
「そうだね。錬金術師にしてみれば、吸血殺しの獲得は悲願だろうからね。・・・・・・いや、それを言うなら全ての魔術師の悲願か。あるいは人類全ての、かもしれないけどね」
「吸血鬼を殺すことはそんなに大層で、讃えられることなのか?」
「何だ知ってるのか。僕達の間じゃカインの末裔なんて隠語が使われているけれど」
吸血鬼。ヴァンパイア。ノーライフキング。夜の王や不死の王なんて呼ばれていたりする存在。
「吸血鬼を殺すための吸血殺しが存在する以上、『殺されるべき吸血鬼』がいなければ話にならない。まるで正義の味方のための悪者、みたいな悪循環だけどね、こればっかりは絶対だ。・・・・・・僕だってありえるものなら否定したかった」
「でも、いるんだろ? 何で今まで目撃証言とかが出なかった・・・」
「それを見たものは死ぬからだ」
そこでステイルはふと思いついて。
「そう言えばある男からこんな話を聞いた。吸血殺しが吸血鬼の存在を証明したというならば、君の幻想殺しは一体何を証明してくれるんだい?」
「・・・・・・・・・」
上条は考えてみることにした。エネから聞いた話では、上条当麻の右手に宿るこの力は正式名を幻想喰いという。
これはあくまで例えだが、この世界は真っ白なキャンバスの状態が正常だとしよう。そこに子供達が好き勝手描くとキャンバスはどんどん黒くなっていく。それに向かって白いインクをかける行為を常に行っているのが上条の右手、と言うわけだ。
さて、つまり基準が存在すると言うことは何が言える?
「世界の規律を乱す者の存在の証明・・・?」
「なんだいそれは」
上条が必死に考えて出した結論はステイルによってバッサリと切られてしまった。だが、基準点が必要になるということはそれだけ世界のルールをグチャグチャにできる
「で? 結局吸血鬼がいたらどうなんだ。集めて集めて殺すのか? 法令儀式済みの銃弾を持って? それとも銃剣か?」
「殺すよりも先にやることがあるだろう。吸血鬼って言うのは不死身だからね。人間じゃ上れない高みに登ることができる」
「な、んだよそりゃ。そんな事のために、人間をやめれるって言うのか!? お前等魔術師は!」
「まさか。十字教からしてみれば吸血鬼は殺すべき対象さ。ただ、不死身には興味があるといった所かな」
「馬鹿を言うな。不死身なんて良いもののはずがないだろうが!」
「ッ?!」
上条は思わず声を荒げていた。そんなつもりは毛頭無いのに、でも何故か口は勝手に動いていた。
「不死身になろうとする人間なんてのはただの弱虫だ! 死ぬことを恐れ、化け物に成り下がったただの弱者だ! だからどんな創作物でもそんな化け物は人間に打倒される。人間に倒されなければならない! その人間が! どうして、自ら弱くなろうとする! 死を恐れるんじゃねぇ! こんなこと、お前に言っても仕方ねーかもしれねーけどな・・・」
「いや、確かにね。確かに不老不死なんて存在は化け物だ。君の言うことは正しいよ上条当麻。信憑性がある。さ、じゃあそんな化け物を殺す存在を『三沢塾』から連れ出し、それに成り下がろうとする愚かな錬金術師を打倒しよう」
「おう」
「・・・・・・簡単に頷かないでほしいね。君だって一緒に来るんだから」
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「マジ?」
「本当さ。単純な事実だよ。拒否権は無いと思うよ。従わなければ君の側にいる禁書目録は回収する。と言うことになるから」
「!」
「
「マジで!? アイツ連れて帰ってくれんの!? いや、個人的には吸血鬼とかめっちゃ興味あるし錬金術とか見てみたいから行ってみたかったけど行かなかったらインデックスいなくなってくれるんだろ? いや、正直アイツの方が足枷で困ってたんだよ。傍若無人で人の言うことは聞かないは、すぐ噛みつくわでさ。一回連れて帰ってアイツにシスターの何たるかを教えてやってくんない?」
すごく嬉しそうにうんうん頷く上条に、炎剣を持ったステイルが襲いかかるまで残り五秒。
ステイルさんインデックスをないがしろにされてちょっと怒り気味。