幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

15 / 140
今回でインデックスを救出が始まると言ったな。





アレは本当だ。


幻想喰いが終わりを創る the_place_of_somebody's_death.

「・・・・・・で? 何で『ここ』なんだ?」

「仕方ないでしょ? 一刻も早くインデックスの苦痛を取り除く為に最適な術式の形成場所が『ここ』だった・・・・・・これでも学園都市全体を探索サーチしたんですから」

 

上条当麻は明らかに面倒臭げな、ゲッソリとした不満げな声を出す。 エネも居心地の悪さに近い罪悪感を感じている為か、顔を困ったように歪ませながらも床に方膝と両手を着き、セッせと『下準備』を入念に重ねていた。ボロボロの畳に空となったビールの缶がいくつも転がり、灰皿にはタバコの吸殻が山盛りにされていたその空間は、いまや完全にエネ貴音の術の支配下にあった。

だが・・・・・・

 

「なんだって『窓の無いビルの中』なんだか・・・・・・」

「だから私に聞かないでください!!」

 

神裂達が上条を襲撃し、返り討ちにあってからまだ数時間しか経っていないが、エネ曰く、今すぐにでもインデックスの呪術を解く必要があると言う。

早々早急すぎると思った上条だが

 

「インデックスが記憶を失う呪術の余波を受けるまで待つ・・・・・・と言うのも良いし、むしろそれが一番安定しますが、それだと『この呪術を仕掛けた術者の脚本(シナリオ)通りに事が進む』危険性があります」

「えっと・・・・・・」

 

エネの思考の根本まで読む事ができない上条が困惑の声を上げると、エネはご丁寧にも作業を止めて座ったまま上条のほうを振り返り、まるで先生のように解説をする。

 

「魔術師たちが何も知らなかったとしますと、こいつら『魔術』側の頂点・・・・・・『必要悪の教会の長』がこの残酷な首輪システムをインデックスに掛けたと考えるべきです。・・・そして、インデックスに十万三千冊の魔道書を記憶させた後か前かは分かりませんが、とにかく呪術首輪を施し、手綱を握った・・・・・・。分かりませんか? 『そもそもなんでそんな面倒臭い回り道をする必要』がありますか? 自分の手元に置いておくのが一番安全なはずなのに」

 

そう言われて、上条はようやく気づいた。

インデックスの脳内にある十万三千冊の魔道書があるならば、世界を歪めてしまうほどの力を持った魔道書があるならば、その力を用いて自衛に徹した方が良い筈だ。『首輪』なんて面倒臭いものをつけなくても、否、例え付けたとしても手元においておくのが一番安心できるはずだ。『敵』に持ち去られて利用されると言うリスクは、それだけでグーン、と減る。

 

なのに教会はインデックスをわざわざ異国の地へと逃がしている。一年周期で回収できるとは言え、そもそも異国の地に行かせるだけのリスクを背負う必要がない。

そう考えると、色々と疑問がでてくる。 教会がインデックスの手綱を握った程度で安心しているのは何故だ?教会がインデックスを自分たちの手元に置いておかないのは何故だ?

教会がインデックスを本気で捕まえようとしないのはいずれ手元に帰ってくるからだとして、わざわざリスクを背負ってまで異国の地にインデックスを追い詰める理由は何だ?わざわざ『魔術(自分達)』と相反する『科学』側の頂点である学園都市に・・・・・・

 

「学、園都市・・・・・・?」

 

その単語が上条の中で疑問符を浮かべた途端、脳内に電流が走ったような気がした。

 

「気づきました? 科学の最先端を行く学園都市などにインデックスを放てば『一年周期で記憶を消さなければいけない』などという嘘がばれてしまう可能性がありますよね。これは決定的です。いや、そもそも学園都市の外でも普通に知られているものですね」

 

つまり、だ。

一年周期で記憶を消さなければいけないなどと言う嘘がいずればれる事を『分かっていて』教会はインデックスを野に放ち続けていた。と言う事になる。

『例え嘘がばれたとしても構わない理由』とは何だ?

 

「・・・・・・いくつか仮説は立てられるけど、どれもこれも推測にすぎませんね。確実に言えるのは『いずれ首輪が壊されると言う事を教会は分かってる』と言う事だけです」

 

そして、ここからが肝になります。と、エネは一泊おいた後、布団に寝かせてあるボロボロの(原因は自分達だが)魔術師二人を見て(炎の魔術師を見て噴出しそうになるのをこらえながら)言った。

 

「もし仮に、インデックスが記憶を失わなくて良い。と言う事実をインデックスの親友だったそこの二人が知ったらどう動くと思います?」

 

質問の意味が分からなかった。そんなの助けるに決まっている。神裂はインデックスを救う為に己を見失うほどの苦痛を抱え続け、ステイルにおいてはインデックスを守る為なら例えどこの誰だろうと躊躇いも無く焼き尽くす位の覚悟を持っていた。

 

上条は双方と戦ったからこそ、その思いの丈を知っている。『直に肌で感じた』

例え教会に反旗を翻したとしてもこの二人はインデックスにとって最高の結末を用意する為に奮闘するだろう。

 

「そうですね。だからこそ『最も相応しいタイミング』で助けようとするでしょう・・・・・・具体的には『記憶を消すように言われていた三日後の午前零時』に」

「いや、だったら俺達もそのタイミングで助けるべきじゃねーの?」

 

上条は軽口を叩くような口調で言った。エネの実力を誰よりも分かっているからこそ、自分の否定的な意見をぶつける事で解説を要求し、話を先に進める為に。

 

「先程も言いましたよね? 『首輪を掛けたのは教会の長』で『いずれ壊される事を前提に入れている』そして」

「そして?」

 

エネは懐から二枚の札を取り出す。

一枚はまるで血の様な色で呪文が何十にも書かれた札。もう一枚は中央に刀の絵が描かれていて、その周囲がまばゆく光っている札。

 

「そして、インデックスの呪術を解く確率が一番高いのは『教会が意図して監視に付けたこの二人』だと言う事。そしてこの二人はインデックスを助ける為に『必ず指定日の午前零時に呪術の解除を行うだろうと言う事』そしてこれら全てが『教会の脚本シナリオ通り』だとしたらどうなりますか?」

「―――ッ!?」

「考えてみれば不可思議な事だらけですよ。そもそもの話をすれば『なぜインデックスに十万三千冊もの魔道書を記憶させたのか』と言うのも気になります。完全記憶能力があるから、と言う単純な話だけではないような気がするんですよ。もっと何か教会・・・・・・いや『魔術サイド全体を震撼させるような事実』が隠されてる様な気がします」

 

一瞬、本当に息が止まりかけた。インデックスを取り巻く環境に絶句して、では無い。普段はそこらの小学生のようなリアクションしかせず、思考も中学生並みのエネの『一瞬でそこまで看破した圧倒的な実力に舌を巻いて』だ。

一体この女学生は何者なのか?というもう何回考えたかも分からない疑問が上条の頭に浮かび上がってくるが、結局いつもの様に消化不良で消えてしまうだろう事が伺える。 今までが、ずっとそうだったように

 

「結論を言いますと。本当の意味で最高の結末を導くならばインデックスの呪縛を解くだけではなく『インデックスを縛り付けている教会を出し抜く』必要があると思います。いくら救ったところでそれが狐の思惑通りでは何の意味も無い、それどころか今以上に厄介な事になる可能性すらありますから。インデックスにここまでの積と枷を強いた『必要悪の教会』という者共の長がまともな人間であるとはとても思えないわけですよ」

「貴音・・・お前・・・そんなに頭良かったっけ?」

「IQ一六八のご主人には負けますけどね」

 

エネは人差し指と中指で挟んでいた二枚の札を放って、血の色の札を天井に。刀が描かれた札をたたみの上に貼り付ける。

 

瞬間、部屋の中が異様な空気に包まれた。立っている場所も、周りの風景も、何一つ変わっていないのにここでは無い何処かズレた場所にいる様な『曖昧な感覚』が部屋を、上条を、世界を支配してゆく。

 

「―――コホン。ゆえに『あいつらが計算に入れていない日付に』インデックスを救出します。私の予想が正しければ、私の術で解呪して、もしくはご主人の右手で壊してそれで終い。なんて簡単な事にはならないはず。きっと何かあいつらなりの策があると思います。・・・・・・『一応』そう簡単には首輪を壊されぬ様な仕掛けが。そしてそれを破られた上で『教会が余裕でいられる理由』がある。それを探し出す・・・・・・それさえつかめば教会が何を考えているか、その全貌が少し位は見えてきます」

 

そこまで言うとエネは懐から新たな札を取り出す。描かれているのはカッ! と開かれた一目と、一耳。

エネはそれを部屋の中心で寝ているとある人物へと投げる。まるで紙飛行機を飛ばすように滑空した札はその人物の真上でピタリと止まると、ムクリ、と起き上がるようにその身をタテに起こした。それと同時に、部屋が青白い光で包まれる。

 

「さて、ではそろそろ始めますか」

 

いつの間にかエネはその身を起こし、その右手に数枚の札を挟んでいた。上条には分かる。その札一枚一枚に込められた、途方も無い力のうねりが。現在の上条では敵わない、榎本貴音の力の鼓動が

 

「行きますよご主人!私達でインデックスを地獄の底から引きずり上げて見せましょう!!」

 

それを合図に、まだ見ぬ敵との、インデックスをめぐる戦いが、幕を上げた。

 

「・・・ん、まずは首輪の誘発から始めるましょう―電脳『耳ノ壁、目ノ障子』」

 

エネは札を挟んだまま、右手を寝ているインデックスの方へ向けると、そのまま目には見えない「何か」を送る。目に見えない何かは、寝ているインデックスの真上―空中に起き上がるように浮かんでいる目と耳が書かれた札にスッ、と入り、速やかにその効果を発揮する。

パァアアアン!! という風船が破裂したような音を響かせて札がその身を無に帰したかと思えば、次の瞬間にはインデックスが札の放っていた青白い光に包まれてその身を今まで札があった場所へと浮かした。

 

エネが今行っているのは首輪の探索、ならびに術式の解明。それも、インデックスには一切の負担を掛けずに済ませ、さらに、どんな手を使おうが逆算する事は不可能、というとんでもない物だった。 おまけに「可能ならばこのまま情報を抜き取れるだけ抜き取った後、一気に破壊してしまいましょうか。手順を踏んだら踏んだで面倒臭い事になりそうですからね」などと余裕な表情でエネは言っている。

これほどまでに高度な魔術となると、普通の魔術師は勿論、専門の魔術師でも出来るかどうか分からない。

 

「・・・・・・行けるか? エn・・・・・・エネ?」

「・・・・・・」

 

エネは、一瞬だけ目をスッ、と細めると溜息を付き、やれやれ・・・・・・、と言った風にその身を起こし、そして、上条が知る彼女にしては珍しい一言を言った。

 

「やはり、そう簡単には行きませんか」

 

エネがそういった瞬間、バオォォオオオオオン!!という轟音と共に物凄い衝撃が上条とエネに向かって襲い掛かかる。 だがそれも、師匠達の手で鬼のように鍛えられていた上条にとってどうと言う事はない。立ち眩む事さえない。空間自体も、エネの術式で支配、補強されている為か、軋む音さえしなかった。

 

そして、エネの術で浮いていた筈のインデックスの体が、まるで骨も間接も無い、袋の中にゼリーが詰まっているかのような不気味な動きでゆっくりと起き上がる。

インデックスはその両目が静かに開く。その目は赤く光っていた。それは眼球の色ではない。

人間らしい光は無く、少女らしい温もりが存在しないそれは『眼球の中に浮かぶ、血のように真っ赤な魔方陣の輝きだ』

 

「―――警告、第三章第二節。Index-Librorum-ProhiBitorum―――禁書目録の『首輪』第一から第三までの全結界の貫通を確認。再生準備・・・・・・失敗。『首輪』の自己再生は不可能、現状、十万三千冊の『書庫』の保護の為、侵入者の撃退を優先します」

「・・・・・・予想通りって奴か?」

「いえ、予定通りです・・・・・・全く『敵』は相当小細工が好きらしいですね・・・・・・」

 

エネはどこから取り出したのかハチマキを巻いて気合を入れ直す。

 

「・・・・・・インデックスに『歩く教会』以外の魔力が全くと言って良いほど感じられなかった理由はおそらくこれです。『完全記憶能力』の秘密について知り『首輪』を外そうとした者。もしくは『十万三千冊の魔道書』を無理やり手に入れようとした者を、文字通り『禁書目録』として口封じするための『自動迎撃術式』・・・それに全ての魔力を奪われていましたか」

 

そしてそれは同時にそれ以外の用途で不用意に魔術を使えなくするための『第二の首輪』として機能すると言う事を示している。

 

「―――『書庫』内の十万三千冊により、防壁に傷を付けた魔術の術式を逆算・・・・・・しっp・・・・・・」

 

機械的な動きを突如として止めたインデックスに、?、と言う疑問符が上条の頭に浮かぶと同時

 

「失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗」

「は!?」

 

インデックス(?)はただ一つの単語『失敗(error)』を物凄い高速で連呼し続けている。

どう見ても様子がおかしい。まるで失敗したからくり人形のようにカクカクとしたぎこちない動きで、なのに高速で、インデックスは必死に言葉を紡ごうとしていた。

 

「ちょ、!? おい、これって・・・・・・!!」

「対象の動きを色んな意味で完全に止める『無限洗脳術式―――月読命(ツクヨミ)』です。・・・安心してください。これでもかと言うほど入念に準備を重ねたから、インデックスさんに影響は無いはずです・・・・・・即発動させられる様な物ではないと言うのがこの術のネックですかね? 対象も一人が限界ですからね」

 

月読命(ツクヨミ)――日本神話の国生み神話に登場する二神から生まれたその月の神は、ありとあらゆる物を『読む』力があったという・・・・・・

 

それをヒントに生み出し、改良に改良を重ねたエネの『月読命』は、相手のありとあらゆる行動、思考、心理、魂の動きでさえも先読みし、相手よりも先にその行動に反発する魔力を割り込ませる事でエラーを誘発させると言うものだ。

 

簡単に言えばイス取りゲームで相手が座ろうとしている席に相手より先に座ってしまうのに近いだろう。 それを連続で、何十回何百回何千回、ありとあらゆる事にそれを行う事で、相手の動きは勿論、思考、魂でさえも縛る事ができる、エネの奥義の一つ。これを応用すれば、相手に自分の思い通りの行動を取らせる事も可能となる。

だが最も恐ろしいのは、十万三千冊の魔道書を有する禁書目録の力をもってしても対応は勿論、逆算、解析すら出来ないという事だろう。

 

上条はあらためて自分に懐いている少女も『あちらの世界の住人(本人は全く自覚が無いようだが)』なのだと言う事を思い知らされる・・・・・・

まぁ師匠達いわく『お前も十分過ぎるほど『こっち』に浸かってる』らしいが、やはりいつまで経っても慣れる気はしない。と、いうかなるべくなら慣れたくない。

 

「ふっふーん♪ どうですか? どうですか? 凄いでしょう凄いでしょう!! ・・・・・・ほめても良いんですよ」

「ドヤ顔ヤメロ! つーかとっととどうにかしろ! この先考えて無かった。とか言ったらぶっ飛ばすぞテメェ!!」

「む、失礼ですね・・・・・・だったら見てください! 出来る子な私のさらなる秘策を!」

 

言うが早いか、エネは両の手に挟んでいた白紙の札に力を込めると自分の目の前に集め、まるで没になったページをゴミ箱に捨てようとする漫画家のようにグシャグシャに握り潰す。両の手を放しても宙に浮かんだままのそれは、なんだか不恰好な脳に見えた。

 

「ご主人! 私はこれから直接あの『首輪』の中に入って情報を抜き取れるだけ抜き取った後『内側から首輪を破壊』します! 不完全な月読命だけでは少々不安ですから。それまでの時間稼ぎを頼みました!!」

 

どうやらエネはインデックスに仕掛けられた首輪の中に入って直接的な強診ハッキングと破壊を行うつもりらしい。

それは、学園都市の電気系能力者の行う電子信号による物や、精神系能力者のやるような精神操作ともまた違い『その機能に間接的に摂り憑いて、強引に主導権を奪い取る』という物だった。

 

「でもそれって・・・・・・!」

 

だがそれは当然、精神、魂、体、さまざまなものを危険に晒すと言う事になる。最悪、エネと言う存在が『首輪』の中にあるであろう迎撃システムで消去されてしまうかもしれない。

 

だが

 

「平気ですよ」

 

エネは、いつも通りの笑顔で言った。

 

「大丈夫です。いってきますご主人!」

 

そして、エネの姿が、上条当麻の前から、消えた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

真っ黒い稲妻で覆いつくされた暗黒の世界の中心。 人では表現のしようが見つからない『暗黒物質ダークマター』の様な不気味な原始と分子(そう表現して良いのかどうかすら定かではない)で支配されつくされているその空間は、まるで一つの宇宙のようだった。四方八方見渡しても『それ』しかない。上下左右の感覚も無い。

普通ならば聞いただけで発狂しかねない様な音とも歌ともとれる『何か』がギシギシと脳を破壊する様に辺り一面に響き渡っている。ここは、禁書目録の少女に科せられた『首輪の世界』。エネの術で首輪の中の構成システムに合わせて自分を具現化、調整し、あいまいな状態で均衡させる事でよりリアルに認識できるようになった空間。その中でエネ貴音は電脳少女としての自分。エネに戻っていた。

 

常人の頭では理解できない、理解してはいけないものだらけのその世界にたった一人で現れたエネは、その歪んだ世界を認識して、なおも平然としていた。

行く先などどこにも無いとも思えるその空間で、それでもエネは確信を持つかのように一歩前へと踏み出して

 

瞬間、エネの右腕が闇に飲まれた。

 

「?」

 

エネの右腕を肩の部分まで食いちぎって前方へと飛んだ獣のような匂いを漂わせる『それ』は、文字通り不恰好な姿をした貪欲な獣にも、童話や神話でしか見ないような凶暴な竜にも思える姿をしている。

そのグジュグジュと蠢く中途半端に液体化した腐りかけの肉みたいな体を作り上げている物質が、この世界を構成しているものだと同質だと気づくのに一瞬。餌を求める猛獣の如く、再び獣がエネに襲い掛かるのにも一瞬。

 

「なにするんですか? まだ嫁入り前の体なんですよ?」

 

エネは残った左腕で一枚の呪符を眼前に投げつける。獣のひたい部分に当たったその呪符は、すぐさまその効力を発揮し、獣を破裂させた。ドッ、プァアアアン!という大きな水風船を割った時のような音が響く。

そして、その破裂音が終わるよりも早く、今度は何十何百何千という数え切れない位の白い閃光が、エネ目掛けて襲いかかって来た。

 

「弾幕ですか? それで」

 

その閃光がエネの肢体を貫く前に、左手でありったけの呪符を掴むと、自分の頭上へと放り投げた。 桜吹雪のようにエネのあたりを舞う数多の呪符は、襲い来る閃光を鋭角な角度であちらこちらへ飛散させてゆく。さながら、キューで打たれたビリヤードの球が盤の角に勢い良くぶつかって跳ね返るのに似ていた。

 

そうしている間にも、次々と十万三千冊の魔道書で構成された侵入者撃退システムが、エネを排除せんと襲いくる。 蝿の王をモチーフにした巨大な杖から放たれる、巨大な虚球の闇炎がエネを焼きつくさんと迫り 審判を司る四大天使が持つ剣が、天罰を与えるべくその刀身から放たれる絶海不可避の斬撃を浴びせ 海の神がもつ三叉の槍が、神の子を処刑するかの様にエネに向かって直進する。

 

勿論、それを黙ってみているエネではない。相反する属性と性質を持つ呪符に込められた力をレーザーのように束ね、虚球だけでなくその直線状にある杖まで貫き、絶対不可避の斬撃を呪符の力として吸い取り、挙句の果てには裁きの剣にすら呪符を放ち、本来無尽蔵なはずのエネルギーすら枯渇させ、迫りくる三叉の槍には逆に力を送り込んで制御を乗っ取り、己が術として利用する。

 

それだけでなく、一瞬でも隙を見つければ空間に力の楔を打ち込み、首輪の制御を乗っ取らんとする。観客も、明確な敵も味方も、いつも側にいる相方の姿も無い舞台(ステージ)で、少女はただ一人戦い続けていた。

少年と共に、たった一人の少女を地獄の底から救う。ただそれだけの為に、右腕を失った少女は、死力を振り絞って己が術を振るい続ける。

少し、また少しと、首輪の制御化が徐々にエネの支配下に置かれ――――そして―――

 

―――――――エネの力が、内側から破裂した。

 

考えてみれば当然の事だった。エネはこの空間に赴く前にも常識はずれの術を何回も駆使し、首輪の中に乗り込んでからは右腕を失った状態で魔神級の術式に対応し続け、挙句の果てにはこの首輪の制御を乗っ取ろうと首輪の内にある力を取り込み、自らの力を符に宿して放出し続けていたのだ。

口内に湧き上がる大量の力の逆流に、ガクリとその膝を付く。

 

「・・・・・・吐血。この体で?」

 

だが、それでも少女の瞳はその力を失っていない。

力を符に宿し、首輪の制御を乗っ取ろうと魔神級の術式に対応しながら空間を己が制御下においてゆく。が、その勢いはまるで限界がきたマラソン選手がなおも走ろうとする様にみるみる弱っていき、いつしかエネの呪符の力は、首輪の防衛機能のそれを下回っていた。

そして、エネを何十という魔神級の術式が取り囲み その力の矛先を、容赦なくエネへ向けて解き放った この世のものとは思えないほどの閃光と、もはや音にもならない轟音が響き渡る。

 

首輪の中で戦い続けたエネ貴音は、最終的に何十何百という魔神級の術式に貫かれ、切り裂かれ、打ちのめされ、今やその動きを完全に止めていた。虫の息、という単語を表す状態にこれほど相応しいものはないだろう。

 

「・・・・・・情けないですねー・・・」

 

獣の臭いを感じたエネが倒れ伏したまま顔を上げると、目の前に最初に自分の右腕を食いちぎった獣が立っていた。

ただ、その大きさは、最初とは尋常ではないほど桁違いだった。制限など無いと思える空間において、それでも空間そのものを満たしてしまうのではないかと思わせるほどの巨大な獣。

知る者が見れば北欧神話に伝わる『神喰らいの獣フェンリル』を脳内で想像しただろう。

獣は、そのあまりにも大きな顎を開け、餌へと喰らいつかんと下を向く。

 

飲み込まれるその瞬間。エネは、確かに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ったく。エネのやつ、勝手に行っちまいやがって・・・・・・そりゃ上条さんは首輪の中に潜り込むなんて事出来ませんし? こうするのが一番良いって事も分かるけど・・・・・・分かるけどさ」

 

未だに訳の分からない単語を高速で連呼し続けるインデックスの側にあぐらをかいて座っている上条当麻は、誰に言う訳でもないにも拘らず、先ほどからブツブツと不満を漏らしていた。目の前にはエネの作り出したグシャグシャの紙束がふよふよと宙に漂っている。

 

儀式場として固定された窓の無いビルの一室(製作者、アレイスター=クロウリー)にいるのは自分と、エネの貼った護符が効いているのかあれだけの騒ぎがあっても一向に起きる気配の無い魔術師二人(片方ハゲ)。そして、エネinインデックス(の首輪)。

 

エネがインデックスに科せられた首輪の中に潜ってからまだ十分も経ってはいないのだが、この少年はどうしても少女が自分を置いて行ったのが不満らしい。

勿論、エネの行動が最良に程近い線を行っている事も、自分がここにいなければいけない理由がある事も分かるのだが、なんというか『そういうのとはまた別の所』で憤りを感じられずに入られなかった。 

だが、その怒りの矛先は、最終的にはエネではなく

 

「・・・・・・クソッ」

 

自分に向けられる事になるのだ。

それから少しして、憤った所でノドが渇くだけだと認識した上条は水でも飲もうと台所(という名の極小スペース)へと赴いて、自分の背丈の半分ぐらいしかない小さな冷蔵庫を開ける。中に入っていたのは大量の発泡酒とおつまみ。申し訳ばかりのパック牛乳と、中途半端に消費されている調味料の数々。

 

「・・・・・・」

 

もうなんかツッコむのも面倒臭くなった上条は、奥のほうに一本だけあったミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。使っていないくせに、何故か中身は三分の一ほど無くなっていた

ため息を付きながらペットボトルの蓋を開け、その口を付けて中に入っている水を一口、二口飲んだところで

ドォン!! と、何かが爆発したような音が儀式場に響いた

 

「ゴホッ! ゲボほっ!!」

 

驚いた上条は思わず口に含んでいた水を畳の上にブチマケてしまう。

何かとてつもなく嫌な予感がして、全力でインデックスへと視線を移す。

 

「・・・・・・」

 

少女の姿には何の変化も無く、その魔方陣が映し出された虚空なる目も変わってはいない。

ただ、あれだけ魔術的な単語を連続して紡いでいたインデックスの口は、今や一言も言葉を発しなくなっていた。背筋に氷を突っ込まれた様な感覚が上条を震え上がらせて、その動きを停止させる。

 

(―――ッ! エネ? おいエネ! おい!!)

 

作業の邪魔になってはいけないと、今まで呼ばなかった電脳少女のパートナーの名を脳内で連呼するが、返事は無い。

あの小憎たらしいまでに明るい声は、ホンの少しも聞こえてこない。

最悪の想像をしてしまいそうになる思考を、姐さん直伝の拳を己の額に当てる事で撃ち払う。

ドガッ!という音と共に自分の頭が体ごと後方によろめく代わりにわずかばかりの平静さを取り戻した上条に

 

自動書記(ヨハネのペン)への攻撃の対処に成功。引き続き、侵入者の破壊を続行します」

 

白い紅茶のティーカップみたいな修道服を着た少女の機械的、業務的な一言と

 

「―――侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動。侵入者を破壊します」

 

バキン!という音と共に部屋の端から端まで届く巨大な黒い雷のような亀裂が現れ、その中から『何か』がこちら側を覗き込んで

ゴッ!! と。 亀裂の奥から光の柱が襲い掛かってきた。

それはもうたとえるなら直径一メートルほどのレーザー兵器に近い。太陽を溶かしたような純白の光が襲いかかって来た瞬間、上条は思わず右手を自分の顔の前に突き出した。

じゅう、と熱した鉄板に肉を押し付けるような激突音。だが、痛みは無い。熱も無い。まるで消化ホースでぶち撒かれる水の柱を透明な壁で弾いているかのように、光の柱は上条の右手に激突した瞬間、四方八方へと飛び散っていく。

 

だがそれでも『光の柱』そのものを完全に消し去ることは出来ない。しくった、と上条は思った。 いくつかの例外を除き、異能の力を問答無用で消し去る上条の右手だが、実は『一度に消せる量』に制限がある。そしてこの光の柱は単純な物量だけではなく、光の一粒一粒の質さえもバラバラなのだ。

『以前それで痛い目を見た事があるからこそ』、上条は苦悶の表情を浮かべながら畳につけた両足に力を入れてその場に押し留まる。おそらくこの光の柱は元を断たない限り幾らでも無尽蔵に上条を襲い続ける。右手で抑えるのではなく、高速で移動し続けてインデックスを翻弄するべきだった。と、上条がそこまで考えたところで、視界の端にエネの術で未だに眠っている二人の魔術師が映る。

 

(ッ!? ダメだ・・・・・・そんなことしたらあいつらまで巻き込んじまう!! ただでさえ弱ってるのにこんな攻撃が少しでも掠ったりしたらそれだけで命に関わっちまう!!)

 

別にあの魔術師たちを助ける義理は上条には無いはずだ。恐怖に負け、自分に負け、少女の側から離れて今日の日まで騙し、襲い続けてきた魔術師を気に掛ける義理など無いはずだ。

 

(・・・・・・ッけんな―――)

 

だが『そんなちっぽけな事』はお構いなしに、上条は左手で光の柱を消し続ける右手の手首を巨大な砲台を固定するようにしっかりと支える。

 

(ふざッけんな!! ンなもん最っ高の結末(ハッピーエンド)なんかじゃねぇじゃねぇか!!)

 

そうだ、あの二人はたった一人の少女を助ける為に死に物狂いで頑張っていた。一人は残酷な断罪人に、一人は何よりも甘い奇術師になる覚悟を決め、手を伸ばしたいのに伸ばせない、側にいたいのにいられない自分の無力さと弱さを呪いながらインデックスを助けてきた。

 

結果的に、それは歪んだ妥協案でしかないものだったが、それでも間違いなくたった一人の女の子の為に苦しんできた。頑張ってきた。今日まで生きてきた。

ならばこそ、彼らは見なくてはいけない。見る権利があるはずだ。

 

(悪りぃな・・・・・・)

 

ずっと望んでいたであろう結末を

 

(『見せ場だけは』全部、俺とアイツで山分けさせてもらうぜ!!)

 

インデックスの記憶を奪わなくても済む、インデックスの敵に回らなくても済む。そんな誰もが笑って、誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末(ハッピーエンド)ってやつを!!

 

「うお、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

上条は腹の底から声を出すように吼えると右手を左手で固定したまま大相撲の力士が踏む四股の様にドガァ!と大きな音を立て一歩大きく前へ出た。インデックスが放つ光の柱の正体『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』を知る魔術師がいれば間違いなく驚いていただろう。

ズドム!

今度は反対側の足でもう一歩あゆみ、上条はインデックスへと迫る。そのたびに右手に掛かる負担は重くなっていくが、そんなことは関係ない。

 

(あいつ等も、俺も、望んでるんだ。最っ高な結末を!!)

 

こんなの『師匠達の修行に比べたらどうという事はない』!!

 

(・・・・・・だけど情けない事に上条さん一人じゃ無理なんですよ、そんな結末を導くなんて・・・・・・だから)

「―――『聖ジョージの聖域』は侵入者に対して効果が見られません。他の術式に切り替え、引き続き『首輪』の保護のため侵入者の破壊を継続します」

(だから早く帰ってきやがれ!馬鹿エネ!!)

 

上条はまた一歩、インデックスへと近づいて行く

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

首輪の中の世界でエネを咀嚼し終わった神喰らいの獣は、肉塊となったであろうエネを己が中へと取り込んでいた。そもそも『彼』は十万三千冊の魔道書によって作り出された偶像にすぎないのだが、元となった獣の性質をほぼ完全に再現されている為、見た目は完全に一つに生き物に見えた。

侵入者を無事撃退し、わずかばかりの餌にありついた獣は、その身を再び無に返そうとし、ピタリ、と、唐突に動かなくなった。

より正確に表すならば、唐突に『動けなくなった』頭の鼻先から尻尾の先まで。魔術的な意味でも物理的な意味でも『全く身動きが取れない』そして、その元から巨体だったからだがさらに巨大に、空気を入れすぎた風船みたいに膨らんで

 

「ほう、やっぱりこの程度が限界ですか」

 

ドッパァァアアアアアアアアン!!という音と共に神喰らいの獣の体が弾けた。腹の中から出て来たのは人型の形をした一枚の呪符。

 

「ここでは私に掛けられた枷も解かれるようですから、こちらの『魔神』と呼ばれる存在に私の「コスパ」が良い万能術『呪符分身』がどこまで通じるか見てみたかったのですが・・・・・・やはり『以前よりずっと強くなっていますね』これならもう少し改良を加えても大丈夫ですか・・・・・・?」

 

声の主は紛れも無い『エネ』その人だった。彼女は良いデータが取れたと言わんばかりの満足げな笑顔で宙に浮いている。

 

今の今まで十万三千冊の魔道書を退け続け、空間を支配しようとしていたエネは、ただ力を分け与えただけの分身デコイにすぎなかった。

 

「さて、目的も果たせた。データも取れた。興味があることが沢山あって、私の色んな欲をくすぐらるこの十万三千冊の空間から離れるのは少し名残惜しいですが、ご主人を待たせるわけにもいきませんしそろそろおいとまするとしましょうか・・・・・・おっと」

 

再び襲ってきた閃光の魔術を、エネはなんでもないようにヒラリとかわす。

剣、槍、杖、獣、竜。他にもさまざまなものを、形どる魔術がエネを排除しようとその力を放ち

 

「ほほう、まだやりますか?・・・・・・あんたらが気づいているかかどうかは知りませんが」

 

物部は、懐から一枚の札を取り出して

 

「私はまだ『術符の宣言』すらしてませんよ?」

 

何百という魔神級の術に向かって放つ。

 

―――幻符「完全なる幻想喰い(パーフェクト・イマジンイーター)

 

瞬間、世界の全てが消え去った。

 

「おおッ、っぁあああああああああああああ!!?」

 

上条は両の手と足に力を込めて踏ん張っていた。インデックスとの距離はもう一メートルも無いが、このまま前に進み続けて魔方陣を破壊してしまった場合、中にいるエネも一緒に消してしまう可能性があるため、安易に動く事が出来ずにいる。

 

(くっ、そ! マジであの馬鹿なにやってんだ!! 限界って訳じゃないけど辛い! ああもうなんて言ったら良いんだろこの感覚!! そう! 重量挙げで自己記録一歩手前のダンベルを永遠に挙げさせられている様な、っていうか! いま何か俺の力が身体から抜けたような・・・)

 

踏ん張るのをやめた途端、一気に後ろに弾き飛ばされてしまうような気がするため、上条は声を荒げて必死に耐える。

あのアホこれで十万三千冊の魔道書の解析に夢中になってたらマジでどうしてくれようかと考えている上条の体が『一気に後ろへと吹き飛ばされた』壁に勢い良く激突した背中に鈍い痛みが走る。

 

「がッッ・・・・・・!!?」

 

あまりにも予想外の一撃に、上条は思わず自分の右手を見る。右手にかかっていた負担は、もう無かった。それはそうだろう。上条を襲っていた光の柱そのものが『綺麗に消え失せていたのだから』

 

一瞬送れて、上条はインデックスの方を向いて、そして、その目を大きく見開いた。 インデックスが立っていた場所に今あるのは、上条を襲っていたものとは比べ物にならないくらい巨大な光の柱。だがその光の柱が向くのは上条の方ではなく、文字通り真上。 エネが張った結界の一部を吹き飛ばして、夜空に漂う漆黒の雲を引き裂き・・・・・・ひょっとしたら宇宙まで届いてもおかしくないように思う光の柱。いや、窓の無いビルの中なのでその心配はないだろう。もし、届いていたら全力でアレイスターに土下座する。

その巨大な光の柱が少しずつ少しずつ細くなり・・・・・・そして、完全に消えてなくなる。 光の柱の跡から現れたのは、抱きかかえられた修道服を着た少女と・・・・・・

 

「よう、おかえり馬鹿野郎」

 

うざったい位に明るい笑顔を浮かべた、生涯の上条の相棒の電脳少女。

 

「ご主人。ただいまです!」




首輪を壊すための部屋は、アレイスターが暇潰しで作った『酒豪のヘビースモーカー』と言う題の1/1スケールの部屋模型です。

本当に何で作ったんだ?

ア「暇つぶしだ」
上「気泡緩衝材でも潰してろ」
ア「・・・・・・(´・ω・`)」プチプチ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。