幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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最終術式下準備完了 Rebirth_the…

くるくると。

血のラインを描きながら、上条当麻の右腕は宙を舞っていた。

吸い込まれるように右方のフィアンマに右腕が掴み取られた。

幻想殺し(イマジンブレイカー)

科学でも魔術でも説明の出来なかった、あらゆる異能の力を打ち消す特異な右手。

 

「掴んだ・・・・・・」

 

フィアンマの唇が愉快げに歪む。

ぱん、と。

水風船が割れるような音と共に、切断された右手はバラバラに弾け飛び、血と肉と骨と血管と神経を綺麗に分解・展開させていく。

 

「世界環境は『ベツレヘムの星』によって整えた。そして媒体となるべき右手も切断した。俺様の内に宿っている力は、お前の右手を経由しなければ一〇〇%の力を発揮する事はできんからな。幻想殺しとは、神聖なる右手が自然と備えてしまった浄化作用の一種だったのだろうが、俺様にとっては、むしろ備蓄を削り取る食糧庫のネズミに過ぎん。だがその不要な性能も、本来のピースである俺様の力を受け入れる事で、その役を終える。・・・・・・それで右手は完成する。後は俺様の身の内にある『本来あるべき力』を全出力で振るえば、全ての救済は完了する。この俺様の腕には、本来ならば世界全土を救うだけの力が宿っているのだからな。それを人は『神上』とでも呼ぶのかもしれんが・・・・・・俺様としてはどうでも良い。並ぶつもりも超えるつもりもない。ただ、今ある力を集めて世界を救えれば成功だ」

 

それらは右方のフィアンマの右肩から伸びた『第三の腕』へと呑み込まれていく。

 

フィアンマの方にも、世界にも、様々な場所で変化があった。

その間も上条は何を言わなかった。

 

「なん、だ・・・・・・?」

 

必要であれば惑星一つを塵にするほどの圧倒的な光の爆発が、用済みのアダプターを問答無用で粉微塵に変える。

はずだった。

それが、莫大な力が霧散した。

まるで、

まるで、少年の肩の断面から伸びた、見えない右手に弾き飛ばされるように―――ッ!!

 

「お前の右手は取り込んだ。だというのに、()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

「――――人に答えを求める前に、まずは自分で考えろよ三下」

 

少年はポツリと答えた。

その右腕に。存在しないはずの、傷口の向こうに。

ゾゾゾゾゾゾゾぞゾゾゾゾゾざザザザザザザザザザザザザざザザザザザざザザザザザ!! と、見えない力が集束していく。

集束された何かが肩口から体内に吸収されると同時、少年の右腕が生えてきた。

 

「ハァ―――――。何で俺こんなワガママワンパク坊主を相手にしてたんだろーか」

 

ただ口を開いただけでそこら中の建造物と空気が悲鳴を上げる。

そこに立つだけで、他の存在は考える事を放棄する。

容赦のない突がり過ぎの正義を持つ。相手をクズと見るや恐ろしい残虐性が顔を見せた。

 

そんな彼にあったものは、口を揃えてこう言った。

なんとも不幸な事にフィアンマが右腕を斬り飛ばした事によって、記憶と共に失われていた上条当麻が目を覚ましてしまった。

 

「なぁ。そこのクソガキ。ここはどこなんだ?」

「・・・何を言っている」

「答えろよ。いや、いいや。面倒臭い。・・・・・・どうせ敵だ。世界を『救ってやる』なんて堂々切って思ってるヤツにろくな奴はいないからな」

「お前は・・・誰なんだ!」

「ん。ああ。初対面か。こりゃ失礼。上条当麻だ」

(・・・なん・・・だ!? さっきまでと全然違・・・ッ!)

 

上条はキョロキョロと辺りを見回した後、ニタリと笑ってこう言った。

 

「お前はどうやら、『俺』と戦っていたようだな。俺と・・・しかも二回。で、これが三回目・・・。それはもちろん。俺が上条当麻と知っての事なんだろう? だったら話は早い。三回目は死んでもOKと見なすぜ!」

 

悪魔は、目覚めたばかりの悪魔はとりあえず目の前の獲物に狙いを定め襲いかかった。

 

 

 

「・・・なぁ、お前はさ。考えた事はなかったか? 何故、俺みたいなただの高校生に幻想殺しなんて代物が付いているのか、なんてことは? まぁ、考えるだけ無駄だよな。結論なんていくらでもあるんだから。それこそ、ただの偶然であったり、誰かの意図であったりするのかもしれない。だけどな、今ここにいる、上条当麻(オレ)の右手に幻想殺しがある理由はオレが知ってる」

「?! ・・・なんだと!?」

 

戦闘中にそんな事を言い出した上条に、フィアンマは思わず聞き返した。それは一体何故なのか、理由が知りたかった。

 

「それは俺が、『上条』であり『神上』であり『神成』だからだよ。幻想殺しなんてものは俺の力の副産物に過ぎない。だから、表上は『あらゆる異能の力を打ち消す右手』だろう? おかしいだろ。何でそんな所で幻想殺し(コイツ)は足踏みしてるんだ? な。そういう事さ。上条当麻(オレ)に宿ったのは幻想殺し(イマジンブレイカー)なんて陳腐でちっぽけなモノじゃねぇ。今一度俺の能力について教えてやるよ。俺は              さ」

「――――――か?」

「そんな大層なもんじゃねぇ。ただそこにあるだけのちっぽけなモノでしかないさ。ただ? この天才的な俺についちゃってるもんだから結構ヤバいもんに変質してるっぽいけどねェ?」

「・・・・・・貴様は・・・」

「お前は、いっぺん世界を見てこい。本当に世界に救済が必要かどうかをな。俺の知り合いにもいたんだよ。自分が理不尽な目に遭ったから世界を変えるなんて息巻いてた世間知らずのお嬢様(バカ)がね。テメェとそいつに共通するものは何か? 世界を知りもしねぇガキくせに、自分勝手に世界変えようと馬鹿みたいに足掻いていることだ。なァ? そうだろう、ク・ソ・ガ・キ♡」




強くて、情け容赦がなくて、人を人としてみない悪魔が復活しました。

復活って言っても、何のことか分からない人しかいないでしょうが。

まあそれはオイオイ・・・・・・。


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