幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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18/4/ 大幅改稿


物語の流れ自体も大きく変更しています。


『グループ』『スクール』『アイテム』『ブロック』『メンバー』・・・・・・・・・『ドラゴン』編
愛しい貴方へ極上の鉛玉を Management.


世界には死角というものがある。

もちろんそれは車などに存在する、()()見えない場所だけに留まらない。

例えば大手デパートの清掃室。

デパートの従業員は『外部の清掃業者が使っているんだろう』と思っているし、清掃業者は『あそこはデパートの従業員が使っているんだろう』と考えている。客が入るようなスペースでもないから、内部に監視カメラなども設置されず、誰の目にも止まらない。結果として、誰もが知っているのに誰も入った事のない、カギの置き場所も分からない部屋が出来上がるわけだ。

普段は施錠されっぱなしの鉄のドア。

別の場所ではその奥に人材派遣(マネジメント)が経営する紹介屋が存在するが、この場所ではまた違ったものが存在している。そこは広々とした応接室に類似した空間が広がっており、華美な内装が施されているわけではないが、やたらと存在感のある部屋だった。

 

「今回も自由に動いて良いというのは本当なんだろうな?」

 

テーブルに置かれたパソコンに向かって、そう男が声を発する。

上座に当たるソファに深く腰かけているのは、全体が黒一色の男だった。軽い変装でもしているのか、全体の顔立ちは判別できないが高校生程の年齢に見える。衣装は長いコートを着て中にVネックの黒シャツを着ていた。

その男の通り名は“黒皇龍(ドラゴン)

黒猫(BLACK CAT)”の名で学園都市の『闇』を暗躍する災厄の暗部組織(ドラゴン)のリーダーだ。

 

「それが本当なら」

『ああ。いつも通りだ。自由に動いてくれて構わない。ただし』

 

パソコンで誰かと通話をしているのだろう、彼の目の前のテーブルに置かれているパソコンのモニターには「SOUND ONLY」の文字が表示されており、くぐもってはいるが男の声が聞こえている。相手の顔を見る事はできないが、声色や言葉遣いなどから黒猫(BLACK CAT)とそれなりに交流のある相手のようだと推測できる。

 

「あまり目立つな。だろう? 分かっている。目撃者は出さない」

『なら、良いんだが』

「全員殺してしまえば目撃者なんていなくなる」

『それを止めろと言っているんだ。キミの場合は本当にやりかねそうで怖いんだ。だからもう一つの方もしっかりと守ってくれよ?』

「怪我人を極力出すな、だな。了解だ」

 

潜入任務のようなステルス行動を求められているのだが、黒猫(BLACK CAT)の顔色が変わる様子はない。かなりそう言った注文には慣れているといった風だ。しかし、ゲームや漫画の中のものと違い、四方八方が敵といった状況ではなく、今回の事件で遭遇するであろう人間の九割がその姿を見られても何の問題もなく、現場さえ押さえられなければ無視していい存在だ。

それが分かっているからこそ、黒猫(BLACK CAT)は簡単にその注文を請け負ったのだろう。もしくは本当に慣れているだけなのかもしれないが。

通話相手との会話が終わった黒猫(BLACK CAT)は、徐にパソコンのキーボードに手を伸ばし、つい先ほどまでしていた通話を切ると、自身の斜め横の席に座る黒髪の女に目を向ける。

 

「どうするの?」

 

その一言には様々な意味が含まれているが、この場合は単純で、今後の予定を尋ねるものだ。『上』から伝えられた事件に対する姿勢・準備・計画・戦略。その全てを内包した女の問いかけに、黒猫(BLACK CAT)は「それを聞くか」といった風な面倒臭そうな顔を一瞬したが、すぐさまそんな事には慣れたもののように面倒臭そうな雰囲気すらも取り繕って、

 

「首を突っ込むに決まっているだろう」

「だよね。分かってた」

 

女は二つに結ばれた髪の毛先を揺らしながらゆったりと立ち上がった。眠そうな目をし、若そうなのにどこか大人びた印象を受けるその女は、黒を基調としたパーカーと首にかけられたガスマスクも印象的だった。

この女にも通り名は存在しており、その名は“電脳乙女(ハッククイーン)

闇夜(Darkness)”の名で学園都市の『闇』を暗躍する災厄の暗部組織(ドラゴン)の構成員だ。

 

「だとしても準備だけは怠るな」

「了解」

 

目線だけでの会話や、単語だけでの会話などを駆使して、彼等は今回の作戦行動に向けた準備を進めていく。指示語だけが飛び交うその空間は、メンバーが揃う前は日常的にあったものだった。

黒猫(BLACK CAT)闇夜(Darkness)は今のメンバーが集まり、暗部組織(ドラゴン)が結成される前からタッグを組んで行動している。その頃の彼らは二人の異名を合わせて“闇夜の黒猫(Darkness BLACK CAT)”学園都市の宵闇を駆け、不吉を届ける黒猫として恐れられていた。

 

「普段通りの装備で行こう」

「えー」

「文句を言うな。その30mm対化物用「砲」(ハルコンネン)は置いてこい」

 

闇夜(Darkness)はどこから持ってきたのか二メートル以上もの巨大な「砲」を、不満そうな顔をしながらもいそいそと仕舞いに行った。黒猫(BLACK CAT)はその様子を溜め息交じりに見送って、自らの武器に目を通す。暗闇では視認性が著しく落ちる黒色のDESSERTEAGLEと、超金属(オリハルコン)製の回転式装飾銃。それらを後ろのベルトや、太腿に巻いたホルスターにしまう。必要はないかもしれないがランボータイプのサバイバルナイフも装備して立ち上がる。

 

「準備は良いか?」

「(^q^)ハイ」

 

真剣な顔をしてかなりふざけた返答をした闇夜(Darkness)に対し、黒猫(BLACK CAT)は問答無用で背中から抜いたDESSERTEAGLEを乱射した。闇夜(Darkness)は素っ頓狂な悲鳴を上げたが、冷静に全弾回避していた。おかげで闇夜(Darkness)がいた後ろの空間には何発もの弾痕がついてしまっていた。

黒猫(BLACK CAT)は空になった弾倉を引き抜き、新しいのと取り替えながら弾息をついた。文句を垂れながら空の弾倉に新しい銃弾を補充していく。

 

「チッ。弾の無駄遣いだ」

「分かってるなら撃たないでよ・・・」

「くだらない事をしているからだ」

 

闇夜(Darkness)は不服そうな顔をしてはいたが、自らに過失があったのは認めているのか、それ以上言い返すような事はしなかった。そんな彼女は背中にPGMヘカートⅡを背負い、赤と白の十字架がそれぞれついた二丁拳銃をホルスターに収めた。

 

「お前、んなモン扱えたか?」

「まーね。誰かさんのおかげで力だけは普通じゃないから」

「力だけじゃないだろ?」

「酷っ。誰のせいでこうなったと思ってんのよ」

「少なくとも()()俺じゃあないな」

「今じゃなくてもアンタのせいでこうなってんの! 分かってる!?」

 

闇夜(Darkness)の言葉に黒猫(BLACK CAT)は何の反応も返さず、その事に対し不機嫌そうな顔をする闇夜(Darkness)を無視して、携帯電話を取り出した。

そこに登録されている番号へ掛けると、応答した相手に短く告げる。

 

()()()

 

電話が何かを言う。

黒猫(BLACK CAT)は続けてこう答えた。

 

「そうだ。今回のヤマで全部終いだ。だから根気よくいけ。下部組織に連絡しろ。いや、病院は良い。最初っから偽物で行こう。そんじゃあそっちは―――死にたい?」

 

チッ、と黒猫(BLACK CAT)は舌打ちして。

 

「そうか。完全に姿消すには、そっちの方が都合も良いか。仕方がない。セイヴェルン、お前はそのまま計画通りに動け、全体的なバックアップは榎本が担当する。裏方周りは个鐘に一任するから安心しろ。それじゃあな」

 

黒猫(BLACK CAT)は通話を切る。

上条当麻(かみじょうとうま)榎本貴音(えのもとたかね)、フレンダ=セイヴェルン、个鐘弥美(こがねやみ)

彼等四人を総称して『ドラゴン』と呼ぶ。

社会の裏に存在し、表舞台とのバランスを保つために活動している小組織だ。


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