幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
物語の流れ自体も大きく変更しています。
愛しい貴方へ極上の鉛玉を Management.
世界には死角というものがある。
もちろんそれは車などに存在する、
例えば大手デパートの清掃室。
デパートの従業員は『外部の清掃業者が使っているんだろう』と思っているし、清掃業者は『あそこはデパートの従業員が使っているんだろう』と考えている。客が入るようなスペースでもないから、内部に監視カメラなども設置されず、誰の目にも止まらない。結果として、誰もが知っているのに誰も入った事のない、カギの置き場所も分からない部屋が出来上がるわけだ。
普段は施錠されっぱなしの鉄のドア。
別の場所ではその奥に
「今回も自由に動いて良いというのは本当なんだろうな?」
テーブルに置かれたパソコンに向かって、そう男が声を発する。
上座に当たるソファに深く腰かけているのは、全体が黒一色の男だった。軽い変装でもしているのか、全体の顔立ちは判別できないが高校生程の年齢に見える。衣装は長いコートを着て中にVネックの黒シャツを着ていた。
その男の通り名は“
“
「それが本当なら」
『ああ。いつも通りだ。自由に動いてくれて構わない。ただし』
パソコンで誰かと通話をしているのだろう、彼の目の前のテーブルに置かれているパソコンのモニターには「SOUND ONLY」の文字が表示されており、くぐもってはいるが男の声が聞こえている。相手の顔を見る事はできないが、声色や言葉遣いなどから
「あまり目立つな。だろう? 分かっている。目撃者は出さない」
『なら、良いんだが』
「全員殺してしまえば目撃者なんていなくなる」
『それを止めろと言っているんだ。キミの場合は本当にやりかねそうで怖いんだ。だからもう一つの方もしっかりと守ってくれよ?』
「怪我人を極力出すな、だな。了解だ」
潜入任務のようなステルス行動を求められているのだが、
それが分かっているからこそ、
通話相手との会話が終わった
「どうするの?」
その一言には様々な意味が含まれているが、この場合は単純で、今後の予定を尋ねるものだ。『上』から伝えられた事件に対する姿勢・準備・計画・戦略。その全てを内包した女の問いかけに、
「首を突っ込むに決まっているだろう」
「だよね。分かってた」
女は二つに結ばれた髪の毛先を揺らしながらゆったりと立ち上がった。眠そうな目をし、若そうなのにどこか大人びた印象を受けるその女は、黒を基調としたパーカーと首にかけられたガスマスクも印象的だった。
この女にも通り名は存在しており、その名は“
“
「だとしても準備だけは怠るな」
「了解」
目線だけでの会話や、単語だけでの会話などを駆使して、彼等は今回の作戦行動に向けた準備を進めていく。指示語だけが飛び交うその空間は、メンバーが揃う前は日常的にあったものだった。
「普段通りの装備で行こう」
「えー」
「文句を言うな。その
「準備は良いか?」
「(^q^)ハイ」
真剣な顔をしてかなりふざけた返答をした
「チッ。弾の無駄遣いだ」
「分かってるなら撃たないでよ・・・」
「くだらない事をしているからだ」
「お前、んなモン扱えたか?」
「まーね。誰かさんのおかげで力だけは普通じゃないから」
「力だけじゃないだろ?」
「酷っ。誰のせいでこうなったと思ってんのよ」
「少なくとも
「今じゃなくてもアンタのせいでこうなってんの! 分かってる!?」
そこに登録されている番号へ掛けると、応答した相手に短く告げる。
「
電話が何かを言う。
「そうだ。今回のヤマで全部終いだ。だから根気よくいけ。下部組織に連絡しろ。いや、病院は良い。最初っから偽物で行こう。そんじゃあそっちは―――死にたい?」
チッ、と
「そうか。完全に姿消すには、そっちの方が都合も良いか。仕方がない。セイヴェルン、お前はそのまま計画通りに動け、全体的なバックアップは榎本が担当する。裏方周りは个鐘に一任するから安心しろ。それじゃあな」
彼等四人を総称して『ドラゴン』と呼ぶ。
社会の裏に存在し、表舞台とのバランスを保つために活動している小組織だ。