幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
上条当麻は、天使の羽も、輪っかも無くなった風斬に話しかけていた。
「なあ。風斬。大丈夫・・・そうだな。怪我があったらなんか俺のせいにされそうだし、無事で良かったよホント」
「だめ、ですよ」
「駄目?」
「良かったなんて、思えないです・・・・・・」
風斬の視線を上条も追う。破壊された町並み、下敷きになった人々。
「・・・・・・何で、こんな事になっているんですか・・・・・・。全部、私のせいなのに。私がここにいなければ、少なくとも周りに被害は出なかったのに。どうして、私一人だけが無事なんですか。おかしいでしょう、こんなのって。結局、私って何なんですか!? みんなと一緒にはいられない、少しでも近づけばこんな風に壊してしまう! なら、なんで私は生まれたんですか!! AIM拡散力場に支えられているだけのくせに! 能力者の人達の力でやっと存在している化け物なのに!! せっかくあの子に『友達』って言ってもらって、それで少しは人間らしく慣れたと思ったのに。あんな羽が生えて、凶暴な火花を散らして、みんな叩き壊して! これじゃ本当にただの化け物じゃないですか!! もう嫌なんです。私を殴って全部終わりにしてください」
「・・・・・・別に良いけど。まあ俺の話を聞け」
上条はポツリポツリと彼女の叫びに返答を始めた。
「まず、こんな事になってるのは統括理事長がお前を呼んだからだ。『界』の出現のために、何故か俺を頼らなかったがな。お前が無事なのは、お前が中心にいたから、お前が原因だから。お前は風斬氷華。それ以上でもそれ以下でもないだろ。お前が生まれたのは俺の右手への恐怖だろうな。AIM拡散力場の集合体が幻想殺しに『死』を感じ取り、感情が生み出された・・・。それがお前。それじゃあ『死ぬ』か?」
上条の肩から先が一瞬にして半透明の龍の顎に変わった。ソレは一度大きな咆哮を上げると、風斬を呑み込むように顎を開いた。
「でもさ。俺はお前を殺せない。インデックスに殺すなって言われたから。お前の『友達』であるインデックスに。残念だったな。お前はまだ生きなきゃならないんだ」
上条のその言葉の後、一瞬にして、風景が、空間が、元通りに戻っていく。
「え・・・・・・?」
「形状記憶魔法。今回、侵入者が現われたって言う通報と同時に俺と貴音が学園都市全域を覆ったヤツだ。全てが終わったら、壊れた箇所を復元するって言うな。今回の事件は夢にしてやろうぜ。幸い、夜だし。長い長い嫌な夢だったんだ」
「そろそろ、目を覚まして、明るい明日を迎えましょう?」
「・・・・・・貴音。意外と遅かったな」
『ただいまですっ!』と敬礼をして、榎本貴音が上条の隣に立つ。その背後に、エイムもいた。
『・・・氷華ちゃん。初めましてだね』
「え・・・・・・?」
『私はエイム。この学園都市のAIM拡散力場の集合体が持つ意識。一言で言うと天使です』
「天使・・・。ってさっき私がなってた・・・」
『ええ。あなたがなっていたのは私の力を真似た物、不完全だった。だから周りに被害が出た。私なら、なんて言うつもりはないけれど。被害を出さずにやる事もできます』
「風斬、お前は悲観する必要はないんだ。今までお前がみていた物は、今日ここで起こった事は、全て悪い夢だったんだよ。忘れちまえ」
『「なかなかロマンティックですね。ご主人(マスター)」』
「そろってるぞ」
地べたに胡坐をかいて座る上条の足の間に貴音がすわる。彼は貴音の腰当たりを抱きしめると、彼女の肩から顔を出した。
「なあ、貴音。今回なんかあったか?」
「えーとですね。ってかくすぐったいです。耳元で喋んないでください」
「悪い悪い・・・ふぅー」
「ひゃうっ!! ご主人っ!!」
「悪いって!」
上条はふわりと重力を無視して
「で? 本日の業務連絡をよろしく頼む」
「はいな! では、今日は魔法結界のおかげで、実質的な被害はゼロ。ですが、白夜さんが暗部に入ったようですね」
「暗部かぁ。あいつ等元気か?」
「はい。
上条は『そうか』と軽く返すと、ニタリと笑う。
「とりあえず、俺に相談も無しで勝手な事した
「ですね~」
「エイム、風斬を任せたぞ」
『
この日、学園都市は正式に魔術集団の存在を肯定した。
学園都市の外―――ローマ正教には『
一方、ローマ正教は学園都市の内部で『天使』の存在を確認。十字教の宗教的教義に反する冒涜的な研究が行われているとして、ローマ教皇自らが学園都市を非難した。
争いが、始まろうとしていた。
学園都市とローマ正教の正面対立。
世界で三度目になるかもしれない、大きな大きな戦争が。