幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
インデックスが御坂美琴に出会った直後。上条当麻がそこに現れた。
だがそれは、上条当麻であって上条当麻ではなかった。全ての能力を開放した状態と言っても過言ではない姿だった。
「駄目だよ、とうま! ひょうかを殺さないでッ!!」
上条は化物の姿のまま振り返った。そしてインデックスたちに向けてジャッカルを撃った。
「なっ。ちょっとアンタ!! ・・・・・・え」
「と、とうま・・・?」
二人がゆっくりと振り返ると、彼女たちの後方には黒ずくめの男達が額から血を流して死んでいた。
「あ、アイツがやったの・・・・・・?」
「と、とうま!! 待つんだよ!!」
ゆっくりと、ゆっくりと上条は歩いていく。その身に降りかかる障害を、一撃で殺しながら。
「待ちなさい! 今アンタがアイツに近づいたら間違いなくやられるわよ!?」
「で、でもとうまを止めないと!!」
ある程度近づいたところで上条の言葉が聞こえてきた。それは、上条の行く道をふさぐように立っている連中に対して言っているのだ。
「ばっ・・・・・・化物!!」
「よく言われる。それと対峙しているお前は何だ? 人か、狗か、化物か」
右手のカスール。左手のジャッカル。それぞれが火を噴き目の前の敵を沈めていく。
「とうま―――」
インデックスの声は最後まで出なかった。前進を阻止する黒ずくめたちが一掃されたからだった。血が飛び地面を濡らす。その原因はデンド○ビウムのようなバックパックを背負った貴音が撃ったハルコンネンの銃弾だった。
「ご主人。元気そうですね」
「・・・エネ。そう見えるか?」
「いえ、実は全く」
上条は何も言わないが、貴音の左腕は無くなっていた。血のようなどす黒い塊が異形の形の腕を形成していた。
「ご主人。進路は?」
「見てわかるだろうが、まだだ」
「じゃあ、私が切り開きます!」
貴音はそういうと、黒い腕を地面に突き刺す。そして引き上げるような動作をすると、アスファルト舗装の地面を突き破って巨大な砲身がその体を現す。
高射砲、だった。
「
「吹き飛ばせっ!!」
打ち出された砲弾が、豆腐のようにビルを削り光の中心へと道を作った。
上条がそこに向かって走り出した後、貴音は美琴とインデックスに振り返る。
「あなた達にはあなた達にしかできないことがあるでしょう?」
「じゃあ!」
「・・・でも、それはここから先じゃない。ここから先は
貴音は殺すという言葉をいとも容易く笑顔と共に口にした。多量の殺気も混ぜながら。
「たかね。とうまは無茶しそうなんだよ!」
「心配、ですか?
*
上条当麻は爆心地についた。
アクション映画の舞台のような背景が広がるそこで、上条は言いようのない高揚感に包まれていた。
爆心地のさらに中心点。
そこにいるのは、一人の天使。
本体は普通の人間と同じサイズだ。
それに対して翼の方の縮尺があまりに巨大すぎて、まるで翼の塊に人間が飲み込まれそうになっているようにも見えた。
「うっわ・・・すっげぇ」
人間じゃねー。と上条はつぶやく。今までいろんなものを見てきた上条でもこれはいただけない。友人が、人為的にこんな姿にされていて誰が納得できようか。
「おやおや。大罪人同士、傷の舐め合いでもやってるトコだったかしら」
上条は振り返らずに後ろを見る。空中に浮かぶ二個の青い魔方陣が、ヴェントの方を見ていた。
「せっかく後回しにしてやろうって考えてたのに、自分から殺されに来ちゃったの。これ以上悲惨なモンを見たくないから先にぶっ潰して欲しいってコトかな」
「調子に乗るなよ魔法使い。テメェらだって、人間の道を外れた化け物だ。
「はっ。それはどうかな吸血鬼クン。今のソイツに、私の『本命』が通用するとは思えない。そもそも人間と同じ精神性を保っているかどうかもわからないしね。でも私は殺す! 私の力が足りずとも、今の不完全な『堕天使』なら、空中分解しそうな内燃制御系に介入する術式を組んで、自滅を誘発させてやるわ!! 怪物を怪物の力で吹っ飛ばしてやるって言ってんのよ!!」
「へぇ。面白い。だがお前が人間じゃないのが残念だ。この俺が、お前に教えてやるよ。俺の戦いを」
上条はそう言うと、人差し指と中指を立て、カメラのポーズをとる。
「拘束制御術式第三号・第二号・第一号、開放。状況A『クロムウェル』発動による承認認識。目前の敵の完全沈黙までの間、能力使用。限定使用開始。――――――
―――では、教育してやろう。“本当の吸血鬼”の闘争というものを!!」