幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
「これは・・・まさか・・・!」
『「界」の出現・・・。何故私がここにいるのに・・・!?』
「解析できますか!?」
ハルコンネンを撃ちながら貴音はエイムに問いかける。
『もちろんです。・・・・・・やはり勝手に虚数学区・五行機関が展開しています。おそらくこの学園都市の内部で魔術を使えば、暴走・自爆するでしょう』
「なるほど、対魔術師最終防衛
『しかしこれは不完全』
「・・・は?」
『霊装や教会が崩れる事は無いと思います』
「・・・・・・核は?」
『おそらく・・・この街で唯一虚数学区に繋がる存在・・・・・・』
「・・・まさか!!」
貴音は何も無い虚空を見上げる。そこに流れるAIM拡散力場の変化を見逃さないために。
「・・・うーん。打ち止めもどっか行っちまったし、ヴェントもどっか行っちまった。さて、なんでだ?」
(「私もよく分からないが、おそらく彼女なら分かるのだろうな」)
「エネの事か? まあ確かに、学園都市の超能力事情に関して言えば、アイツが一番詳しいけどさ・・・。まて、超能力?」
(「ん。そうか」)
「『界』か!!」
上条は答えにたどり着くと同時、当たりをキョロキョロと見渡して、変化を探す。
(待てよ、待てよ・・・・・・。エイムが界を作れるのは、理事会の連中と理事長は知ってるだが、統括理事長しか知らない事もある・・・。と言うか勝手に発動させるか? なんだ? 何かが引っかかる・・・・・・。幹部の連中が勝手に動いたとしても、これはやり過ぎだ。統括理事長が一枚噛んでるに違いねェ・・・・・・!!)
上条が推理にいそしむ中、突如として、凄まじい閃光が学園都市を覆った。
視界が塗り潰される。上条は慌てて眼を開く。見る事に関しては神の領域に達するその眼を。
状況を掴もうと当たりを見渡す。色は一色だが、その光量はナイトパレードにも匹敵する。
その直後、落雷のように遅れて、音と衝撃が襲いかかる。
「うおっ」
光と音が離れてやってきたという事は、今のは遠距離での出来事だったのだろう。
(やべっ。今の閃光と爆音の間の時間計っておくんだった。そしたら距離が割り出せるのに)
その時、上条の頭に声が響いた。
―――虚数学区・五行機関が部分的な展開を開始。
―――該当座標は学園都市、第七学区のほぼ中央地点。
―――理論モデル『風斬氷華』をベースに、追加モジュールを上書き。
―――理論モデル、内外とともに変貌を確認。
―――妹達を統御する上位個体『最終信号』は
―――ミサカネットワークを強制操作する事により、学園都市の全AIM拡散力場の方向性を人為的に誘導する事に成功。
―――第一段階は完了。
―――物理ルールの変更を確認。
―――これより、学園都市に『ヒューズ=カザキリ』が出現します。
―――関係者各位は不意の衝撃に備えてください。
光の中心点から、無数の翼のようなものが吹き荒れた。まるで刃のように鋭い、数十もの羽。一本一本は一〇メートルから一〇〇メートルにも及び、天へ逆らうように高くたか買う広げられていく。
周囲にはビルがあるが、そんなものを気にしている様子はない。濡れた紙を引き裂くが如く、次々とビルが倒壊していった。人間の作り上げた貧弱な構造物を食い破りながら、翼は悠々と羽ばたく。世界の主は人間ではないと、言外に語っているかのように。
まるで、巨大な水晶でできた孔雀の羽のようだった。
「とち狂ったか・・・アレイスター!!」
上条はその様子を離れたビルの屋上から見ていた。
彼は知っている。
遙か前方に見える、非化学極まりないものの正体を。
「天使を・・・堕ろすなんて・・・。しかも・・・風斬だと? 巫山戯てんじゃねェェ!!!」
上条の咆哮と同時に、破壊の一撃が放たれた。
生み出された壮絶な雷光は、蛇のように生物的な動きで学園都市の外へと飛んでいく。上条はその残像を目で追う。強烈な光が突き刺さった地点は、まるで土地の地下にまんべんなく爆薬が仕掛けてあったように、森と土と木々と人が上空まで舞い上げられた。
数秒遅れて、爆音が全身を打つ。
それはもはや衝撃波だった。あまりの威力に上条も「おぉー」と声を出す。
「とりあえず、あの天使を止めに行かねーとな」
上条は光の中心に向けて走り出した。
「天使だろうがなんだろうが、そんな地上にあっちゃいけないもんがあるなんて、ふざけた幻想は、俺がこの手でぶち殺すっ!!」
走りながら、上条は幻想喰いのリミッターを“怒り”という感情でぶち壊した。
最近忙しくてコメント返信ができていませんが、ちゃんと読んでますよ~