幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
「
ザーザーと降る雨の中、暗い夜の街に響かせるように、少女の声は透き通るように雨をすり抜け耳に届く。
「・・・何だ? オマエ」
「
「コピーキャットぉ? そりゃ模倣犯の事だろ? 何だってあんなちんけなガキに」
「木原さん知らないんですか? 能力者の間で有名です。一度出会ったら自らの能力を複製され、相手のものにされるって」
「はっ。んなバカな」
「・・・そしてその全てが超能力級」
「「!?」」
木原と同時に、白夜まで驚く。
(そんなヤツは・・・)
(学園都市にただ一人・・・)
((榎本貴音!!))
「・・・Sembra di essere a conoscenza della ovvio, ma è già in ritardo. Resa, o Haitsukuba 'di aspettare la morte, si prega di selezionare?」
少女の口から飛び出したのはこれまた流暢なイタリア語だった。意味は、『どうやら気づいたようですが、もう遅いです。降参するか、地べたを這いつくばって死を待つか、選んでください?』だ。
当然、純日本人である彼らに伝わるはずもない。
「・・・死ね」
少女は端的にそう告げた。
少女が持つ二対の銃口が火を噴いた。その場に少女と木原、白夜を残して、隊員達は地に伏せた。呻き声が聞こえる事から、まだ生きているのだろう。地面にクレーターのような大きな穴開いていることから、おそらく着弾の衝撃波で気絶、もしくは行動不能なのだろう。
「お久しぶりです。木原数多」
「お、おう」
「誰の命令だ?」
「あ?」
「答えてもらおうか? 誰の命令だ」
いつも聞く少女の声とはかけ離れていた。低く、殺意のこもった声。
「言え、テメーにこんな事させようとしたのはどこのどいつだ」
「と、統括理事会からの命令。と言う事で上から回ってきている」
「・・・あの親バカ共がトーマを頼らないわけがない・・・。となると、そのことに不満を抱いている幹部共か・・・・・・」
「・・・オ・・・イ・・・・・・榎本」
「・・・何?」
「・・・頼みがある」
「この
敬語など抜けきり、どこかあの男を思わせる話し方をする貴音。白夜はそんな貴音を少し睨みつける。
「アハッ。いい目をする。殺意じゃない、やっぱりあんたの目には闘志が宿ってる。やっぱりトーマと一緒にいた影響だろーな。で? 言ってみろよ。聞くだけ聞いてやる」
「・・・・・・」
貴音のその言葉に、一瞬不服そうな顔を白夜はしたが、口を開く。
「たった一つだけで良い。調べてほしい。ラス「トーマの所だ」・・・・・・そうか」
言い終わる前に貴音の返答が入った。
「はっ。あのガキ、カミジョーのとこにいんのかよ。うっわ、回収面倒くせぇ! やめだやめ。何言われようが直に幹部は潰れんだろ? お前等のハタラキでよぉ?」
聞かれた貴音はクスリと、女の子らしい柔らかな笑みを浮かべた後、猟奇的に口角を釣り上げて。
「当たり前だ。売られたケンカは買う。しかもいつでも良い値段で買ってやるよ」
「・・・いくらぐらいなんだ?」
「そうだな・・・・・・・・・」
そこで貴音は一拍おいて、
「人数分の魂だ」
「・・・プッ。アハハハハハハハッ!!」
「あ?」
「魂を! 喰うのか!? お前らは
「・・・さあね」
貴音はそう言うと、白夜を一度足蹴にした後、頭を掴み自分の顔と同位置まで持ち上げる。
「ウグ・・・・・・」
「良く聞け第一位。私はお前に興味がほとんどない。トーマが仲良くしてるからしておこうと言ったところだ。悲しいだろ。友人だと思っていた片方は自分の事を全くの他人だと思っていたなんて。ああ、その通りだよ。私はアンタになんの期待もしていない。アンタはただのガキだ。
「・・・っつ」
「悔しいなら足掻いてみろよ。このクソッタレな世界をぶっ壊す。そんなステキなチカラを手に入れて見ろよ。お前のその手でよ」
「・・・・・・キャラ崩壊ヤバいぞ?」
「ほっといてくれる?」
貴音はそう言うと、白夜を病院にテレポートする。怪我の治療依頼の手紙と一緒に。
「木原数多。また後で」
「ん? あ、ああ」
▽
上条は拳を握りしめる。
白夜が攻撃されるという事はおそらく目的は打ち止め、そして虚数学区・五行機関。統括理事会の理事の連中は榎本貴音が使えることを知っている。
つまり・・・・・・、
(幹部の連中が・・・っ。勝手に動いたな・・・・・・!)
「どうしたの? ってミサカはミサカはなんか怖い雰囲気のヒーローさんに話しかけてみる」
「・・・どうもしないよ。ただ、つくづく人間の裏って面白いなって思っただけだ」
上条は口元だけで笑った。
眼や雰囲気は全く笑っていない。ゆっくりとした動きで銃を三つ取り出す。
オリハルコン製のリボルバー、ハーディス。対化物戦闘用13mm拳銃「ジャッカル」。
そして、
「わっ。大きい! ってミサカはミサカは興奮してみる!」
「元ネタは大出力第二次試作460mm陽電子砲・・・。いわゆるエヴァ専用改造陽電子砲NERV仕様だな。というか見た目はそのままだし。初号機が俺達人間に変わっただけの大きさだから、めちゃデカいんだよな・・・・・・」
「それを片手で持てちゃうところが凄いかも、ってミサカはミサカは褒めてみる」
「あっそ」
「来た! ってミサカはミサカは目視での確認を報告してみる!」
「ああ、俺も見えてるよ」
上条は打ち止めの額にキョンシーのようにお札を貼る。
「へ?」
「剥がすんじゃねェぞ?」
「大丈夫だよ? あいつ等の狙いは私だから私に弾が当たることは「俺が、巻き込んじまうって言ってんだ」・・・・・・?」
上条はそう言うと、前方からやってくる黒いワンボックスに向けてジャッカルの引き金を引いた。
撃ち出された銃弾は全て、ボンネットに突き刺さり小さな爆発を起こしてエンジンを破壊する。
「純銀 マケドニウム加工水銀弾頭弾殻。マーベルス化学薬筒 NNA9。全長39cm。重量16kg。13mm炸裂徹鋼弾。対化物戦闘用拳銃「ジャッカル」専用弾・・・。パーフェクトだキハラァ」
上条は妙に渋い声でそういった。そしてゾロゾロとサブマシンガンを構えて降りてきた黒服達に向かって上条は一言。
「さあ、おいで。糞餓鬼!!」
*
銃声の嵐の後、上条はハーディスの銃身から潰れた銃弾をポロポロ落としながら言った。
「生きてるか? 打ち止め」
上条が尋ねると、少女は無言で何度か頷いた。
目の前にいる黒服達も恐ろしいものを見たように突っ立っている。誰かのかけ声で再度引き金が引かれ、銃弾が上条達に襲いかかる。が、上条は自らの体の後ろに隠した打ち止めを守るように、自分の体の重要部位には銃弾が当たらないように、ハーディスの銃身で受け止めていく。
(す、凄い・・・ってミサカはミサカはその動きに驚きを隠せない!)
「な、なんだアイツ! 化け物か!!」
そんな声が聞こえる。打ち止めは思わず顔をしかめたが、まあ今の彼の動きはそう言われても仕方のないものだった。
「・・・い、いや待て・・・。あの持ってる銃に書かれてる文字・・・」
「じ、XIII!?」
「まさかアイツが・・・!!」
「お喋りはそこまでだ。夜は長い。ゆっくり眠りな」
その言葉の後に、立っていたものは上条と打ち止め以外いなかった。