比企谷八幡の幻想縁起   作:虚園の神

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2話目


比企谷八幡in紅魔館

一瞬の浮遊感。

衝撃、そして痛み。

目を覚し一番最初に目に映ったのは、眼前に広がる湖。そして背後には数多の木、木、木、ぶっちゃけ森がある。木が3本で森とかそんな寒いことを言っているのではない。森の中を覗き見ようとすれば、目が緑で埋め尽くされる、そんな感じだ。広葉樹が多く存在しているのか、土の感触が柔らかい。

しかし何故俺はこんなところに・・・。いや、本当に何でだ?俺は家のリビングで寝ていたはずなんだが。アイエエッ!?モリッ!?モリナンデ⁉︎お、落ち着け、そう素数を数えるんだ2.4.6.8.10・・・これ偶数だわ。

だが偶数でも結構落ち着けるものだ。数字を数えること自体に意味があるのだろう。しかし中々冷静に行動できる俺はやはり優秀。これがリア充なんかだと先ず頼れる人を探すだろう。だがボッチには元々周りに誰も頼る人間がいないから、突然の状況にもすぐに落ち着けるのだ。

そう、焦っても仕様がない。するべき事は持ち物の確認。そして、状況判断。

先ず持ち物だ。I♡千葉T-シャツ、7分丈のズボン、圏外のスマホ、家の鍵と伸びるキーホルダー、シャーペンとボールペン。・・・これでどうしろっつーんだよ。

まぁいい、次は状況だ。置かれている状況を理解しなければ何も始まらない。

この状況考えられることは4つ。

1つ目は此れは夢であること。

2つ目、俺が寝ている間に旅行に連れて行かれた。

3つ目、誘拐

最後に、全く知らない場所。俗に言う異世界。

2つ目と4つ目は限りなく可能性が低いから除外すると、実質2つか。

「だが、痛みがあったということはこれは夢ではない?となると誘拐か?」

声に出して整理しながら確認する。

「それでも、周りに誰もいない。誘拐の可能性も低そうだな」

・・・全部低いじゃねぇか。別のところから考えるか。

そういえば夏真っ只中だというのにいやに涼しいのは何でだ?湖があるからという理由だけではない気がする。避暑地?そうなると旅行か?いや待て、それだと・・・ 。うーんうーんアンノウーンと考えていると、視界の端に巨大な物を捉えた。よくよく見やれば赤い館が立っていた。距離にして300メートルといったところか。

背に腹は変えられん。行ってみるか。

立ち上がり、ズボンについた砂をぱっぱと払い、歩を進める。

段々と館と門が近づき、細かい部分まで明瞭に見えてくる。見れば見る程デカイと思わざるを得ない。

ふと、門の側に女性がいる事に気付いた。今の今まで館の方に気を取られ、全くと言っていいほどに気がつかなかった。その女性は赤身の混じった茶髪を背中まで流し、チャイナドレスに身を包んでいた。服から太ももがチラリと覗き、正直なところエロい。ハ、ハレンチなっ!

そのふと間違えたそのひとを見ながらも、声を掛けあぐねていると向こうが気付いたのか、声をかけられた。

「誰でしょうか?この紅魔館に何か用向きでも?」

物腰は丁寧だが、声に多少の鋭さを感じる。恐らくこの館の門番、若しくは衛士だろう。

「えーとですね。そのーまぁなんというか。そのですね・・・。」

なんとも要領を得ない返事を不審に思ったのか、苛立ちと警戒を強めた語調になる。

「用向きを言えないのならお引き取り願いますか?私も暇ではないので。」

この門番さっきから突っ立ているだけにしか見えなかったんだが・・・。しかも暇じゃない門番ってどういう事だよ。敵がいつもくるのん?という突っ込みは呑み込み、代わりに用を話すことにした。

「ええまぁ、信じてもらえないかもしれませんが、気付いたらこの湖の近くにいて、右も左もわからないものだから人の気配のあるこの立派なお屋敷に行き、知ってることなどないかと話を聞きに来た所存で御座います。」

なるべく丁寧な態度を意識し、かつ相手を褒めることも忘れない。中々の高等テクニックだ、と思う。

「へへ、立派なお屋敷だなんてそんな・・・。」

そう言ってはにかみ笑いを浮かべている。警戒のされ方が結構緩和された様だ。流石俺だ。敗北を知りたいぜ…。

「分かりました。少々お待ちを。」

そう言って、敷地内に入り、戸を叩く。少しの間も開けずに扉が開くと中からメイド服をピシッと着たミニスカメイドが現れた。銀色の髪、幼さの残る顔だがそれを振り払うかのような凜とした佇まい。美しいと可愛いの中間に位置するような人だった。そして2人して多少の言葉を交わすと、銀髪メイドが突然消えた。

・・・え?ニンジャ?

そしてものの数十秒で元の位置に戻って来た。そしてこちらに近づき、人3人分の間を開けて、目の前で止まる。

「美鈴から伺いました。外の世界から来たそうですね。申し遅れました、私、この紅魔館にてメイド長を務めさせていただいております、十六夜咲夜と申します。彼方にいる門番が紅美鈴です。」

そう言うと、両の手を腹の位置で重ね、一礼をする。

そして顔を上げ、視線を合わせてくる。つまり、名乗れ ということだろう。その真意を悟った俺は簡潔に自己紹介をする。

「比企谷八幡です。先程、紅 め、めーりん?さんに事情を話したのですが、」

「存じております。先程も言いましたが外の世界から来たとのことですね。」

ほーん、外の世界ねぇ・・・。んん?外の世界?

「外の世界とはどういうことでしょうか?ここは異世界かなんかですか?」

「この世界は、貴方のいた世界とは結界により、隔絶されているのです。ある面、貴方にとって異世界の様なものですね。」

結界ねぇ。あちゃー、材木座と同じタイプの人間かー。異世界だったら俺のチーレム無双でも始まるんですかねぇ。そんな訳あるかです。はい。

 

「信じるか信じないかはご自由ですが、貴方が今、路頭に迷っているのは純然たる事実。なので宜しければ、紅魔館でお世話致しましょうか?」

「いや、まだ日も高いですし、お気持ちだけ受け取っておきます。」

「そう仰らずに、お嬢様も歓迎するとおっしっていますので。どうぞ中へ。」

そう言って門を開き、中へ通そうとする。ニコニコ笑顔だがそれを有無を言わさぬ迫力がある。それに逆らえるはずも無く、門をくぐる。その時に紅さんに礼を言おうと思い、すれ違い様に顔を上げると、申し訳そうな顔が目に映った。それを疑問に思いながらも、十六夜咲夜について行き、紅魔館にの中へ足を踏み入れた。

 




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