僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第25話『プレゼント』

 それから二時間後、パーティは泥沼と化していた。

 

 美月は完全に酔っ払い、和馬も理性的な考えが期待できない様子で俊に絡んでいた。

 

 女子四人に揉まれていた隼人は、疲労感からぐったりしていた。

 

「あらあら、久々に来てみれば随分と楽しそうね」

 

「あ、咲耶さん、こんばんわ。あれ? どうやってうちの中に……」

 

「合鍵。もらってたのよ。それよりも、遅れてごめんなさいね、せっかくのお祝いなのに」

 

「いえ、そんな。お忙しいのに来ていただけただけでも幸いですよ」

 

「うふふ。うれしい事言ってくれるわね。さて、アキちゃん達は?」

 

 そう言って、重量があるらしいボストンバッグを置いた咲耶は、リーヤが指さしたソファーで眠りこけているアキホ達に頬を引きつり上げた。

 

「何なのよこの空間は」

 

「ああ、咲耶か。良いだろう、宴会後の雰囲気で」

 

「良くないわよ……」

 

 眠そうな隼人の冗談に疲れ気味に返した咲耶は、リーヤの隣に座ると、空腹なのか残り物を食べ始める。

 

 もぐもぐと咀嚼する咲耶の隣、リーヤの反対でゲームを観戦していた日向が、空いたグラスにジュースを注ぎ、彼女に手渡した。

 

「ありがとう。まあ、別にお酒でも良かったのだけど」

 

「一財閥の党首が未成年飲酒? 良くないんじゃないのか?」

 

「あら、私だって飲みたい時くらいあるし、少し嗜みもするのよ?」

 

「少し、か。それなら良いんだが……。アイツ《和馬》みたいになるなよ、咲耶姐さん」

 

「……ああまではいかないから。安心して」

 

 そう言って、一杯飲んだ咲耶は、膝枕にミウを乗せている日向に苦笑する。

 

「しかし皆おねんねなんて、せっかく新入生二人に向けた新装備を持ってきてあげたのに」

 

「新装備?」

 

「ええ、新装備。アキちゃんは格闘武器、香美ちゃんは電子戦用のウェラブルコンピューター、まあそのどれもがちょっとした隠しギミックがついててね」

 

「ギミックか……ろくでもなさそうだな」

 

「ええ、普通の人にはね」

 

 そう言って、笑う咲耶に半目を向けた日向は、むくりと体を起こした香美に気付いた。

 

「起きたぞ、姐さん」

 

「ふえ?」

 

「おはよう、香美。お前宛のプレゼントが来てるぞ」

 

 そう言って咲耶を指さした日向は、香美用に用意された腕に装着するタイプのウェラブルコンピューターを彼女から受け取った。

 

 折り畳み式になっているそれは、一見すれば腕に取り付ける小さなノートパソコンの様だった。

 

「ハナが使っているのとは少し違うな。腕に取り付くタイプか」

 

「ええ、そうよ。それも試作型の術式対応タイプ。両手のオープンフィンガーグローブから内蔵のセンサーを介して情報を取得、その後は無線送信でセンサー情報を左腕のコンピューターに転送。

装着者の判断で取得したスキャニング情報を戦術データリンクにアップロードできるようになっているわ。加えて、ロックオン術式も左腕のコンピューターが自動起動で一部演算処理の補助を行う。

副次的な効果でしかないけれど、スキャン対象の距離が遠距離、複数になるほど負担軽減のうまみは出るわ」

 

「ハナが持っている能力の補助を行うコンピューターか。地味だが、良い物だな」

 

「それともう一つ、このコンピューターの隠しギミックとして個人間の演算処理をリンクさせる機能がついている。やり方は簡単、リンク対象と一度手を繋ぐだけ。それだけでコンピューターがリンク対象へ演算処理を委託するわ。

但し、負担軽減の為に一リンクにつき委託は一度だけ。種族も人間にはリンクできない様になっているわ」

 

「なるほどな。おい香美、聞いていたか? 起きろ、寝れなくなるぞ」

 

 そう言って揺さぶる日向を見て苦笑していた咲耶は、寝ぼけている香美の左腕にアームガードと一体になったコンピューターを装着すると、先端部に位置するグローブを固定した。

 

 舟を漕ぐ香美の左腕を大きく広げ、装着されたコンピューターを開いた咲耶は、興味本位で近づいてきたハナと共にコンピューターのセットアップを開始する。

 

「時刻設定、新グリニッジ標準時、新日本標準時を設定。GPS、初期設定から変更無し。戦術データリンクは、国連軍と新関東高校、PMSCSの三種。これは私の端末から設定を転送、マッチング。各リンク接続用パスワード入力、完了。

咲耶さん、端末設定完了しました。後は?」

 

「後は、神経接続だけね。こればっかりは香美ちゃんに起きてもらわないと」

 

「だって、香美ちゃん」

 

 そう言って苦笑したハナを他所に、神経接続の準備を進めた咲耶はもう一つの武装、アキホ用に用意していた物をカバンから取り出した。

 

 机の上に置かれた一式を見たシュウ達は、その見た目に言葉を奪われた。

 

「これは……」

 

「全部アークセイバーか? にしちゃブーツにガントレットみたいな物もあるが……」

 

「それに、アークセイバーって出力の問題から、TMDが無いとじゃないと使えないんじゃないか?」

 

 ガントレットタイプを持ち上げてそう言った日向は、同意する様に頷くシュウが手にしているラック懸架の手持ちタイプを流し見た。

 

 武器を観察している二人に苦笑しながら、香美の神経接続の設定をした咲耶は、神経接続による視覚情報への割り込みを確認している彼女の様子を見ていた。

 

「香美ちゃん、気持ち悪い所とか、違和感を感じる事はない? あれば再調整するから」

 

「えっと、少し、ウィンドウが大きいかな、と。あと、手の感覚が少し」

 

「痺れる感じ? それなら、手の神経をセンサー代わりにしてるからかしらね。少しセンサー感度を下げましょうか。それで緩和できるはず。他には?」

 

「あ、片目での表示に違和感が……」

 

「半表示状態ね。調整する。これで全部? よし、なら、外しても大丈夫よ」

 

 そう言って、ウェラブルコンピューターからコネクターを取り外した咲耶は、調整に使用していたブックPCを折り畳んでバッグに戻した。

 

「それで、そのアークセイバーが気になる? そこのお二人さん」

 

「え? まあ、はい」

 

「じゃあ説明しましょうか。それをあげる子は寝てるけどね」

 

 そう言って苦笑した咲耶は、手持ち式のうちの一つを取り外し、日向達の目の前に掲げた。

 

「これは歩兵携行用新型アークセイバー。試作名称は『ブロッサム』。そしてこっちがその改良型の『ブロッサムⅡ』、別称バンシー(泣き女)。これらは全て、うちの部署が開発していた超小型TMD内蔵式武装の研究品」

 

「TMDを内蔵した武装……。隼人が使用している物よりも大型なのはそのせいですか?」

 

「ええ。でも、その分変換した電力をアークセイバーだけに注ぎ込める。全体の割合から供給量が決まっていたフレーム付属品(オプション)とは出力が違う。このガントレットタイプとブーツタイプも同様よ」

 

「それを今回提供する訳ですか? どうしてまた」

 

「それを用いた時の運用・実戦データが欲しいの」

 

 深刻そうな顔でそう言った咲耶に首を傾げた日向は、手にしていたガントレットを机の上に置く。

 

「運用と実戦データ? 実戦データはともかく、運用データは試作段階で取れていたのでは?」

 

「えっとね、この武装、主武装にするにはバランス悪すぎるみたいなの。で、うちに所属してる試験使用者(テスター)全員がまともに扱いきれなくてきちんと動いているデータが無いの」

 

「要するに起動試験データはあっても、試験戦闘データ自体が無い、と。全員扱えないって、そんなにバランス悪いんですか?」

 

「テスター曰く、普通の武器の感覚で扱うと、ブレード収束フィールドのジャイロモーメントとアークで自滅するらしいわ」

 

「実体刃と違って重量が無いから振り回すだけでも一苦労なのか……。シュウ、振ってみるか?」

 

 そう言ってニヤリと笑う日向のやり取りに、苦笑した咲耶は、起き上がって手に取っているアキホに気付いた。

 

「あら、おはようアキちゃん。どう? あなた向けの入学祝いは」

 

「何て言うか……凄いね。って、これ全部私の?」

 

「ええ、そうよ。着けてみる?」

 

「マジ!? 着ける着ける!」

 

「うふふ。はいはい。じゃあブーツ。うん、素足で良いわ」

 

 そう言ってブーツ型のアークセイバーを履かせた咲耶は、目を輝かせてはしゃぐアキホを宥めた。

 

「おおー、何かレン姉の脚武器みたい」

 

「ベースモデル一緒だからね。着け心地は?」

 

「良いねぇ。思ったほど重くないよ!」

 

 そう言ってアクロバットを決めるアキホに、驚いた咲耶はガントレットを手に取る。

 

「じゃあ次はガントレット。これは着けたらユニットを起動してみてくれる?」

 

「んと、こう?」

 

 咲耶の案内に従って、神経接続を介し武装を起動させたアキホは、ガントレット中央に浮かんだ薄い板が手の甲の上に口を向けるのに軽く感動していた。

 

「ちゃんと起動できているわね。じゃあ、今身に着けている装備の説明ね。脚のはレッグアークセイバー『エオス』。アナイアレイタの武装データを基に開発した武器よ。

その通り、相手を蹴り切るのが目的の武器よ。どうかした?」

 

「あれ? 刃が出ないよ?」

 

「ああ、それは武装側でセイフティかけてるからよ。アーク刃は出してると危ないから」

 

 そう言って苦笑した咲耶に、不満そうな顔のアキホは、ため息を吐く隼人に小さく舌を出す。

 

「さて、次。ガントレットね。これはアークセイバートンファー『ニュクス』。トンファーって言ってるけど、あくまでもニュアンスね。腕の基部を中心に柄がクルクル回るのが特徴。この柄は取り外しできるわ。

だけど、出力は低くなっちゃうから、あくまでも手持ちのアークセイバーのカバーに使うのが、こちらが想定している使い方よ」

 

「で、最後が手持ち式なんだ。あれ、これって、どうやってつけるの?」

 

「ああ。アキちゃん、アクセサリベルトは持ってる?」

 

「ううん、持ってない」

 

「じゃああげるわ。これを腰につけて。そう。オートフィットしてくれるから。よし、装着できたわね。じゃあ、このアクセサリベルトにバンシー用の腰部ユニットをつけましょうか」

 

 そう言って、ベルトの両腰に、青いラインが入ったアークセイバーを装着したアキホは、腰に手を回して抜刀のイメージを作る。

 

「最後にブロッサムを、背中側につけましょうか。はい、これでアークセイバーはフル装備。どう? 動きにくくないかしら?」

 

「んー、まあ、許容範囲だね。これに拳銃付けても大丈夫」

 

「良いわね。じゃあ、ちょっとセイバーを二本抜いて見て」

 

「ブレード出せないんでしょ? 良いの?」

 

「大丈夫。柄の事を少し話したいだけだから」

 

 そう言って歩み寄った咲耶は、アキホが腰から二本引き抜いていたセイバーの柄を受け取って柄尻同士を連結させた。

 

 一見すればバトンの様になったそれの中央を掴んだアキホは、棒術の如く手で勢いをつけ、そこから体中で器用に回し始める。

 

「良いね良いねこれ! カッコいいし、楽しい!」

 

 連結された柄を高速で振り回すアキホは、手から浅く宙に投げたそれを脚で蹴り止め、ワンバウンドからつま先でトラップする。

 

 器用な一連の流れに拍手を送った咲耶達は、アキホが照れているのに苦笑する。

 

「使い心地はどう?」

 

「んー、軽くて良いね。刀とか長剣使ってみたけど、やっぱり重量あって、動き回りながらじゃ使いにくかったんだよね」

 

「まあ、普通動き回りながら戦うって事を誰もしないからね。なるほど、そう言う機動戦闘にはもってこいなのね」

 

 そう言ってメモを取る咲耶に答えながら、腕のセイバーをクルクルと回すアキホは、脚のセイバーを持ち上げて右手に取った。

 

 再びバトンの様に体中に這わせながら回したアキホは、投擲した柄を天井に激突させ、急速に落ちてきたそれをキャッチした。

 

 そして、柄を分割しながら装着すると、すぐさま隼人の鉄拳が飛んできた。

 

「いったぁ! 何すんのさ!」

 

「こっちのセリフだ馬鹿! 天井に傷でも入ったらどうする!?」

 

「ちぇー、気分良かったのに」

 

 そう言って口を尖らせるアキホに、ため息を落とした隼人は、天井を見上げると軽い衝突痕が見えたのにもう一度ため息を落とした。

 

「クソッ、面倒な位置に……。業者を呼ぶか。まあ、良い。咲耶、これでお前からのプレゼント全部か」

 

「ええ、そうよ。じゃあ次はあなた達の番ね」

 

「ああ。ナツキ、ハナ、持って来てくれ」

 

 そう言って、プレゼントを持ってきてもらった隼人は、まず小さなケースを二人の前に差し出した。

 

 それを受け取り、ケースを開けたアキホと香美は、そこに収められていたPx4を手に取った。

 

「俺達の制式拳銃だ。ホルスターもおまけしておく」

 

「ありがとうございます」

 

「香美は、キンバーが欲しかったらしいが、それはご家族に頼んでくれ。俺達から渡せるのはその一丁と、もう二つだけだ」

 

 そう言って中くらいのケースと少し長めのケースを目の前に出された香美は、その隣で布に包まれた細長い物を受け取っているアキホを横目に見る。

 

「まず、アキホから。お前が模擬戦で使っていた両刃刀を実戦投入の報酬として開発部からもらった。アークセイバーをもらったが、状況に応じて、使い分けてくれ。

次に香美だが、突撃騎銃(アサルトカービン)短機関銃(サブマシンガン)を提供する。中古品だが、こちらで整備、調整してある」

 

 そう隼人に言われ、ケースを開けた香美は、それぞれに収まっていた物の内、アサルトカービンの方を手に取った。

 

「『H&K・HK416C』口径5.56㎜コンパクトカービン。お前が模擬戦で使っていた物をそのままプレゼントにさせてもらった。一緒につけている光学照準器は『トリジコン・ACOG』4倍率サイト。

射撃支援を主としたセットアップとして、サイト上面にバックアップレッドドットを装着。アンダーバレルはバーティカルタイプ、サイドレールは右側にタクティカルライトを装備している」

 

「こんなにいっぱいアクセサリーを……良いんですか?」

 

「全部あまり物とか中古品だ。まあ、『ACOG』はリーヤの私物だし、グリップとタクティカルライトは学校の掘り出し物だしな」

 

 そう言って整備担当だったリーヤの方を見た隼人は、香美が持っている416Cの詳細を彼に聞いた。

 

「内部機構は無調整だけど、一応軽く分解整備はしておいたよ。『ACOG』については、まあ僕からのプレゼント。まあ、予備は4つほどあるし」

 

「そんな、ありがとうございます! こんな高価な物を」

 

「あはは。良いよ、気にしなくて。これからに期待してるよ」

 

 深々と頭を下げる香美に、苦笑したリーヤは、騒然としている一部に首を傾げた。

 

「皆どうしたの?」

 

「あ、いや……。その、な、ACOGって高いのか?」

 

「うーん、まあね。大体M4カービンの二倍くらいだから、1300ドル、1ドル100円として……13万円くらいかな」

 

「じゅっ、13万!? 給料と同じくらいじゃねえか! よくそんなもんあげられるな!?」

 

「まあ、無駄遣いしないからお金あるしねぇ……」

 

 そう言って半目になるリーヤに、うっと詰まった武は隣で苦笑しているシュウに慰められる。

 

「さて、次の装備だが、これも模擬戦で使ってもらった銃だ。『H&K・MP7A1』4.6㎜サブマシンガン。H&K続きだな。さて、こいつはCQB、主に建物や車両移動での任務の際に使ってもらおうと思っている。

PSCであるうちは警備任務が多い。携行負担を下げる目的でも、416Cよりこちらを使用する機会が多いだろうな。リーヤ、後は頼む」

 

 そう言って隼人は、後を任せる。

 

「はいはい。じゃ、説明するね。内部機構は416Cと同じくノーマル、無調整だよ。MP7A1の特徴であるフォールディンググリップはそのままで、アッパーレールにオープンタイプのドットサイトを装備。

CQBでの使用を前提に軽くして、横幅もかさばらない様にしてあるよ。護衛対象について使う事が前提だから、サプレッサーの使用は考慮してない」

 

 そう言って、私物であるらしいアタッチメントタイプのサプレッサーを見せたリーヤは、ショートとロング両方のマガジンも見せた。

 

「MP7には二つマガジンがあって、ショートとロング。ショートは20発、ロングは40発装填する。取り廻しに何が出るから、警護の時はショートを使った方が良いね。ロングは真っ向からの撃ち合いに使用する。

おすすめはロング3にショート5かな。ショートが切れたらロングって感じで。リロード回数は増えちゃうけど」

 

「取り回しとのトレードオフですしリロードについては仕方ないですよ。所で、このMP7って民間仕様(シヴィリアンモデル)じゃないんですね」

 

「学校からの払い下げの改良品だからだよ。まあ、新日本じゃ許可証あれば法執行機関用の銃は持てるし、武力行使が許可されている学生ならなおさら許可が下りやすい。

一般生徒とかでも普通にフルオート付き持ってるしね」

 

 そう言って、MP7をしまわせたリーヤは、続いてPx4を確認させた。

 

「Px4については、ノーマルだし機能について話しておくよ。この拳銃はバレル交換で9㎜パラベラム、9㎜ルガー、.40S&W、.45ACPの4種類の弾丸に対応する事が出来るんだ」

 

「んー、じゃあ、いただいたものは9㎜パラベラムタイプですか?」

 

「うん。9㎜パラベラムなら女の子でも撃ちやすいし、弾丸がちっちゃいから携行弾数も多くなるからね」

 

「でも、口径が大きい方が良いのでは? ストッピングパワーも上がりますし」

 

「うーん、ストッピングパワーは45口径と9㎜パラじゃそんなに変わらないんだよね。違いがあるとすれば45口径の方が亜音速弾だからサプレッサーとの相性がいい。けど、普通に使うなら弾を多く持てる9㎜の方が有利さ。

人狼族や鬼人族の筋肉に拳銃弾は通じないからね。弾が多ければそれだけ牽制で多くの弾をばら撒けるって一般論があるからさ」

 

 そう言って9㎜パラベラム弾を見せたリーヤは、不思議そうな顔をしている香美とアキホに説明を始める。

 

「拳銃弾は主に筋密度の低い種族に対してストッピングパワーを発揮するんだ。逆に筋密度の高い種族相手だと拳銃弾が弾かれて衝撃力しか生まない。けど、受けて平然としていられる様な衝撃じゃないから、相手は怯む。

その隙に近接攻撃を叩きこむか、逃げるか。拳銃を扱うなら、この二つの内、一つを実行しなければならないんだ」

 

「いわゆる、衝撃で固める、と言うものですか?」

 

「うん、そう。最近はそう言う使い方をする様になってきたのさ。威力不足から不要論が上がっていたけれど、用途を変えた事で評価が覆った。まあ、弾の無駄と言えばそうなんだけど、無くしてしまうと困るのが現状だね。

アキちゃんはよく使う様になるかも。逆に香美ちゃんは、使う状況になると不味いって考えた方が良いね」

 

 そう言って、9㎜パラベラム弾をケースにしまったリーヤは、実戦前提の話に唖然としている二人を隼人に任せた。

 

「さて、これらのプレゼントだが、当然お前らが使う事になる武器だ。早ければ、4月末にな」

 

「え? 嘘!? 実戦出んの!?」

 

「ああ。だが、実戦と言ってもお前ら新一年生は後方支援の警備だ。前に出る俺達とは違う」

 

「ええー、何で?」

 

「当たり前だ。実戦経験もクソもないお前らが前線に出た所で何の役にも立たないだろうが。それに、戦闘でパニック症状を起こされても困る」

 

 そう言って睨んだ隼人に、若干引いたアキホは、とことこと寄ってきたアハトの頭を撫でた。

 

「行きたくないなら、早めに言えよ」

 

 そう言って隼人はアキホ達との話を打ち切り、片づけを始めた。


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