僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第21話『デブリーフィング』

「じゃあ、デブリーフィングを行うぞ。今回は撤退までに二十三分かかった。まずまずだそうだ」

 

「内容に不服が」

 

「後にしろ。それでだ、これで俺達の採用試験は終了。合格をもらったから明日から第四小隊として、治安維持に移る。部隊長は風香、お前だ。お前には交渉を担当してもらう。

副隊長は俺だ。男女で班を分け、女子には基本的に風香のバックアップを担当、男子は俺と共に前線に出る」

 

 手元のタブレットを見ながらそう告げる隆介は、市子を抑えてもらいながら今後について話し始める。

 

「さて、俺らがこの仕事についたのは、生徒会業務が松川達の手に移った事により、イチジョウ達もアイツらに付いて行くだろうからって事だ。

要は第三小隊の抜けた穴を俺らが埋めるって話だ」

 

「仕事無いと暇だし、ちょうど良いよねぇ」

 

「いや、俺ら受験生」

 

「あ、そっか」

 

「あ、そっか、ってお前なぁ……」

 

 タブレットを肩に預け、そう言った隆介に、愛嬌を湛えた笑みで笑った風香は、恥ずかしそうに頬を掻く彼に噴き出す。

 

「隆ちゃん続けてよ~。私、もう砂糖吐きそうだよぉ。オェエエエ」

 

「吐き真似をするんじゃねえ。んで、契約期間は今から三か月、三か月後に更新通知が来る予定だ。それまではPSCイチジョウの社員として、俺達は働く事になる」

 

「ほえ? 契約社員て事?」

 

「そうなるな。まあ、今の時期、3年生がやってる事なんて引継ぎ位だしな。時間も余るからそう言う形式にした」

 

「へぇー。断りも無く?」

 

 腰のサーベル型の術式武装を立て、半目になるケルビに詰まった隆介は、慌ててフォローに入る風香に心配になった。

 

「んまー、大体分かったけどさぁ。相談してよ、私だって暇じゃないんだよ? 漫研経由で新刊出したりするんだしぃ」

 

「同人活動は趣味の領域だろうが」

 

「ニーズがあれば仕事だよッッ!」

 

 カッ、と目を見開くケルビに額を抑えた隆介は、その隣で頷く風香に目を丸くした。

「そうだよ、需要があるんだから供給しなきゃ」

 

「お前は、何を、言ってるんだ……?」

 

「じゅ、需要、あるから、供給」

 

 顔を真っ赤にしながら言う風香に、意味を理解して若干引いた隆介は、ニマニマ笑うケルビを睨んだ。

 

「お前、また何か仕込んだか!?」

 

「へぇええええ!? 仕込んでませんけどぉおおおお!?」

 

「いちいち挑発してくるんじゃねぇ! そうか、疑って悪かったな」

 

「過去作全3冊と、新作のプロットとストーリーライン見せたけどね!」

 

「テメエ……」

 

 手にしたタブレットで殴ろうとした隆介は、白目を剥いて挑発しているケルビを庇う風香に、振り上げた腕を止めた。

 

 ふるふる小動物の様に震える風香に、ゆっくり腕を下ろした隆介は、ほっとしている彼女に若干萌えていた。

 

「さて、デブリーフィングは良いか、隆介」

 

「え、ああ。悪いな、変なやり取り見せてしまって」

 

「いや、構わん。それよりもケルビ、あれほど汚染するなと言っただろう」

 

 そう言ってケルビをつまみ上げた一郎に、胸を撫で下ろした隆介は、するっと入り込んだ市子に半目になった。

 

 ハートを浮かばせながら抱き着く市子は、隆介と目が合うなり睨み目で舌を出していた。

 

「相っ変わらず可愛くねえなお前」

 

「あなたの評価はどうでも良いです。私には風香からの評価さえあれば良いので」

 

「本ッ当、男殺しだなお前……」

 

 ため息と共に青い表情を浮かべた隆介に、ムッとした市子は、その隣で悲しそうな顔をしているレオンに首を傾げた。

 

「レオンはどうしたんです?」

 

「……いや、何でもないよ」

 

「何でも無い感じでは無いのですが?」

 

「いや、まあ、俺の問題だし、君に言ってもね……」

 

「はあ……。そうですか、なら深掘りは止めましょう」

 

 そう言って風香へのスキンシップを続行する市子に、若干泣きそうなレオンは隆介に慰められていた。

 

「何、この光景……」

 

「知らん」

 

 ペアの片方同士がくっ付いている光景に、若干引き気味のケルビと一郎は、もう何も言わない事にして早々にその場を去っていった。


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