僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第14話『基礎戦術:香美-2』

 一方の香美達は、俊達を相手に分断戦術を取り、香美とナツキが武達の斜めに陣取る様に移動していた。

 

「ナツキさん、ポイントD-8に弱威力雷撃術式の罠を仕掛けておいてください」

 

『了解』

 

「リーヤさん、ハナさん、シュウさんの状態は?」

 

 そう言って腕のウェラブルコンピューターを起動した香美は、手持ちのセンサーユニットを投擲し、コンピューターと同期させる。

 

『五割削れてる。けどそれ以上にスミッソン君の消耗が激しい』

 

「了解です。俊さん達の位置は見えますか?」

 

『大体はね。だけど射線が開いてないからちょっと攻撃できないかな』

 

「分かりました。では、そこから移動をお願いします」

 

『了解。アイムーブ』

 

 そう言って一時的に通信が切れたリーヤの移動方向を確認した香美は、ナツキを先導する様に移動。

 

 座標D-8付近のバリケードに隠れている武達の頭上に照準する。

 

 ナツキに発砲するとの旨を合図し、三点バーストを三回繰り返し射撃した香美は、案の定驚いている彼らの方へスモークを投擲。

 

 そこからフルオートで、装甲を過信している俊を罠へ誘導する。

 

「ぬおおおおお!?」

 

 術式が作動した床から紫電が走り、膝をがくがくと痙攣させた俊をセンサーからのシルエット情報で確認した香美は、移動前に指示していた通り、ナツキと共にリーヤ達の元へ全速力で移動する。

 

 足音を聞きつけて移動しているらしい楓の声を聴いていたナツキが、牽制目的で炎の幻覚術式を仕掛け、時間を稼ぐ。

 

「無駄ァ!」

 

 炎を切り払いながら突っ切り、珍しく拳銃を手にしている楓が、闇雲な発砲を繰り返す。

 

「この発砲音9㎜じゃない!?」

 

『あ、もしかして楓ちゃんの個人持ちの拳銃かな。FNハースタルの『Five-Seven(5-7)』だよ』

 

「珍しいものを……」

 

 後ろ手に撃ち返しながら呟いた香美は、ナツキと真反対に合流地点の近くで横っ飛びに逃げた。

 

 瞬間、射線を通ったリーヤとハナが同時に発砲し、7.62㎜を放つ。

 

「おわっちょ!」

 

 咄嗟に避けた楓は、その後ろで盾を構えていた武が二発とも弾いたのに安堵し、窓からナツキを射撃した。

 

 その間にバリケードへ制圧射撃を仕掛けた武は、とっくの昔に逃げていた彼らの存在を手ごたえから直感で感じ取り、射撃を止めて楓を後ろに移動を開始した。

 

「こちらリーヤ、現在移動中。狙撃は武君に弾かれた」

 

 そう言いながら分隊支援狙撃仕様のショートバレルに換装した『DTA・SRS』を手動装填しているリーヤは、その隣で残弾確認をしているカナを先に行かせる。

 

 そして、殿をしているシュウのカバーに入る。

 

 壁越しに移動してくる武を見つけたリーヤは、一撃放って牽制するとシュウに後ろを任せて前進する。

 

「ナツキちゃん、香美ちゃん、合流できそう?」

 

『こちらナツキ、問題無いよ』

 

『こちら香美、こちらも大丈夫です』

 

 相互確認しつつ集合したリーヤ達は、香美を中心に状況を整理し始める。

 

「俊さんはおそらく再起動中です。あれだけ電撃を食らえばシステムがシャットダウンしてる筈なんで」

 

「あ、それで電撃を」

 

「はい。それと武さんと楓さんですが、多分こちらの位置は分かっていない筈です。野生の勘で来る事は加えてないので確定事項では無いですけど」

 

 そう言って、ごもごと俯きながら喋る香美に苦笑したナツキ達は、最初の失敗を気にしてるんだな、と初々しさに笑いつつ時折後方を警戒する。

 

「それで、この後はどうするんだ?」

 

「あ、はい……。えっと、端的に言えばぶち抜き十字砲火作戦です」

 

「ほう。具体的には?」

 

「貫通力のある7.62㎜での壁越し狙撃で仕留める作戦で、5.56㎜を持っている私とシュウさんが基本的には囮もしくは牽制。.338ラプアマグナムを持っているリーヤさん、次点で7.62㎜を持っているハナさんが射撃手です。

ナツキさんは、貫通力強化の術式による援護、もしくは狙える時に術式で直接狙ってください。ハナさん、展開していたドローン含め、全機上げてください。各機自動索敵で外周部を警邏、裏取りを阻止してください」

 

「もしも俊が動いた時は俺が相手する。それで良いか?」

 

 そう問いかけたシュウに首肯した香美は、彼と共に移動を開始し、リーヤ達もまた、状況整理の為、一度固まっていた。

 

「前に出る」

 

 そう言ってシールドを構えつつ移動したシュウの後ろにつきながら、後方を警戒している香美は、定期的なスキャニングで周囲を索敵し、武達を探す。

 

 と、曲がり角に差し掛かった所でシュウが一旦停止、香美に待機を命じて角から銃を構えて顔を出す。

 

交戦(コンタクト)!」

 

 運悪く武達と遭遇してしまい、シュウからのハンドサインで移動を指示された香美が走りながらリーヤ達と連絡を取る。

 

 その間に武のシールド目がけて1マガジン分叩き込んだシュウは、衝撃で彼らを固めつつ撤退の動きを取る。

 

リロード(再装填)!」

 

 走りながらリロードしたシュウは、前でもたついている香美を体で庇いつつ側面のボルトリリーサーを叩いて初弾を送り込む。

 

 どうしてももたつく香美に仕方ないと振り返って発砲したシュウは、応戦で放たれた7.62mmを肩部のシールドコンテナで弾きつつ、徐々に後退していく。

 

 一応いつでもナイフが使えるように備えつつ、香美が角を曲がるまで持ちこたえたシュウは、彼女の移動完了と同時に走り出す。

 

「あっ、畜生! 待て!」

 

 そう言って追いかけてくる武だったが、装備の重さから発砲は出来ないらしく、後ろの楓も盾での跳弾を恐れて迂闊に撃てなかった。

 

 その間にアシストの効果もあって速く走れているシュウは、足裏に仕込まれたシリコンカバーの恩恵もあって足音を抑えたまま、香美とは反対側の角に逃げ込めた。

 

「牽制射!」

 

 角に隠れた状態からバースト連射で武達を抑え込むシュウと香美は、壁から走った光線状の射線が武が持っているシールドのガンポートに伸びているのを確認。

 

 火花が視界を遮り、その瞬間に狙いすまされた二連撃に吹き飛ばされ、倒れた武は、反撃に使おうと上げたMk48の銃身が破壊されたのに驚愕した。

 

「どっから狙い撃ってる!?」

 

 流石に壁から狙撃してくるとは思っていなかったらしい武が体勢を立て直す。

 

 それと同時に撤収した香美は、リロードしつつ生半可な攻撃では通じない武達に次の手を考えていた。

 

『うわ、撃ってきた!』

 

 断続的な発砲音と共にオープン回線に飛び込むハナ達の余裕も含んだ悲鳴に苦笑しながら、曲がり角でクリアリングをした香美は、武達の後ろを取る様に移動する。

 

 そして、腰からコンカッショングレネードを引き抜いて下手に投擲する。

 

「げっ! グレグレグレ! にょわぁああああ!?」

 

 爆圧で吹っ飛んだ楓がバリケードに突っ込み、それで半身後方に振り返った武が片手構えで軽機関銃を発砲する。

 

 咄嗟に飛び退いた香美は、頭を低くして弾幕をやり過ごすとそのまま走って逃げる。

 

『香美ちゃんそのままダッシュ』

 

 そう言ったリーヤの声に従って走る香美は、後ろを追う銃撃が止んだのに疑問を抱きつつ、そのままリーヤ達がいる地点へ向かう。

 

 瞬間、目の前のバリケードが爆裂し、白煙を纏ってラテラV2が姿を現す。

 

「あ……」

 

『しまッ! 香美ちゃん!』

 

 呆然としていた香美の眼前、ノーマークだったらしいハナの焦りを聞いていた彼女は、本気の俊が槍を振り上げたのに目を閉じる。

 

「させるか!」

 

 間一髪で防いだシュウが、シールドで槍を防ぐとそのままアームを軋ませながら押し込んでいく。

 

 そして、不意打ち気味に右ストレートを打ち込んだ彼は、そのままコンテナから対軽軍神用のショットガンを引き出して発砲する。

 

「ッ!?」

 

 大粒の散弾が装甲を穿ち、堪らず仰け反った俊は、その間に逃げた香美と入れ替わりに相手になるらしいシュウにニヤリと笑う。

 

 その間にコッキングしたショートバレルショットガンを構えるシュウは、シグナル上で撃破判定が出た武を確認し、その近くを逃げる香美の距離を測る。

 

「よそ見してんじゃねえ!」

 

 伸縮機能がある外殻をショートスピアにした龍翔を振り下ろす俊に、シールドで直撃を防いだシュウは至近でショットガンを構える。

 

 が、引き金を引くより早く身を引いた俊がバックラーから障壁を展開して散弾を弾き飛ばした。

 

「くっ、さすがにキツイな!」

 

 大きく仰け反った俊は、槍の突きで牽制しつつ、バリケードに身を隠す。

 

 その後を追って角まで移動したシュウは、P90を連射してきた俊に舌打ちしてバリケードに隠れ、腰のバインダーからショットリムを引き出してリロードしていた。

 

(チッ、何て強度だ。徹甲散弾二発に耐えきるとは……。やはり障壁に物理ダメージは無駄か。榴散弾で突破できれば……)

 

 装填を終え、コッキングしたシュウは角から躍り出ると障壁を展開しながら接近する俊へ発砲する。

 

 散弾が障壁に直撃した瞬間、障壁をぶち抜いたメタルジェットが装甲を焼き焦がし、凄まじい衝撃が俊の腕を襲う。

 

「くっそ、榴弾か!?」

 

 焼け焦げた装甲を見てそう叫んだ俊は、榴散弾二連射で障壁を過負荷で破壊したシュウにリロードしていたP90を向ける。

 

 だが、第二世代型コンデンサ装甲を重ねた軽軍神用シールドには5.7㎜など目くらましにしかならなかった。

 

 そのまま徹甲散弾を連射して突っ込んできたシュウに、バリケードを切り裂きながら槍を振るった俊は、ショットガンを投げ捨てた彼に驚愕し、その隙にナイフで左脇の装甲を切り裂かれた。

 

 切断個所を庇いつつ引いた俊は、右腕のショットガンを発砲。

 

 大質量を叩きつけられたシールドが若干軋み、表面に浅い弾痕が残る中、腰のホルスターから対物ハンドガンを引き抜いていたシュウは、タイミングを見計らって反撃する。

 

「っぶね!」

 

 間一髪で回避していた俊は、槍で拳銃を狙うがシールドに弾かれてバリケードに突き刺さる。

 

 その間に真横に拳銃を構えて盾に添えた俊は、拳銃のセンサーに任せて射撃すると左のナイフを逆手に持ち替え、太ももの装甲を狙って切り裂く。

 

「っのぉ!」

 

 槍の柄で殴られたシュウは、太ももを穿って俊の体勢を崩させると彼のフェイスアーマーを縦に切り裂く。

 

 火花と共に片側の視界を失った俊は、腕を引きながら照準しているシュウの頭部目がけて槍を叩きつける。

 

 そして、闇雲な刺突攻撃で左肩のアクチュエーターを破壊され、機能不全に陥る。

 

 装甲に食い込んだナイフから手を放したシュウは、予備の折り畳みナイフを引き出すと片手で槍を振るってきた俊の一撃を盾で受け止める。

 

「くそっ!」

 

 ついに盾が破壊され、内蔵していたサブマシンガンが予備マガジンごと露呈する。

 

 堪らずパージしたシュウは、右のシールドを回転の勢いで付け替えるとガンスピンで対物拳銃のマガジンを排除してリロード、そのままホルスターに納めた。

 

「何する気だ!」

 

 そう言いながら槍を振り下ろした俊は、シールドのグリップを掴んで防いできたシュウに舌打ちしてショットガンの銃口を向ける。

 

 そのままシールドにスラッグを叩きつけた俊は、後退するシュウが踵でサブマシンガンを跳ね上げたのに驚愕し、その間にショットガンの銃口をナイフで潰された。

 

 そして、空中でグリップを掴んだシュウは対軽軍神用12.7mmサブマシンガン(EsSMG-7)を至近で発砲。

 

 対物弾に薙ぎ払われた俊の体が吹き飛んで、床に叩きつけられる。

 

「ち、くしょぉ……」

 

 起き上がろうとする俊に銃口を向けたシュウは、SMG-7の残弾全てをフルオートで撃ち尽くして撃破するとホールドオープンのショックを受けた。

 

 空のマガジンを落とし、グリップに新しい弾倉を収めたシュウは、庇った際に投げていたHK416Cを拾い上げて動作確認をし、問題ないと確認してサブマシンガンをコンテナに納めて移動する。

 

「こちらシュウ、俊を排除。移動を開始する」

 

『こちら香美、排除了解。移動については中断してその場にて待機してください。指示を出します』

 

「了解した。なるべく早く頼む」

 

 そう言って角に隠れたシュウは、神経接続のインターフェイスで残りメンバーを確認すると周囲を索敵しながら香美の指示を待つ。

 

(向こうの残りはあと一人。こっちはフルメンバーだが、香美が倒されるとルール上指揮系統が瓦解する。狙うなら恐らくは……)

 

 そう思い、角から顔を出したシュウは目の前に迫っていた楓に一閃浴びせられ、センサーを破壊されて視界を失う。

 

「くそっ、こちらだと!?」

 

 そう毒づいて頭部装甲を投げ捨てたシュウは、オートで作動したポイントアーマーを確認しながら銃口を上げて発砲する。

 

 だが、それよりも早く逃げていた楓の姿を見失い、リロードしたシュウは、左手をホルスターに伸ばしつつ、左膝でボルトリリースを叩いて装填する。

 

「こちらシュウ、楓がこちらに来た。救援求む」

 

 そう言って退きの動きを見せたシュウは、壁を破って現れた楓の連射に怯みつつも銃口を上げる。

 

 が、発砲直前に銃身を切断され、発砲できなくなったHK416Cを投棄したシュウは、腰からフォールディングナイフを引き抜いて刀と打ち合わせる。

 

「無駄無駄!」

 

 威綱の高周波ブレードがナイフの刃を侵食し、慌てて投棄したシュウは左足を蹴り上げて牽制するとレッグホルスターからXDを引き抜いて発砲。

 

 ナイフを切り裂いた楓は、拳銃の発砲に合わせて刃を寝かせ、弾丸を弾き逸らすとそのまま距離を詰めて斬りかかる。

 

「くっ」

 

 ガントレットで刃を受けたシュウは、そのまま腕をくの字に曲げて拳銃を構え、楓の腕を狙って射撃する。

 

 ファインセラミックス・ミスリウム合金複合製のガントレットを引き切って刃に拳銃弾を当てた楓は、至近で水飛沫を放って目くらましをすると水霧に向けて熱エネルギーを放った。

 

「爆ぜろ叢雨!」

 

 炎を纏わせた刃からの熱エネルギーで、急激に膨張した水飛沫の衝撃に弾き飛ばされたシュウは、迫る楓に射撃を浴びせるとスラスターで跳躍し、二つほどバリケードを超えて逃走した。

 

 それを見た楓は、心底つまらなさそうに回した刀を収めると口笛を吹きながら『FNハースタル・Five-seveN』を引き抜き、周囲の音を探る。

 

(気分乗ってたから仕留められそうだったのになぁ。まあ、向こうの方が機動力上だししょうがないか。さてさてどうしよっか。こっちのチームはあと私だけだし、まあ一泡吹かせてみよっか)

 

 そう思ってマガジンを交換した楓は、身に感じた殺意に足を止め、より正確に捉えた殺意がある壁に、銃口を向けて三連射する。

 

「ひゃー」

 

 応戦射撃が壁を貫き、棒読み気味に叫びながら逃げた楓は、目の前に現れたハナに発砲しつつ接近。

 

 壁蹴りジャンプからハナの背後に回った楓は腰から短刀を引き抜いて、脊椎の辺りを突き刺し、ポイントアーマーを奪い取った。

 

「ほい一人」

 

 そう言って右隣の角からブラインドファイアで攻撃してきたシュウに、側転からのバレルロールジャンプで逃げた楓は、体を露呈した彼に短刀を投擲すると、そのままバリケードの迷路に逃げる。

 

 不意打ちだった短刀の直撃で、左肩のアクチュエータ回路と対応フレームを破壊されたシュウは、片腕でライフルを構えると楓が逃げた曲がり角へ移動する。

 

 曲がり角を大回りに移動した彼は、人影のないそれに違和感を感じ、一歩を踏み出した。

 

 その瞬間。

 

「な!?」

 

 驚愕するシュウの手から香美から受け取っていたHK416Cが跳ね飛ばされ、ハンドガードごと貫かれた銃身に、刀身が映り込む。

 

 そして、上下に動かして切り裂かれた銃身にグリップから手を放していたシュウは、腰に手を回してXD拳銃を引き抜く。

 

(ナイフはさっきの戦闘で使い切ってしまった。それに、魔力残量2割で格闘戦が演じられるとは思えない)

 

 そう判断しながら銃口を壁の向こうに巡らせたシュウの眼前で、バリケードがX字状に切り裂かれた。

 

 瞬間、発砲したシュウは、捻じ曲がった様な共振音と共に突っ込んできた楓の一閃を浴び、倒れ込みながら発砲。

 

 そのまま体を引きずる様にスラスターを焚いて無理矢理距離を取ると、火花を散らしながらコンクリートに穴をあけた楓の追撃を、蹴りで往なす。

 

「あっは!」

 

 狂気的な笑みを浮かべ、引き戻しの動きを取りながら片手で村雨丸を引き抜いた楓は、交差の袈裟で胸部装甲を切り裂いて二刀で左袈裟を振り下ろし、蹴り二連の連続攻撃を浴びせる。

 

 よろけて後ずさりしたシュウは、スラスターも併用して体勢を整えながら射撃するが、一発耐えた楓の一閃を浴びて大きく体勢を崩す。

 

「ッ!」

 

 カウンタースラスターを噴射しようとしたシュウは、意識の外にあった警告のUIと共に燃料切れを示すEMPTYマークに舌打ちし、そのまま倒れ込む。

 

 そして、一突きされて止めを刺されたシュウの体が転送され、潤滑油にまみれた刀を血振りした楓は、壁を突き抜けてきたライフル弾を弾くとそのままその場を離れる。

 

(あと残ってるのはリーやんとナツ吉と香美にゃんかぁ。接近すれば何とかなるけど、接近するまでがなぁ)

 

 そう思いつつ、トラップを感知してウォールランで駆け抜けた楓は、残り少ないアーマーポイントを確認して拳銃のマガジンを交換する。

 

「予備は最大装填があと一個。ちょっと減ってるのが一個かぁ。使い切っちゃおうかな」

 

 そう呟きながら角を曲がった楓は、つんざいてきた殺気に伏せて銃撃をやり過ごすと、闇雲に射撃して牽制。

 

 その間に角に隠れた楓は、腰のフラッシュバングレネードを引き抜いて投擲、爆発と同時に攻め込み、失明している香美に向けて威綱を引き抜く。

 

「もらったぁああああ!」

 

 単純明快に香美を狙いに着た楓はその瞬間、挟み込む様に放たれたライフル弾と氷結術式に進路を遮られる。

 

 単なる牽制と取って刀を振り上げた楓はその瞬間、虚ろなオレンジ色の目に捉えられ、ワンテンポ遅れてキンバーカスタムの銃口が楓の体を捉える。

 

「くっ、ロックされた?!」

 

 そう言って突っ込もうとした楓に自動照準が追従し、機械的な三連射が防弾制服の肩を正確に穿つ。

 

 ミシミシと音を上げる肩に苦痛を浮かべた楓は、決定打を欠いているはずの彼女に迫ると、刀を振り上げる。

 

「これで!」

 

「終わりです」

 

 そう呟いた香美に、顔を上げた楓は空中旋回しているドローンに気付くと同時に、銃撃を三方向から同時に受けた。

 

 流石に防ぎきれず、そのままなぶり殺しにされた楓は退場し、その場に残った香美とリーヤ、ナツキの三人は、その場にへたり込んでお互いの健闘を称えた。


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