僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第4話『模擬戦』

 それから十五分後、二人そろって体操服に着替えていた隼人とレンカは、元気に動く洗濯機を前に並んでベンチに座っていた。

 

「ったく、お前のせいで余計な出費だ馬鹿野郎。洗剤を運動部が貸してくれたからよかったものを」

 

「ご、ごめん……なさい」

 

 ふて腐れる隼人へ申し訳なさそうに縮こまったレンカは、内股になってまだ慣れない新しいパンツの感触にもじもじと体を捩らせ、彼の傍に寄る。

 

 そして、おもむろに隼人の左腕を自分の胸で挟む様に抱き締める。

 

「な、何だ。どうした」

 

 ドギマギする隼人の様子など見ていないレンカは、懇願するような表情で彼を見上げる。

 

「で、でも!」

 

 何だろう、と思っていた隼人は、とろけた様な表情をする彼女に嫌な予感を感じた。

 

「おしっこ、出してる時……気持ち、よかったの」

 

「……そうか、良かったな」

 

「う、うん。でね、出てる時、何だかね、私が隼人にマーキングしてるみたいで。で、でもいけないって分かってたの! でも、でも……」

 

 そう言ってはぁはぁと息を荒げはじめるレンカの表情に、スイッチが入った、と思った隼人は、発情し涎を垂らす彼女から目を逸らした。

 

 どうしようか、とワンテンポ置いた隼人は、逸らせる話題を頭の中で模索しつつ牽制の一言を放つ。

 

「あーもう……分かった。分かったからそれ以上言わないでくれ」

 

「だから、その。隼人のお尻におしっこをかけてしまったいけない私にお仕置きを……」

 

「話を聞け!」

 

 そう言って声を荒げた隼人が視線を戻すと、レンカがベンチの上で四つん這いになってズボンを脱ぎ、パンツのみをガードにした柔らかな印象の尻を自らに突き出していた。

 

 それを見た隼人は至近距離補正で数割大きく見える尾っぽの生えた尻から目を逸らし、彼女に意図を問うた。

 

「何のつもりだ」

 

「お尻ぺんぺんを」

 

「はァ?!」

 

「お、お尻ぺんぺんを、くださいっ! 強く、激しいのを……!」

 

「お前それお尻ぺんぺんじゃねえよ、スパンキングじゃねえか!」

 

 そう叫んだ隼人はドMの本領発揮と言わんばかりにお願いしてくるレンカから逃げる様に距離を置いた。

 

「お、お前いきなりなんだよ。何でよりによってスパンキングなんだよ!」

 

「だ、だって……一番手軽で気持ちいいのお尻ぺんぺんだもん。ねぇ、お願い。早く、早くぅ」

 

 そう言ってシュールに尻から隼人の方へ下がるレンカ。

 

 そして締まった尻から細くて締まった体のラインがよく見える背中、そして押し潰された胸までのぞける非常に背徳的な彼女の体を前に隼人は生唾を下す。

 

 目の前を振り子の如く揺れている尻に手を伸ばした彼が、少し薄い肉を歪ませる様に手を置いた瞬間、浩太郎達が来た。

 

「え」

 

「あ……」

 

 お互い硬直した彼らは数秒の間を置いて、各々リアクションを取る。

 

 レンカの尻から手を離した隼人は、羨ましがる武とその隣で額を押さえて呆れ顔のリーヤに誤魔化し笑いを向ける。

 

 女子は女子で盛り上がっており、その雰囲気で熱が冷めたらしいレンカが、ズボンの位置を上げていつもの調子に戻り始め、浩太郎は一人で楽しそうに笑っていた。

 

「とんでもねえもん見せたけど、お前ら何しに来た」

 

「君の姿が突然見えなくなったから同じ目的の人と一緒に呼びに来たんだよ。と言うか、ランドリーで何してたの?」

 

「油汚れが付いたんでな。洗ってる」

 

 そう浩太郎に言った隼人は、洗濯終了で停止したランドリーから洗濯物を洗濯かごに移す。

 

「で? 俺を探してる奴ってのは?」

 

 物干しに移動した彼の言葉を待ってましたとばかりに、半狐の少女が腰に下げたサーベルを鳴らしながら姿を現す。

 

「それは、わたくしの事ですわ!」

 

「……誰だ?」

 

「な、っ。覚えておりませんの!? この、新関東高校風紀委員会が誇る魔法剣士、キリエ・山笠を!」

 

「はははっ冗談だ、覚えてるぞ。何せトータル100戦以上決闘をやったんだ、嫌でも覚える」

 

「そ、それは良かったですわ!」

 

 そう言って表情を華やがせるキリエを他所に、洗濯物を干した隼人は共用の籠を元の場所に戻すと彼女の目の前に立つ。

 

「それで、何の用だよキリエ」

 

「あなた……いえ、あなた方にお願いをと。後方支援委員会から観覧による資金確保の為にケリュケイオンによる公開模擬戦のイベントを開催したいと申請してきましてその通達を。

対戦カードはアルファチーム内の男子対女子。場所の方はすでに抑えてあるのでそちらの方に移動をお願いいたしますわ」

 

 かれこれ三回目の公開模擬戦にげんなりした表情の隼人は、すでに押さえてあるらしい模擬戦場の場所を端末で表示する。

 

 場所はタイマン用模擬戦場、通称アリーナと呼ばれる闘技場だ。

 

 場所を確認した隼人は、そう言えば、と思い出して端末を取り出すと件の人物である立花へ連絡を取る。

 

 だが、数コール待っても電話には出ない。

 

 仕方なく通話を切った隼人は武達とキリエに先に行く様に伝えて、自分はレンカを連れてロッカーに向かう。

 

「んで、アンタ。術式武装ぶっ壊したんでしょ? どうすんのよ」

 

「いらねぇよ。ありゃ元々人体より固い物を殴る為に使ってたんだ。対人戦なら……こいつで十分だ」

 

「何それ。グローブ?」

 

 そう問いかけたレンカの視線の先で隼人が手に取ったのは、マットブラックのオープンフィンガーグローブで、両手へ装着した彼は手首の辺りに位置するマジックテープで固定しながら答える。

 

「ああ、金属繊維とケブラーのハイブリッドグローブだ。開いている指先に喰らうと指がすっぱり削げ落ちるが、拳の接触面と掌と手の甲は分厚く作ってあって弾き逸らし(パーリング)に利用できる」

 

「オープンフィンガーなのは何で?」

 

「投げや柔術も使うからだ。指を全部覆ってると感覚が狂うからな、先端だけでも開いてると良い」

 

「ふうん、そう言うもんなの」

 

「お前は身体能力を生かした蹴り主体で、投げ技や柔術には縁が無いからな。まあ、らしいっちゃらしいが」

 

 そう言ってロッカーのドアを閉じた隼人は鍵をかけると、自分を見上げているレンカの頭をポンポンと軽く叩いて傍を通り過ぎる。

 

 頭を軽く叩かれたレンカが頭を押さえて嬉しそうに笑い、先に行く隼人の後を追って走る。

 

 早歩きをする隼人の隣に追いついた彼女は、やりにくそうな彼の表情に気付いた。

 

「どうしたの?」

 

「え、あ……いや。何でも無い」

 

「何でもなさそうには見えないんだけど。何か心配事でもあるの?」

 

 心配そうに覗き込むレンカから恥ずかしそうに目を逸らした隼人は、胸のラインが浮いて見える体操服に収まって跳ねる胸を思い出していた。

 

「レンカ、ジャージの上は着ないのか?」

 

「あ、家に忘れちゃった」

 

「寒いだろ。これ、掛けとけ」

 

 そう言って自分のジャージをレンカにかけ、チャックを閉じた隼人は、赤い布のてるてる坊主みたいな風体に苦笑し、その様子を見て頬を膨らませた彼女の半目に気圧されてチャックを開いた。

 

 当初の目的であった胸を隠す事に失敗した隼人は変態に餌を与えるだけに終わった事実に落胆し、肩を落とした。

 

 それから十数分後、アリーナに到着した隼人は、すり鉢状になったそこを見回すと外周を囲む様に縁取る備え付けの観客席を見回す。

 

 観客席は久々の好カードとあってか、勉強もそこそこに集まっている生徒で賑わっていた。

 

 割り当てられたブルーコーナーのレフェリー席についた隼人は、先に来て待っていたらしい浩太郎とカナに目を向けると周囲を見て苦笑を浮かべた。

 

「いつになく人が多いな」

 

「まあ、久しぶりだしね。僕らも、ここじゃそこそこ名が売れてるから見に来る人は多いと思うよ」

 

「人に見せる様なもんじゃないんだけどな。俺らの戦闘技術は」

 

 そう言って半目になった隼人に苦笑する浩太郎は、カナたちと共にリングに上がり、男子の元を離れた女子がお互いにひそひそ声で話を始める。

 

 武器も構えずにそうしている二人の様子を見ていた隼人と浩太郎は、それぞれの得物を確認していた。

 

 その時だった。

 

「ッ?!」

 

 分断する様に放たれた術式光弾と大剣を間一髪で回避した二人は、試合開始かどうかを装着していたコンバットバイザーのコンソールで再確認。

 

 ロールから起き上がって武器を構えた彼らは、試合開始ではない事を認識すると攻撃してきた二人を睨む。

 

「何のつもりだ、お前ら。試合前の攻撃はルール違反だぞ」

 

ダー(うん)。知ってる。だけど、二人に提案があるから意識を向ける為に威嚇した」

 

「相も変わらずやる事が荒いな、お前らは。それで?」

 

 そう言ってカナに指さした隼人はもじもじしている彼女の返事を待つ。

 

ダー(そう)。提案として、負けた方は勝った方の言う事を三つまで聞く、と言うルールを適応してもらいたい」

 

「ああ、勝者のご褒美って奴か。俺はまあ良いが、お前らこそ良いのかそれで、マジで。それで良いならやっても良いけど」

 

ハラショー(素晴らしい)。それでいい。好きにできるならこちらの物」

 

 そう言ってクツクツと悪そうに笑ったカナとレンカに、隣に来た浩太郎共々苦笑した隼人を見て、今にも始まりそうな試合の雰囲気に観客が再び盛り上がりを見せた。

 

 歓声に圧され、カナがへなりと座り込む。

 

 それを見て敵ながら心配になってきた隼人達が駆け寄ろうとするが、彼女はそれをけん制する様に大剣を叩き付ける。

 

 元々人見知りの気があるカナは、顔を真っ赤にしながら立ち上がると両手の大剣を構える。

 

 そんな両者を見ながら歩み寄ってきたキリエが、腕に風紀委員会の文字が入った腕章をつけ、双方を見る。

 

「さて、そろそろ始めますわよ? ルールは術式装甲によるヒットポイント制、勝敗はポイント失効及び試合続行不可な疑似損傷の発生及び一定時間以上のリングアウト。双方理解しましたか?」

 

「大丈夫だ。始めよう」

 

「では、始めッ!」」

 

 そう言って手を叩いたキリエに一瞬目を向けていた隼人は、言い様飛び出したレンカの蹴りを受け止める。

 

 鋼鉄製のブーツの直撃は骨に届くほどだが、隼人は歯を食いしばり気合で耐えきる。

 

 好戦的な笑みを浮かべるレンカの直撃を受けた彼の背後から、浩太郎が跳躍してその手に引き抜いた赤と黒で塗装されたトマホーク、術式武装『R.I.P.トマホーク』を打ち下ろす。

 

「ッ?!」

 

 薙刀で受けたレンカはそのまま体重を乗せてくる浩太郎に舌打ちしつつ、倒れる様にして体重を受け流す。

 

 流されるまま、頭から落ちた浩太郎は、ローリングでダメージを抑え、腰から麻痺毒を仕込んだクナイを引き抜いてカナへ投擲する。

 

 迂闊な攻撃を避け、大剣型術式武装『R.I.P.バスタード』を盾にしたカナは、腰のホルスターから『Mk23』45口径大型自動拳銃を引き抜いた浩太郎目がけて左の大剣を投じ、鍔のロケットブースターで加速したそれが彼に猪突する。

 

「くッ!」

 

 直前でスライディングし、大剣の下を潜った浩太郎は剣の腹に数発を発砲、隼人へ流れた大剣が直撃しない様に処置しつつカナの懐へ潜り込む。

 

 アッパー軌道で拳銃を構えた浩太郎は瞬間、暗色の強い紫色の光を放った大剣に舌打ち。

 

 ショートレンジ限定の重力偏向で逸れた弾丸があらぬ方向へ飛んでいく中、牽制射撃で足止めしながら、戻ってくる大剣を跳躍回避した浩太郎は、グリップからマガジンを落とす。

 

「流石に上手くはいかないかぁ」

 

 そうぼやきながら銃を胸まで引き寄せたC.A.R.Systemと言う構えでリロードした浩太郎は、大剣を翼の様に構えたカナに苦笑しつつ、体で銃を固定した状態から腰溜めで連射。

 

 模擬戦用のアーマーで銃弾を防ぎ、そのまま正面から挑みかかってきた彼女の横薙ぎを、マガジンを落としながらのロールで回避。

 

 素早くリロードしながら振り返った浩太郎は構えを解き、片手持ちで闇雲に連射する。

 

 トマホークを逆手持ちに変え、両手餅での精密射撃に切り替えた浩太郎は、術式を起動した大剣の腹で防ぐカナが接近してくるのに合わせ、トマホークを持ち変える。

 

 そして、振り下ろされる大剣の腹に質量倍加を加えたトマホークの質量を叩き付ける。

 

 だが、その手ごたえは恐ろしいほど重くトマホーク如きの質量で弾けるものではなかった。

 

(こいつは、質量制御……!)

 

 大剣の本来の能力である質量制御能力が、本来の質量を大幅に上回る重みを剣に与えていた。

 

 その事実に舌打ちした浩太郎は、同様の能力を持つトマホークを支点にサイドステップすると、カナに向けて銃口を向ける。

 

(この距離なら!)

 

 大剣を振り下ろし、隙を見せているカナへ照準した浩太郎は、引き金を引くより前に、真横から迫る気配に拳銃を引いて後ろに下がった。

 

 直後、彼の目の前をレンカの跳び蹴りが薙ぎ払う。

 

 飛び蹴りの余波で揺さぶられた浩太郎は舌打ちしながら、着地したレンカの方へC.A.R.Systemの構え方で腰溜めに拳銃を照準する。

 

 照星に彼女の姿を重ねた浩太郎はトリガーに指を掛ける。

 

 発砲寸前、照準されたレンカと入れ替わる様に、大剣を広げたカナが格闘戦で消耗している隼人の方へ移動する。

 

 それに気づいた浩太郎は慌てて彼女へ照準を変えるが、それを阻む様にレンカが薙刀を振り下ろす。

 

(クソっ、この組み合わせじゃアドバンテージが薄れる!)

 

 レンカ対浩太郎のスピードカードとカナ対隼人のパワーカード。

 

 同じ分野を得意としながらも、カナとレンカの方が能力的に優れており、加えて彼女たちは魔法による変則的な攻撃も使え、非常に有利。

 

 一方で魔法を使えない人間の隼人や浩太郎にとっては、自分自身の優位性(アドバンテージ)を生かせず、苦戦する事は必至だ。

 

「よそ見してる暇があるの!?」

 

 言い様、薙刀の刺突が浩太郎を襲い、巧みにそれを回避した彼は、トマホークで刃先を押さえると至近距離で発砲する。

 

 だが、発砲時の硝煙臭と部品の擦れる音で察知していたらしいレンカは、射線から素早く逃れ、柄から放し無手にした左の小手から、光の槍を至近で爆裂(バースト)させる。

 

 光波収束術式『不可侵の槍(セイクリッド・スピア)』。

 

 レンカが得意とする光属性攻撃術式で、魔力の持つエネルギーをそのままビームの槍に変化させ、至近で炸裂させる術式だ。

 

 正常な魔力を打ち込める関係上、魔物などに効果を発揮する術式だが、当たらずとも人間にとって爆裂時の光は十分目晦ましになる。

 

(左の術式は、囮……ッ!?)

 

 至近で光の壁に襲われた浩太郎は、弛緩効果で緩んだトマホークに、しまった、と目を見開きつつ、跳ね上がった薙刀をまだ白んでいる視界に捉えて回避する。

 

 強い光を浴びた事で、脳がショック状態になっているらしく、バックステップからの姿勢制御にもたついた浩太郎は、レンカの薙刀を両手で受け止めた。

 

 一方、一番相性が悪いカナとぶち当たる事になった隼人は、中距離のロケットソードと、至近での振り下ろしに苦戦しており、一撃入れる所か、接近する事すらままならなかった。

 

「クソッ!」

 

 悪態を吐きつつ飛び退いた隼人は、自分がいた場所に振り下ろされた大剣が、軽い動きでカナに振り上げられたのに舌打ちし、如何にか隙が見えないか考えていた。

 

(歩幅三つの間合いは完全に大剣の間合い(レンジ)。おまけにそれ以上離れればロケットソード。インレンジ(こっちの距離)に潜り込もうにも大剣の術式が厄介だ……)

 

 内心で考えつつ、カナの出方を窺っていた隼人は、それを隙と見た彼女の跳躍に身構える。

 

 が、一瞬で間合いの外と断じてその場を飛び退き、質量倍加で威力が上がっている大剣のインパクトを回避した。

 

「逃げてばかり。それでは勝てない」

 

「ご忠告ありがとよ」

 

「忠告じゃない。私が面白くないから言ってる」

 

 そう言って不満そうなカナに引きつった笑みを浮かべる隼人は、戦い慣れない中距離を得意とする相手である事に加えて直立では打撃しにくい低い身長、そして跳躍を交えてくる為、迎撃できないと言う状況に内心焦っていた。

 

 故に注意力が散漫になり、目前に迫っていたロケットソードに対応し切れなかった。

 

 慌てて身を捩った隼人だったが左肩に剣が引っかかり、きりもみ回転しながら跳ね跳ぶ。

 

ダズヴィダーニャ(さようなら)

 

「は、まだ……終わってねえっての……」

 

 冷酷にそう告げたカナは、脱臼を避けた左肩を押さえつつ立ち上がった隼人に目を見開いて、背中に収めかけていた大剣を構え直した。

 

 そして、その隙を逃さないと接近してきた隼人に合わせ、大剣を振り薙ぐ。

 

 横薙ぎ軌道のそれを空中ロールで回避した隼人は、唯一無事な右手を掌底に構えてカナの胸部に叩き付ける。

 

 対するカナは、柔肌の芯にある硬い筋肉の鎧で防ぎながらも、拳ではなく掌底を使った隼人の判断に感心していた。

 

(人狼の筋肉は鍛えずとも鋼の様に硬い。故に人間の拳で殴れば拳の骨にダメージが入り、最悪砕ける。私はそこそこ鍛えてるから幾ら隼人のとは言え、拳が当たっていれば骨にひびが入ってるはず。だから、固い掌底で打撃した)

 

 とは言え、と彼女はインパクトを吸収してもなお胸に掌底を当てている隼人に疑問を

浮かべていた。

 

(何で私の胸に……。もしかして、本当は貧乳好き……?)

 

 そう考えた瞬間、猛烈なインパクトを至近に感じた彼女の体が数メートル吹き飛んだ。

 

 遅れて破裂音が響き渡り、喀血しながら大剣で制動したカナは、掌底から水蒸気を上げる隼人を睨みつける。

 

「油断したな、カナ……。俺の攻撃手段は密着してもあるんだよ」

 

「……寸勁。そう……インパクトを直接打ち込む為に、私に接近を」

 

「そう言う事だ。至近での攻撃なら筋密度を無視してダメージを与えられる」

 

「だけど、一撃の代償は大きい。私との彼我距離は離れた。もう一撃を打つには距離を詰める必要がある」

 

「そうだな」

 

 軽い口調で返答に余裕を含ませた隼人は内心で舌打ちする。

 

 そして、周囲にその特徴的な狼の耳を巡らせて不意打ちを警戒しているカナを見据えた彼は、一度浩太郎の方を見る。

 

 動きの素早いレンカと攻防を繰り返している浩太郎は、トマホークより長い薙刀のリーチに苦戦しつつ、拳銃を発砲して彼女をけん制していた。

 

(ああは言ってみたが、安全に接近する手段が無いのは事実だ。俺には遠距離での牽制手段が無いからな)

 

 そう思いつつ、カナを中心に弧を描く様に歩いた隼人は、それを目で追いながら耳を動かすカナの右手が大きく動いたのを見て隼人は走り出す。

 

ロケットソード(R.I.P.バスタード)!)

 

 そう判断した直後、ロケット推進で飛翔した大剣をスライディングで回避した隼人は、立ち上がりの地点で振り薙がれた左の剣を右のハンドスプリングで回避。

 

 そのまま跳躍して、回転蹴りを彼女の右頬に打ち込もうとした。

 

 その瞬間だった。

 

 回し蹴りの体勢に入った隼人は、足の軌道にいるカナが冷たい殺意に満ちたサファイアの目で自分を見ているのに気付き、背筋を凍らせた。

 

「切札は、まだある」

 

 その言葉と同時、紫電に彩られ青白く輝くカナのサイドテールヘアに驚いた隼人は、同時、彼女の総身から放たれた電撃に吹き飛ばされた。

 

「ぐっ、こいつが隠し玉か!?」

 

ダー(そう)。人狼族が持つ切札。人狼に親和性の高い雷属性の術式(グローム・フォークス)を鎧として纏う切札、それがこの、雷鎧術式『雷の鎧(グローム・ドスペーヒ)』」

 

(何て出力だ……近寄れば感電、傍らを掠れば痺れとショック状態。どちらにせよ喰らう事を避けねぇと)

 

 ロールから立て直し、片膝を突いた隼人がそう思案したその間にも、カナから発せられる雷が四方八方に散る。

 

 その有効範囲外から観察し、舌打ちした隼人は、雷を纏って猪突する大剣に気付き、慌てて回避した。

 

 大剣が通った地点に雷が迸り、回避の際に軽く感電した隼人の右足が、一本の棒の様に硬直し軽く痙攣する。

 

 強烈な電気に晒され、動かなくなった足を押さえた彼は、直後、目前に迫るカナが薙ぎ払った大剣に吹き飛ばされた。

 

『隼人・イチジョウ、装甲全損(アーマーロスト)死亡(キル)判定』

 

 アナウンスがそう告げる中、突き出されたレンカの薙刀を弾いた浩太郎は、掌底を突き出そうとした彼女を突き離す様に蹴飛ばした。

 

 そして、接近しようとしてくるカナに、背中に回した拳銃で牽制射撃するが、彼女が発する雷が、電磁障壁(ローレンツバリア)となってあらぬ方向へ飛んでいく。

 

 接近してきたカナの振り下ろしをトマホークで弾こうとした浩太郎は、接触と同時に体を巡った電撃でトマホークを握っていた右手を損傷する。

 

 通電で離れない右腕を離す為に拳銃をトマホークに当てて刃を逸らした彼は、直撃の勢

いで吹き飛んだ得物に目もくれず、だらりと垂れ下がった腕を苦々しげに見下ろしていた。

 

(腕が、痺れて……力が)

 

 術式による麻痺状態は体内に残留している魔力が常時電気に代わる為、通常より痺れがずっと継続する。

 

 そして、その電気が神経伝達を阻害し腕の筋肉は動かしようにも動けない状態にあった。

 

 左手一つで構えた拳銃を連射した浩太郎は、弾が切れた拳銃のマガジンを落として交換しようとした。

 

 だが、グリップが空ぶった事で、腰に下げていたホルスター兼用のマガジンケースの中身が無い事に気付いた。

 

「貰ったわよ!」

 

 空中からの上空からの声に顔を上げた浩太郎は、掌底を構えたレンカへ拳銃を投擲する。

 

 投じられた拳銃は彼女への牽制となったが、それで勢いが緩んだかと言われれば、その様子を見ていた全員が首を横に振っただろう。

 

 のけぞって回避していたレンカは、細く短い足を振り上げる。

 

 ブーツの脛に備え付けられたチタニウム製ブレードが、空気を切り裂き、発生した真空がかまいたちとなって浩太郎に襲い掛かる。

 

「ッ!」

 

 蹴り上げの動きで発生した風の刃が、咄嗟に体を引いた浩太郎の額を浅く裂き、遅れた破裂音の後にカウンターでククリナイフが振り上げられる。

 

 くの字に折れ曲がった刃で足を引っかける様なすくい上げの軌道で振り上げた浩太郎は、刃が触れる直前に撃発したブラストランチャーに目を見開いた。

 

 カウンター気味に放たれた爆圧がナイフを吹き飛ばし、折れ曲がり、地面を跳ねたそれを目で追った浩太郎は、発射の反動で飛んでいくレンカと入れ替わって飛んできた大剣に引きつった笑いを浮かべていた。

 

『岬浩太郎、装甲全損(アーマーロスト)死亡(キル)判定』

 

 場外へ飛んでいった浩太郎へ冷静なアナウンスがそう告げると、同時、会場が湧き上がり、その声にびっくりしたレンカとカナが毛を弥立たせる。

 

 その声を聴きながら満身創痍の体を起こした浩太郎は、右足を引きずって歩いてきた隼人に微笑み、彼が差し出した左手を取って立ち上がった。

 

「すまんな、浩太郎。先にやられちまって」

 

「あはは、仕方ないさ。カナちゃんは強いから」

 

「いや、まあ、もう少しだけでも持ち堪えられれば勝機はあったはずだ」

 

 申し訳なさそうな隼人の言葉に苦笑した浩太郎は縮こまったまま、歩いてくるレンカとカナに気付き、そちらへ視線を移した。

 

「お疲れさま、二人共。えらく全力だったね」

 

「えへへ~。だって、ご褒美があるもん」

 

「ああ……そうだったね。忘れてたよ」

 

 そう言って浩太郎は、上機嫌のレンカを前にため息をついて俯く隼人を見て笑った。

 

「何よ、嬉しくないの?」

 

 そんな彼を見て不機嫌になるレンカ。

 

 ふくれっ面の彼女を見て、隼人は吐き捨てる様に話し出す。

 

「ああ、そうだ。よく分かったな。お前が俺に要求するご褒美は大抵ロクな物じゃないからな」

 

「隼人だけ上半身裸で添い寝とか、一緒にお風呂入るとかの何が悪いのよ!」

 

「お前女だろ!? 慎みとか何も無いのかよ!?」

 

 子どもの様に拗ねてムッとするレンカに、若干怒っている隼人はそう言った。

 

 そして、過去にやらされた“ご褒美”の数々を思い出して青ざめた。

 

「お前のせいで……。色々、勘違いされたんだぞ……。もうお前と、肉体関係があるとか何とか……」

 

「それの何が悪いのよ」

 

「お前……殴るぞ」

 

 低い声でそう言い、殺気を立ち昇らせた隼人に、ビクッと、肩をすくませたレンカは魔力切れで疲れているらしいカナの背後に逃げ隠れる。

 

 隠れつつも追ってこないと知るや可愛く舌を出して反抗する彼女を見た隼人は、舌打ちしつつ、ベンチに戻ると置かれていたスポーツドリンクを手に取って中身を飲んだ。

 

「あ……」

 

 その様子を見て可愛らしげな声を出したレンカに隼人は嫌な顔をする。

 

 まさか、と彼は飲み口から口を離す。

 

「レンカ。これ、お前のか……?」

 

「う、うん。そう」

 

「ああ、すまん。飲み干すから待ってくれ」

 

「ええええええええ!? そこは鈍感なふりして返すのがルールでしょ!?」

 

 ペットボトルを掴んでいる隼人の腕を引き離そうとするレンカは、見る見るうちに中身が無くなっていくそれを見て声を漏らす。

 

 そして、名残惜しげなレンカの視線を浴びつつ中身を飲み干した隼人は、涙目の彼女に少しだけ罪悪感を感じたが、直後に裏切られた。

 

「んぐぅっ?!」

 

 驚いた隼人の声色に水分補給をしている浩太郎とカナが揃って振り向く。

 

 その先では、隼人の口からスポーツドリンクを吸い取っているレンカが、だらしなく緩んだ口元から吸い取ったものを垂れ流していた。

 

「わぁー……」

 

 若干棒読み気味なカナの声を聴きながら内心で泣いている隼人は、タコの吸盤並みに吸い付いてくるレンカを引き剥すとそのまま地面に四つん這いになった。

 

「お前は……。どうしてそう、変態なんだよ……」

 

「アンタが好きだからよ」

 

「ベクトルをまともにしろ!」

 

 がばっ、と顔を起こした隼人の叫びをレンカは耳を塞いで聞こえないふりをする。

 

 そんな漫才の様な彼らのやり取りを羨ましそうに見ていたカナは、ニコニコと笑っている浩太郎に気付き、耳を折って恥ずかしそうにそっぽを向く。

 

「な、何?」

 

 震える声でそう問いかけたカナは、スポーツドリンクを口に含んだ彼が唇を指さしたのに意図を悟って顔を真っ赤にした。

 

「そ、そんなの……。恥ずかしい」

 

 恥ずかしそうな表情を楽しむ様に近付いてきた浩太郎に、目を閉じたままペットボトルを盾にする彼女は、少し視線を動かして目を開け、目前にいた浩太郎に毛を弥立たせて驚いた。

 

 と、そこまで追い詰めた所で飲み込んだ浩太郎は呆けるカナにふふ、と笑った。

 

「今日も、カナちゃんは可愛いね。ハハハ、拗ねないでよ」

 

「拗ねてない」

 

「じゃあ何でそんなに不機嫌そうなのかな?」

 

「疲れたから」

 

「ふぅん、そうなんだ。へぇ~」

 

 そう言って笑う浩太郎にぷくぅ、と頬を膨らませたカナは、丸く膨らんだそれをつんつんと突く彼に妙な満足感を感じて成されるがままになった。

 

 時折嬉しそうに頭の耳をひくひくと動かすカナにご満悦の浩太郎は、満面の笑みで笑って彼女の頭に手を乗せて撫でていると背中にレンカを負った隼人に肩を叩かれた。

 

「浩太郎、呼び出しだ」

 

 そう言って、浩太郎諸共振り返った隼人の視線の先、『M700』スナイパーライフルを担いだ有翼族の少年『ジェスキン・セナール』と猫の様な八重歯が特徴の人間の少女、『宮武小春』が並んで立っていた。

 

「ジェスにハルか。お前ら、また生徒会連合の使いっ走りか?」

 

 そう言ってニヤッと笑った隼人にジェスは頷く。

 

 一方の小春は、馬鹿にして来る様な隼人の態度が気に入らず、腰の『コルト・パイソン』.357口径リボルバー式マグナム拳銃を抜こうとする。

 

 それを見て取ったジェスは、ため息交じりに拳銃ごと小春を抑えつける。

 

「ああ、そうだ。お前らを呼びにな。お前らのパトロンも一緒だ」

 

「立花が……?」

 

「わざわざお嬢様学校の授業を抜けてきたんだそうだ。荷物を渡しにな」

 

 そう言ったジェスが暴れ喚く小春の額を小突いて黙らせようとすると激昂した彼女が逆側から『Px4』9mm自動拳銃を引き抜いて構えようとする。

 

 その視界に拳銃を認識した隼人は背中にレンカがいるのも構わず反射的に接近する。

 

 猛然と迫った彼は、小春の手首に一撃入れて拳銃を弾く。

 

 隼人は鮮やかな一連の流れに驚く小春の右腕を取り、軸足を払って地面に引きずり倒す。

 

 そして、殺気に満ちた目で小春を見下ろした隼人は、怯える彼女の脇腹目がけて、拳を構える。

 

「待って、隼人!」

 

 咄嗟に彼の首を絞めたレンカは、直前でハッとなった彼に安堵し、器用に彼の前に背中から飛び降りる。

 

 そして、涙目の小春を助け起こした。

 

「あ……」

 

 虚ろだった目に光が戻り、レンカに抱き付いて泣き出した小春から離れた隼人は、ドクン、と高鳴った心臓とそれに合わせて捻じ曲がった視界に思わず膝を突き、頭を押さえる。

 

 その場の五人が驚く中、合流しに来たらしい武達四人も、彼の様子に気づいたらしく、慌てて駆け寄ってくる。

 

「何!? どうしたの?!」

 

 救護手当の心得があるリーヤとナツキが、隼人に駆け寄ろうとしたが、直前で彼に止められる。

 

「待て……。大丈夫、だ。いつもの、発作だ」

 

 震える手で腰に手を伸ばした隼人は、無痛注射を取り出し、首筋に当てて中身を注射する。

 

 ドクン、と心臓が強く脈打って薬が体中を巡ると、隼人は深く息を吐いた。

 

「すまん、取り乱した。小春には悪い事をしてしまったな」

 

「いや、こちらの不手際だ隼人。うちの馬鹿が不用意に拳銃を抜かなければ。おい、謝れ小春」

 

 そう言ってぱん、と頭を叩いたジェスに涙目になりながら従った小春は、怯えつつ謝ろうとする。

 

「いや、良いって。怪我させそうになったんだぞ? お相子じゃないか」

 

「それでは、こちらの気が……」

 

 諌めようとする隼人に食い下がらないジェス。二人の応酬は徐々にヒートアップしていく。

 

「はいはい、ストップストップ。それ以上は喧嘩になるから止めなよ」

 

「そうだよ二人共。変な事で喧嘩したくはないでしょ?」

 

 二人の間に割り込んだ浩太郎とリーヤが、口喧嘩寸前だった隼人とジェスを引き離し、一旦落ち着けようと話を元の話題に戻す。

 

「それで、呼び出された場所って?」

 

「ああ、そうだった。全員揃っている事だし、案内しよう。付いて来てくれ」

 

 そう言って小春共々先導したジェスに先頭を歩く隼人が話しかける。

 

「今、生徒会は国家統一のごたごたに巻き込まれて忙しいだろ? 各国家の学園機関も統一化を図るようだしな」

 

「いや、そうでもない。ただ……月末は、忙しくなるかもな」

 

 何気なく問うた隼人は言いにくそうに答えたジェスの態度に引っかかっていた。

 

「へ? 月末なんかあるのかよ?」

 

 覚えが無いらしく、ジェスの言葉に疑問を浮かべた小春を見た隼人は、隣を歩いている浩太郎と顔を見合わせて首を傾げた。

 

「……そんな事よりお前達の活躍、聞いているぞ。強盗事件を解決したそうじゃないか」

 

 そう言って後ろに視線をやってくるジェスに恥ずかしそうに苦笑した隼人と浩太郎は、後ろで反応した武の声に少しだけ振り返る。

 

「当たり前だろ! 俺達の手にかかればちょちょいってね!」

 

「お前、リーヤの護衛だったろ」

 

「うっせえな! 気分だよ気分!」

 

 盛りに盛った自慢話をしていた武は、半目の隼人に水を差されてムッとなる。

 

 そんな彼にはお構いなしに、隼人は話を続ける。

 

「気分で手柄を盛るんじゃねぇよアホ」

 

「だったら前線に出せよ! 軽機関銃(LMG)で火力支援してやるし盾で壁にもなってやるぜ?!」

 

「そうしたいのはやまやまだが、お前は周りを見ない癖がある。少しでも直さないと軽機関銃を扱う時に誤射するぞ」

 

「うぐっ、よくご存じで……」

 

「部隊長を何だと思ってる。これぐらい把握して当然だ」

 

 そう言ってツン、と視線を逸らした隼人は、面白そうに見てくるジェスに気まずそうに視線を逸らす。

 

「何だよ、ジェス」

 

「部隊長は大変だなって思ってな」

 

「同情ならいらねえよ、副生徒会書記殿」

 

 そう言って落ち込んだ隼人は、窓の向こう、グラウンドで模擬戦をしている一年生達に気付いた。

 

「今思えば、滅茶苦茶な世界だよな。俺たちの住んでる世界って」

 

「国家戦力の保有が制限されているが故に、そのしわ寄せを学生に払わせる。学生なら武装制限はないから戦力として運用できる。特にこの新日本国では軍隊がいないからその傾向が顕著だ。

ほぼ学生に頼っていると言ってもいい。現に国家の象徴たる国王も、学生と聞いている」

 

「新日本には軍隊が無いから常駐戦力が無い。その代わりに俺達PMSCと学生がそれを穴埋めする様になっている、か」

 

 心配するジェス達の視線も他所に呟いた隼人の胸がズキリと痛む。

 

(だから、あの時……)

 

 一瞬フラッシュバックした炎に舌打ちし、頭を振った隼人は、立ち止まっているジェス達の方を振り返ると彼らの中に入る。

 

「あんまり思いつめんなよ、隊長。お前の過去はよく知らねえけどさ、思いつめちまったら何も分からなくなっちまうぜ?」

 

「……ああ、分かってる」

 

 そう言って目を伏せた隼人と、歯を見せて笑った武の間で、レンカはただ悲しげそうな隼人の表情に不安を覚えていた。


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