僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第52話『聖槍の目覚め』

 地上では、入り口を固めつつ警戒していた隼人達が案の定寝返っていたエルフ達と交戦していた。

 

 鎧甲冑のエルフを殴り飛ばした隼人は、思わぬ番狂わせ二つの方を振り向き、舌打ちした。

 

「ッくぅ! 鬱陶しいのよっ!」

 

 薙刀を振るい、番狂わせの一つであるダークエルフの暗殺者達を追い払ったレンカは、直感でライフル弾の掃射を回避する。

 

 車のホイール後ろに隠れたレンカは、番狂わせの一つ、恐らく地球軍であろう兵士達の銃撃に舌打ちしていた。

 

「カバー!」

 

 そう叫び、単発(セミオート)に切り替えたHK417を連射した咲耶は、倍以上撃ち返してきた相手に舌打ちして隠れた。

 

 声帯マイクを起動し、武にチャンネルを切り替える。

 

「フィアンマより、エリミネーター。北側森林地帯に向け、制圧射」

 

『エリミネーター了解だぜ!』

 

 指示を出しリロードする咲耶は、直後制圧射撃をかけた武に追従して発砲。

 

 機銃手含めた二人の射殺を確認する。

 

(タンゴ)二名(ツー)死亡(ダウン)

 

 今度は戦闘管制官の香美とナツキに向けてそう報告すると、車を飛び越えてきたダークエルフと目が合う。

 

 咄嗟に構えた咲耶は、発砲より早く迫ったダークエルフの一閃を回避し、しりもちをつきながらM93Rを引き抜く。

 

「ッ!」

 

 フレームのリコイルカウンターに任せて、3点バーストで放つ咲耶は、器用に回避するエルフに舌打ちしていた。

 

 その隙に迫る従士に、ナイフを引き抜こうとした咲耶は、カバーに入ったレンカに助けられた。

 

 警備前に、咲耶から受け取ったオリハルコニウム製のブーツで、エルフの顔面を蹴り、鼻の骨を折ったレンカは、着地の勢いで足を踏み砕く。

 

「鬱陶しいのよ!」

 

 命乞いをさせる間もなく、Px4で止めを刺したレンカは、余裕を失った顔で荒く息を吐く。

 

 戦闘開始から十分が立ち、接近戦主体の面々は素早い相手に対応する為、激しく動き回っていた。

 

「レンカちゃん。そろそろ下がりなさい。消耗しているはずよ」

 

 そう言って周囲を警戒した咲耶は、大人しく下がっていくレンカに、内心不安を募らせていた。

 

(まずいわね、こっちは所詮体が未完成な少年兵。対して向こうは体が出来上がったプロ。技量、経験で迫れても体力では負ける……)

 

 指揮管制用のウィンドウを開いた咲耶は、下がっている面々を確認すると、狙いを定められない様に物陰へ隠れる。

 

 フレーム連動の操作で、ウィンドウを動かす咲耶は、バイザーのセンサーで検知したフレームからの警告で顔を上げる。

 

「お前が指揮官か!」

 

 ナイフを構えたダークエルフに、フルオートに切り替えてHK417を発砲する。

 

 薙ぎ払う様に弾丸を受け、手足を千切らせて死んだエルフに荒く息を吐いた咲耶は、エルフ騎士の首を折った隼人と目が合う。

 

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫、とは言い難いわね。けど、今退く訳にもいかないわ」

 

 隼人の手を借りて姿勢を整えた咲耶は、会話を遮る様に放たれたライフル弾に慌てて伏せ、車の隙間から発砲する。

 

 咲耶の援護を受け、車から飛び出した隼人は、同時に飛び出した和馬と共に、兵士達へ突っ込んでいく。

 

「ソーサラー、援護射撃開始!」

 

「『水行・放射』! 爆氷弾!」

 

 咲耶に同調してライフルの銃口を起点に術式を放射した咲耶は、フレシェットの如く拡散した氷弾を、兵士達に浴びせる。

 

 氷と鉛が突き刺さり、絶叫する一人の兵士は、銃を持った自分達に構わず突っ込んできた少年二人に殺害される。

 

「クリア」

 

 淡々とそう告げた隼人は、血だらけの地面を見下ろすと、返り血を浴びている和馬に視線を向ける。

 

 視線を浴びつつ、得物を血振りした和馬は、鞘に刀を収める。

 

「兵隊はこれで最後か」

 

 そう言って死体を蹴った和馬は、森林から斬りかかってきたエルフに驚愕し、鞘ごと引き抜いて受け止めた。

 

 鍔迫り合いを避け、エルフを蹴り飛ばした和馬は、隼人と共に森林から離れる。

 

「フィアンマ、タンゴ・インファントリは全排除した。残りはダークエルフとエルフだけだ」

 

『フィアンマ了解。こっちに戻ってらっしゃい。開所戦闘で仕留めるから』

 

「了解。戻るぞ、ナイト」

 

『時間的にそろそろランサー達が戻ってくるはずよ。それまでになるべく数を減らして、スムーズに戻れるようにしないと』

 

「ああ、分かってる」

 

 そう言って、背後を振り返った隼人は、追ってきたエルフに太もものナイフを引き抜いて投擲する。

 

 素早く弾いたエルフは、腰のサーベルを振り上げる。

 

「もらった!」

 

 ナイフを引き抜いていた隼人に直撃する直前、横から割り込んだ刃が防いだ。

 

「俺の事、忘れてねえかぁ!?」

 

 そう言って、横薙ぎのスイングで吹き飛ばした和馬は、車に逃げ込んだエルフに、ニヤリと笑う。

 

「どうすんだストライカー」

 

「カウンターだ」

 

「あいよ」

 

 そう言って、下段に構え直した和馬は、ナイフを逆手に持ち直した隼人に、背を向ける。

 

 お互いの背中を守る姿勢で、集中した二人はそれぞれ感じ取った殺気に目を開ける。

 

「はっ!」

 

 隼人はエルフの下級騎士に、和馬はダークエルフにそれぞれ攻撃を放つ。

 

 初手を投げナイフで獲った隼人は、剣を弾き、迫るエルフの一閃をフレームで弾くと、眉間に一撃叩き込んで脳震盪を起こさせる。

 

 ふらり、と仰け反ったエルフは、たたらを踏むと同時に、飛び込んできた右足を脇に受け、内臓破裂を起こす。

 

「ぐはっ」

 

 胃液と共に吐血し、崩れ落ちたエルフは返り血を浴びた隼人に頭を叩き潰され、絶命した。

 

 血を浴び、起動しつつあるダインスレイヴに、呼吸が荒くなってきた隼人は、崩しから頭を切り落とした和馬から離れる。

 

「お、おい、ストライカー!?」

 

「来るな! お前は……他の奴らを排除しろ!」

 

「お、おう……」

 

 戸惑う和馬は、叫ぶ隼人が目を赤く光らせているのを見逃さなかった。

 

 数秒の後にダインスレイヴが起動し、全身から赤黒い光を迸らせた隼人は、すぐに収束したそれを体に納め、荒く息を吐く。

 

「この感覚……スレイか」

 

『言ったでしょ? コントロールさせてあげるって』

 

「そう言う事か。まあいい、行くぞ」

 

 拳と足に光を集中させ、構えた隼人は、上方から飛び降りてきたダークエルフの一閃を回避すると、追撃に対してカウンターを放つ。

 

 光を纏った拳の直撃と同時、爆裂したエルフの体から内臓が四散し、数瞬遅れて、爆発した様に赤黒い光が辺りに放出される。

 

 返り血を浴び、更に出力が向上したダインスレイヴに、激痛を感じた隼人は、挑みかかってきたエルフの上級騎士の一閃を回避する。

 

「もらった!」

 

 遅れて槍を突き出した従士の一閃を、蹴りで弾いた隼人は、フレームで不意を突きに来た上級騎士の一閃を弾くと、がら空きの顔面にストレートを打ち込む。

 

 ぐしゃり、と顔面が潰れ、大量の血液と体液を炸裂させた騎士は、眼球と脳漿をぶち撒いて絶命した。

 

「う、うわぁあああ!」

 

 その光景を見て、慌てて逃げようとした従士は、移動先を予測して狙撃したリーヤに脳天をぶち抜かれた。

 

 スコープで確認し、ミドルバレルのMSRをボルトアクションしたリーヤは、深呼吸すると香美からのデータリンク情報を確認する。

 

「今ので全部かな」

 

 そう言ってMSRを上げたリーヤは、ちょうど戻って来た俊達に笑みを向ける。

 

「お帰り」

 

「おう。って、何かあったのか?」

 

「襲撃だよ。撃退したけど」

 

 そう言ってチャンバークリアの作業を行っていたリーヤは、安堵した様子の俊に笑いながら、ガンケースにライフルを収める。

 

 その間に咲耶と隼人が駆け寄り、回収の確認を行う。

 

「レイダー、パッケージ(ロンゴミアント)は回収できたか?」

 

「ああ、このケースの中に」

 

「よし。じゃあ撤収しよう……と言いたいがインプ以外の車がボロボロだな」

 

「救援要請を出して待つしかないな、これは」

 

「そうだな。香美、アヴァロンキャンプに要請。お迎えを頼んでくれ」

 

 そう言って周囲を見回す隼人は、のどかな風景に散見される黒煙を見た。

 

「どこかしこも戦闘状態、か」

 

 そう呟くシュウの方を振り返り、頷いた隼人はレンカ、ハナ、シグレの三人がしきりに耳を動かしているのに気付く。

 

「どうした」

 

 そう呼びかけた隼人は、一斉に一点を見上げた三人に意図を読み取り、周囲に叫ぶ。

 

「散開しろ!」

 

 直後、隼人がいたあたりに何かが直撃し、爆煙が辺りにぶちまけられた。

 

「何だ!?」

 

 ロールしながら中心から距離を取った隼人は、晴れた煙から姿を現した、見た事のない不揃いな形状のAAS三機に目を見開く。

 

 秘匿用バイザーから光眼を光らせたAASに、我に返った隼人は、ミウ達が庇っている王女を守るべく挑みかかった。

 

「邪魔だ」

 

 蹴り足を突き出した、全身をブレードに包ませたAASの攻撃を回避した隼人は、甘い体重移動を見切って背中を蹴り飛ばす。

 

 その間に挑みかかってきたもう一人の攻撃を回避した彼は、その場から追い散らされ、舌打ちする。

 

「クソがッ!」

 

 そう叫んだ隼人は、カバーをリーヤに任せて一旦距離を取る。

 

 一方、接近しつつある、もう一機、スタンダードな見た目に通信機能強化用のロッドアンテナが目立つ青いAASから、王女を離そうと、シグレが果敢に攻撃していた。

 

 飛び退きと同時にG18Cをバリアに向けて発砲、同時にハナも発砲し、火花で視界を塞いだ二人は、ニーヴェルングでのバリア破壊を狙った。

 

 だが。

 

「出力が、足りない!?」

 

 消費軽減の為に抑えられた出力が仇となり、刃がバリアを貫通できなかった。

 

 故に表面を滑り、僅かに削るだけに留まって、そのまま滑り落ちたシグレは、AASの蹴りを回避すると、G18Cを乱射した。

 

「無駄だ、雌犬!」

 

 拳銃弾はバリアで弾かれ、あらぬ方向へと跳弾するそれが暴れまわる。

 

 バク転で距離を取るシグレは、腰のラックからビームサーベルを引き抜いた青いAASに舌打ちした。

 

「何者ですか、あなた方は!」

 

 庇う様に立つシグレ越しにそう叫ぶシルフィは、彼らにHK416Cを突きつける。

 

「これは失礼。我々はオルフェウス。地球連邦軍の少年義勇隊です。シルフィ王女、あなたをお迎えに上がりました」

 

「私、を……?」

 

「ええ。無理にでも、来ていただきますがね!」

 

 そう言って突進してきたAASに、シルフィを押し倒して回避させたシグレは、カバーに入るハナと共に発砲する。

 

 バリアで弾丸を弾きながらビームサーベルを再び発振させたAASは、シグレとハナを分断する様に振り下ろす。

 

「ッ!」

 

 地面を焼いたそれに、分かれて飛び退いた二人は、それを狙って突っ込んできた別の二機に吹き飛ばされた。

 

「シグ!」

 

「ハナ!」

 

 壁に叩きつけられ、気絶した二人を見た俊とシュウは、冷静さを欠いて駆け寄る。

 

 その間に、シルフィの元へと歩み寄る青いAASは、フルオートに切り替えた彼女の銃撃をバリアに喰らう。

 

 直撃した全弾を弾き、嘲笑を浮かべたAASのパイロットは、サーベルを収める。

 

「さあ、こちらへ」

 

 そう言い、手を伸ばしたパイロットは、バリアに走った衝撃によろめき、振り返る。

 

「姫様は、渡さない!」

 

 シグレが落としていたニーヴェルングを手に拳銃を構えた侍女、メイが果敢にAASへ挑みかかる。

 

 バリアに阻まれ、刃が滑るが、それを埋める様に繰り出す踵落としに、水属性の術式を付与し、叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

 放出の圧と水圧とが加わり、ハンマーの様な衝撃がバリアに入り、過負荷で破壊される。

 

「しまった!」

 

 水を浴び、そう叫んだパイロットだったが、その表情は次の瞬間には笑みに変わっていた。

 

「何て、な」

 

 その一言に目を見開いたメイは、蹴り飛ばされ、追撃のタックルを受けて、シルフィの傍へ吹き飛んだ。

 

「メイ!」

 

 そう叫んだシルフィは、パイロットの傍に着地した三体目のAAS、全身に重火器を配したハリネズミの様な白銀の機体が、拳銃サイズのテーザーガンを向けてくるのに、目を開いた。

 

「こ……の!」

 

 意識混濁で青い機体しか認識できなかったメイは、拳銃を向けた瞬間、テーザーの電気ショックを受け、残されていた気力を失い、気絶した。

 

 倒れた勢いで手放された拳銃が暴発し、スライドが砕け、火薬の勢いに破壊された部品が四散する。

 

「そん……な」

 

 絶望に暮れ、体をちぢ込めたシルフィは、絶叫する。

 

 直後。

 

「クソッたれがぁあああ!」

 

 ライフル弾数発の直撃の後に、やけくそ気味に挑みかかった俊が、穂先を白銀のAASのバリアに叩きつける。

 

 表面を滑るそれに、スラストブーストからの石突の一撃を打ち込み、怯ませた。

 

「邪魔をするな!」

 

 冷静さを欠いていた俊は、青い機体の蹴りを回避しきれず、吹き飛ばされる。

 

「ランサー!」

 

 カバーに入ろうとしたシュウは、目の前に走った火線に足が止めてしまい、立て続けの銃撃をロールで回避する。

 

 セミオートのHK416を射撃し、その場を離れた彼は、カバーに入った武の陰に隠れてリロードすると俊の方を見る。

 

(クソ……ッ)

 

 シールドを嬲る銃撃に、二人がかりで耐えていたシュウと武は、物々しい雰囲気を纏い、起き上がった俊に気付いた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 激情に突き動かされ、立ち上がりながら荒く息を吐いていた俊は、脳裏に響く声を聞いていた。

 

『力が、欲しいか?』

 

 幻聴だ、とそう思いながらも、俊はその声を聞き逃せなかった。

 

『もう一度、問う。力が欲しいか?』

 

(ああ、欲しい)

 

 内心でそう答え、顔を上げた俊は、目を金色に輝かせ、全身から同色の光を放つ。

 

 それに応じる様にコンテナが破壊され、中に納められていた古びた槍が、一人でに浮いて俊の元へと飛んでいく。

 

「な……聖遺物?!」

 

 驚愕する全員を他所に、ひったくる様な動きで目の前に浮いた槍を手に取った俊は、焼ける様な熱さを手に感じた。

 

 それと共に、槍の錆が剥がれていき、その中にあった黄金色の輝きが、周囲の目をくらませる。

 

「うっ……ぐっ」

 

 呻き声を上げながらも、槍を構えた俊は、光を放ち続ける槍の穂先をAAS二機に向ける。

 

「何なんだ、情報になかったぞ!」

 

 そう喚き、後退る青いAASを見据えた俊は、背中のスラスターから、余剰魔力を放出する。

 

 そのタイミングでようやく俊は、手に収まった武器に気付いた。

 

「こいつは……ロンゴミアント?!」

 

(左様、我が名は聖槍ロンゴミアント。その大精霊じゃ)

 

「どうして俺なんかを」

 

(槍使いがお主しかおらんからのう。最近の若いのは皆剣やら何やらに走っておる。嘆かわしいの)

 

「いや、まあ、銃あるし……って、そんなのは良いんだよ。取り敢えず、俺に力を貸してくれんのか?」

 

 そう言った俊は、独り言を言っている光景に呆れた周囲も気にせず、純白のドレスを身にまとった、少女型の精霊と話す。

 

(まあ、そうじゃの。いい加減あんな埃っぽい所で寝るのも嫌じゃし。お主を資格者の儀につかせて外に出るのも乙じゃろうて)

 

「良いや、そう言う事なら……。借りるぜ、ロンゴミアント!」

 

 そう言って駆けだした俊は、割り込んできたブレードのAASに飛び退く。

 

「隊長、早くそいつらを! ここは俺が!」

 

 そう言って俊と打ち合い始めたAASに、隊長格らしい青い機体のパイロットは頷き、シルフィにテーザーを浴びせ、メイごと連れ去っていく。

 

「王女殿下! クソ! 邪魔すんじゃねえ!」

 

 そう言って光を纏った拳を叩き付けた俊は、バリアを砕かれ、吹き飛んだAASを他所に青い機体へ突進する。

 

 掠める様に跳躍したAASは、マントの様に、放出した余剰魔力を翻す俊を見下ろし、空いている手に、サブマシンガンを引き抜いて放った。

 

「効くかよ!」

 

 光を纏う左手からバリアを放出した俊は、右に持っている槍に光を溜め込むと、光線を放出する。

 

 長大なビームサーベルと化したそれを振るい、青い機体を薙ぎ払った俊は、バリアで防がれたそれに舌打ちする。

 

 放出限界に達し、途切れたそれに舌打ちした俊は、カバーに入るブレードの機体の大剣と打ち合い、一瞬圧倒される。

 

「邪魔はさせない!」

 

 スラスターを吹かし、押しにかかるAASに、アーマチュラモードへのリミッター解除を実行した俊は、押し返す。

 

 腕部ブレードを前面に動かし、大剣で抑えた俊に切りつけるが、マントの様に放出されていた光がバリアとなって防ぐ。

 

「退け!」

 

 そう叫び、AASを蹴り飛ばした俊は、白銀の機体共々離脱した青い機体を見上げ、舌打ちした。

 

 俊に続いて見上げ、笑ったブレードのAASは、岩壁に叩きつけられた際に、スラスターを損傷し、身動きが取れなくなっていた。

 

 それを囲む様に、武器を上げた俊達が迫る。

 

「お前ら、地球連邦軍とか言ってたな。何のつもりだ。何が目的で」

 

「言う訳無いだろ、下種な植民地の奴隷風情が!」

 

「何だとこの野郎!」

 

 激高し、掴みかかった俊は、相手のAASが自立しないのを怪しみつつも、フレームの膂力で持ち上げる。

 

「隊長は俺達の理想を実現してくれる。俺が、ここで散ったとしてもなぁ!」

 

 そう叫ぶAASから異音がするのに気付いた俊は、咄嗟に飛び退く全員を他所にAASを岩壁に投げつけ、ロンゴミアントから放出したレーザーで消滅させた。

 

 自爆を狙っていた機体は呆気なく消え、荒く息を吐いていた俊は、フレームからの警告と共に過負荷で倒れた。


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