僕らと世界の終末戦争《ラグナロク》   作:Sence

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第44話『キャメロット占拠拠点壊滅戦・第1』

 それから15分後、襲撃を撃退したキャメロット市街の西門より俊達は出発した。

 

 斥候部隊として先行する、と言う名目で出発した19人は、俊達人間はアーマチュラ着用の元、狙撃ポイント確保の為に村の近くにある丘を目指して歩き続けていた。

 

『今回の作戦について、改めて説明する。今回は村の奪還、と言いたい所だが恐らく村民は全滅しているだろう。だから、その村に陣取ろうとしている連中の殲滅が目的になる。

但し、村民が全滅していると確認できていないから確認できるまでは範囲攻撃は避けろ。ナツキ、リーヤ、ミウの3人はこれから向かってもらう丘で遠距離支援を行ってもらう。

咲耶はそのバックアップとカバーを。他の連中は直接乗り込んで殲滅しろ。それともう一つ。今回は襲撃拠点確保が連中の目的だ。場合によっては地球側の軍人がいるかもしれない。

連中は練度が高い。戦闘時は気をつけろ。以上だ』

 

 そう言って仕事モードのアキナとの通信ウィンドウが閉じられるのを見た俊は、先導する隼人の背中を見ながら戦闘の緊張感に心拍数を上げていた。

 

 深い森の中、がさがさと物音を立てながら一列に歩き、周囲を警戒、それだけでも、いつ襲われるか分からない恐怖で頭が真っ白になる。

 

「全員、そろそろ予定ポイントに着くぞ」

 

 通信機でそう言った隼人に、頷いた俊は僅かに開けている丘に上がり、煙が上がっている村を観察する。

 

「あそこか?」

 

「ああ。あそこだ。よし、シューター達はここで準備を。俺達はこのまま直接村に向かう」

 

「了解」

 

 そう返答して持ち運んできたバッグを下ろした俊は、手早く準備を始めるリーヤにハンドサインで会話するとそのまま隼人達の列へ付いて行った。

 

 それから5分後、もう少しで村に近づくと言う所で隼人が隊列を止めた。

 

「ファントム、周辺を偵察しろ。対人センサーがある可能性がある」

 

「了解」

 

 短く応答し、隼人を足場にして跳躍した浩太郎は木の上に登って周辺をスキャンする。

 

 スキャンでセンサーの存在が無い事を確認した彼は、安全である、とハンドサインを送って隊列を進ませた。

 

レイダー(シュウ)、お前はユニウスを率いて左から。俺達は右から行く」

 

了解(コピー)

 

「全ユニット、行くぞ」

 

 隼人の号令の下、シュウの後を追って姿勢を落とし、ばれない様に進む俊達ユニウスは突然開いたオープン回線に足を止めた。

 

「どうしました、メルディウス少佐」

 

『あの、俊さん』

 

「シルフィ王女……」

 

『今、戦場におられるんですよね?』

 

「はい。そうです」

 

『では、生きて帰ってきてください。隊長さんからお話は聞きました。これは、私の為の戦いになる、と』

 

 音声限定のウィンドウからの声に、淡々と返答した俊は目の前でムッとしているシグレに気付いた。

 

 アーマチュラを着ていなければ、ゴメンな、と目で返事が出来るのに、とそう思っていた矢先、目の前を火線が過ぎていった。

 

「伏せろ!」

 

 通信にそう叫び、引きつった顔のシグレに覆い被さった俊は直後に当たったライフル弾の連射に弾き飛ばされた。

 

 装甲に直撃するライフル弾が火花を咲かせ、ガンガンと揺さぶられる俊は、体の内で怯えているシグレが抱き寄せる。

 

「俊! シグ! 生きてる!?」

 

 HK416A5で応戦射撃しながら駆け寄って来た美月に、頷いた俊は、青ざめた表情で震えるシグレを彼女に引き渡す。

 

 失禁までしている彼女をバリアに隠した美月は、RPKをばら撒いてくるオークにセミオートの三連射を撃ち込む。

 

「シュウ! レイダー! 聞こえる?!」

 

『ああ、聞こえてる』

 

ダンサー(シグレ)保護。ランサー()が復帰する」

 

『様子は?』

 

「ランサーは装甲が削れただけで中身は無事。だけど、ダンサーは……駄目ね、シェルショックで動けそうにないわ」

 

『分かった。お前はそのままダンサーを保護しろ。増援でコマンド(ハナ)を送る』

 

了解(コピー)。男共で暴れてきて。」

 

 無線応答用の声帯マイクでそう言った美月は、周辺を警戒しながら一歩下がった。

 

 そこで瞳孔を見開き、がくがく震えるシグレにそっと触れた。

 

「あああっ!?」

 

 反射的にG18Cを引き抜き、射撃したシグレはバリアで弾かれたそれに呼吸を荒げ、しばらくして美月に撃ったと理解した。

 

「み、ミィ……」

 

「しっかりしなさい、シグ。ここから動くわよ」

 

「う、うん……」

 

 戸惑いがちに頷いたシグレを立たせ、後ろを警戒していた美月は、背後から迸った火線に舌打ちして応戦射撃する。

 

 ゴブリン2体とオーク1体を黙らせた美月は、大声で叫び、蹲っているシグレの方へ振り返る。

 

「シグ! シグ! 立ちなさい! 撃たれるわよ!」

 

 シグレを庇う様にしゃがみ、バリアと肩部装甲で弾丸を弾く美月は蹴散らす様にフルオートを撃ち込む。

 

「俊君、俊君……」

 

 バチバチと着弾の音に紛れさせる様に呟くシグレを背に銃撃戦を繰り広げる美月は、サイドアームのXM92に手をかける。

 

 同時、別方向からの射撃が民家を盾にするオーク達を襲い、壁に弾痕を叩き付けるそれにすかさずリロードに入る。

 

「ミィちゃん!」

 

 叫びながら、単発連射を繰り返すハナは、ボルトリリースまで終えた美月にカバーを任せつつ、シグレの元へ動く。

 

 オークを牽制し、森の奥へと逃げようとした美月は、森林から襲い掛かって来たゴブリンに蹴りを打ち込み、トドメに一射頭へ撃ち込む。

 

「ハナ、周辺警戒! ゴブが襲ってくるかもしれないわよ!」

 

「りょ、了解!」

 

 木を盾に身を隠した美月達は、シュウ達への対処に回されて移動したらしいオーク達に安堵しながら周辺を警戒する。

 

 ようやく、バクバクと高鳴る心臓に気付いた美月は、装填していたPマグを一度外すと残弾を確認し、再装填した。

 

「ミィちゃん、HMDに残弾表示されないの?」

 

「ソーサラーは試験機だから。そこら辺の装備、まだ積んでないのよ」

 

「へぇ……そうなんだ……」

 

 平常心を保とうと話しかけてくるハナに、そう答えて苦笑した美月は近い位置から聞こえる銃声に再び警戒を始めた。


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