ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第42話~思い出話はまた今度~

 

 

「あっ、えと、正確に言うとお願いされたってより、やってみないかって言われたの」

 

 まだ頭の中で整理ができていないのか、どうにも落ち着かない様子のご主人。

 それにしても、上位ハンターになるための緊急クエストねぇ……流石にそれは予想外だ。

 

 とは言え、これは悪いことじゃない。ご主人がどう思っていたのか分からないけど、俺は上位クエストは受けたいと思っていたのだから。それにご主人と白ネコの実力なら、例え上位に行っても大丈夫なはず。

 俺がどの程度活躍できるかは心配だけど、どうせなら難しいクエストへ挑戦したい。

 

「……緊急クエストの内容は?」

 

 そんな白ネコの言葉。

 確かにそれも気になります。ゲームなら上位へ上がるための緊急クエストはオストガロアの撃退だった。けれども、オストガロアは俺たちが撃退してしまったわけですし、オストガロアのクエストになるとは考えにくい。

 

「鋼龍――クシャルダオラの討伐だって聞いてるよ」

 

 ああ、クシャだったのか。

 流石に相手は下位個体だろうし、勝てない相手じゃない。俺としてはテオの方が得意だけど、クシャでも問題なしです。因みに、俺が一番苦手なのはナズチだったりします。

 テオと違って大技もないし、ナズチと違って妙な戦い難さもない。だから、クシャは良い相手だと思う。

 

 ただ――

 

「それで、ご主人はどうするのニャ?」

 

 問題はそこです。

 俺はご主人が上位ハンターになってくれれば嬉しく思うし、ご主人なら大丈夫だと思う。でも、ご主人がそう思っているのかはまた別のお話。

 俺はご主人のオトモなんだ。ご主人が決めた道を一緒に通るだけ。

 

「どうすればいいのかなぁ……そりゃあ、上位ハンターになりたいって思ってもいるけど、やっぱり自信はないんだ」

 

 あのシャガルをソロで倒したくらいなのだし、自信を持って良いと思うんだけど……

 それに、これまでご主人がクリアしてきたクエストだって、そんな簡単なものじゃなかった。上位ハンターになる資格はあるだろうし、ギルドだってそれを認めてくれているはず。

 

「……私はご主人さんについていく」

「ボクもそうだニャ」

 

 そして、俺と白ネコの言葉。

 村クエだってまだやり残したものがあるはず。それを全部クリアしてから上位ハンターを目指しても遅くない。

 

 だから、どうかご主人のやりたいようにやってくださいな。

 例えどんな道を歩もうが、俺はご主人の助けとなれるよう頑張るから。

 

「……うん、ありがと」

 

 いくら我らの団に所属していたと言っても、このご主人に集会所クエストの経験はないはず。そうだというのに、いきなり上位ハンターにならないかと聞かれたんだ。そりゃあ戸惑ってしまうのも仕方無い。

 

 はてさて、ご主人はどんな道を選ぶのやら。

 

「私はね。ネコさんたちと比べたらやっぱり上手くない」

「……うニャ」

 

 空を見上げながら、ぽつりぽつりご主人が言葉を落とした。

 

「ここまで来ることができたのも、ネコさんと白ネコさんのおかげ。私はひとりじゃ絶対に無理だったと思う。そんな私が上位ハンターになんてなったら、ネコさんたちにもっともっと迷惑をかけちゃうと思うんだ」

 

 別にそんなことないと思うんだけど……そもそも、俺がこうやって狩りを続けられているのはこのご主人のおかげだ。ご主人が俺をオトモとして雇ってくれたから、またこの世界を楽しむことができている。

 そこに感謝をすることはあっても、迷惑をかけられているなんて思うことはない。

 

 そんな俺の気持ちは、届いてくれやしないんだろうか。

 それは言葉にしなければ伝わらないことだけど……それも難しいのですよ。素直な気持ちを出すってのは、やっぱり怖いから。

 

 そのことを少しばかり寂しく感じながら、ご主人の顔を見てみたけれど、その表情はよく見えなかった。

 

 そして――

 

 

「そんな私だけど……そんな私ですが、これからもついてきてくれますか?」

 

 

 上げていた顔を俺たちの方へ向け、随分と不安そうな顔をしながら、ご主人はそんな言葉を落とした。

 

 つまり、その言葉の意味は……

 

「うニャ!」

「私も頑張る」

 

 今回は断っちゃうんだろうなって思っていた。それも仕方無いと思っていた。

 けれども、どうやらご主人の気持ちだって俺に届いていなかったらしい。

 

 とは言え、きっとまだまだ時間はあるんだ。俺はネコでご主人は人間。その間にある壁は厚く大きなものかもしれないけれど、少しずつでも近づくことができるんじゃないかって思う。

 

「ありがとう。頼りないご主人かもしれないけれど、これからもよろしくね」

 

 そう言ったご主人は何処か恥ずかしそうにしながらも、笑ってくれた。

 そんなご主人の笑顔が、やたらと魅力的に見えてしまうのも仕方の無いことだと思う。

 

 此方こそ、これからはあまり力になれないかもしれないけれど、精一杯頑張るのでよろしくお願いします。

 

「よしっ、それじゃ私は、龍歴院に行って緊急クエスト受けますって言ってくるね!」

 

 うん、行ってらっしゃい。

 あっ、でも、そのクエストに俺たちもついて行って良いのかな? 以前、ご主人が集会所でもソロなら二匹までオトモを連れて行けるとは行っていたけど……

 てか、もういっそのこと、俺と白ネコはニャンターとして登録してもらった方が良いと思う。そうすれば、あの相棒が来たときでも皆で行けるわけですし。

 

 まぁ、それは無事ご主人が上位ハンターとなってから考えることか。今は目の前のクエストに集中しないと。

 

「……貴方は武器どうする?」

 

 ご主人が龍歴院へ走っていって直ぐ、白ネコさんが声をかけてきた。

 あー……武器はどうしようか。今の俺の武器はランタンofキャットと龍属性の武器だから、クシャとは相性の良い武器。でも、睡眠武器で一回でも眠らせた方が美味しい気もするんだよなぁ……

 

「君はどうするのニャ?」

「私は前の武器に戻そうと思ってる」

 

 まぁ、そりゃあそうか。

 白ネコの新しい武器――THEキャットハートも龍属性の武器だけど、クシャと戦う時、やっぱり毒武器はほしい。

 

 あーうー。これはなんとも悩ましいところだ。睡眠と龍属性攻撃、どっちも捨てがたい。

 それはつまり、裏を返せばどっちでも良いってことなんだけどさ。

 

 ん~……よし、決めました。 

 

「えと……じゃあ、ボクも前の武器に戻すニャ」

 

 水爆を含めても、ランタンofキャットのダメージを出せるか分からない。けれども、眠らせればその間に武器を研いだり回復することもできる。だから、そっちの方が良いのかなって思った。

 せっかく新しい装備を作ったのだし、どうせなら一式になりたいっていう気持ちもあるけど、少しばかり我慢するとしよう。

 

 それにしても、クシャが相手かぁ……行動によっては全然降りてくれない時があるから、本当なら持てるだけの閃光玉を用意したいところだけど、ご主人、閃光玉持ってるかなぁ。

 ネコが閃光玉を投げられれば一番だったんだけどね。それか、投げるブーメランの角度を変えられるとか。いや、まぁ、できないことを願っても仕方無いのですが。

 

 作戦……と言うほどでもないけれど、どんな武器でクシャと戦うのか決めた後、ご主人が戻ってくる前に自宅へ戻り、武器の変更。

 今の俺はゴア防具にホロロネコパラソル。正直、あまり似合ってない。やっぱりネコは一式装備が一番か。ハンターみたく、複合防具じゃないとやってられないってわけでもないですし。

 

 そして、武器を変えてからまたベルナ村の広場へ。

 

「あれ? ネコさんたち、武器戻しちゃったんだ」

「うニャ。クシャルダオラならこっちの武器の方が良いと思ったんだニャ」

 

 丁度良いタイミングで戻ってきてくれたご主人。その表情はもう不安そうに見えなかった。

 大丈夫、ご主人の実力があればクシャくらい……って、ああそうか、我らの団に所属していたのだろうし、ご主人ってクシャと戦ったことあるのかな。MH4Gはそんなシナリオだった。

 まぁ、アレは錆クシャだけど……

 

 そして、ご主人には色々と聞かないとだ。我らの団のこととか、そういうことを。オストガロアのせいで、その機会を失ってしまったけれど、きっとご主人にだって沢山の物語があったはず。

 無理して話してもらうほどじゃないけど、できればご主人の物語を聞いてみたいかな。

 

 そんなご主人の話を聞けば――俺も自分のことを話せるような気もする。

 

 ……自分のことはずっと黙っていようと思っていた。けれども、最近はそのせいで上手く動けないことばかり。

 だから、もういっかなって思うんだ。だって、身動き取れなくなるよりはよっぽど良いと思うから。

 

「ん~……私はよくわかならないから、ネコさんたちに任せるよ。あっ、それでクエストだけど準備ができ次第出発してくれって。私はいつでも行けるけど、ネコさんたちは?」

「ボクはいつでも大丈夫ニャ」

「私も」

 

 あら、これは直ぐに出発することとなりそうだ。あと、俺たちがついて行っても問題はないみたいだね。

 

 さてさて、いくら相手が下位モンスターと言っても、古龍種で集会所クエスト。これは気合入れて頑張らないとだな。

 

 

 


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