「ネコさん、ネコさん。今日はダイミョウザザミのクエストがないみたいだけど、どうする?」
ダイミョウザザミも無事に倒すことができ、その打ち上げをやった次の日。
今日も今日とて、ご主人の防具を完成させるためザザミと戦いたいところではあったけれど、どうやらザザミの狩猟クエストがないらしい。
メインターゲットじゃなくて良いのなら、ザザミと戦うことのできるクエストはあると思うけれど……それがどのクエストだったのかは流石に覚えてません。ヤオザミの狩猟クエストとかがあれば怪しいけど、もしかしたらドスガレオスやドスゲネポスが出るかもしれない。それなら違うことをした方が良いのかな、なんて思う。
「うニャー……じゃあ、ドスファンゴの討伐クエストはあるかニャ?」
ザザミ防具にはファンゴ素材が必要。そして、マップが孤島ならベストなんだけど、ドスファンゴって孤島で出ないよね……
ご主人が今、使っている武器はベルダーハンマー3、と正直かなり弱い。しかし、ベルダーハンマー4にすることができれば、武器倍率は10上がり、何より切れ味が緑となる。斬り方補正の関係で、やっぱり斬れ味は緑まで欲しいのです。
斬り方補正さえなければ、“鈍器”スキルも有用だったかもしれないんだけどなぁ……
「えとえと、ちょっと待ってて聞いてくるから」
そう言って、ご主人はベルナ村の受付嬢の元へとてとてと走っていった。
孤島が良いと言ったのは、孤島ならハンマーの強化に必要な“ベアライト鉱石”が採取できるからと言う理由。上位の渓流でも採取できるけど、現在のレベルじゃ上位のクエストなんて受注できません。最初はこのベアライト鉱石がどこで採取できるのかわからず、俺も苦労したなぁ。ベルダーハンマーの見た目はかなり好きだったから他のハンマーを使おうとも思わなかったし。あのゴツゴツした見た目、本当にカッコイイよね! しかもオプシドハンマーへ派生していけば、その見た目は変わらず強さもなかなか。長い間お世話になりました。
俺もまたハンマー使いたいなぁ。ホント、どうして今回はネコなんだろうね。
そんなことを考えていると、ご主人が戻ってきた。さて、クエストはあったのかな?
「んとね、ドスファンゴ一頭の狩猟クエストはないみたいだけど、渓流でブルファンゴ20頭の討伐クエストがあって、そのクエストにドスファンゴが出るんだって。これでもいいかな?」
ぐぅれいと。それだけの数のファンゴを倒せば素材はきっと十分なはず。普通にやると獣骨がなかなか集まらないのです。
これで、ファンゴ系の防具素材は全部手に入るだろうから文句なし。ドスファンゴが相手ならご主人でも倒すことはできるだろうし、心配なのは素材が集まるかどうかだけ。そればっかりは運だからどう仕様も無いんだけどさ。
まぁ、俺が剥ぎ取ったり採取した素材もご主人のモノになるから、足りないってことは多分ないと思うけど。
「それで大丈夫ニャ!」
「ふふっ、それなら良かった。それじゃ行こっか」
此処で武器を強化することができればかなり楽になるんだけどなぁ。まぁ、それはまた今度と言うことで。素材ツアーとかあれば良いけど。
「ん~……風が気持ちいい」
飛行船の甲板の上。目を閉じながらご主人がそんな言葉を落とした。
以前、俺がこの世界へいたときの移動手段は、ほとんどがガーグァの引く馬車だった。あのガタゴトと揺れる馬車の乗り心地は決して褒められたものでもなかったけれど、それなりに気に入っていたと思う。
でも、飛行船ってのもまた良いものだね。何より馬車と比べて移動時間が全然かからないし。移動中って暇なんだよね。
「あまり端にいると落ちるから気をつけるニャ」
「さ、流石にそんなドジなことはしないから大丈夫だよ」
うん、大丈夫だとは思うけど、やっぱり心配じゃん。あの相棒なんて寝ぼけてよく馬車から落ちたし。まぁ、ハンターなら例え飛行船から落ちようが無傷な気もするけど……。少なくとも200mくらいなら余裕だろう。それくらいの高さなら何度か飛び降りたこともある。
「ネコさんってさ。私のオトモになる前は何をやっていたの?」
目を開け、此方を向いてからご主人が聞いてきた。
また、応え難いことを……
このご主人なら正直に言っても信じてくれそうだけど、絶対に余計なことを背負わせちゃうよなぁ。有り難くないことに、この世界だと俺のパーティーって有名だったらしいし。だから、ご主人にそれを伝えるのはあまりよろしくない。
「ぷらぷらと生きていたニャ」
モンハンのゲームをやって、モンハンの世界へ飛ばされて、帰ってきて、また飛ばされて、また帰ってきて、気がついたらまたモンハンの世界。しかも、今回はネコって、ネコって……
「そ、そうなんだ……」
苦笑いされた。
ごめんね。申し訳ないけど、全てを伝えることなんてできないんだ。きっと俺はまた消えてしまう。だから、ご主人にはそんな奴のことまで背負わせたくない。
この世界のことは気に入っているけれど、俺はイレギュラーな存在。そんな奴がいつまでもいたら、何処かでおかしくなるんじゃないかって思ってしまう。
きっとあの相棒も怒ってるよなぁ。我ながら随分と自分勝手な奴だって思う。なんて謝ったら良いのかわかったものじゃない。
とは言え、俺が頑張らなきゃいけないのは変わらない。こんな身体だし、そんなに役には立たないだろうけれど、できる限りやるだけだ。
「……ネコさんのお話もいつか聞かせてよ?」
いつかそんな未来が来ると良いね。
ご主人の言葉に対して、約束することなんてできなかったけど、俺は――うニャ。と言って頷いてみた。これから長い付き合いとなるだろうけれど、よろしくお願いします。
そんな気持ちも込めて。
そんな感じの雑談を暫く続け、目的地である渓流へ到着。
多分、ご主人も渓流へ来るのは初めてなんじゃないかな。
「涼し気な場所……。うん、悪くないかも」
そりゃあ、良かったよ。旨味の少ないマップではあるけれど、何度も来ることになるであろう場所。タマミツネと戦う日は本当に楽しみだ。
「よーし、それじゃあ出発!」
「うニャ!」
ご主人が支給品も受け取り、クエストスタート。
ドスファンゴの現在位置はエリア5。でも、どうせ直ぐに動いちゃうんだろうなぁ。今作はエリア移動が本当に多いと思うんだ。もう少し落ち着いてくれたって良いだろうに。
ご主人に続いて、エリア4へ。其処には、昔人が住んでいたんじゃないかって思われる建物。今じゃ、ジンオウガやナルガにドボル、そしてタマミツネや金銀夫妻とモンスターの蔓延る場所になっているけれど、集落とかがあったのかもね。
そんなエリア4には何頭かのブルファンゴの姿。一頭、一頭戦う分には何の問題もないけれど、集団で来られるとなかなかに鬱陶しい。
「えと、最初にドスファンゴを倒した方が良いかな?」
ああ、それはそうかもしれない。
ブルファンゴを倒していれば、絶対に合流され、剥ぎ取り中に邪魔される未来しか見えない。それに、もしドスファンゴを倒す前にブルファンゴを20頭倒してしまったらクエストも終わってしまう。
「それが良いと思うニャ」
さて、ドスファンゴの位置は……ああ、このエリアに来てくれるのか。うん、有り難いです。てか、千里眼って便利だね。今作はどうにもモンスターを見失いやすいからなかなかに助かる。ペイントし忘れることも多いし。
「ご主人、来るニャ」
「うん、了解」
エリア5へと繫がる道から、ゆっくりと歩いて来たドスファンゴ。攻撃技は突進と振り払いだけ。けれども、それが強い。
初見は本当に苦労したなぁ……
そして、俺たちのことを見つけたドスファンゴが一気にこっちへ突進をしてきた。
それをサイドステップで躱し、ブーメランを2回当てる。ネコはとにかくサポゲを上げないと戦力にならない。ご主人がサクッとスタンを取ってくれれば楽だけど、初見だしそれは流石に難しいよなぁ。
「えっ? ちょ、ちょっと、動き速くないですか?」
わーわー、言いながら必死でドスファンゴの突進をローリングで躱すご主人。見ていてなんだか微笑ましい。
大丈夫。ハンマーでドスファンゴが相手ならひたすらスタンプを……あれ? ご主人のスタイルって確か、エリアルだったよね。エリアルだとスタンプが……
ああ、うん。
よ、よし、此処は俺が頑張ろう。
~語句説明~
読み飛ばしても問題ありません
~斬り方補正~
あまり知られていないことですが、モンハンにおいて剣士のモーションは「振り始め」「中間」「振り終わり」の3段階に分かれています
この中で「振り始め」と「振り終わり」の2つにはダメージが0.3~0.7倍になるマイナス補正がかかります
そしてその補正は斬れ味が“黄色”以下の場合で適用されます
斬れ味が緑以上の場合、斬り方補正はどの段階でヒットしても1.0倍となります
斬れ味が黄色以下の武器で攻撃した時、同じ部位でも弾かれたり弾かれなかったりするのは、この斬り方補正が原因だったりします
つまり武器の斬れ味は緑以上が望ましいねってことなのですが、MHXでは“鈍器”と呼ばれるスキルが追加されました
この鈍器スキルは斬れ味が悪ければ悪いほど攻撃力がアップするスキルです
斬れ味が橙以下となると攻撃力が30もアップする素敵なスキルではありますが、此処で前述の斬り方補正が関わってきます
鈍器スキルを発動させた場合、斬れ味が悪い方が良いのですが、斬れ味が黄色以下ですと斬り方補正が発生します
結果、鈍器スキルをつけても切れ味は黄色以下では逆に火力が落ちてしまうようなことも……
また、斬れ味が緑の武器は斬れ味が白の武器と比べて約0.8倍まで攻撃力が落ちてしまいます
そして、この差をひっくり返すのはかなり厳しいのが現状です
鈍器は魅力的なスキルですが、難しいものですね