ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

30 / 100
第27話~思うところもあるけれど~

 

 

 自分が出場する闘技大会も終わりとりあえず、ほっとひと息。

 相変わらず、歓声がバカみたいに大きく聞こえる。思っていた以上に緊張していたのか、ドスマッカォを倒して直ぐに疲れが一気にきた。

 今は冷たいビールがすごく怖いです。

 

「これ、手とか振った方が良いのにゃ?」

 

 そして、なんともマイペースな様子の白ネコ。

 

「ん~……まぁ、手を振ってあげれば観客も喜ぶと思うニャ」

 

 いくつかミスもあったし、タイムだってそこまで良いものでもない。けれども、今回俺たちが出したタイムは記録としてちゃんと残るだろうし、ネコ専用の大会でSランクは初めてなはず。思った以上にあっさりだったから達成感はあまりないけれど、少しくらいは誇っても良いのかな。

 

「やっぱり、恥ずかしいからやめておくにゃ」

 

 ……ああ、うん。そうですか。まぁ、それは君の好きにしたら良いと思います。

 

 さてさて、それじゃ俺たちも引っ込むとしようか。ご主人だって待っているだろうし、何よりこの後にある他のネコの闘技大会が気になる。闘技大会に出場するくらいなのだし、そのネコの実力はそこそこあるはず。

 

 はてさて、その実力はどんなものなのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ。お疲れ様! ネコさんと白ネコさん」

 

 闘技場の観客席を目指していたところで、無事にご主人と合流。その途中、名前も知らない幾人かのハンターから、オトモにならないかと声をかけられたが、それはもちろんお断りした。俺のご主人はひとりだけなのです。そして、その気持ちはあの白ネコも同じらしい。話したがる奴ではないから、分かり難いこともあるけれど、この白ネコもちゃんとご主人のことを考えてくれているんだね。

 そのことがなかなかに嬉しかった。

 

「うニャ。頑張ったニャ」

「すごかったよ! だってネコさんたちSランクでしょ? 歴代1位だよ! 1位!」

 

 確かに歴代最高のタイムではあるけれど、俺たち以外の記録がそもそもないからなぁ。あれくらいじゃ、直ぐに抜かれてしまうと思う。

 とは言え、目立ってしまったのは確かなこと。ご主人に不利益なことが起こらないと良いけど……

 

「この白ネコが上手かったからニャ」

「えっ? ちょっ、ちがっ……ぼ、ぼくはちょっとブーメラン投げてただけにゃ」

 

 そして、お互いにあのタイムの原因を押し付け合う。

 正直なところ、どっちのおかげってのはないと思う。俺ひとりじゃあのタイムは出せないし、この白ネコだってソロでは……む、無理だよね?

 

「ふふ、仲良いんだね。でも、二人が頑張ったからだと思うよ?」

 

 仲は……良いのかなぁ。いや、悪いとは思っちゃないですよ? ただ、ちょっとこう……ライバル心と言うか何と言うか、そう言うモノがありまして。そんなことを思っているのは俺だけかもしれないけどさ。

 

「それで、この後はどうしよっか?」

「ボクは闘技大会が見たいニャ」

「ぼくも見たいにゃ」

 

 あら、白ネコさんもですか。こう言うときは本当に意見が合いますな。もし、こんな姿じゃなくお互い、人間の姿だったらもっと仲良くなれたりしたのかもね。そんなこと考えたって仕方の無いことだけど、なんとなくそう思った。

 

「うん、了解、それじゃ観客席の方へ行こっか」

 

 

 闘技場の観客席まで移動し、暫くすると直ぐに目的の闘技大会が始まった。

 内容はゲリョスの討伐、と俺たちがやったものよりも難易度はちょっと高いもの。それに挑むネコは2匹。

 

 そして、気になるネコの様子だけど……

 

 

「……よわっ」

 

 

 そんな声が隣に座っている白ネコから聞こえた。

 うん……そうだね。こう言っちゃアレだけど、あのネコたちすごく弱いね。勇猛果敢にゲリョスへ突っ込んで行くのは良いと思う。でも、とにかくタイミングが悪い。どうして尻尾振り回しているのに其処へ向かってダッシュするんだよ。あっ、ほら。また閃光が来るからガードを……ああ、ダメだこりゃ。

 

 う~ん、やっぱりネコはこんなものなんだろうか。それともこの2匹のネコが例外的に弱いとか……

 いや、観客の反応的にそれは違う気がする。此処の観客は、この世界へ来たばかりの俺みたく下手なハンターに容赦なくヤジを飛ばしてくる。けれども、今はヤジなんてほとんど飛んでいない。つまり、これがいつも通りなんだろう。

 てか、こんな調子じゃタイムを競うとか言うレベルじゃなく、そもそもクリアできない気が……もしかして、俺たちが挑んだ闘技大会も挑戦者がいなかったんじゃなくて、クリアできたネコがいなかっただけなのか?

 

 そして、そうなると、だ。

 

 ゲリョスに蹴散らされる2匹のネコから目を離し、隣に座っている白ネコへ視線を移した。相手も何かしら思うことがあったらしく、白ネコと目が合う。

 

 君は何者だい?

 

 

 

 

 結局、あのネコたちが闘技大会をクリアすることはできなかった。ゲリョスは怒り状態にすらなっていなかったし、多分体力の半分も削れていなかったと思う。

 

「あのアイルーさんたち勝てなかったねー」

 

 そんなご主人の言葉。

 このご主人は今日の結果を見てどう思っているのだろうか。今回の結果を考えるに、俺とこの白ネコが他のネコとは違うと思ってしまっているはず。どうにも勇気がないから聞くことはできないけれど気になる。

 

「調子が悪かったみたいニャ」

 

 さてさて、これでまたややこしくなりそうだ。

 ホント、この白ネコは何者なんだよ。アレか? 俺と同じ世界から来たのか? いや、そんなこと聞けないけどさ……

 それに、今のところは何の問題も起きていない。だから、例えこの白ネコがどんな存在だろうと良いのだけど……やっぱり気になってしまう自分がいたりするんです。う~ん、今回は色々と秘密の多いパーティーですね。もちろん、俺も含めて。

 

「ご主人、そろそろベルナ村へ帰りたいニャ」

「うん、了解」

 

 ただ、今日も収穫はあった。分からないことも増えたけれど、何が分からないのか分かったのは大きい。

 

 さて、それじゃ、ベルナ村へ帰るとしようか。あまりのんびりしていると、また色々な人から声をかけられそうだし。

 それに此方はまだ村の四天王も倒していないくらいなんだ。やらなきゃいけないことは沢山ある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルナ村へ戻ってきたところで、無事闘技大会を終えたって理由で打ち上げ。冷たいビールは今日も美味しいです。

 ご主人も、俺たちがSランクを出したことが嬉しかったらしい。あの白ネコはどう思っているんだろうね?

 

「そう言えば、ご主人」

「うん? どうしたの?」

 

 とりあえず一段落したわけですので、これからまた色々なモンスターを倒していくことになるはず。その前に聞いておきたいことがあった。

 

「ご主人はエリアルスタイル以外を使わないのかニャ?」

 

 確かにハンマーのエリアルスタイルは強い。エリアル特有のジャンプA2連のモーション値はなかなかだし、最大まで溜めてもスタンプにはならないから、パーティーでも使いやすい。けれども、どうしても相性の悪い敵がいるんです。ディノとかゴリラとか。

 だから、エリアル以外のスタイルも使えればと思った。できればブシドースタイルが良いと思う。

 

「うん、ずっとエリアルでいこうかなって思っていたけど……違うスタイルも練習しておいた方が良いかな?」

 

 できればその方が良いと思う。まぁ、好みの問題もあるから難しいところではあるけど。

 

「……ブシドースタイルは練習しておいて良いと思うにゃ」

 

 そして、そんな白ネコの言葉。

 ああ、やっぱり君もそう思っていたんだね。ブシドーハンマーはカッコイイし俺もオススメします。溜め1と溜め2のモーションが変わってしまうけれど、ジャスト回避からのカチ上げやスタンプは本当にカッコイイと思う。俺がゲーム中、ブシドーばかりを使っていたってのもあるんだけどさ。

 後はギルドスタイルもオススメです。MHP3以降のハンマーに慣れている人はやっぱりギルドスタイルが一番しっくりくるよね。

 ストライカーは……うん、まぁ、スタンプが強いと思う。ホント、もう少し使える狩技があれば良かったんだけどね。

 

「う~ん、二人がそう言うのならブシドースタイルを練習してみようかな」

 

 うむ、それは良いことだと思うぞ。勝手はかなり違うけれど、慣れればブシドースタイルもかなり面白い。ジャスト回避が連続で成功するとバシュンバシュンなってまるで自分が上手くなったみたいに思えるのも良い。

 

「楽しんでいるところ申し訳ないが、ハンター殿ちょっとよろしいか?」

 

 ブシドーについて雑談をしていると、ベルナ村の村長がご主人に声をかけてきた。多分、またクエストの依頼だろう。

 

「あっ、はい。大丈夫です。えと、それでどうしましたか?」

「先程、ココット村からとあるモンスターの討伐をハンター殿に頼みたいとの連絡が入った」

 

 あら、ココット村からですか。てか、こう言う感じで依頼が届くこともあるんだね。それだけご主人が有名になってきたってことだろうか。うむうむ、それはまた喜ばしいことだ。

 

 そして、ココット村からの依頼と言えば……

 

「どんなモンスターですか?」

「電竜、ライゼクスと呼ばれるモンスターだ。私も詳しくは知らないが、かの空の王者である、リオレウスと渡り合うこともできると聞いている」

 

 やはりライゼクスか。それはMHX看板モンスターの1匹。

 自分の縄張りへ侵入するもの全てを攻撃対象とし、その攻撃の手を緩めることは決してない。その凶暴性と残忍さは生態バランスを破壊し、ギルドからかなり警戒されているモンスター。設定だけなら、ライゼクスが一番危険なモンスターになると思う。攻撃も一発一発が重く、部位荷電状態となった時の攻撃が本当にキツい。

 どうやらそんなモンスターが今回の討伐対象らしい。

 

「はい、分かりました。私にできる限り頑張ってみます」

「ああ、頼んだ。ハンター殿ならきっと討伐してくれると信じている」

 

 ライゼクスはそれほどに危険なモンスター。

 危険なモンスターなわけですが……いや、まぁ、うん。油断せずにいこう。ご主人は四天王モンスターと初めて戦うわけですし。

 

「と言うことで、次はライゼクスって言うモンスターを倒すみたいだけど……ネコさんたちは大丈夫?」

「ちょっと怖いけれど頑張るニャ」

「がんばるにゃ」

 

 これでライゼクスを倒せばご主人もさらに有名になるはず。そして、ライゼクスならブシドーの練習に丁度良い。

 こんなところで立ち止まっているつもりもないし、サクッと倒して前へ進ませてもらおうか。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。