ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第11話~だってネコですし~

 

 

「あれ? 随分と眠そうだけど、昨日は寝られなかったの?」

 

 家を出て、二人でお散歩をしていると、くはっと大きなアクビをひとつ。そんなアクビをしたところで、ご主人から言葉をかけられた。

 

「うニャー……ご主人の寝言がうるさくて寝られなかったニャ」

「えっ、嘘!? わ、私、変なこと言ってなかった?」

 

 あの相棒と会話を終えた後は、直ぐに家へ戻り寝ようとしてみました。

 でもね、気分が高揚していたんだかなんだか知らんが、全然寝られないのね。うわぁ、絶対いらんこと言ったよなぁとか考えながら、もんもんとしていたら朝ですよ。

 ホント、何をやってるんだか……

 

「うニャ。『アカムの3連飛鳥文化なんて聞いてない』とか言っていたニャ」

「いや……それ、絶対に嘘じゃん」

 

 はぁ、昨晩は本当に失敗だったよなぁ。次に相棒と合った時、どんなことを言われるのだろうか。俺の姿が姿だけに流石にバレてはいないと信じたいけれど、怪しまれているのは確かだと思う。頭のおかしいネコとでも思ってもらっていれば良いが……

 まぁ、言ってしまったものは仕方無い。今更変えることなんてできないんだ。それなら前向きに生きてみよう。

 

「ネコさん、今日は何か予定とかある?」

 

 ん~……今日はどうしようかね? ご主人の武器が完成するのは今日の夕方。だから、今日もご主人はクエストへいけないのだけど……はて、どうしたものか。俺は昨日みたいに、ネコ専用クエストへ行くことができる。でも、なんか調子が出ないんだよね。

 それもこれも、きっとあの相棒のせいだ。

 

「今日は一日、のんびりしているニャ」

「あっ、そうなんだ。それじゃあ、私はどうしよっかなぁ」

 

 暇になっちゃったね。初期武器で良いなら武器はあるし、クエストへ行くことはできるけれど、別に焦って何かをやる必要もない。それなら、のんびりと過ごすのも悪くはないかもしれない。

 ああ、闘技大会を見に行くのもありかもしれないね。今日開催されているかは分からないけど。バルバレとかと比べて、ハンターが本当に少ないんです。

 

「そう言えば、あのハンターさんってまだ此処にいるのかな?」

 

 あのハンターさんってのは、多分相棒のこと。

 えと……どうだったかな。確か、休みをもらっているから当分は、此処にいるみたいなことを言っていた気もするけど……

 ただ、俺が会いたくないんだよなぁ。あんなことを言っておいて、どんな顔をして会えば良いんだよ。

 

「……多分、まだいると思うニャ」

 

 うむ、ご主人は会いに行きたいとか言うと思うけれど、俺は遠慮しておこう。どうかひとりで会ってきてください。

 

「ホント! それじゃあ、せっかくの機会なんだし会いに行こうよネコさん!」

 

 ああ、やっぱり会いに行こうとするのか。

 俺が言うのもアレだけど、別に会ったところで良いことなんてないと思うよ? 面白い奴ではあるけどさ。

 

「ボクは遠慮するニャ。ご主人だけで行ってくると良いニャ」

 

 しまったな。こんなことになるのなら、クエストへ行くと言えば良かったね。今からでも間に合うだろうか。

 

「えー、ネコさんも一緒に行こうよー」

 

 多分、ひとりで会いに行く勇気がないから俺と一緒に行きたいんだろうなぁ。人見知りなのは知っていたけど、頑張ってよご主人……

 

「やっぱりボクはクエストへ行ってくるニャ」

 

 一緒に行かないと言った俺へブーブーと文句を言うご主人を残し、クエストを受注しに受付嬢の元へ。調子はあまり良くないけれど、まだ討伐クエストはないだろうから問題ないはず。採取クエストなら時間をかければクリアできる。少しずつ少しずつ積み重ねていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、ネコちゃん。今日はネコちゃん専用のクエストがないんだ」

 

 ……これは困ったぞ。

 受付嬢の元へ、クエストを受注しに行ったのは良いけれど、肝心のクエストがなかった。いや、ホントどうすっかね。

 

 はて、どうしたものかと困っていると、ぽんぽんと誰かに肩を叩かれ、後ろを向くと良い笑顔のご主人の姿。

 

「クエストなかったね!」

 

 ……そんなにですか? そんなにあの相棒とひとりで会いに行くのが怖いのですか? 俺はそんなご主人の将来が心配です。

 ネコ専用のクエスト以外を受けるって言う選択肢もあるけれど、それはご主人に申し訳ないし、何よりご主人のことがなんだか可哀想になってきた。

 

「……わかったニャ。ボクも一緒に行くニャ」

「ホント!? ありがとうネコさん!」

 

 どういたしまして。

 いや、でもホントどんな顔をして会えば良いのやら……

 

 

 

 

 何とも気が進まないまま、ご主人と一緒に龍歴院……まぁ、つまり集会所へ向かった。とは言え、よくよく考えると相棒と会える可能性はあまり高くないはず。アイツだって昨日は遅くまで起きていたから寝ているかもしれないし、もしかしたらクエストへ行っているかもしれない。そうなれば、このご主人だって諦めるはず。

 うむ、きっと大丈夫だ。ご主人には申し訳ないが、此処は俺の気持ちを優先させてもらおう。

 

 どうかどうか相棒さんと出会いませんように。

 

 

「あら? 昨日のネコちゃんと、そのご主人さん……だっけ? やほー、おはようだね」

 

 

 はい、相棒さん普通にいました。ご飯食べてました。

 うん、まぁ、お腹空くもんね。そりゃあ、ご飯食べるよね。

 

「ネ、ネコさん、ネコさん。本物だよ! 本物がいるよ!」

 

 慌てたように俺の頭をバシバシと叩くご主人。痛いよ……てか、少しは落ち着きなさい。

 そう言えば、俺たちもまだ朝食を食べていなかったね。相棒と一緒に食べるのは遠慮したいけどお腹空いたなぁ。

 

「え、えと、それで今日はどうしたの?」

 

 少々困り顔の相棒さん。

 俺だってどうしたものかと困っています。

 

「……ご主人が君と会いたかったみたいだから、会いに来たニャ」

 

 俺がそう伝えると、恥ずかしかったのか、またバシバシとご主人に頭を叩かれた。こんな調子で大丈夫だろうか……

 

「あっ、そうなんだ。ん~……それじゃあ、一緒に朝食でも食べる? 私もひとりで寂しかったところだし」

 

 相棒さんったら優しいのね。まぁ、あのパーティーの中でも一番大人っぽい性格だったし、ちゃんと他人のことを考えている奴だった。でも、今は優しさが俺の心を傷つけます。

 因みに、あのパーティーで一番子供っぽいのは弓使いの少女で、次はあの彼女だと思う。俺は……どうだったんだろうね?

 

「は、はい! 是非、ご一緒させてください!」

 

 そんな緊張していたら、せっかくのご飯の味がわからないよ? まぁ、多分それを言ったところで意味ないと思うけど。

 

 

 

 

 そして、相棒さんと一緒に朝食を食べることに。今は全力でこの場から逃げ出したい気分です。

 最初、相棒が食事代を全部出してくれると言ったけれど、流石に其処は遠慮してもらった。この相棒のことだし、お金は沢山持っているから、飯の一回をおごるくらいなら何ともないとは思う。でも、ほら、同じパーティーにいたこともあるから、踏みとどまりたいところがあるのですよ。

 

「へー、それじゃあ、槌ちゃんはまだハンターになってから1ヶ月くらいなんだ」

「槌……ちゃん? えと、は、はい! だから毎日わからないことだらけです……」

 

 どう見ても緊張していますと言った感じの様子のご主人。見ていて此方が恥ずかしくなる。頑張れご主人。超頑張れご主人。

 

「ネコちゃんもそうなの?」

 

 そして、俺へ話題転換。本当に勘弁して欲しい。

 

「チーズが美味しいニャー」

 

 昨日のこともあり、俺の自由のためにも今ばかりはこの相棒と距離を置きたい。そんなわけで、食事へ夢中になっている振りを全力で行います。

 

「んもう、ネコさんったらまたそんな顔にチーズをつけちゃって……それにほら、ハンターさんがせっかく話かけてくれているんだから、ちゃんと応えないと」

 

 どうか俺のことは放っておいて、ご主人は相棒さんとお話していてください。きっと話したいことだって沢山あるだろうし。

 

「ふふっ、自由だね、君は」

 

 そんな俺に対し、相棒はそう言ってから笑っていた。

 ……いつの日かちゃんと話したいと思っているけれど、きっとまだその時ではないはず。もしかしたら、それはただ俺が逃げているだけなのかもしれない。でもさ、やっぱりそんな勇気なんてないわけですよ。それに、このご主人のために頑張ると決めたのだ。それを投げ出したくはない。

 名誉や栄光なんていらない。俺は俺の好きにこの世界を楽しませてもらう。そのためにも、この相棒に気づかれたくはない。

 

 なんか、もうダメな気もするけど……

 

「え、えと……ハンターさんはこれからどんな予定なんですか?」

「う~ん、それをどうしよっかなって思っているところなんだ。ネコちゃんのおかげで、ディノバルドもあっさりと倒しちゃったし、時間はあるんだけど……」

 

 “ネコちゃんのおかげ”って言葉をやたらと強調された気がする。

 別に俺がいなくとも、この相棒ひとりでディノバルドはあっさりと倒すことはできただろうに。ホント、何を考えているのやら。

 

「あっ、そ、それじゃあ、良ければですけど……」

「うん? どうしたの?」

 

 よしよし、食事も終わったし、顔についていたチーズも取れたぞ。

 さて、この後はどうするのだろうか。正直、俺は眠いから一眠りしたいところなんだけど……

 

 

「私と一緒にクエストへ行ってもらえませんか?」

 

 

 そして、そんなご主人の言葉が響いた。

 

 トントン拍子に話は進む。ただ進む方向があまりよろしくない。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 んで、相棒さんもご主人の提案をあっさりと受け入れた。

 俺の意見? そんなの通るわけがないし言えるわけがない。だって俺、ネコですし。

 

 胃の痛くなる時間はまだまだ続きそうです。

 

 

 






ご主人と一緒にクエストへ行くかと思っていたら、ハンマーが完成していませんでした
相棒さんとクエストへ行くことになりました
おかしいね

と、言うことで第11話でした
相変わらず寄り道だらけの作品ですなぁ……
そして、次話は二人と一匹でのクエストに……なるのかな?

では、次話でお会いしましょう

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