ネコちゃんとも合流することができ、ディノバルドを倒すことに。
最初の予定とはかなり変わってきちゃっているけど、まぁ、どの道ディノバルドは倒さないといけないんだし、丁度良いと考えよう。
「ネコちゃんはまだ一度も倒れてない?」
「あっ、うニャ。もうちょっとで危ないところだったけど、まだ! なんとか、ギリギリで! 大丈夫ニャ!」
もう直ぐにでもやられてしまうってことを必死に伝えようとするネコちゃん。
ただ……どう見たって嘘です。それにさっきまでの動きでその言葉はちょっと信じられないよ。嘘つくの下手だね。
嘘をつくのが下手と言えば、あの彼もそうだったなぁ……
まぁ、そんなことは良いとして、どうにもこのネコちゃんには警戒されているみたい。そりゃあ、いきなり現れたのだから、警戒するのもわかるけど、もうちょっと信じてくれてもいいのにね。今だけとは言え、私と君はパーティーなのだから。
こうやってネコちゃんと会話をすることなんてほとんどないし、私は君と仲良くなりたいんだけどなぁ。
そんな言葉を交わした後、ディノバルドを追ってエリア6へ。
エリア6はかなり広いエリアで、しかも段差は少なく斜面にもなっていない。うん、戦いやすそうなエリアだ。
そのエリア6の奥の方にディノバルドはいた。
ネコちゃんがどれくらいのダメージを与えていたのかわからないけど、まだ脚を引きずっていなかったし、これは大変かもしれない。
さてさて、とりあえずはエキスを集めないと。でも、どのエキスがどの部位で取れるかわからないんですなぁ。あの彼がいればきっと教えてくれたのだろうけど……
「頭と尻尾が赤、胴体が橙、後ろ脚が白。乗り頼んだニャ!」
「ふえっ!? あっ、あ、うん。わ、わかった!」
おおぉ……驚いた。
まさか教えてくれるとは……いや、有り難いんだけどさ。
……オトモのこと真剣に考えてみようかな。
そして、私たちに気づいたディノバルドの咆哮が響いた。なんともフワフワした感じがするけれど、どうしてなのやら、悪い気分じゃない。
なんて言うか……今ならなんだってできるんじゃないかって思うんだ。きっとそれはただの気のせいだけど、今日の調子は悪くなさそうだ。
それじゃ、サクッと倒させてもらおうかな。
――――――――――
キノコを取りに来たはずが、ディノバルドと戦うようになって7分くらいと言ったところ。
最初は、絶対に勝てないよなぁ。なんて随分とネガティブな思考でいた。それでも、やっぱり強い相手と戦いたくて挑むことに。ホント、成長しないなぁって思うけれど、やっぱり楽しみたいんです。
それで気づいたのだけど……予想以上にディノバルドが強くない。ラウンドフォースなんて言われる薙ぎ払い大回転や、赤熱化した状態の尻尾攻撃を喰らっていないからまだわからないが、他の攻撃は緊急撤退による回復が充分間に合うレベル。てか、気をつければ攻撃なんてほとんど喰らわない。
二つ名ディノばかりやっていたせいで、モーションを覚えていなかったし、もっと苦労すると思っていたけど、そうでもない。攻撃を始めて直ぐに怒り状態になったことから、ダメージも充分通っているはず。
う~ん、これじゃあ、アレだけカッコつけていた自分が恥ずかしくなってくる。いや、でも、こんなに弱いとは思っていなかったんだ。
だから、ディノバルドの方は良いのだ。多分、これなら俺ひとりでも勝てると思うし。
それよりも問題なのは……
「乗ったー!」
「な、ナイスニャ!」
この人ですよ。
いや、本当に驚いた。ソロクエストのはずが、いないはずのハンターから声をかけられてまず驚き、その声をかけてきた相手を見てまた驚いた。
てか、どうしてお前が此処にいるんだよ。俺が言えたことじゃないけど、大老殿はどうした。ドンドルマはすごい頻度で極限化個体や古龍に襲われるんだから、ちゃんと防衛しなさいよ。
はぁ……まさか、こんな場所で相棒と再会するとはねぇ。人生わからないものだ。もし、俺だとバレたらどうなることやら……そんなの想像したくもないです。
「おっし、成功!」
流石です。やっぱりこの相棒って上手いよなぁ。虫棒が弱体化したとは言え、相変わらずの強武器であることに違いはない。そして、その武器を使っている奴の実力がちょっとヤバい。あの相棒が此処まで成長して嬉しいのやら、悲しいのやら……
相棒の乗りが決まり、ダウンしたディノバルドの顔面へひたすら、貫通ブーメランをぶつける。相変わらず多段ヒットする感覚が素晴らしい。ま、まぁ、ハンマーの方が良いけどねっ!
緊急撤退分のサポゲもあるし、これなら罠だって使えるかもしれない。いや、流石に使いませんよ? 其処までサポゲに余裕はないし。
ダウンから起き上がったディノバルドの咆哮。それをステップでフレーム回避。最初は何度も失敗したけれど、咆哮のフレーム回避のタイミングはなんとなく覚えてきたと思う。剣士と比べて、気持ち早めな感じだと避けられます。
そして、ディノバルドがあの大きな尻尾を口に咥えた。怒り状態+赤熱状態。モーション値は130とかだったかなぁ。
「えっ? なにこれ。何が起きるの?」
尻尾を咥え、何かを溜めているような状態のディノバルド。
目標はどうやら俺で、後ろ足の近くにいる相棒には当たらないはず。最初にこの技を見たときは本当に驚いた。エフェクトやらなんやらですごく豪快だよね。
そして、ギギギ――と刃物を擦るような音が響き、周囲を一刀両断するディノバルド最大の技が放たれた。
……まぁ、それも今じゃ、ただのチャンスタイムなわけなんだけどさ。
ディノバルドが溜め始めた時から、移動しておきブーメランを構えて溜め、攻撃が終わり直ぐ前まで来たディノバルドの頭へブーメランを投げつけた。
確かに、この攻撃は強い。強いけれども、その攻撃の後は確定で威嚇が入る。ゲームの中では、ハンマーのホームランや大剣の溜め3を叩き込むためにこの位置を必死で覚えたものです。それを身体が覚えていてくれた。まぁ、個体の大きさで左右されちゃうからいきなりは無理だけど。
「……え、えと、なんかすごい攻撃だったね」
そんな緊張感のない相棒さんの言葉。ホント、お前は変わらないね。そんな君を見て、少しばかり安心しました。
その後、口内に溜めたエネルギーを爆発させてのダウンと、相棒さんが乗り攻撃を決めてのダウンを1回ずつ取ることに成功。
そして、その乗りダウンが終わったところで、ディノバルドが倒れ、動かなくなった。
最初はどうなることかと思ったし、途中から相棒が来て、さらにどうなることかと思った。本当にどうなることかと思った。……とは言え、今の段階でディノバルドを倒せたのだし、なかなか良かったんじゃないかな?
「おおー、すごい倒した! ふふっ、ネコちゃんもお疲れ様」
「お疲れ様ニャ」
さてさて、剥ぎ取り剥ぎ取り。ディノ武器や防具を作るかわからないけれど、あって悪いものじゃないだろう。イシャターでも作れれば良いけど、絶対にこれだけじゃ素材足りないよなぁ。
「ネコちゃんのことは詳しくないんだけど、君ってすごくうまいんだね!」
「ああ、うん。ありがとニャ。でも、きっと君の方が上手いと思うニャ。今日はたまたま調子が良かっただけニャ」
むぅ、やりにくいなぁ……それになんて言うか罪悪感がヤバいんです。だって、この相棒は俺が俺だとわかっていないわけですし。
「それじゃ、ボクは深層シメジを集めないとだからもう行くニャ。ハンターさんも帰り気をつけるニャ」
だから、逃げることにしました。
臆病者とか何とでも言ってください。だってこれ以上はきっとボロが出ちゃうと思うんだ。この相棒さんって、かなり聡いんだよね……
「そう言えば、ネコちゃんはキノコを取りに来たんだもんね。ん~……それじゃあ、ソレ私も手伝うよ。ネコちゃんのおかげでディノバルドを倒すこともできたんだし」
お願いします。心の底から遠慮したいです。今ばかりは、相棒さんの優しさが辛い。
「そ、そんな難しいクエストじゃないから、ボクひとりでも大丈夫ニャ! ハンターさんも疲れているだろうし、早く帰って休むと良いニャ!」
「ふふっ、ありがとう。でも、遠慮なんてしなくていいんだよ? それに私はほとんど戦ってないもの。きっとネコちゃんの方が疲れているはず。だから、私も手伝うよ。確か、深層シメジはエリア9、10、11だったよね?」
ああ、これはダメだ。絶対に断れない流れだ。どうしてこうなった。
相棒さんったら意外と頑固だし、此処まで来たらもう素直に帰ってくれることもないだろう。そうなると、きっと帰り飛行船も一緒なわけで……いや、何を話せば良いんだよ。下手なこと言ってバレる未来しか見えない。でも、こんな姿になって『ニャーニャー』言ってることとか絶対に知られたくない。
「……それじゃ、お願いするニャ」
「よしっ、それじゃ行こっか!」
こりゃあ、ディノバルドよりよっぽど難易度が高いぞ。
なんて随分と失礼なことを思った。
ロケハンしてスキルって大切なんだなって思いました
もうちょっと強いと思っていたんだけどなぁ……
と、言うことで第8話でした
相棒さんとのお話はもう少しほど続きそうです
では、次話でお会いしましょう
ご主人さんの存在がどんどん薄く……