幻想夢物語 〜少年の日々〜   作:わたっふ

20 / 22
二十夢 たった一人の戦士

薄暗く、少々息苦しい空気が漂う世界の中心で……

 

ゾルバース) 「クックックッ……」

 

夏来) 「……….」

 

希望と絶望、対の存在同士のこの世界を賭けた最後の決戦が幕を開けようとしていた。

睨み合う2人の間に、誰も分け入る事は出来ない。

それ程までに圧倒的な次元の差を醸し出していたのだ。

 

それぞれが息を呑む中、空に掛かる黒雲の中で鳴り響く稲妻の音を合図に、両者は前方の敵目掛けて大量の弾幕を放つ。

空中で互いの弾幕が打ち消し合い、彼方此方で小爆発が起こる。

それが両者の姿を包み隠し、互いに相手が見えない状況となった。

 

ゾルバース) 「ふっ……態々ありがとよォ皇 夏来ィ! ダークネス・インセニティ!!」

 

互いが見えないと言う事は、同時に相手が何をしているのか分からないと言う事。

それを実現させてくれた夏来に感謝しつつ、ゾルバースは周囲に漂う闇を一気に光線状に撃ち放つ。

 

夏来) 「何処狙ってるんだぁ!!」

 

ゾルバース) 「ちっ!」

 

しかし、標的が姿を現したのは自身の居る高度よりも更に高い場所。

そこからの無数の光線攻撃に行動が遅れたゾルバースだったが、その表情には焦りは無かった。

夏来の放った光線が、ゾルバースの身体に直撃した瞬間、光が闇に飲み込まれるかの様に吸収される。

 

ゾルバース) 「クッハハハ! やっぱりテメェはバカだァ! 俺にはバールドの能力があるんだぜェ?」

 

夏来) 「っ!」

 

夏来は忘れていた、バールドの厄介な能力をゾルバースが取り込んだ事を。

そして思い出す、仙座の言葉を……

 

 

 

あいつは自分の攻撃と斬撃には、ダメージ吸収能力が発動しないんだよ

 

 

 

あぁ……そうだった……

なんでこんな重要な事を忘れていたんだろう……

 

 

悔やむ、惜しむ、側む。

忘れてはいけない事を忘れていた自分を責めたてる。

しかし、そんな事をしても自体は一向に変わらない。

今の自分に出来るのは、斬撃をゾルバースに与える事だと理解した夏来が攻撃を止めた。

 

ゾルバース) 「ハハハッ!! おいおい大丈夫かァ? 俺の攻撃をもろに喰らっちま━━━」

 

夏来) 「アームソード リザベクション!!」

 

その言葉を掻き消す様に、ワープホールから出てきた夏来の雄叫びが、ゾルバースの頭上から鳴り響く。

右手を光輝く剣へと変形させた夏来の上段からの振り下ろしに、ゾルバースは身を引いて躱す。

続く横流しの2撃目を懐から取り出した短剣で弾き返し、バランスが崩れた夏来の左側へと回り込んだ。

 

夏来) 「くっ!」

 

完全な無防備を曝け出した事に気付いた夏来。

反射的に動いた左手がゾルバースの頬にめり込んだ。

 

ゾルバース) 「ガハッ!」

 

顔を歪ませ、血を吐くゾルバース。

 

夏来) 「ぇ…?」

 

こちらが与えられる技は斬撃しか効かない、そうゾルバース自身も言っていた。

 

 

なんで……物理が……効いてる!?

 

 

ゾルバース) 「っ……ウラァァァァアアア!!!!」

 

自身の身に何が起こったのか分からないのだろう。

ゾルバースも殴られてダメージを負った事に驚きの表情を見せた。

しかしすぐに血走った目へと変わり、反撃に出たゾルバースが夏来を地上へ向けて殴り飛ばす。

 

ゾルバース) 「さぁ…地上戦とでも行こうかァ!」

 

地面に上手く着地したのと同時に、夏来がワープホールを展開し、ゾルバースの背後へと回った。

右手に出来る限り力を入れ、振り向く顔面へと叩き込む。

しかし、それを片手で受け止められ、ゾルバースは夏来の手首を掴んだまま振り回し、地面に叩きつける。

 

夏来) 「ぐっ……っぁあ!!」

 

バウンドした身体を利用し、夏来は空かさず反撃する。

地面に両手をつき、浮いた両足でゾルバースの顎に蹴りを喰らわす。

不意の一撃に怯んだゾルバースに対して、夏来の攻撃は止まることを知らない。

ガラ空きになった腹部へと殴る蹴るの猛攻を続ける。

 

ゾルバース) 「ガッ……ぐ……調子に乗りやがッてェェェエ!!!」

 

しかし、ほんの一瞬の隙を見て身を翻したゾルバースの蹴りが、夏来の背中へと打ち付けられた。

 

ゾルバース) 「ハァ……ハァ……これで…終わりにしてやるッ!!」

 

蹴り飛ばされ、地面に倒れ込む夏来に掌を向けるゾルバース。

直後、スパークを放つ球体が掌に出現する。

 

夏来) 「ぐっ……」

 

身体中から伝わる激痛に耐えながら、なんとか顔を上げた夏来の前方に、ケタケタと狂った様に笑うゾルバースが立っていた。

 

ゾルバース) 「電撃滅裂弾(でんげきめつれつだん)」

 

勢い良く撃ち放たれる球体が、夏来目掛けて接近する。

 

 

ぁぁ……死ぬ……これ 死ぬ……

早く立たないと……立って……立……って?

 

 

だが、夏来は逃げようとも、避けようともしない。

いや、正確には【今の夏来】には出来なかった。

徐々に狭まる、死をもたらす球体との距離。

 

 

 

 

何で? 何で動かないの!? 動いてよ!!!

 

 

ゾルバース) 「クク……」

 

 

動いてっ!

 

 

 

 

 

………あ……もうダメだ……

 

 

 

 

 

球体が、目と鼻の先まで近づく。

手を伸ばせば確実に届く距離だ。

これでは避けようが無い、そう思った夏来が諦めかけたその時━━━、

 

 

「エネミーアウト・フレア!!」

 

 

何処からか聞こえてくる、力強く、もっとも聞き慣れた声。

目線を声が聞こえた方向へ向けるよりも早く、夏来の目の前にある球体が、赤い光線とぶつかり横へと押し出される。

 

ゾルバース) 「アァ?」

 

夏来に続き、ゾルバースも声が聞こえた方向へと振り向く。

両者が見つめる先━━━瓦礫の上に立つ人間は、手に炎を宿らせていた。

 

夏来) 「炎条寺君!」

 

炎条寺) 「よう、夏来 すまねぇな、加勢できなくてよ」

 

夏来) 「ううん……ありがとう…」

 

ゾルバース) 「……フフ……アハハハッ! 随分遅かったじゃねぇかァ? テメェが参戦するのを待ってたんだぜェ〜」

 

安堵の息をつき、炎条寺に手を貸して貰いながら立ち上がる夏来。

ゾルバースは突然の加勢者の登場に、両手を広げて歓迎の声を上げた。

 

ゾルバース) 「だが残念だなァ〜 2人相手じャァ……俺も本気を出さなきャいけねェ……」

 

溜息をつき、物足りない様な表情を見せるゾルバース。

広げられた両手が振り下ろされると同時に、周囲が怪しげな空気に包まれた。

 

炎条寺) 「行くぞ夏来!」

 

夏来) 「あぁ!」

 

能力を解放し、両手に炎を纏わせる炎条寺に続き、夏来もワープホールを創り出そうと手に力を込めた。

 

ゾルバース) 「フッ……懲りねぇ奴らだァ……そろそろ終わりにしてやるよォ!」

 

地面を蹴り、その勢いのまま風に乗って飛来するゾルバース。

対する炎条寺は、剥き出しの鉄骨を利用して空中へと飛び出した。

 

ゾルバース) 「ッハハハハ━━━!!」

 

炎条寺) 「テェヤァァァア━━!!」

 

ぶつかり合う拳と拳。

互いに隙を与えない攻防戦が繰り広げられる中、先に優勢を得たのはゾルバースだった。

攻撃を防がれた瞬間に、フリーとなった右足を炎条寺の横腹へ打ち込む。

蹴り飛ばされ、地面へと激突する炎条寺。

 

ゾルバース) 「もう降参かァ? だとしても逃さねェぜ!!」

 

血を吐き、苦痛に歪む顔を見せ、ゆらゆらと立ち上がろうとする炎条寺目掛け、両手から大量の弾幕を繰り出す。

 

炎条寺) 「今だ……夏来━━━!!!」

 

それに気付いた炎条寺が、此処ぞと言わんばかりに夏来へ向けて叫ぶ。

 

………………………

 

………………

 

…………

 

しかし、いつ迄立っても夏来からの返事が返ってこない事に、何か嫌な予感を感じた炎条寺が振り返る。

 

炎条寺) 「な、夏来っ!?」

 

その目に映り込んで来たのは、両手両膝を地面に着き、吐血を繰り返す夏来の姿だった。

 

ゾルバース) 「よそ見してんじャねェ━━━!!」

 

炎条寺) 「うぐっ!?」

 

再びゾルバースの方へ向き直した炎条寺が、大量の弾幕をその身に浴びた。

嘗て無い程の激痛に襲われ、あまりの痛さに身動きが取れない。

そんな姿を見て地上へと降り立ったゾルバースが、炎条寺へと歩み寄る。

 

ゾルバース) 「残念だったなァ〜? 何をしようとしてたかは分かんねェが、この結果だァ………オラ 見てみろォ」

 

炎条寺の髪を掴み上げ、夏来の方へと顔を向かせる。

 

ゾルバース) 「今のアイツにはァ、俺を倒せる力は残ッてねェ……託された2つの力をアイツは無駄にしたんだァ……」

 

炎条寺) 「は……なせよ……クソが…!」

 

ゾルバース) 「あぁ、放してやるよォ せいぜい最後の時間をアイツと過ごしなァ!!」

 

髪を掴む手を目の前に突き出し、そして放す。

重力に引かれて落ちる炎条寺の顔面に、ゾルバースの渾身の一撃が入った。

地面を削る程の強烈な威力だったのか、炎条寺が殴り飛ばされた方角へ、一本の太い線が出来ていた━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激痛に目を固く閉ざしていた炎条寺が、ボソボソと聞こえてくる夏来の声に目を開ける。

 

夏来) 「炎条寺君……ご…ごめん…ね……な、なんか……力が…出ないんだ……」

 

炎条寺) 「う…嘘だろ……マジ…か……」

 

いつから力を失っていたのか、夏来自身にも分からない。

ゾルバースと戦っていた時には、確かに悟神と神代の気配はハッキリと感じていた。

だが、今の夏来には2人の気配を全く感じ取る事が出来なかった。

 

夏来) 「………」

 

炎条寺) 「……諦めんなよ夏来」

 

夏来) 「……!」

 

まだ希望はあるんだ、負けてなんかいない。

そんな意味を込めて語りかける炎条寺の言葉に、夏来の心が突き動かされる。

 

炎条寺) 「負けても……また立ち上がれば、それは負けじゃねぇ!!」

 

夏来) 「炎条寺君………そうだ…そうだよ……まだ負けてない……!!」

 

最後の力を振り絞り立ち上がる2人。

その胸に秘めた悪を倒すと言う決意が、いっそう強く燃え上がった。

 

ゾルバース) 「さてとォ……先ずはどっちから殺してやろうかァ?」

 

しかし、本能に身体は逆らえない。

前方から迫り来る悪を目の当たりにし、2人の足は恐怖に震える。

いや、足だけじゃない……全身が「死」を齎す存在を拒絶している。

 

ゾルバース) 「返答無しかァ……なら面倒だ、まとめて消してやるよォ!」

 

そう言い放った瞬間、その場から姿を消すゾルバース。

そして次に姿を現したのは、2人の顔面に拳を叩き込んだ直後だった。

速過ぎて捉えられないその攻撃に、反撃の形すら作れないまま、壊れ賭けのビルへと殴り飛ばされる。

衝突した勢いでビルが崩壊し、2人は瓦礫に埋もれた。

 

炎条寺) 「っぐ……なっ!?」

 

瓦礫を手で退かしながら起き上がった炎条寺が、空中に浮かぶ巨大な黒い球体に目を見開く。

その視線の先を辿って、夏来も圧倒的な脅威を目の当たりにした。

 

ゾルバース) 「これで貴様ら全員を一気にぶち殺してやらァ」

 

炎条寺) 「な、なんだと!?」

 

ゾルバース) 「さっきは弾き飛ばされちまったがァ、力を失った今のテメェには出来るかァ?」

 

両手を天へと掲げ、掌に存在する球体は秒を重ねるごとに大きくなって行く。

 

仙座) 「……もう…ダメだ………は…ははは…」

 

その様子を遠くから見て居る仙座は、自身が死を迎える事実に、不思議と笑いが込み上げていた。

死を覚悟した仙座を横目に、ニッ怪、幻花、糜爛達は何も出来ない自分達の力を恨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ゾルバース) 「皇 夏来ィ! テメェら共々消えて無くなれェ!!」

 

狂気の混じる雄叫びを上げながら、ゾルバースは夏来達に向けて制裁の一撃を放った。

迫り来る正義という名の皮を被った「邪悪たるもの」に、炎条寺は最後の抵抗を見せる。

 

炎条寺) 「クソッ…! ファイヤーネル━━、」

 

夏来) 「退いて炎条寺君!」

 

炎条寺) 「っ!?」

 

しかしその抵抗を邪魔するかの様に割り込んで来た夏来が、炎条寺の服を掴み出来るだけ遠くへと投げ飛ばした。

地面に上手く着地した炎条寺が顔を上げる。

目線の先、先程まで自分が立って居た所には、放たれた黒い球体を両手で受け止めている夏来の姿が見えた。

 

ゾルバース) 「全く……最後の最後までバカな野郎だぜテメェはよォ!! 強がんなよ、助けを求めろォ! 1人じゃ何も出来やしねぇクズがァァア!!」

 

夏来) 「強がってなんか…いない……! クズだって言われても…構わない……! だけど こんな僕にも、避けては通れない道が……あるんだ…!」

 

ゾルバース) 「クセェ事言ってんじゃねェ!! さっさと━━━死ねェェェエ!!」

 

ゾルバースが力を最大限まで高め、追撃に両手から漆黒のオーラを纏った弾幕を放つ。

そしてそれは黒き球体を貫通し、夏来の身体に直撃する。

 

 

 

 

 

 

諦めちゃダメだ、

諦めちゃダメだ、

ここで諦めたら全てが終わる……

 

 

 

 

 

 

 

耐える

 

激痛に、苦辛に、苦痛に、重苦に、倒懸に

恐怖に、絶望に、諦觀に、諦念に、遺棄に

 

 

 

この身体から全てを奪い去ろうとする闇に

 

 

 

 

 

 

 

だが━━━、

 

 

 

 

夏来) 「ガハッ……!」

 

ダメージを負いすぎた身体は夏来の意思を受け付けず、その身が赤く染まるに連れて抵抗力が弱まり始める。

 

ゾルバース) 「これで━━━━終わりだァ!!」

 

力の差を知らしめるかの様に押し切る制裁の一撃が、衝撃の渦へと夏来を呑み込む。

今まで体験した事の無い程の痛みが、怒りが、悔しみが、悲しみが、ドクドクと溢れ出してくる血と混じり合い心に満ちていく………

 

炎条寺) 「夏来っ!」

 

地へと衝突した球体は、着地点を中心として広範囲の地面を吹き飛ばす。

その時に発生した強烈な突風で、ビルやマンション、多くの家が崩壊した。

近くに居た炎条寺と糜爛達は、飛ばされない様に鉄骨などに掴まり難を逃れた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分に及ぶ荒々しい風音の後、それまでとは打って変わって辺りに不気味な程の静寂が訪れた。

 

武次) 「……ぐ……あ、あれ……い、生きて…る?」

 

物陰に隠れていた武次、泰人、澄香の3人は体験するであろう死の痛みが来ない事に気が付いた。

先程まで立ち尽くしていた場所には仙座達が目を見開きながら「何か」を凝視している。

急いで駆けつけた3人は、其処で衝撃の光景を目の当たりにした。

 

泰人) 「ぁ……ぁぁ……」

 

澄香) 「ま、街が…」

 

視線の先━━、誰もが驚きと絶望を抱く光景。

それもそうだろう。

 

 

東京と言う都市のど真ん中に、底が見えない程の巨大な穴が空いて居るのだから………

 

 

ゾルバース) 「自分を犠牲に仲間を救ったかァ……だが所詮貴様は犬死だァ! クク……クハハハハッ!!」

 

幻花) 「夏来……夏来ーー!!」

 

目の前で起こった事は余りにも酷く、その場にいる全員は受け入れがたい事実から目を背けた。

夏来の死は、幻花にとってこれ以上ない悲しみを植え付けたのだろう。

力無く膝から崩れ落ち、その白く綺麗な頬を涙が伝った。

 

ゾルバース) 「これで俺は最強だァ! テメェらをぶっ殺し、俺はこの世界の神となるのだァァァア!!! 」

 

両手を広げ、歓喜の声を上げながら発狂するゾルバース。

その身体から滲み出る闇のオーラを、空に掛かる黒雲に注ぎ込み始めた。

次の瞬間、黒みが増した雲の中で雷鳴する稲妻が次々と地上へと落ち、彼方此方で火災が発生する。

山が割れ、津波が押し寄せ、人々が泣き叫び、真っ赤な血が舞い、まるでこの世の終わりを見ているかの様だった。

 

炎条寺) 「終わりだ……俺たちの負けだ……俺たちじゃ彼奴を倒せねぇ…」

 

壁に手を付き、右足を引きずりながら仙座達の所まで辿り着く炎条寺。

 

仙座) 「と、友貴……!」

 

炎条条) 「夏来は死んじまった……そして今度は俺たちの番だと……ふざけるな……ふざけるなぁぁあ!!」

 

希望の光が闇に呑み込まれ、完全に勝機を失った今、炎条寺の心にある決心が芽生えた。

 

炎条寺) 「お前たちは生きろ……なるべくここから離れて、どこか遠いところへ逃げろ! 生き延びて、いつか必ず奴を倒せ、ゆりか! 千代、ニッ怪! お前らが夏来の仇を討つんだ、良いな!!」

 

その呼びかけの答えを聞かず、仙座達に背を向けて走り出す炎条寺。

右足の痛みに耐えながら、挫折しそうな自分の心に強く呼びかけた。

背後から放たれる複数の静止の呼びかけに耳を傾けず、只々ゾルバースに向けて猛進する。

 

炎条寺) 「……」

 

夏来が死んでもなお、この世界から脱出する事は叶わなかった。

それ故に、自分たちが今置かれている状況は絶望的なものだ。

レウザとバールドの力を取り入れ、パワーアップしたゾルバースに勝てる者は夏来しか居なかったのだから……

 

炎条寺) 「…………」

 

ニッ怪、仙座、幻花、炎条寺、この4人がかりでもゾルバースにダメージを与えるのは困難だろう。

だったら1人でも多く生き残って、ゾルバースに対抗出来る力を付けなければならない。

 

 

『1人の命すら守れない奴に、多くの命は守れない』

 

 

なんでこんな時に、この言葉が浮かんでくんだよ……

1人の命……夏来を助けられなかったのに、あいつらを助けれる訳ねぇだ?

勝手に決めつけてんじゃねーよ…

 

 

「ここ」に出来る奴だって居るんだからよ!

 

 

死を拒絶する思いが強くなるにつれて、バクバクと跳ね打つ心臓の鼓動。

しかし、今の炎条寺にはそんな思いを打ち消す「覚悟」があった。

 

ゾルバース) 「………まだ生きてたのかァ……」

 

背後から聞こえる荒い呼吸音に振り返ったゾルバース。

そこには戦闘態勢に入った炎条寺の姿があった。

 

炎条寺) 「ふんっ…お前の中途半端な攻撃で死にぞこなったぜ…」

 

ゾルバース) 「ほぉ…? ならば今度こそ死を体験させてやるよォ」

 

 

とうとう、俺の物語に終止符が打たれちまうな。

思い返してみれば、中々楽しい人生だった……

夏来、千代、ニッ怪……お前らは本当に最高の友達だった。

一緒にバカやったり、笑ったり、泣いたり……こんな楽しかった時間は無かった。

 

 

そして、ゆりか……

 

お前に会った時から、俺はお前の事が好きだった。

明るくて、いつも笑顔を絶やさなくて、そんなお前を好きな俺が居た。

けど、それを口に出す勇気が無かった……

表では強がってたけど、本当の俺は臆病で情け無い奴なんだ。

 

炎条寺) 「覚悟しやがれ、ゾルバース!」

 

いつか…何年先になるか分からねぇが、無事にあっちの世界に帰れる手段が見つかったら また会おうぜ!

その時は、俺も勇気を出して想いを伝える。

だから、絶対に死ぬなよ!!

 

 

炎条寺は決意を固め、悪を倒す業火のごとく、その身を炎で包んだ。

 




はいっと……やぁ…また遅れてしまいました……

申し訳ありません!!!!
今後は気をつけます!!

でも〜 (言い訳パート)
資格試験とかぁ……まぁ色々あって書けなかったってのが遅れた原因かもしれないですね( ͡° ͜ʖ ͡°)
ま、次回話はもう70%位書き上げてるんだけどね(´∀`)

あ、それとまた変更事なんですが、やっぱりもう一話分増えちゃいます!!
許してヒヤシンス ペロ…

ま、そんなこんなで次回予告〜!!


ゾルバースに単体で勝負を挑んだ炎条寺。
しかし、その圧倒的な力に敵うはずもなかった。
遂には舞い戻ったニッ怪達までもが、ゾルバースの猛攻に次々と破れ去ってしまう!
そんな絶体絶命の中で、彼らが最後に見た復活の光とは!?

そして……死神がついた優しい嘘とは……

次回 二十一夢【この世界の終わりに希望を抱いた少年】

さぁ〜て! さっさと書き上げちゃうぞ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。