精神もTSしました   作:謎の旅人

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第95話 私の潜入作戦

「せ、セシリアも?」

「そうですわ」

 

 セシリアも肯定する。

 つまりそれはしばらくの間、私は一人で夕食を食べなければならないということだ。

 一人で食べる夕食……。寂しい……。

 その場面を想像した私は泣きそうになった。

 

「あ、あの、詩織。言っておきますけど、わたくしたちは別に詩織と食べるのが嫌というわけじゃありませんの! 本当に一緒に食べられない理由がありますの!」

「そう。だから、泣かないで」

 

 泣きそうな私を二人が慰めてくれる。

 二人がそうだと分かっていてもやっぱり嫌だった。

 

「ぐすっ、分かった」

 

 私は目元を擦りながら言う。

 

「それって私に言えない内容?」

 

 せめてどんな理由なのか知りたい。それを知ることができれば少しはこの気持ちが紛れるかもしれない。知っていて待っているのと知らないで待っているのは全くが違うから。

 でも、その願いは叶わなかった。

 

「申し訳ありませんわ、詩織。それも、言えませんの」

「でも、全ては詩織の……ためなの。時が来たら……言う、から、待っていて」

 

 二人に言うことができないと言われた。

 再び泣きそうになったが、なんとか我慢する。

 

「……分かった。終わったら何をしてたか言ってね」

 

 二人は頷いてくれた。

 そして、しょんぼりとする私によりくっついて、慰めてくれた。

 

「わたくしはあなたのこと、愛してますわ」

「私も」

 

 そう言って周りから見えないように私の両頬にキスをしてくる。

 キスされた私は自然と笑みを浮かべた。

 私ってちょろい。

 

「二人とも、ありがとうね。うん、私、大丈夫だから」

 

 こうやって二度も慰められたのだ。ある程度は大丈夫だ。

 それから部屋に戻って、食堂とは違って、二人と思いっきりいちゃいちゃする。

 今やっているのはキスだ。触れ合うだけのじゃなくて、ちょっとエッチなほうだけどね。

 こうして激しいキスをしているのはもちろんしばらく一緒に夕食を食べられないからだ。その不満をこうやってぶつけているのだ。

 

「んちゅ、ほら、ご主人様、もっとして」

 

 私の不満をぶつけるので、もちろんのこと私が主導権を握っている。

 なんだか今の私はメイドだから、ご主人様から主導権を取っているってことが結構気持ちいい。

 で、今、相手にしているのはセシリアだ。

 ど、同時は、む、無理! 体が足りない。

 私、ハーレム目指しているけど、こういうときに相手をするのは一人ずつだもん。ラノベのハーレムってどうやって相手にしているんだろう。

 それで、私に言われたセシリアは私の胸をがっしりと掴んで、私にキスをする。私のとセシリアの舌は絡み合い、互いを気持ちよくする。

 しばらくすると私の頭の中はぼーっとしてくる。そのせいか、段々と私の攻撃が弱くなってくる。

 

「ふふ、詩織? あなたの言うとおりもっとしてあげましたわよ。なのに、あなた、あまりしてきませんわね。先ほどまでの威勢はなくなったようですわね」

「んっ、な、なくなってないよ! た、ただちょっと休憩しただけだから!」

「だといいですわ」

 

 セシリアは私の首筋をぺろりと舐める。

 くっ、あ、遊ばれてる……!

 私はその悔しさでセシリアを睨む。

 

「ふふ、この状態でそういうふうに睨まれても痛くも痒くもありませんわね。むしろ興奮しますわ。あなた自身でもそれは分かっているんじゃありませんの?」

「…………」

「あら、目を逸らしましたわね。肯定とことですわよね?」

 

 私は小さく頷く。

 うん、分かる。分かるよ。感じたことあるもん。そのときは本当に心地よかった。

 

「詩織の行動を見ているとわざとやっていますのって思うときがありますわ。更識さんはどうですの?」

「私も、思う。ついいじめたく……なる。素でやって、るなら……怖いほど」

 

 はい、素です。素でやってます! 演技とかじゃないです! まあ、確かに自分の行動を第三者視点から見たら可愛すぎるって思うよ。

 うう、もう一人の私がほしいです。

 

「でも、この様子だと素ですわね」

「ん、一番最高の……パターン」

「ですわね。なら、余計に不安がありますわ」

「どこ?」

 

 ちなみにだが、現在の私とセシリアの体勢だが、最初はベッドに寝転がるセシリアに馬乗りだったんだけど、いつの間にかセシリアが馬乗りしてた。

 

「男性から狙われないか、ということですわ」

「普段は……もうひとつのほう」

 

 こうやって二人が仲良く話しているのだが、セシリアの手は未だに私の胸の上だ。しかも、ただ置いておくのではなく、上達したテクニックを使って揉んでくるのだ。

 だからキスを止めてからもずっと胸だけは刺激を与えられていた。

 おかげで先ほどよりは楽になったけど、息は荒いままだ。

 揉み心地がいいのは分かるけど、わ、私の胸はおもちゃじゃないよ。

 

「でも、最近思うようになったですけど、あの詩織が先ほどのように屈辱でわたくしを睨むのはいい気分じゃありません?」

「む、それも確か」

 

 も、もう! 私が目の前にいるんだよ! そうやって話さないでよ!

 そんな私の思いに気づいたのか、セシリアが簪との会話を止め、私を見てくれた。

 

「ふふ、その目はなんですの? もしかして続きをしてほしんですの?」

 

 私をいじめることがくせになったのか、セシリアはそう言ってくる。

 セシリアは貴族であり、美人さんなのでその様がよく似合っている。

 くっ、綺麗過ぎるよ!

 

「し、してほしいです」

 

 私が恥ずかしそうに言うとセシリアは私にキスをしてくれた。

 私はセシリアに抱きつき、キスをする。

 セシリアとキスしたかった私は先ほどよりも激しく舌と舌を絡ませる。今の体勢から私の中へセシリアの唾液が入ってくるが、私はそれを、んぐんぐと飲む。

 他人の唾液が入るということが、なんだかよりセシリアとひとつになれたと感じる。

 

「オルコット、次、私が……したい。さっきから、オルコットばっかり」

「んちゅ、そうですわね。わたくしも満足しましたわ」

 

 私も激しくセシリアを攻めたが、なぜかいつの間にかやられた私は息を荒くして四肢をだらりと投げ出していた。

 な、なんでいつもこうなるの? わ、私も攻めていたのに……。

 快感やらなんやらで頭がボーっとする中で、悔しげにそう思った。

 私のほうが経験あるもん! なのに、なのに! なんで負けるの! というか、みんな上手すぎるよ! 最初のときの下手なあの子達はどこにいったの?

 そんなことを思いながら息を整えていると、いきなり口を何かで塞がれた。

 

「んんっ!?」

「ん、詩織……」

 

 私の口を塞いだのは簪であった。

 

「やっと、できた」

「い、いきなり、んあんっ」

 

 もちろんのこと簪のほうもキスだけで終わるはずがない。

 セシリアと同じく胸を揉んでくる。

 私の体はすでにセシリアによって気持ちよくさせられていたので、ゼロから気持ちよくなるのではない。なので、体の中の熱は保たれたままだ。

 

「ほら、オルコットにした……みたいに、やって?」

「んちゅ、こう?」

「はむっ、ん、んん、そう」

 

 簪と舌を絡ませる。

 そうやって私は二人とちょっと過激ないちゃいちゃをしていた。

 だが、その時間は終わりがある。それが体力の限界や満足ということならばよかった。その終わりは現在の時刻にある。

 そう、私は千冬お姉ちゃんの所へ行かなければならないのだ。

 ただ、それを快感に溺れていた私は忘れていた。

 それを言ったのはセシリアだった。

 

「更識さん、そろそろ詩織が織斑先生のところへ行かなくてはいけませんわ」

「んちゅ、私……まだしたい」

「そんなことを言ったらわたくしもですわ。というか、あなた。昨夜は随分とお楽しみだったでしょうに。詩織も性欲はすごいですけど、あなたもすごいですわよ」

「し、仕方ない。だって、詩織と……エッチしたい、もん」

 

 簪は力の抜けた私の首筋をカプリと甘噛みして言った。

 

「……あなた、結構正直に言いますわね。聞いているこっちが恥ずかしくなりますわ」

「そういうこと、だから……続き、させて」

「それとこれは話が別ですわ。それに」

 

 セシリアは簪に耳元で何かを囁いた。

 さすがに何と言っているか聞こえない。

 セシリアから何かを言われた簪は一瞬目を見開いて驚く。

 気になる。

 二人は離れる。

 

「オルコット、いい、の?」

「別にいいですわ。詩織が愛してくれるのは分かっていますもの」

 

 ? 愛してくれる? なんでそんな話になるの?

 気になるけど聞けない。だってまだこの火照った体が動かないんだもん。そ、それに、まだ、そ、その、一回も満足、つ、つまり、イってない……。だから体が疼くのだ。ひ、一人でしようかな。

 二人が続きをしてくれないので、ついそう思う。

 た、ただ、二人に見られながらは、は、恥ずかしい……。が、我慢しないと。

 

「詩織、織斑先生の……ところへ行かないと」

 

 さっきまで私とキスをしていたのかと思うほどの発言を簪はした。

 

「ん、そうだね。行かないとお姉ちゃんを待たせちゃう」

 

 私は疼く体を何とか我慢して、二人にキスをして千冬お姉ちゃんの所へ向かった。

 現在、私は千冬お姉ちゃんに言ったとおり、外からの進入を試みていた。外はひんやりとしていて、熱くなった体を冷やす。

 ただ、欲求のほうは治まらないが。

 

「ふ、二人とも……中途半端だよ! わ、私にたくさん気持ちよくさせておきながら途中で終わるなんて!」

 

 体の疼きを感じながらぷんぷんと怒って独り言を言う。

 本当はどこか物陰に隠れてこの疼きを解消したいのだが、さすがにこれ以上は千冬お姉ちゃんを待たすわけには行かない。だから、この状態で向かっている。

 そうやって誰にも見つからずに何とか千冬お姉ちゃんの部屋の窓へと辿り着く。

 部屋の電気が点いているので、どうやらいるみたい。

 私は窓をこっそりと開け、靴を脱いで進入した。

 

「おい、詩織。勝手に入るのはいいが――!?」

 

 勝手に部屋に入った私に千冬お姉ちゃんが叱ろうとしたが、その言葉は私のほうへ振り向いたと同時に途中で止まった。

 

「そ、その格好は?」

 

 あっ、そういえばメイド服だった。

 お姉ちゃんの言葉が途中で止まった理由が分かった。

 そうだよね。私だって恋人がいきなりメイド服なんて着ていたら同じようになってた。

 

「え、えっと、二人に怒られちゃって……」

 

 千冬お姉ちゃんは恋人なので、罰ゲームだと嘘はつかない。

 

「そ、そうか」

 

 そう言いながら私に近づく。

 私は部屋を汚さないように靴を置いた後、近づくお姉ちゃんと向き合う。

 もちろんお姉ちゃんが何をしたいのか分かる。私はただ待つだけだ。

 私に十分に近づいたお姉ちゃんは私を抱きしめる。

 

「詩織……」

 

 千冬お姉ちゃんは私の耳元で呟く。

 

「可愛すぎるぞ」

「喜んでもらえてよかったです」

 

 しばらく抱きしめられて離される。

 お姉ちゃんの部屋は私たち生徒の部屋とあまり変わらない。ちょっと狭いけど、広いのは確かだ。そして、内装だが、あまりオシャレ的なものはない。

 机には書類が散らばっており、その書類の上にはパソコン。で、もう一つある机にはコップが置いてある。

 あと、ソファーがある。

 

「結構普通ですね」

「まあな。どういうものを想像してたんだ?」

「う~ん、今と変わりません」

 

 千冬お姉ちゃんってなんだかおしゃれに興味がないって感じだもん。だから、こういう部屋だろうなと思っていた。

 

「ふふ、だろうな。私はあまりおしゃれなどに興味がないからな。化粧もあまりしない」

「そういえばしてませんね」

 

 千冬お姉ちゃんも束お姉ちゃんも化粧はしていなかった。それでいて綺麗なのだから羨ましいことである。ただ私もしてないけどね!

 

「詩織、いつまでも立ってないで、座っていいぞ」

「じゃあ」

 

 私はソファーにぽすんと座る。

 うわあっ、結構ふんわりとしてる! 結構気持ちいい!

 

「気に入ったみたいだな」

「はい! 気に入りました!」

 

 千冬お姉ちゃんが私の隣に座る。

 私は千冬お姉ちゃんに甘えてその肩に頭を乗せる。

 

「今日は私の部屋に泊まるんだな」

「そうですよ」

 

 私も楽しみにしてた千冬お姉ちゃんの部屋でのお泊り。

 えへへ、やっぱり好きな人とお泊りっていいですよね! 本当に楽しみです。

 

「そういえば風呂は入ったのか?」

「まだです」

 

 本当なら風呂に入ってから千冬お姉ちゃんの部屋へ行こうと思ったんですけど、二人といちゃいちゃしてたらそんな時間、なくなってしまいました。せっかくのお姉ちゃんと会えるのですから、正直に言うと綺麗な状態で行きたかったんです。

 それに今日はお掃除をしました。つまり、私の体にホコリが付着している可能性がある。抱きつきたくても千冬お姉ちゃんを汚してしまうと思うと、思わず躊躇ってしまう。

 

「そうか。なら、ちょうどいい。私と入ろう」

「……はい」

 

 私は顔を熱くさせて言った。

 千冬お姉ちゃんと、お、お風呂……。一緒に寝泊りだけでも興奮するのに、さらに一緒にお風呂だなんて! ねえ、これって夢? 夢じゃないよね? 夢ならさっさと覚めてほしい。一緒にお風呂に入って寝泊りして、そして、夢から覚めるなんて残酷なことにはなってほしくない。


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