精神もTSしました   作:謎の旅人

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第86話 私もついにオタク

 で、簪とのデート当日。

 今日のデートは遠い場所でのデートとなるので、授業があるときよりもちょっと早い時間に起きた。朝食だが、食堂はすでに開いているので、困ることはなかった。

 私はやっぱりデートだから簪は待ち合わせをやりたいのかなと思っていたが、そんなことはなく一緒に出ることとなった。

 ちなみにセシリアはまだ寝ている。寝る時間が遅かったせいだ。

 私たちは……大丈夫。眠いけどいつも通りだもん。夜更かしは結構してますので。

 

「簪、忘れ物ない? 今日は簪の大好きな店に行くんでしょ? お金はたくさん持っていったほうがいいよ」

「ん、分かってる。ちゃんと……持ってる」

 

 やはり趣味が絡む店に行くとなると絶対に何かを買う。今回は簪の大好きな店を巡るということなので、これは確実である。

 私も本でも買おうかな。ラノベ? だっけ。簪から借りたけど、結構面白かった。前世はコンピュータオタクだったから、この人生では趣味にこっち側のオタクになるよ! 内容は……行ってからでいいや。

 

「じゃあ、行こうか」

「うん」

 

 私たちは手を繋いで、向かった。

 モノレールに乗って、それから新幹線に乗った。新幹線内ではセシリアのときのようにいちゃいちゃすることは、周りに人がいたため、することはなかった。

 

「簪、もうちょっとくっついていい?」

「いい」

 

 許可は貰ったので簪の肩に頭を乗せる。それだけではなく、もちろん手と手を繋ぐ。恋人繋ぎで。

 こうやって繋ぐのはやはり好きだ。この繋ぎ方は簡単には離れることはできないから、まるでこれからの私と恋人たちの未来を示しているように思えるから。

 この繋ぎ方を恋人繋ぎと言った人は素晴らしき人だ。よく分かっていると思う。

 

「詩織は……可愛い」

 

 しばらくそうしていたら簪がそう言って来た。

 

「? いきなりどうしたの?」

 

 もちろんのこと私が、『月山 詩織』がとても可愛くて、とても美しいというのは知っている。

 でも、他人から言われるのは結構うれしい。特に恋人からというのは。

 

「駅にいたとき……みんな見てた。男女関係なく」

「そうなんだ」

 

 そういう目で見られるのはもう慣れていたので、気づかなかった。

 そっか、見られていたのか。まあ、見られるのって可愛くて美人な人の宿命だね。どんなに嫌がっても付き纏うものだ。気持ち悪いとか思わない。

 だって私だって前世ならばじろじろといやらしい目で見ていたと思うから。

 

「きっとみんな……詩織を恋人にしたいとか……思ってた、はず」

 

 おそらくはそうだろうな。または、この体のほうを狙っていたかもしれない。

 私が前世だったら絶対に自分のものにしたいって思ったもん。だから前者も後者もよく分かる。今でも鏡見ても思うしね。

 

「そんな詩織が……私の、もの。ちょっと優越感」

「ふふ、そうだよ。私は簪のものだよ。恋人だけが私を好きにしていい」

 

 そう言うと簪はもう片方の手を周りにばれないように工夫して、私のスカートの中に手を入れてきた。

 

「んっ」

「しっ、声出したら……ダメ」

「わ、分かってるよ」

 

 いきなりされたら誰だって声出ちゃうよ。

 

「で、でも、いきなりこんなこと……」

「エッチなことは……しない。ただ、男どもが欲しい……って思って、いる、詩織が……私のものだっていう優越感を……堪能したいだけ」

 

 な、中々簪も黒いところがある。

 まあ、確かに自分の恋人が人気ある人で、そんな恋人を自分が好きにしているというのはとても優越感を感じられ、とても興奮する。

 皆が知らない恋人の姿には興奮しかない。

 

「ふふ、詩織に告白した……人の前で、いちゃいちゃしたい」

 

 うん、簪が黒い。

 優越感を感じたいってのは分かるけど、さすがにドン引きだよ。

 

「……言っておくけど、そんなチャンスがあってもやらないからね」

「分かってる。私も……エッチな詩織を……見せたく、ない。詩織のエッチな姿を見る、のは……恋人だけでいい」

 

 簪はスカートの中に入れた手を動かす。

 ぞくぞくとした感じが撫でられたところから這い上がってくる。

 

「あ、あまり動かさないで……。し、したくなる……」

「私は……別に、いい……。で、デートじゃなくて……そういう日でも……」

「!?」

 

 そ、それもいいかも……。

 そういうエッチなことをするだけの一日もいいかも。

 い、いやいや待て! そういう一日よりもデートをするんだ。それに、そ、そういうのは夜だって決まっているよね。

 

「だ、ダメだよ。デートをしよう」

「ん、仕方……ない。でも」

 

 私を見つめる簪はにやりと笑う。そして、その顔を耳元に近づけ、

 

「実は今日は……オルコットは部屋には……い、ない」

「!!」

「意味、分かってる、よね?」

 

 もちろんのこと分かっている。

 これは簪からの誘いだ。それもエッチな誘い。本番は……ま、まだだよね。

 私は簪の言葉にこくりと頷いた。

 

「じゃあ、楽しみに……待ってる」

「は、はい……」

 

 うう、私って押しに弱い過ぎるよ……。

 というか、簪さん? 何か色々と変わってません? 結構積極的になっているよ。せ、セシリアは、ち、違うよね? こんなに積極的じゃないよね? むしろ今の私と同じ立ち位置だよね?

 私は新幹線が目的地に着くまで、ずっと太ももを撫でられ続けた。声を出すのを我慢していたので、私の体力は着くころにはほとんど無くなっていた。

 きっとぐったりする私を見た人は首を傾げて不思議に思っただろうな。

 まあ、色気のあるような感じではないので、問題ないだろう。

 

「詩織、大丈夫?」

「だ、大丈夫、だと思う」

 

 気持ちよかったのだけど、下着が色々と言えないことになるほどではなかった。

 新幹線を出て、駅を歩いていると、うん、すごい。アニメキャラが描いている服を着ている人がいたり、たくさん買ったのだろうと思わせる袋を持った人がたくさんいた。もちろん、普通の人もいる。

 こ、これがオタク、か。

 

「簪は来たこと、あるんだよね?」

「ある。もちろん、何度も」

「案内、お願い。どこに何があるのか全く分かんない」

「今回は……私に任せて。しっかりリードする」

 

 私の手を引いて、簪は迷わずに進んで行く。

 駅を出るとどうやらすぐ近くには簪が目当ての店があるようで、駅で見たようなオタクの人でいっぱいだった。

 ちょっと遠くでは路上に人だかりが出来ていて、その中心にはコスプレをした人がいた。

 あれはコスプレイヤーとその人を撮影などをする人たちなのだろう。

 

「簪もコスプレして、あんな風に撮られたことってあるの?」

 

 だとするならば嫌だな。簪は私のものだもん。

 撮った写真で何をするのか知らないけど、写真の中の簪も私のものである。

 

「して、ない。あんな風に……するのは……恥ずかしい」

 

 簪は恥ずかしそうに言った。

 よかった。コスプレってエッチな服装をするときもあるみたいだから、そんな姿の簪を撮られたくはない。撮るのは私だけだね。

 そうだ! なんかこの頃、簪にやられてばかりだからエッチな姿の簪を撮って、恥ずかしがらせたい。

 

「にしても、や、やっぱりコスプレしている人の服ってエッチだよね?」

「……うん。あんなに……面積の少ないのは……少数。もうちょっと……面積は多、い」

 

 うん、『ちょっと』なんだ。やっぱり恋人にさせるときは私の目の前だけだね。

 

「私の目の前なら……やってもいいよ? したい?」

「…………ちょっと、興味ある、かも」

 

 簪はちらりとコスプレショップを見た。

 お金はたくさんあるから、今日コスプレ用の服を買うのもいいかもしれない。いや、私のを買うんだったっけ。

 

「詩織、まず、あの店」

 

 気を取り直すかのように簪は案内を始めた。

 

「あの店は何が売っているの?」

「主にDVD。私が見ている……やつを買ったところ」

「あの店で買っているんだ」

「まあ、似たような……店ばっかり……だけど」

「あれ? そうなの?」

 

 たくさん店があるのに似たような店なのか。う~ん、よく分からん。

 

「そう。まあ、あまり気にしないほうが……いい」

 

 うん、気にしないでおこう。

 にしても、こうして周りに注意しているとやっぱり私への視線が多い。やっぱり異性からの視線というのはちょっといい気分ではない。

 うう、これも仕方ないことか。私でも見惚れるんだもん。

 

「詩織は……見たいの……ある?」

「う~ん、私、簪が紹介するまでこういうのは興味なかったから。だからまだない。何か紹介してよ」

「ん、紹介する」

 

 今回のデートは私の出る幕ではない。今回は全てを簪に任せよう。

 でも、最後に上に立つのは私なんだからね! 絶対に簪を負かせるんだから!

 

「? 何で拳を?」

「あはは、何でもないよ。気にしないで」

「そう」

 

 ともかく店の中に入ると似たような店がたくさんあるせいなのか、表の通りと違ってそんなに人がたくさんいるというわけではなかった。店も小さいというわけではないので、そんなに窮屈な思いもせずに進むことができた。

 結構余裕があってよかった。窮屈だったら痴漢されたって良いように言い訳されるかもしれないからね。

 ちなみに世の中は女尊男卑とはいえ、前に述べたようにあまり意味はないし、法律なども特別に男側が悪いということになるわけではない。だから下手な冤罪なんて女だから、男だから、とかそういう理由で認められるわけはない。

 まあ、おかしな風に育てられていると女王様気分な人が出てくるんだけどね。

 

「ここが私の好きなジャンルのあるところ。携帯持ってるから……好きなもの探してきて……いい、よ」

「分かった!」

 

 デートだというのにいきなり別行動。

 だが、簪らしいデートだ。不満はない。

 とりあえず私は簪から離れて言われたとおりに自分の好みに合った、アニメを探しに行った。

 まあ、私は前世が男ということもあり、少女漫画系のアニメは候補から除外だ。いや、だって女主人公の立場で男キャラクターと恋仲になったりするんだよ。女の子大好きの私には耐えられない。

 そういうわけで除外なのだ。

 ふむふむ、このあたりかな。

 私が辿りついたのは、男性が好きそうな可愛いキャラが出てくるアニメだった。

 もちろん恋愛要素ありだ。

 主人公が男なのだが、前世が男であり、現在も女の子大好きな私には無問題である。女の子といちゃいちゃするというだけで最高だ。アニメを見て、簪たちにやりたいことが見つかるかもしれないしね。

 

「これとこれがいいかな。評価もいいみたいだし」

 

 評価はもちろん気にする。お金がたくさんあるけど、無駄に使うなんてことはしない。ちゃんと当たりなものを買うよ。

 ちなみに評価は手に持っている携帯で見ている。

 ん? おっ! これも面白そう! あっ、あれも!

 そうやってDVDを集めていたら、結局籠いっぱいになっていた。

 こんなにいっぱいになるのは、全巻全てを買っているからだ。だって、一巻ずつ一巻ずつ買って、そのアニメがとても気に入ったのに次行くまで待たないといけないのって、正直苦しいもん。だから全巻買ったのだ。

 面白くなかったらのことは考えてはいない。

 

「さて、一先ずはこれでいいかな」

 

 全部見るのにも時間がかかるだろうし、毎日見るわけではないからさらに時間がかかる。全て見終わる頃にはまたここに来ているだろうな。

 買うものは買ったので簪と合流することにした。

 簪は満足な顔をして、こちらへ歩いてくる。

 うん、デートらしくないけど、あんな顔をしてくれるならば十分満足だ。

 

「結構、入れた、ね」

「うん! 結構面白そうだったから! 簪は少ないね」

「目当てのものしか……なかった」

 

 どうやら新しい出会いはなかったようだ。

 

「じゃあ、買おうか! あっ、私が全部払うよ!」

 

 もちろんのことここは恋人として私が払うべきだろう。

 

「!? ま、待って! 私のだけでも……数万はす、る! さすがにそこまで、は!!」

「大丈夫だよ。お金はあるから! 今日は簪の初デートなんだから遠慮することはないよ」

「でも、それを受け、入れると……詩織を恋人じゃなくて……財布の扱いに……なり、そう。それは嫌だ。だから、これは自分で払う」

「分かった。じゃあ、他のやつを私が払うよ」

 

 私も簪からの愛が欲しい。財布に対する愛はいらない。愛し合う関係がいいのだ。

 結局互いにそれぞれの物を買うことになった。

 

「えへへ、たくさん買ったね!」

「初めから……買いすぎた……」

「まあ、いいじゃない。ただちょっと早いか遅いかってだけだよ」

 

 でも、これじゃ荷物が邪魔になる。きっとこれからもたくさん買うから荷物を置く場所を確保しておいたほうがいいな。もしなかったらホテルの一室を借りるなんてことも。

 最後のは冗談。さすがにやらない。

 

「荷物置く場所ってないの?」

「あるには……ある。ただし一日借りるのに……四千円する」

「結構高いね」

「そう。だから、みんな使わ、ない」

 

 そんなことに金を使うなら、趣味に金を使うってところか。

 私もそれに覚えがある。

 前世に電車を使えば二十分のところをお金がかかるからって自転車を使って時間がかかりながらも行った。電車だと行きと帰りで千円程度だったのだが、無駄遣いしたくはなかったのだ。それに自転車で行ける程度だもん。

 

「にしても、そんなに利用者がいないのに儲かるの?」

「問題ないみたい。経営しているの、は……結構有名なオタク系の店。余裕はある、みたい」

 

 別にソレで儲けようなんて考えていないみたい。ただ客のことを考えて作ったけど、客の荷物は多いのでそれなりの場所を取るし、そんなに数は作れない。だったら高くしてしまえってことなのかな?

 まあ、いいや。それを使おう。買い物のときは楽をしたいから。


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