まあ、失敗はすると思うけど、罰なんだから精一杯するよ。
これは二人を不安にさせて罰なんだから。
「詩織が過ごすのはほとんどがここですわよ。それだとわたくしが詩織を見る時間が少なすぎますわ。だからここで過ごしたいんですわ」
「むう、だけど、寮則に――」
「引っかかりませんわ。部屋に住み着くのではなく、泊まるだけですもの。ちゃんと調べましたわ。もちろん認めてくださいますわよね?」
「…………認める」
おっと、私が色々と考えている間に結構話が進んでいた。
話の内容からしてセシリアがしばらく私の部屋に泊まるようだ。
「詩織、話は聞いて――ませんでしたわね」
なぜばれたし。
「来週からメイド、よろしくお願いしますわね。衣装はわたくしたちのほうで用意しますわ。そのときにいろいろと言いますけど、これは罰なのですから大人しく従うようにお願いしますわね。あと、わたくしも
「うん、よろしく。でも、ここで勝手に決めていいの? ルームメイトの人には?」
「あとで言っておきますわ」
ともかく、セシリアとしばらく寝食を共にするのか。それはとてもうれしい。やっぱりセシリアも恋人だから一緒に過ごしたいと思っていた。完全にルームメイトにはなれないが、泊まることができるのは幸いだ。
ああ、でも、誰かがいるときにいちゃいちゃするのって難しい。というか、恥ずかしいかな。
さすがの私も誰かに見られながらいちゃいちゃする勇気はなかった。
「じゃあ、さっそく荷物を持ってきますわね」
そう言って、小走りで自分の部屋へ向かっていった。
残された私と簪は流される感じで部屋の整理を始めた。
「簪とセシリアと一緒にいられるなんてやっぱりうれしい」
「私は……詩織との時間が……少なくなる、から嫌」
「そうだけど、まあ、将来のための予行練習だと思おうよ。い、一緒に暮らすんでしょ?」
「暮らす。でも、まだ詩織を独り占め……したい」
ハーレムである以上、私を一人占めというのは非常に難しいことであるのは分かりきっている事実だ。やっぱり分かっていたけど、一対一の場をどううまく設けるのかが一番重要のようだ。
うん、私のことを愛してくれている恋人たちのために、私も頑張らなければ。
もう平等なんて軽々しく使わない。私が実現できるのはそれに近づけるだけ。私はできるだけ平等になるように時間を作るのだ。
こういう大事なことに早めに気づいてよかった。
「ちゃんと二人きりの時間作るよ」
「お願い」
私たちはベッドに座り、キスなど過激なスキンシップはせずにただ寄り添うだけだった。それだけでも幸せな気分だ。
あ~幸せ。もうこのままだらだら過ごしたい。
「そういえばお姉ちゃんはどうしよう……」
できるだけ平等に近づけようとは思うが、お姉ちゃんは色々あるのでそれが難しいのだ。
やっぱり週末にお姉ちゃんの部屋に泊まって、それでつり合せよう。
お姉ちゃんの部屋へ行っていいのは来週からだ。そのときはお姉ちゃんにもご奉仕しよう。
よ、喜んでくれるかな?
「詩織、私がいるときに……他の人のこと、考えないで」
「ごめん」
おっと、また変な失敗を。私だって恋人が別の人のことを考えていたら怒るくせに。
「思ったけど……なんでお姉ちゃんなの? 詩織の言う……お姉ちゃんって織斑先生、だよね?」
「うん、そうだよ。お姉ちゃんって呼んでいるのは、わ、私がね、思わずお姉ちゃんって呼んじゃったからなの」
「ああ、先生をお母さんって呼ぶアレ?」
「うん、それだよ。まあ、結果から言うとよかったけどね」
「ふうん」
ちょっと嫉妬したのか、私の膝の上に座ってくる。
全く本当に可愛いぜ!
「お待たせしましたわ!」
バンッと音を立ててセシリアが入ってきた。その手にはバッグ。
結構高そうなバッグだな。私には真似できない。やれるけどやらない。
にしても本当にうれしそうだ。
「って、またですの!? なに先に楽しんでいますの!? わたくしの嫌がらせですの!?」
「ち、違うよ! ただちょっとゆっくりしていただけだよ」
「ただゆっくりするだけでそんなにくっ付きませんわ! どう考えてもいちゃいちゃしていたではありませんの! ずるいですわ!」
セシリアは荷物を部屋の隅に置くとすぐさま簪と押してどかす。
「きゃうっ」
簪が可愛らしい悲鳴を上げる。
「ここはわたくしの場所ですわ!」
セシリアが私の膝の上に座った。
あっ、ちなみに私たちは身長の差があまりないので、乗っている子の背中に顔を埋める形になる。決して多くの人が想像するような乗られている子の肩から顔を覗かせるなんてことはできない。
お姉ちゃんなら差が明確に出ているからできる。やってもらったからね。
お姉ちゃんの膝の上、か。いつも乗られる側が多いからお姉ちゃんには簪たちの立場になりたい。
「なんだか結構座り心地がいいですわね」
「言っておくけど私、椅子じゃないよ」
「分かってますわよ。でも、本当に椅子にしたいくらいですわね」
確かにやわらかいから気持ちいいもんね。もちろん脚が脂肪だらけという意味ではない。
「くっ、オルコット! 私を……突き飛ばすなんて!」
「いいじゃありませんの。あなたは随分と楽しんでいたようですけど、わたくしはそうではありませんのよ。ちょっと譲ってもらってもいいじゃありませんの」
おっと、セシリアが私の上で動くから崩れ落ちそうだ。私はセシリアを支えるために腰に腕を回した。
い、一応もうちょっとくっつかないと危ないよね?
私は腕に力を入れてさらに私とセシリアの隙間をなくす。
これでオーケー! やっぱりこうやってくっ付くのって最高!
「オルコット、どいて」
簪がベッドの上を四つんばいになりながらこちらへ近づく。
「却下ですわ。わたくしもこうしていたいんですもの」
「私だって」
簪が何とかセシリアをどかそうとするが、私が抱きついているということもあり、セシリアの体が左右に揺れるだけだった。
「ほら二人とも喧嘩しないで」
私は簪がいる反対側にセシリアを置く。恋人たちに挟まれる形になった。
こうやって三人でいるのってあまりないからどうすればいいのか分からなくなる。
「なんだかこうやって三人きりっていうのも珍しいよね」
とりあえず話をする。
「まあ、当たり前ですわ。わたくしも更識さんもハーレム反対ですもの」
となるとさっきみたいな場面を見られるのはあまりよろしくないのかな? それとも同じようにすればいいのだろうか?
むむむ、まさかハーレムが夢と言っていた私が第一歩で躓くとは。
私がそうやって悩んでいると二人が息を合わせたかのように押し倒してきた。
ベッドに三人並んで横たわる。
「ど、どうしたの?」
思わず声が出た。
「わたくし、ハーレムは嫌ですわ」
「私も嫌」
「でも、わたくしたちはあなたの恋人ですわ。詩織がハーレムを作っているのに普通の恋人のようにするのは詩織を見ていてあきらめましたわ。なので先ほど言った互いにライバルではなく、良き友人でいようという協定を結びましたの。もちろん先ほどのようなことはありますけど」
「別に互いに嫌いというわけじゃ……ない。詩織の恋人だから……嫌いだって思う、だけ」
二人はそう言いながら互いに自分側にある私の腕にぎゅっと抱きついた。
簪の控えめな胸とセシリアの十分な大きさの胸が伝わってくる。
「だから詩織はわたくしたちの仲が悪くなるとか気にしないでくださいまし。わたくしたちが望んでいるのはあなたを独占することではなく、あなたが幸せになってくれることですわ。あなたを独占しようとすることで、あなたが悲しむのでは本末転倒ですもの」
そう言ってくれると私はうれしく思う。
ハーレムは作ったけど、私が思い浮かべていたハーレムって今みたいに恋人たちがこういう風にしてくれることだ。
つまり、今、ハーレムという夢が叶ったと言ってもいい。
「私、絶対にみんなを幸せにするからね。絶対に手放さない。一生放さないから」
私がそう言うと二人は顔を真っ赤にして、私の腕に顔を押し付けた。
「こ、こんなときにあまりうれしいことを言わないでくださいまし」
「し、詩織の、ば、バカ……」
なに、この子達。めちゃくちゃ可愛いんだけど! やはりうちの子は可愛すぎる。もう恋人たちがこういう反応を見せるたびに思う。この子達は私に襲ってもらいたいのか。
私は仰向けからうつ伏せになると二人をぎゅっと抱きしめた。
二人も私を抱きしめ返してくれる。
「詩織、その、わたくしたちもあなたのこと、放しませんわ」
「私も同じ」
うれしくて私はそれぞれの頬にキスをした。
しばらく互いのぬくもりを感じていた。
「さて、そろそろお風呂だね」
色々あってまだ風呂には入っていなかった。
さて今日はセシリアもいるから三人か。二人で結構窮屈だけど入れるかな?
二人に前と後ろを同時に洗われてみたい。もちろん私を洗うものは二人の肌で。ほ、ほら、よくあるじゃん、そういうのって。自分の体に泡を付けて洗うってやつ。
前世でやってみたけど、結構エッチだったのでつい調子に乗って何度かしてもらっていた。
ぜひそうやって二人で洗われみたい。二人ではまだだからね。
そうだ! 今度お姉ちゃんのところに泊まりに行ったときに、お姉ちゃんにやってあげよう! 多分喜んでもらえるはず。
「そ、そうですわね」
「……風呂」
二人は頬を赤めて言う。
やっぱりどういうことか分かっているようだ。嫌だとか言わないってことは期待しているってことだよね! つまり許可を貰ったも同然!
「三人で……入ろうね」
私は風呂に入ってからの出来事を暗示するかのように二人の胸を軽く揉んだ。
二人は色のある声を僅かに漏らす。
「ほら、行こう」
顔が赤い二人は大人しく何も言わずに脱衣所へ向かった。
むむ、やはりせまい。
「ねえ、さすがに狭いから部活動用のシャワー室を使わない?」
シャワー室は前にセシリアと行った事がある、あの場所である。
あのときは確かセシリアがハーレムを認めてくれたときだったっけ。そのときは他の恋人がいるときは恋人らしくしないって言ってたっけ。それが今ではこうなのだから不思議なものだ。
「さすがに狭いからやりにくいよね」
「でも、さすがにこの時間帯は……」
「大丈夫だよ。私がちょちょいのちょいって弄ればドアは開くから」
「……それ、大丈夫なんですの?」
「大丈夫だよ。ばれるなんてヘマはしないよ」
私たちは部屋を出て、さっそくシャワー室へ。
「詩織、本当に……やる、の? ここのシステムは結構……固い」
不安げな簪が言う。
「大丈夫だよ。こういうことなら私の腕は世界の上位に入るって自負しているから」
それを見せ付けるかのように端末を使い、シャワー室のドアのロックをあっさりと解除してみせる。
ピッという音と共に、ドアの横に付いているランプが赤から青へと変わった。
「ね?」
そう笑って言うと呆れられた顔をされた。なぜだ。
ともかく中へ入る。
うん! やっぱり広いっていいね!
さっそく私たちは服を脱いで、全裸になる。最初に服をすべて脱いだので、二人の脱ぐ様をゆっくりと見ることができた。
私が見ているせいか、二人の顔は真っ赤で動きはぎこちない。
そして、ついに下着姿に。
「み、見られると……脱げない」
「そ、そうですわ。そんなに見られると……」
二人は手で隠す。
そうやって隠すのはいいけど、それが私を余計に興奮させるんだよね。
「ほら、隠さないで。私に見せてよ」
私はこの体を見せ付けるかのように堂々としている。
そのためか、二人の視線が私の体を見ていた。ただ、やはり男とは違って同じ性的なものでも、何と言えばいいか、不快ではない。
「や、やですわ!」
「嫌じゃないよ。私に二人の全てを見せて。まだ下着だよ。裸じゃない」
私はちょっとだけ手助けする。私は隠す手をちょいってどかす。二人の手はあっさりと動いた。二人の下着が完全に丸見えになった。
うん、やはりただの布の下着と誰かが着ている下着だったら後者が一番興奮するね。
「目が……エッチですわ」
否定はしない。
「詩織は……見たい、の? 私たちの……裸」
私はこくりと頷く。
すると簪は下着に手をかけた。
「なっ!? 更識さん、何をしていますの!?」
「何って……裸に……なる」
「へ、平気ですの!?」
「……詩織が喜んでくれる、なら」
簪はポッと頬を赤めながら言う。
そして、簪はセシリアの制止を無視して、すべての下着を脱いだ。
「さ、更識さん!?」
「オルコットも脱ぐ。わ、私だって……恥ずかしいけど、詩織が私の体を見て……喜んでくれる、から。オルコットは嫌なの?」
「い、嫌じゃありませんわ」
そう言ってセシリアもゆっくりとだが、下着を脱ぎ始めた。
私はセシリアの脱ぐ様子をじっくりと見つめる。
むう、やはり脱いでいる様子を見るのもいい。隠されたものが見えてくるというのが良いと言えばいいのだろうか。
「詩織、これで……いい?」
「あ、あまり見ないでくださいまし……」
二人は両手で先ほどのように胸などを隠す。