精神もTSしました   作:謎の旅人

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第73話 私のハーレムは絶対に男子禁制

 翌日、私は簪とセシリアといちゃいちゃしてから教室へ入った。

 すでに登校している子達が騒いでいる。内容は鈴のことだ。名前は出てはいなかったが、転校生が来たということが噂になっていた。主に中国の代表候補生ということが噂になっている。

 まあ、そうだよね。噂になるのってそこくらいだよね。

 ここはIS学園でISを動かせるのは一夏を除いて女性のみ。異性が来るならまだしも、同性が来るのだ。前世のような『可愛い子が来るのかな?』や『かっこいい人かな?』などはない。

 きっと鈴が普通の子だったらもっと静かだったんだろうな。

 多分『今日、転校生が来るんだって』『ふ~ん』で終わりそう。

 悲しいけどこれが現実なのよね。

 まあ、それよりも鈴に会って好感度を上げたい。一応友達みたいになってはいるけど、まだ不安定な関係だ。どちらかというと顔見知りとかそういうのが近い。

 しかし、問題がある。

 

「どうやって仲良くなるか……」

「何がですの?」

「っ!?」

 

 考え事をしていたときに突然話しかけられたので、驚いてしまった。

 声を出さなかったのはさすが生徒会長モード! いつもの私なら悲鳴を上げていた。

 

「ちょっと考え事よ」

「わたくしも一緒に考えましょうか?」

「いえ、今のところ大丈夫よ」

 

 あっ、そういえばセシリアには鈴のことを話していない。やっぱりここは言ったほうがいいよね。隠し事は絶対にダメ! というわけではないのだけど、このことについては言ったほうがいいはず。

 だから私は、セシリアに顔を近づけるように小さな声で呟く。

 するとセシリアは何を勘違いしたのか、頬を赤めてもじもじしながら顔を寄せてきた。

 あっ、もしかしてキスでもするのかって思われてる?

 

「セシリア、言っておくけどキスしないからね」

「!!」

 

 自分の勘違いだと気付いたセシリアは別の意味で顔を真っ赤にした。

 私は真っ赤なセシリアが落ち着くまで、その可愛い様子を見ながら待った。

 

「こほん、なんですの?」

 

 顔を近づけたセシリアが問う。

 

「実はね、気になる子がいたの」

 

 この場面を第三者の立場から見ると、『あなたよりも好きな人ができたの。だから別れて』って場面に見えてしまう。

 

「そう、ですの」

 

 セシリアは一応何ともないように答えたが、表情を見れば『不満』と出ていた。

 セシリアも簪と同じでハーレム反対だからね。今は納得というか、抑えてもらっている。

 

「誰ですの?」

「今日転校してくる子よ」

「……その相手とどういう繋がりですの?」

 

 まあ、そうなるよね。だっていきなりまだほとんどの生徒が見たことのない相手を恋人にするって言ったんだから。

 

「昨日の夜にちょっと会って、困っていたから助けたの」

「……ただそれだけですの? もうちょっと何かあるかと思いましたわ」

「残念だけど本当にこれだけ」

「その方は大丈夫なんですの? あなたがハーレムをあきらめないのは理解してますけど、その方があなたを不幸にするようでしたら他のあなたの恋人たちと反対しますわ」

 

 セシリアの言葉に冗談などない。本気で相手次第では反対するようだ。どのような手かは知りたくもない。

 ただどんな手を使おうともそこに私の幸福を願っての行動ならばうれしい。まあ、そのようなことはないと思うけどね。

 

「大丈夫。私の見る目は確かだよ。あの子は問題ない」

「その方と何を話されたのかは知りませんけど、演技をしていたのではないのです?」

「何のために?」

「それは……織斑一夏をどうにかするためにではありません? こんなおかしな時期にわざわざこの学園に来ることを考えればおかしくはありませんわ」

「でも、あの子は一夏と小学生で一緒だったってよ。しかも一夏のこと好きみたいだし。だから代表候補生としての立場を使って無理やりここに来たんだと思うんだけど」

 

 女尊男卑という言葉がISの登場により新しくできたが、これが社会で大きな影響を与えたのはISが登場して僅か数年であった。

 だが、これは決して社会が女尊男卑に対応したからではない。会社でトップが女性になり、男性が解雇。その結果、上手く立ち回ることができなかった、という一面もあったが、それだけではない。

 

 みんな気づいたのだ。確かにISは女性にしか使うことのできない素晴らしいものではある。一機でそれまであった兵器たちを破壊することのできるIS。だが、その数はどうだ。僅か四百六十個ほど。街の人口ではなく、小学校の生徒数ほどしかない。少なすぎる。

 さらにISは主に先進国に分けられたため、国一つが持つ数はさらに少ない。

 これに多くの人たち、特に当初は女性に対してペコペコしていた男性は気づいた、『確かにISは女性しか動かせないが、そのISを動かせるのは女性の中でも僅かだ。決して女性全員がISを持っているわけではない』と。

 

 そういうことが世界で起こり、現在では女尊男卑というのはあまり影響がない。たまに男性は女性よりも劣っているなんて思って、女王様気分の女性を見かけるけど。

 ともかくただそれはISを持っていない女性に対してである。ISを持った女性だと完全な女尊男卑が出来上がるのだ。

 ここまで女尊男卑を語ってきたが、結局何が言いたいのかというと代表候補生はある程度の権力を持っているということだ。女尊男卑がなってしまうのだ。

 本来不可能な自分の我がままの転校など簡単にできてしまう。

 

「どんな手を使っても好きな相手を手に入れる。わたくしは嫌いではありませんわ。でも、織斑さんと面識があるからと言っても、それは昔のことですわよね。やっぱり演技の可能性もありますわ」

「だとしたらすごいね。私が見る限り演技には見えなかったもの」

 

 私が鈴に会った最初から最後まで全てが演技ならば鈴は最強の詐欺師になれるよ。

 

「まあ、セシリアは疑うかもしれないけど、私は鈴を信じるよ」

「……その結果、あなたをボロボロにしても?」

「うん。自分で望んだことだもん」

「はあ……本当にあなたって人は……」

 

 セシリアは呆れ顔だ。

 

「まあ、いいですわ。わたくしたちはその方を見極めるだけですわ」

 

 私は大丈夫だと思うけど、セシリアが不安なら満足するまで調べてもらおう。もし鈴が私の恋人になることになれば、鈴とセシリアは私の恋人ということで頻繁に会うことになる。そのときにセシリアが怪しむよりも、今のうちに怪しんで、鈴を恋人にした頃には鈴は問題ないという評価があったほうがいい。

 そう考えていると鈴の想い人である一夏が入ってきた。もちろん箒と一緒だ。

 仲がいいにはいいが、まだ男女の仲というわけではない。

 一夏は鈍感で箒はへたれだからね。まだまだそういう段階ではないか。

 

「む、詩織? なぜ織斑さんを見ていますの?」

 

 私が一夏たちを見ていたのに気づいたセシリアが不機嫌そうに言う。

 

「ちょっと気になってね」

「気になってって……。言っておきますけど、わたくしはあなたが男をハーレムに入れるならば別れますわ!」

「なんで?」

「だ、だって、男というのはすぐにエッチなことばかりを考えていて、詩織のような子の体を見て妄想をしていますのよ。そんな男がハーレムに入られたら絶対にわたくしたちはその毒牙にかかり、詩織のハーレムではなく、その男のハーレムになりますわ。まさか……その気ですの?」

「ふふ、なわけないよ。私、言わなかったっけ。男が大っ嫌いだもん。恋人になるなんて考えただけで吐き気がするもん」

 

 ちょっと悪戯をしようと思ったけど、冗談でも一夏を恋人にするなんて思うのは吐き気がするし、セシリアが冗談を真に受けてしまうかもしれないもん。セシリアが離れるなんて却下だもんね。

 

「だから、ありえない。見ていたのは本当に気になっただけ」

「ならいいですわ」

 

 セシリアは安心したようだ。

 

「もう一度言いますけど、もしあなたが男をハーレムに入れることがあるようでしたら、わたくしはあなたのことが好きでもあなたと別れますわ」

 

 その目は本気で、もし万が一にでも私が男を恋人にすれば別れるだろう。

 

「分かってるよ。気になるから言うけど、それはなんで?」

 

 うん、本当に男を好きになるなんてことはないけど、そこまで言う理由が気になる。

 ハーレムを嫌う理由はセシリアの中に恋人は一人であるということと、その愛を自分だけに向けて欲しいというのがあったからというのは分かっている。

 

「だって、男と恋人になるということはその方と、その、昨日したようなことの先をやるのでしょう? なんという言うか汚されたように感じて嫌なんですわ」

 

 なるほどね。その気持ちはよく分かる。というか汚す側だったもんね。確かに汚した感があった。私のものにしたって感じがした。

 好きな相手が男にされるんだもん。いい気分ではないよね。

 

「それにわたくしたちは同性ですわ。異性と交わって子どもができたら……」

 

 セシリアは悲痛な顔をする。

 

「好きな人との子どもを作るのは女としても夢ですわ。ですけど、好きな人は同性。子どもはできませんわ。つまり嫉妬でどうにかなるということですわ」

 

 私がセシリアの立場で、恋人が男の恋人を作って、その恋人と男の間に子どもができたらどうするか。

 私はまず悲しみ、泣くだろう。そして、恋人に会うことにつらくなり、会わなくなって殺意を抱くようになる。相手は……誰だろうか。恋人か男か。分からないけど、どちらかを、または両方を殺すだろう。

 セシリアの気持ちはよく分かった。

 

「言ってくれてありがとうね」

 

 私はセシリアの手を両手で握る。セシリアもそれに合わせるようにもう片手を私の両手に重ねた。

 セシリアの顔には先ほどとは違い、うれしそうな顔をしていた。

 周りでは転校生の話から今度あるクラス対抗戦の話へ移っていた。クラス対抗戦は名の通り、先日決められたクラス代表が出て、クラスと戦うのだ。

 うちは一夏だね。

 でも、勝てるかな? 一応、一年生で代表候補生なのはセシリア、簪、鈴だ。

 鈴は昨日ここに来たばかりだから……どうだろう。なるのかな?

 簪は無理かな。まだ機体ができてないし、そもそも面倒だからなってないって聞いたな。

 まあ、鈴がなるかどうか知らないけど、ならなかったら一夏の勝率は結構高いかな。

 一夏の機体は専用機だもん。それも量産型よりも性能が良いISだ。性能面では一夏の勝ちだね。あとは技量だけど、ほとんど周りと変わらないと見て性能で押し切る形で一夏の勝ちかな。

 鈴がいたら一夏の勝ち目はなし。

 今も箒と放課後に頑張っているようだけど、昨日見る限りだと鈴は結構強い。一夏という素人では勝てないよ。

 

「今のところ専用機を持っているクラス代表は一組だけだから楽勝だよ!」

 

 一夏の周りに集まっていた一人の女子がそう言った。

 すると、

 

「その情報、古いよ!」

 

 教室の入り口で一人の少女が胸を張って言っていた。

 鈴だ。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には勝てないよ」

 

 どうやら鈴がクラス代表になったようだ。

 ああ、これで一夏の勝ち目はなしだ。優勝したクラスには学食のデザートの半年のフリーパスをもらえるのだが、それは無しというのが確定した。

 残念。

 

「詩織、あの方ですの?」

「そうだよ。あの子が言っていた子、凰 鈴音(ファン リンイン)だよ。中国の代表候補生。見た限りではどう?」

「……見た限りでは何の問題もありませんわ。情報不足ですわね」

 

 私も鈴については情報不足。もちろんセシリアとは別の意味の情報だ。

 

「でも、大丈夫なんですの? あの方、あきらかに織斑さんしか見てませんわよ。あれは本気で恋していますわ」

「だね。本気だよ」

「それなのにどうやって自分のものにしますの? 難しいですわよ」

「分かってるよ。でも、二人は恋人じゃない。今はそれだけでも十分だよ」

 

 一番の理想は私への愛が一夏への愛を上回ることかな。振られてから私のものにするのは一番私のものになりやすいと思うんだけど、やっぱりそれだと一夏の代わりみたいな気がするんだよね。だから私への好意が上回ることのほうが一番理想だ。

 まあ、振られた鈴を私のものにしても、代わりなんてことにはさせないもんね! 絶対に『一夏よりも好き!』って言わせてやるんだから。

 

「あと、詩織。あなたが恋人を何人増やそうといいですけど、ちゃんとわたくしたちに構ってくださいわね」

「うん」

 

 もちろんちゃんといちゃいちゃするつもりだ。いちゃいちゃしないなんてありえないね! いちゃいちゃして私と一緒にいることが幸せって思わせる。そして、大人になっても離れられないようにする。いつまでか。もちろん死ぬまでだよ。

 死ぬその瞬間まで幸せだったって思わせるよ。


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