「はい、毎日ってわけにはいきませんけど、放課後にしましょう。じゃあ、場所は?」
「そうだな、場所か。難しいな」
私たちが過ごすこのIS学園はこっそりと二人きりで過ごす場所が少ない。
もしIS学園が普通の学校のように島ではなく、陸にあったならば公園やら店やらがあり二人きりになれるチャンスがいくらでもあった。
「そうだ。ならば私の部屋に来ないか?」
しばらく考えていたお姉ちゃんが口を開く。
「お姉ちゃんの部屋、ですか。でも、教師の部屋に生徒が入るのっていいんですか?」
「ああ、そのことならば問題ない。一応寮則というのはあるのだが、それによるとそのことに関する記述はなかった。だから大丈夫だ」
「……それって暗黙の了解ってやつでは?」
「ふんっ、そんな暗黙など知らん。もし文句があるならば目に見えるようにしていなかったほうの責任だ。私は別に悪くなどない」
うん、絶対にそれって教師であるお姉ちゃんが言っちゃダメな言葉だよね。最初からなの? それともやっぱり私のせいかな? 私が恋人になったからいちゃいちゃしたくてこうなったとか?
でも、私もお姉ちゃんといちゃいちゃしたいし、それを利用しよう。それに別に悪いことをするわけではない。ただ恋人と過ごすだけだ。何の問題もない
「どうだ、詩織」
「行きます! お姉ちゃんの部屋でお姉ちゃんと過ごしたいです!」
「なら決まりだな。いつにするかは詩織が決めてもらって良い」
「いいんですか?」
「ああ、いい。詩織は恋人が複数人いるんだ。私はいつでもいいが、私以外はそうではないだろう? それに詩織だって他の子と一緒に過ごす時間が必要なはずだ。だからいつにするかは詩織に任せる」
「ありがとうございます」
簪は私と同じ部屋だからそこまで放課後の時間を気にしなくてもいいけど、セシリアは違うからね。だからお姉ちゃんの申し出を受け入れる。
「あと、すまないが来週は残念だが無理だ」
「えっ! む、無理なんですか?」
「ああ。だが、来週だけだ。その次の週からは先ほど言ったとおり、全て大丈夫だ」
さっそく来週から行こうと思っていたので、がっかりする。
だってそれって再来週までお姉ちゃんといちゃいちゃできないってことだもん。いちゃいちゃだけが目的ではないが、恋人としての時間が欲しいのだ。ただ話すだけでもいい。思い出を作るためでもあるから。
「そうがっかりするな。毎日会えるだろう」
「でも、それは教師と生徒の関係じゃないですか。『お姉ちゃん』って呼べずに『織斑先生』ですよ。なんかちょっと距離があるようで不満です。それに私は恋人として会いたいです」
「だが、仕方ないことだ。会えないよりはマシだ」
「分かってますよ。ただの不満です」
分かっていてもどうしても思ってしまうのは仕方ない。
お姉ちゃんはそんな不満を抱く私を宥めるかのように額にキスをして、私の体に腕を回した。
うう、私は不満を表に出すのに、お姉ちゃんは表に出さずに逆に私を宥めるなんて……。やっぱりこれが大人の余裕なの?
私は大人の余裕を見せられ、お姉ちゃんに対する好感度を上げた。
……私ってチョロいのかな?
そして、モノレールはついに駅の目前へ迫る。その間は私はお姉ちゃんに抱きしめられ続けた。
しばらくの間恋人らしいことはできないので、お姉ちゃんのぬくもりを忘れないようにと体をお姉ちゃんに寄せた。
駅へ着くと私自らお姉ちゃんから離れた。
「着きましたね、
もう恋人はしばらくおしまいという意味で、お姉ちゃんを『お姉ちゃん』と呼ばなかった。
なんだか変な感じ。お姉ちゃんをお姉ちゃんと呼び始めたのは今日だというのに、そういう違和感のようなものを感じる。
それにやっぱり恋人から距離を感じてしまう。ただ呼び方を変えただけなのに距離を感じるのはそれだけ呼び方というのに特別なものがあるからだろう。
呼び捨てならば親しく、『先生』と付ければ相手を自然と目上として扱う。
だから、距離を感じる。
「そうだな、月山」
お姉ちゃんもまたそれを察し、そう呼んだ。
……っ。やっぱり恋人じゃなくなったみたいに感じて胸辺りが痛くなった。
私たちはちょっと距離を離し、モノレールを降りた。
距離を離したのは周りから特別な関係だと思わせないためだ。もし距離が近かったら、さすがに恋人とは思われないが二人で特別に過ごしていたと思う人はいるだろう。
私たちは何も話さず、寮の前へ向かう。
道中にお姉ちゃんに憧れを持つ生徒が話しかけてきたので、私はお姉ちゃんにこっそりと頭を下げて一人で帰る。ばれるわけにはいかないので、これもまた当然の処置の一つだ。
何も言わずに離れるのは本当は嫌だったが、仕方ない。
「簪、ただいま~」
自分の部屋のドアを開け、中へ入る。
簪からの返事はない。
部屋の奥まで行くと布団に包まって寝ている簪の姿があった。
「まったくまだ夜じゃないのに寝ているなんて」
簪が寝ているベッドに腰掛ける。腰掛けたときにベッドが上下に揺れるが、簪は起きる気配はなかった。
しばらく簪の寝顔を見たり、頬を突いたり髪を触れたりとしていじる。
それを十分ほど続けた。終わった後は服を部屋着に着替えた。
汗とかかいてないしシャワーを浴びてなくてもいいよね。
私も一緒に簪と同じ布団に入った。同じ布団なのでもちろん簪と密着する。
布団の中は温かく、それ以上に簪のぬくもりが伝わった。
も、もうちょっとくっついてもいいよね。簪だって私にくっつかれるのは嫌いじゃないしね。
そんなことを思いながら簪の体に密着するために簪の背後から体を抱きしめた。
こうやって抱きしめるのも何度目だろうか。恋人になってから毎日のように抱きしめている。寝る前や寝ている時や起きたときを主に。
「ん、んんっ……」
抱きしめられている簪は背後の私を求めるかのように体の向きを変え、簪もまた私に抱きついた。形的には抱きしめ合うようになる。
向き合うようになったので気づいたが、簪のパジャマのボタンが外れていて胸元が丸見えとなっていた。
ご、ごくり。これは寝ている間に私が帰ってくると予想した簪が、私のためにやってくれたのかな? その可能性はある。最近の簪は私との肉体的接触を求めてくるから。
じゃ、じゃあ、ちょっとだけ手を出しても問題ないよね。これは簪からのお誘いなんだから。
私はその気になり、静かにボタンをはずしていく。
急がないのはそれで起こしてしまうかもしれないからだ。起きても簪は何も言わないと思うけど、きっと簪的には寝ている間にいたずらしてほしいに違いない。
すべてのボタンがはずし終わると私はパジャマを左右に大きく開く。開かれた先にあるのは簪の可愛い小ぶりのおっぱい二つだ。簪はそんな小さい自分のおっぱいにコンプレックスを持っているようだが、私はこの小ぶりは嫌いではない。
私はそのおっぱいに手を這わせる。
簪のおっぱいは私の手によって綺麗に覆われた。
私は手のひらで簪のおっぱいの先の突起を中心に回した。
「んっ! んあっ」
眠りについている簪は声を上げる。
気持ちよくなっているのは簪だけだが、私はそれで逆に興奮を高めている。さらに簪を気持ちよくさせるために回すのもおっぱいを押さえる力も強くした。
簪は寝ているせいで声を抑えられないせいか、声を遠慮なく声を上げていく。そして、顔や体を赤く熱くし、息が荒くなっていった。
ふふ、いい声。いつもこのぐらい声を出してくれたらいいんだけどなあ。そっちのほうが私も興奮するし。
私は簪を何度も何度も攻めた。その度に簪は声を出してくれる。
私はふと思っておっぱいを弄っていた手とは反対の手を簪の股間部分に持っていった。すると手に濡れた感触が広がった。
それを確認すると私は興奮を高めた。そして、確認した手を今度は自分の股間部分へと持っていく。
高まった興奮が今度は自分が気持ちよくなりたいとさせていた。
その手で自分を慰めようとしたとき、その手が途中で止まざるを得ない状況へと変化した。
「詩織!」
そう、簪がついに起きてしまったのだ。
私はびっくりして、全ての行動を止めた。
「か、簪、起きたの?」
「当たり前。あんなことをして……起きないほうがおか、しい!」
「あうっ」
言うとおりだ。あんな快感を伴う行動を結構な時間して、起きないほうがおかしい。
「い、いつごろから?」
「結構前から」
「えっ!? じゃあ、なんでここまでされるがままに?」
「……寝ぼけていた、せい。だから、つい、されるがままに……なってた」
簪は興奮と快感とは別の意味で顔を赤くした。そして、目を鋭くする。
「詩織、何か……言うこと……は?」
「えっと、気持ちよかった?」
「~~!! ち、違う!! そうじゃ、ない!!」
「じゃあ、なに?」
「……本当に、言っている、の? 分からない?」
「……分からない」
謝るという選択肢も一瞬過ぎったのだが、どういう理由でとなる。だが、その理由は分からない。だから、その選択肢はない。
「なら、教えて……あげる。私が……寝ている、時に……エッチなこと……したこと。それに、ついての……謝罪!」
「えっ? なんで?」
「? なんで詩織が……なんでって、言うの?」
「だってそもそも簪が私を誘ったんでしょ? 私はその誘いを受けてこうしたんだよ? だから謝罪なんて……」
簪が胸元を開いて寝ていたから私は誘いだと思ってそれを実行したまでだ。感謝こそされど、謝罪を求められるようなことは決してしていないはずだ。むしろ喜んで欲しいくらいだ。
だから、私は『気持ちよかったか』と聞いたのだ。
「待って! 詩織は……何を言っている、の? そもそも私は……誘って、ない。ただ、寝ていただけ!」
「…………」
間違っていたのはどうも私らしい。
「で、でも、胸元が……」
「あれは……熱かった、から! 決して……そういう意味じゃ……ない!」
私はもう何も言えない。
簪はベッドから出た。私もベッドから出る。
私の視線はつい簪の下半身に向くのだが、そこは染みができていた。
なんかお漏らししたみたい。それぐらい染みは大きかった。
簪は私の視線に気づいたようですぐに両手で隠した。その目は睨むかのようだった。
「詩織の、せいだから!」
「ご、ごめん!」
怒鳴られて私は思わず謝った。
「なら、今度から私が……どんな格好をして寝ていても……私に、エッチなこと……しないで!」
「分かった。もうしないから」
もう今度は絶対に寝ているときにエッチなことをしないとここで誓った。
「でも、起きている、ときは……していいから」
簪はぷいっと顔を逸らして言った。
「本当? していいの?」
簪は頷く。
「それに私は言った。詩織がお願いすれば……ある程度、何でも……するって」
「そうだったね。そう言ってた」
なんかそう言われるとしたい気分になる。
そのせいか私は自然と簪のほうへ歩みを進めていった。
「し、詩織? なんで、こっちに……来るの?」
「えっ? 何か問題でも?」
「ただ来るだけなら……問題、ない。でも! 今の詩織は……いやらしいから」
「たとえそうだとしてもしていいんでしょ?」
「いい」
「なら――」
「でも、本番をして」
「ほ、本番!?」
「どっちもエッチなこと。それに……詩織は練習は……しないって……言った。だったら今回のことを……除いて、次やるのは……必然的に本番。私の説明に……問題、ある?」
「……ないです」
簪が言うのはもっともだ。私は確かにそう言った。次のエッチなことは本番だって言った。簪は練習として本番の一歩手前をしたいと言ったにも関わらず、自分から次は本番と言った。
まさか言った本人である私が前言撤回などできるはずがない。
だから簪の言うとおり、次求めるときは本番ということになる。
私は今日本番をしようかと思ってしまう。
そう思ってしまうのは自業自得だ。簪を気持ちよくさせていたときに、自分もそういう気分になってしまい、自分を慰めようとしたのだが、結局できなかったので体が疼いているのだ。
もう自然的に消える程度ではない。一度発散しないと無理だ。
だから本番をしたいと思う。
でも、私は冷静ではない状態で大切なことを決めたくはない。
決めたくないのだが、私の体の疼きは止まらない。
「あの、簪」
「なに?」
「本番はまだやらないんだけど、その、体が……」
最後まで言っていないが私が何を言いたいかを察した簪は企みのある笑みを浮かべた。
「私に……何を、して……欲しいの? 言って」
分かっているはずなのにそう言うのは先ほどのやり返しだろうか。
「簪の手で私を……気持ちよくして!」
もう本当に恥ずかしくて恥ずかしくて体中が熱くなり、簪の顔を見ることができなかった。
私、何を言っているのだろうか? こんな変なことで恥ずかしい思いをするなんて。
「ふふ、自分の、手で……やれば、いいんじゃないの?」
「む、無理。簪にやってほしいの! 簪が私を気持ちよくして。お願い」
自分の手でやればいいのだが、その、個人的に自分以外にやってほしいのだ。だって自分でやるよりも別の人がやるほうが気持ちいいから。
「分かった。だったら……今から、風呂へ……行こ? そこで」
「……うん」
私は笑みを浮かべる簪の後に続いた。