精神もTSしました   作:謎の旅人

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第4話 私たちの決闘のきっかけ

「それじゃ、時間みたいだし私は席に戻るわ。じゃあね、一夏、セシリア」

 

 私は優しく微笑み、その場を後にした。

 ふう~、な、なんとか上手くいったよ~! 最初は最悪な出会いになったと思って後悔していたが、結果としてはセシリアに良い第一印象を与えたと思う。

 一夏は……どうだろうか。なにせ最初が最初だ。別に一夏に良く思ってほしいというわけではないが、だからと言って悪い印象を持たれたいというわけではない。

 まあ、最後に(本当は箒のためだけど)一夏を助けるためのことを言ったから大丈夫だろう。だから一夏は悪い奴だと思っていたけど本当は親切な人なんだと思ってくれたかもしれない。

 まあ、今のところ私の良い方に進んでいるということだ。

 私は席に着くと再び何やら話をする一夏たちをぼんやりと眺めた。

 二人の声は周りの声に混じって所々しか聞こえない。

 まあ、気になるけど、セシリアの顔とか見ていると大体の想像が付く。どうやらまた一夏が何かやったようだ。

 そこにチャイムが鳴る。

 もう休み時間は終わりだ。

 セシリアは一夏に怒りながら最後に何を言って自分の席に戻った。

 そのとき、それを見ていた私はふと思った。

 あれ? ちょっと待って。翌々考えてみるとセシリアが感情的になったのって一夏だけだよね? これってやばくない?

 それはこのクラスの中である意味関係が深いということだ。

 ま、まただ! や、やはり一夏は油断ならない!

 やっぱり一夏のことを好きになれなかった。

 そんなことを考えている間にいつの間にか千冬先生が立っていた。

 

「この時間は実践で使用する各種装備のことを話そうかと思うが、その前に五月にあるクラス対抗戦の代表者を決める」

 

 このIS学園はISの学園だけにこういうISを使ったこういう対抗戦というものがある。それは名の通りでクラスの代表者たちが戦う。

 で、代表者というのはただ戦うだけでなく、生徒会の会議等に出席しなければならない。普通の学校で言うところの委員長というやつだ。

 私はこの委員長という役割はなったことがない。その理由は生徒会長ばっかりやっていたから! うん、これは決して自慢ではない。事実を言っただけだ。

 周りの女の子たちはざわざわと騒がしくなった。

 

「はい! なら私は織斑くんを推薦します!」

「私もです!」

 

 む、さすが一夏。さっそく推薦されているよ。

 当の本人はまだ状況を理解できていないようだ。

 

「では候補者は織斑一夏だな。ほかにはいるか? 自薦他薦は問わない」

 

 千冬さんが言ってようやく一夏も気づいたようだ。一夏は席を立った。

 

「お、俺!? 俺はやらないぞ!!」

 

 だが、無理だ。きっと一夏は逆らえない。なにせ周りのみんなは一夏に頼っているからだ。

 まあ、一夏よ。これも私の恨みを勝った報いだ。潔く受けてくれ。みんなもそれを思っているしね。

 

「織斑、邪魔だ。座れ」

「お、俺の意見は!?」

「却下だ。織斑、お前は他薦された身だ。それの意味するところは皆の期待を背負っているということだ。覚悟をしろ」

「り、理不尽だ……」

 

 まあ、一夏の気持ちは分からなくはない。何せ私は優秀な生徒会長ということで皆の期待を背負ってきたのだ。それは時にストレスとなった。

 あのとき、それは生徒会長として皆に私が優秀だと知られたときだ。皆から期待が集まり皆の期待に答えないと、と思ってずっと頑張ったのだ。その結果、私は無理をしすぎて倒れた。

 それは精神からくるストレスからのものだった。

 もちろんそれからは倒れないようにと手を抜いたりして回避した。

 まさか体が頑丈な私が倒れるとは思わなかった。どうも精神は頑丈ではないようだ。

 だから、まあ一夏が嫌がる理由は分かる。だって正直面倒だと思うし、大変だしね。

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

 と、一夏があまりのことにうな垂れているとセシリアが声を上げて立ち上がった。

 ま、まただ! また一夏関係でセシリアの心が動いた!

 思わず一夏を睨んでしまう。

 

「そのような選出は認められませんわ! 大体、男が代表者などいい恥さらしです! そのような屈辱を一年も味わうなんて耐えられませんわ!! そもそも実力から行けばそれはこのわたくし、セシリア・オルコットこそがふさわしいですわ! それを男で動かせるという珍しさでそこの男にさせるなんてありえません! わたくしはISを学びにわざわざこの極東の島国まで来たのであって、サーカスの見せ物を見にきたのではありませんわ!」

 

 セシリアは勢いよくしゃべったせいか、息を切らした。そして、息を整えると再び話始める。

 

「つまり、実力トップのわたくしこそがクラス代表にふさわしいということですわ!!」

 

 最後にセシリアが胸を張って堂々と言った。

 聞いている限りだと日本を侮辱されたのだが、私はそこまで愛国心が強いわけではないので別に何の感情も湧かなかった。

 

「大体、文化としても後進的なこんな国で暮らさなくてはいけない事自体、耐え難い屈辱――」

「イギリスだって、大したお国自慢は無いだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ?」

 

 どうやらついに怒りが頂点へと達したのか、一夏の口からそんな言葉が出てきていた。

 またか! また一夏が関わってきた! 本当にどうしてかな? 実は狙っているとかじゃないよね?

 言われたほうであるセシリアは一夏の突然のことで固まっていたが、しばらくして言われた言葉を理解したのか、セシリアの顔が真っ赤にした。どう見ても自分の祖国をバカにされて怒っている。

 一方の一夏はやっちまったという顔で、恐る恐るセシリアの顔を見ていた。

 本当に一夏って時折尊敬するほどすごいことをやるね。初対面だけど結構一夏について知っているよ。

 

「あっ、あなたねえ! わたくしの祖国を侮辱してますの!? 決闘ですわ!!」

 

 セシリアは一夏に向かってそう言った。

 

「おう、いいぜ。四の五の言うよりも分かりやすい」

 

 むう、一夏。相手は女の子だよ! それなのに決闘をするなんて言うなんて! 男ならば女の子には優しくだよ!

 前世が男だった私。その前世では女、子ども、ご高齢の方には優しくしろと育てられた。だから決闘なんて私にはできない。

 

「それとあなたが負ければあなたをわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわ!」

「ちょっと待ちなさい!」

 

 そこで私が席を立ち、話を中断させた。

 

「あなたは……詩織」

 

 セシリアが私の名前を呟いた。

 よっしゃー!! セシリアに名前を覚えてもらえていたよ!

 

「なんですの?」

「その決闘、私も参戦しようかと思って」

 

 先ほど私は女の子相手に決闘はしないなどと思っていたが、それは今だけなかったことにしよう。それに今の私は男じゃなく女だしね。

 で、なぜ決闘するのかという理由だが、それはセシリアが一夏を奴隷にすると言ったからだ。これは私が、無理やりだけど、セシリアを手に入れるにはいいチャンスだと思ったからだ。詳しくは後ほど。

 

「つまりクラス代表になりたいと?」

「そうよ」

 

 もしもなってしまったとしても問題ない。私は色んな意味で経験豊富なのだ。それを生かせば難なくこなせるだろう。

 

「一夏も私がこの決闘に加わっても問題ないわよね?」

「え? あ、ああ、問題ない……けど」

 

 なんだか歯切れが悪い。

 表情が察するに私と戦うことに気が引けると見た。

 むう、もしかして私が女の子だから? どういう基準か分からないけど、セシリアも女の子なんだけど。まあ、いい。私はセシリアが目当てだからね。

 

「まあ、いいですわ。どうせ勝つのはわたくしですから」

 

 やはり自信満々だ。

 

「で、ハンデはどのくらい付ける?」

 

 一夏がセシリアに言う。

 おい、私には?

 

「あら、早速お願いですの?」

「いや、俺がどのくらいハンデを付ければいいのかなと思って」

 

 その言葉を聞いていた他の子たちが笑う。

 ふむ、見るからに相手は女だから……とかいう理由でそう言ったのだろう。

 だが、実際は違う。ハンデを付けさせてもらうのは一夏ほうだ。

 セシリアは代表候補生で一夏はISなんて少ししか動かしていない素人。

 男のほうが身体能力が強いとはいえ、ISを使った戦いでは一夏には勝ち目がないのだ。

 だからみんな笑っている。

 

「ちょっと織斑くん、それ本気?」

「男が女より強いなんて、ISが出来る前の話だよ?」

「織斑くんは、確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」

 

 まあ、これらはISがあったらの話なんだけどね!

 市民にISを持っている者などいない。つまり日常で男に襲われたらISが存在しなかった世の中と同じなのだ。今はISが女しか使えないという理由で社会的には立場が上というだけ。だからそこを勘違いしないでほしい。

 ちなみに市民がISを持っていないのはISを作った束さんがISのコアをわずか467個しか作っていないからだ。ならば束さんが作ったコアじゃないコアを作ればいいじゃないかという話なのだが、それも無理だ。ISのコアは束さんしか作れない。頑張っても作れない。

 つまり性能の良いISだが数に制限がある。

 そして男と女が戦って勝つのは女で、その期間はなんとわずかの三日以内だそうだ。

 うん、IS強い。でも、いくらISが強かろうが私はそう簡単には勝てないと思っている。

 確かに男は負けるだろうが、女側にも甚大なダメージを与えることは可能。それはISをずっと乗っているわけではないからだ。乗っているのが人である限り休息は必要だ。そこを狙えば……。

 と、そんなのは別にどうでもいいね。別に戦争しようなんてわけじゃないし。

 

「……じゃあ、ハンデはいい」

「そうでしょうね。逆にわたくしのほうがハンデをどのくらい付ければいいのかと迷うところでしてよ。ふふっ、逆に聞きますけどハンデはどのくらい付ければ?」

 

 怒りは収まりセシリアは気持ちよさそうにそう言った。完全に弱い者いじめだ。

 

「ハンデなんていらない」

「え~、それはやめておいたほうがいいよ。ハンデをつけてもらったら?」

 

 周りの女子たちが一夏にそう言った。

 だが、一夏はそれを良しとはしなかった。頑なにハンデはいらないと答えた。

 

「詩織はどうですの? ハンデは?」

「私もいらないわ。一夏はもらっていないのに私がもらうなんてかっこわるいもの」

 

 私はそう言う。

 

「よし、話は決まったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。時間は放課後で、場所は第三アリーナだ。三人は準備をしておくように。では授業を始めるぞ」

 

 これでいい。でも、私にはISがないからなあ。

 確かこの学園に貸し出すことができるISがあるらしい。だからそれを借りよう。それは放課後でいいかな。

 さて、授業に集中――ではなく、放課後にすることに集中だ。

 それは私が二人の決闘に参戦したわけがあるのだ。

 

 そして時は放課後へとなった。

 ふう、今日は本当に色々とあった。しかもそれには全て一夏が関わっているという奇妙なこと。初日でこれだとこれからのことが思いやられる。

 やはり一夏は私の中で最大の障害だ。

 

「それで話とはなんですの?」

 

 そんなことを考えている現在、私はセシリアと対面していた。

 場所は人気の全くない廊下だ。

 

「ねえ、セシリア。あなた、あのとき一夏に奴隷にするって言っていたけど本気なの?」

「へ?」

「言っていたでしょう、奴隷にするって。それって本気なのかしらと思ってね。どうなの?」

 

 私の目的はもちろんのことこれではない。これは確認のためだ。なにせ一夏が負ける確立のほうが高いからだ。

 一夏を奴隷にした日には私は一夏を殺してしまうかもしれない! うん、本気で!

 

「……そうですわね。あまりそういうことは考えていませんでしたわ」

「それなら……」

 

 それなら奴隷にしないんだ! よし!

 

「でも」

 

 えっ、でも!?

 

「でも、まあ、あの男を奴隷にしてみるのもいいかもしれませんわね」

「ダメ! ダメダメ! 絶対にダメ!!」

「へあっ!?」

 

 ダメだ! 一夏を奴隷にするなんてそれだけはダメだ! 一夏を奴隷にした後のセシリアなんて分かっている! 絶対に一夏に落とされて、プライドの高いセシリアは素直になれずに周りからもバレバレという感じで一夏と接するんだよ! そして、一夏も最初こそは負の感情を持っていたけど、まんざらでもないって感じになってセシリアのことを想うようになるんだ! そしていつの日か互いが互いに気持ちを知って恋人になって……。そうなるんだよ!! だから絶対にダメだ!

 

「セシリア! 一夏なんてセシリアにはふさわしくないわ!」

「い、いきなりどうしたんですの!? ちょっと落ち着きなさい!」

 

 セシリアに両肩を抑えられて宥められる。

 でも、落ち着いてなんていられない! 一夏なんかを奴隷にさせるわけにはいかない!

 

「どうせ奴隷にするなら一夏なんかよりも私にしなさい!」

「本当にあなたは何を言っていますの!? 自分を奴隷にしろなんて人、初めて聞きましたわ!!」

 

 そうだ、一夏を奴隷にするならば私をぜひとも奴隷にしてほしい! これに偽りはない。主と奴隷という関係になるがそれでもセシリアを手に入れることができるならばそれもいいと思っている。


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