精神もTSしました   作:謎の旅人

34 / 116
第33話 私たちのシャワー準備

 私はやはりまだ心配で隣を歩くセシリアを何度も何度も見た。

 セシリアは私の心配が無意味であるかのように普通に歩く。

 しかし、それでも私の心配は治まらない。

 

「詩織? さっきから何ですの? わたくしの顔に何か付いていますの?」

 

 さすがに何度も見ていたため私の視線にセシリアが気づいた。

 

「ううん。ただ普通に歩いているけどお腹は痛んでいないかなと思っただけよ。歩いていてもどこも痛くない? 大丈夫なの?」

「ええ、大丈夫ですわ。薬のおかげで痛みもあまりないですしね。ただ、だからといって激しい運動ができるというわけではありませんわ。ですからいきなり抱きつくなどはしないでくださいまし」

「分かったわ」

 

 痛みを感じないというのは少々厄介だ。だってそれによってたとえ傷の具合が悪くなっても気づくことができないということだからだ。

 私はしばらくの間、いきなりぎゅっと抱きついたりはせずに優しく抱きしめることを決めた。

 そして、私たちはシャワー室に着いた。シャワー室は更衣室と繋がっており、授業時間は使えないが放課後の部活動の終わりに使用することができる。

 私は自分の服を入れているロッカーの前に来て、ISスーツを脱ぎ、裸になる。

 ここでは体は洗わない。洗うことができない。ただ汗をちょっと流すだけである。

 私は手ぶらのままセシリアのもとへと向かった。

 セシリアはちょうど脱ぎ終わったところだった。

 

「セシリア」

「あっ、詩織。今、準備が終わったところですわ」

「そう、みたいね」

 

 セシリアがこちらを振り返り、セシリアの裸を真正面から見ることになった。私はごくりとのどを鳴らし、性的な意味でその裸体をまじまじと見る。

 うん、やっぱりいくら肌を密着して体のラインがでるようなISスーツでも、見るならばやはり全てがさらけ出る裸のほうがいいね。こっちのほうが肌だけではなく、エッチなところまで見られるしね。

 私はセシリアの全身をなめ回すように見続けた。

 私よりもちょっと大きな胸。その先っぽには小さな突起。形は整えられていて、美乳という言葉が似合うものだ。巨乳のときは違う興奮を与えてくる。視線をちょっと下へやれば、そこにあるのはきゅっと引き締まった腰だ。筋肉と脂肪がいい比率で存在しており、柔らか過ぎず、硬いすぎずという絶妙な感触になっていることだろう。そう考えるだけで私の前世のように性欲が高まってくる。そして、もう少し下に移せばそこは『生命の神秘』と呼ばれる場所。文字通り生命を作る場所であり、生命がこの世に誕生するという神秘がある。で、最後に視線を下げるとこれもまた無駄な脂肪がないしっかりとした脚である。

 そうやって見ていると突然胸などが隠された。私のいやらしい視線が気づかれたようだ。

 むう~まだ見たかったのに!

 

「詩織! 何を見ていますの!?」

「あなただけど?」

「それは分かっていますわ! わたくしのどこを見ていたのかと聞いていますの!!」

「え? それはあなたのおっぱいと、そ、その……」

 

 せ、生命の神秘の部分ってなんて言ったらいいんだろう?

 私は恥ずかしくて俯いてしまう。

 前世では男性だったということもあって軽々と友達の前で発言できたのだが、今は女性で女性としての恥じらいというものを知ってしまっているので、そういう言葉を口に出すことができなかった。

 私が言い出しにくそうにしているとセシリアも私が言わんとしていることを察する。

 

「や、やっぱり言わなくていいですわ」

 

 そう言ってくれた。

 

「こほん、それで何で――ってあなたは同性愛者でしたわね」

 

 同じ女なのに見た理由を理解してくれたみたいだ。

 セシリアは閉じたロッカーを再び開けて、なぜか体を巻くには十分な長さと幅のバスタオルを取り出した。そしてそれを

 

「? なんで巻くの?」

「分かりません?」

 

 やや頬が赤いセシリアがジト目でそう言う。

 

「分からないんだけど」

 

 正直に言って分からない。私たちは同性同士だ。異性同士ではない。体にコンプレックスがあるのなら隠す理由になるのだが、セシリアの体はスタイルがいい。プライドの高いセシリアなら思いっきり見せるわけではないが、隠すということはしないだろう。ゆえに体を隠す理由などない。

 なのに先ほどまで裸だったのにいきなり隠す理由を考えようにも全く思い当たらない。

 

「はあ……。いいですの? わたくしが隠したのはあなたがいやらしくわたくしを見るからですわ。誰だってあんな獲物をみるかのような目で見られたら隠したくなりますわ。お分かりになりまして?」

「うぐ……ごめん」

 

 私は不快な思いをさせたことに謝る。

 でも、でも、しょうがないじゃない! 目の前にセシリアってきれいで私の恋人って子が無防備な姿でいるんだよ!! どうやったら女の子大好きな私にいやらしい目で見ずに我慢できるだろうか。いや、できない! というか見るのだけというのでも私は我慢しているのだ。本当は無防備なセシリアをがばっとやっちゃいたいくらいなのだ。それを何とか抑えて抑えて我慢している。むしろ文句を言うのではなく、よく我慢しているということを褒めてもらいたいくらいだ。そして、そのご褒美としてキスくらいはしてもらってもいいだろう。

 セシリアはそんな私の頑張りを知らずに背を向けてシャワー室へ向かった。

 私はその後に続きながら、再びセシリアの姿を眺めた。

 うん、裸もよかったけどこうしてバスタオルを巻きつけるのもいいね!

 バスタオルを巻きつけるということのその目的は大事な部分を隠すということが第一である。そして、そもそもの使用用途は濡れた体を拭くことが主目的であるのだ。バスタオルが普通のタオルよりも大きいということもあり、バスタオルは体に巻きつけたりするのだ。

 で、なにが言いたいのかと言うとそんなバスタオルを巻いたセシリアの姿がとてもエッチィということだ。むしろエッチさで言ってしまえば何もかもが丸見えだったときよりもこっちの見えそうで見ない今の姿のほうがエッチィ。

 バスタオルは拭くものであって、そのせいか巻くという行為の目的は果たしているものの、短すぎるために大きくあらわになるきれいな脚。前世が男性だったために胸などに主に注目していたが、隠されたことによってさらにセシリアの脚の魅力が見えて、さらに裾部分はただ大切な部分を隠すだけしか役割を果たしていなくて、私がちょっとでも屈めばその意味はなくすだけの短さ。

 そんな私の欲求を試すかのような姿がよりエッチさを増させているのだ。

 こ、これって誘っているの? 誘っているんだよね?

 すでに私の欲求は限界までに来ていた。

 確かに私の欲求は恋人になる前から続いている簪との日々のスキンシップのおかげで溜まったとしてもすぐに発散される。だが、それは日頃普通に過ごしていた場合の話だ。

 でも、今回は違う。この短い時間で何度も何度も欲求を高めさせられることが多かった。いつもよりも多い。多すぎる。そのために私の欲求は簪に出会う前くらいの欲求が溜まってしまった。つまり、もう抑えられない。

 私の右手が警戒も全くしていない無防備なセシリアの背中へと伸びる。そして――

 

「詩織」

 

 だがその前にセシリアが振り向き、私はすぐにその右手を隠した。

 

「ん?」

「あなたに聞きたいことがありますの」

「何かしら?」

「確かあなた、気になる人がいると言いましたわよね?」

「ええ」

「その方はいつあなたの恋人にするつもりですの?」

「ああ……それね」

 

 そういえば簪のことを恋人じゃなくて気になる人って言ったっけ。

 

「それはちょっと違うわ」

「違う? 何がですの?」

「その、言いにくいんだけどその子はもう私の恋人なのよ」

「はあ!? 今、なんと言いましたの? も、もう一度お願いしますわ」

「えっと、その子はもう私の恋人なの」

「……い、いつからですの?」

「昨日」

 

 それを聞いたセシリアは手を額に当て、なにやら難しい顔になる。

 どうしたのだろうか? 話の流れ的に考えて、も、もしかして、し、嫉妬かな?

 私はちょっとした期待を持つ。

 だが、セシリアの言葉は違った。

 

「詩織、あなたどういう神経をしていますの?」

 

 どうしてだろう。なぜか私がディスられていた。

 

「え? な、何が?」

 

 こういうからにはもちろん私に何か原因があるはずだ。私は自分の言動を思い返してみるが、全く思いあたることなどなかった。

 

「……本当に分かりませんの?」

「う、うん。だから教えてほしいんだけど」

「……仕方ないですわね」

 

 セシリアは壁に寄りかかって話す体勢を作る。

 バスタオルを巻いた格好なのでちょっと変な感じだった。

 

「でも、その前にその方はわたくしと同じく嫌々ですの? それとも……」

「あの子は普通に私のこと好きみたいよ」

「……本当ですの? あなたの思い違いでなくて?」

「ええ。キスしても嫌がることなんてなかったわ。それに喜んでいたわよ」

 

 だから私は簪がちゃんとそういう意味で好きでいてくれていると断言できるのだ。今朝だってそうだ。恋人になったということで簪のほうから(・・・・・・)キスをしてきたのだ。私のほうからではない。

 私だってやろうと考えていたが、まだ恋人になったばかりだと思ってもう少ししてからと思い自重したのだ。だが、それは結果としては無意味だった。何せ簪のほうから迫ってきたんだもん。あれには驚かされた。本当に驚かされた。

 今朝、キスされた私はびっくりして思わず簪から離れたのだが、それが簪には拒絶に見えたみたいで簪は今にも泣きそうな顔をして「嫌いに……なった、の?」と言ってきたのだ。もちろんのこと私はそんなことはないと伝え、次はこちらから何度かキスをした。触れ合うだけのキスだったが互いに満足していた。

 まあ、そんなことがあったので簪が私を好きでないということはないのだ。

 

「そ、そう、なんですの。ならなおさらですわね」

「何が?」

「あなた、今日わたくしのことを言ったらそのもう一人の恋人から何か言われますわよ」

「えっ? な、なんで?」

「簡単に言えば嫉妬、ですわ。まあ、当たり前のことですわね。何せ自分だけの詩織がわずか一日で奪われたのですから」

 

 セシリアは呆れた顔でそう言う。

 

「ま、待ってちょうだい。し、嫉妬? なぜ? あの子は私のハーレムを受け入れるって言っていたわよ」

「そうでしょうがそれは建前というやつでなくて? わたくしならば本当に好きならハーレムなんて許しませんわ」

「で、でも……」

「まあ、これはわたくしの考えですわ。ですが、例え本当に受け入れるつもりでもこんなに早く新しい恋人を作られるのはその方にとっても受け入れ難いことですわね。まあ、そういう二つのことが理由で言われますわ」

 

 そんなことを考えてもいなかった。私はただ恋人にする順番が変わってしまったけど結果的には二人手に入れられてよかった程度しか思っていなかった。

 でも、私の行動は間違っていたようだ。

 セシリアの言う簪の嫉妬は絶対にあるはずだ。そうだ。思えばなぜ私はあんなにあっさりと簪が簡単に受け入れたと思ったのだろうか。私は分かっていたはずだ。そもそも同性愛ということ自体が異質であるということであるのにその上ハーレムという異質までもが加わるのだ。私のような異質ならまだしもついこの間まで普通である簪が同性愛だけでなくハーレムまでも受け入れることがあるはずがない。

 おそらくは簪は私のことを思ってハーレムを受け入れると言ったのだろう。優しい簪のことだ。改めて考えるとそっちのほうが理解できる。たとえ受け入れてくれているとしてもセシリアの言うとおり、こんなに早く二人目を作れば嫉妬するはずだ。

 

「そう、だったの……」

「今度からはちゃんと考えてくださいまし。その方はきっとハーレムを受け入れないわけではありませんわ。ただ少し時間が必要だったということ。あなたの夢はわたくしも否定はしませんわ。否定は。ただ夢にだけ目を向けるのではなく、ちゃんとハーレムの皆をみてくださいまし」

「うん」

 

 セシリアの言葉を受けて私は、今度会えるかもしれない束さんを除いて、もし自分好みの子がいてもすぐに手に入れようとすることを自重し、ちゃんと周りの女の子たちのことを考えようと決めた。

 

「セシリア、ありがとうね」

「別にいいですわ。終わったことですし浴びますわよ」

 

 話は終わってとりあえずシャワーを浴びることになった。私はセシリアと一緒に同じシャワーを使う。

 もちろんここは学園のシャワー室ということもあり、たくさんのシャワーがあるので一緒に使わずともよいのだ。だが、私はそれをしなかった。あえて一緒のシャワーを使うということを選んだ。すぐ隣にもあるのに。

 だってシャワーとシャワーの間に仕切りの板があるんだもん! これじゃ一緒にじゃないもん! だから同じシャワーを使うしかないんだよ!

 シャワー室は同性しか入らないというのになぜか仕切りがある。女の子大好きな私からしてみれば邪魔ものだ。

 だけど、うん、まあ、あってよかったかな。

 正反対にそう思うのは仕切りと入り口から見えないようにと扉があるということで狭い個室となり、どうしても密着するためである。

 私は狭い個室の中でセシリアの体温と感触を楽しむ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。