さてついに私はIS学園に今日! 入学しました! さあ! 私の女の子たち! 待っててね!
と、私のテンションは入学式が終わってからもとても高い。
というか、やっとIS学園に来たということでテンションは上がる一方なのだ。
私はずっとこの日を待っていたのだからしょうがない。
「ふふふ、まず最初の犠牲者――じゃなくて、ハーレムの一人はルームメイトのあの子だね!」
私たち生徒は寮に住むことになっている。
そして部屋は二人で一つだ。みんな何らかの事情がない限りルームメイトがいるということ。
そのルームメイトと出会ったのは、寮に荷物を持って住むことになったとき。私たち生徒は荷物などの準備があるので、実は入学式の今日初めてIS学園の敷地に来たわけではない。数日前に初めて来ているのだ。
その子はちょっと表情の変化がない無口な子ではあったが、なかなかの可愛い女の子だった。私の好みに合っていた。
もちろん好みだから選んだわけではない。私のこの子と一緒ならやっていけると思った子だ。私がハーレムにする子は可愛いからとかではない。
そういうことで私はその子を私のハーレムの一人にすることにした。
でも、今はまだその子はあまりどころか、全く私に心を開いてくれないので、まずは仲良くなるところから始める予定だ。仲良くなることに成功したら、次はゆっくりと距離を縮める。そして、一人目の恋人にするのだ。
幸いにもルームメイトだから誰よりも長い時間一緒になれるし、自分がリラックスできる部屋だ。ルームメイトだから見ることができる一面は多いはず! 仲を深めるにはいい環境だと言える。
いや~まさかルームメイトがいきなりハーレム候補だとは! なんと運がいいことか!
「本当にあの子でよかった♪」
まだこれから部屋に帰るまで数時間あるというのに部屋に帰ることを楽しみにしていた。
さて、ちょっと意識を現実に戻そうか。
私がいるのは一年一組の教室だ。席は一番後ろの席と女の子を観察するには十分な場所だ。わざわざ後ろを向かずとも皆をみることができる。
私は視線を黒板へと移す。
そこには背は私と同じくらいだが妙に胸のでかいメガネをかけた先生がいた。可愛らしい先生だ。
むう、あの胸、ちょっと大きすぎないかな。何を食べたらあんなに大きくなるんだ?
思わず自分の胸と比べてしまう。
私の胸は小さいわけではないが、大きいわけでもない。そういう曖昧な大きさであり、あえて言うならば中くらい、もしくは普通くらいだ。
やはり身長が近く、私たちと同じ年頃とも思えるその姿だからだろうか、どうしても胸を気にしてしまう。
前世が男だったとはいえ、女となって産まれてきた今、そういうところを気にするようになっていた。
前世では眺めるほうで胸の大きさなど気にしなくていいなどと言っていたが、やはり女の身に実際になってみると胸の大きさを気にするようになる。
はあ……私もあんなに大きくなるのかな。
一応まだ成長の余地はあるはずだ。その成長が主に胸になるように祈っておこう。身長はもういらない。
「もう一度自己紹介しますね。私は
その胸のでかい先生がそう言ってきた。
見た目同様に先生は結構フレンドリーだった。なんだか生徒とも仲良くなれるタイプの先生だ。
まあ、優秀な先生なのかどうかはまた別だけどね。まさかこれでアホな先生だったらどうしようか。ちょっと困る。そのときは先生の授業が子守唄になるからね。
「それじゃ、自己紹介をしましょうか。えっと、出席番号順で」
生徒たちが次々に自己紹介を始める。私はそれを眺めながら観察していった。
その成果はこちら。
このクラスで私の好み、つまりハーレムに加える予定の人数は二人。
一人目はセシリア・オルコットというイギリスの女の子だ。
金髪で見るからにちょっとプライドの高いお嬢様だ。見た目からするとちょっときつそうな子のような第一印象を持ったのだが、なんだろうか、心を一度開いてくれるとそういうのがなくなるような気がする。これは私の勝手な憶測だが、どちらにせよ私はセシリアを恋人候補に決めたのだ。心を開いたときなど、実はもうすでに関係ない。あのままだろうが恋人にするつもりだ。
ああ、ちなみに向こうが私とそういう関係になりたくないと本心から言った場合、私はその子をハーレムの一人にはしない。もちろん色々と頑張るけどね。
二人目は
黒髪でポニーテイルで大和撫子という言葉が似合う子だ。日本人らしいと言えばいいだろうか。そういう第一印象だ。だが、なんだろうか。その目つきは鋭く周りを威圧でもしているかのようだった。正直、私じゃなかったら最悪の第一印象だ。周りの者は休み時間になっても近づかないだろう。まあ、こちらは独り占めできるということでうれしいのだが。
さて、私が篠ノ之 箒で思ったことはそういうこと以外にある。それは苗字だ。
これは束さんと同じものだ。もしかしてとは思うが二人が姉妹という可能性がある。その可能性に思い立ったのはやはり珍しいその苗字のせいである。もしこれで二人とも田中とか山田とかそういうよくある苗字だったら姉妹という可能性には思い至らなかった。
まさか……姉妹?
そう思ったとき、私にある考えが脳裏によぎった。
それは姉妹なら束さんの連絡知っているんじゃないの? ということだ。
もし束さんの妹なら束さんに連絡を取ってもらって、接触することができる!!
現在、束さんは指名手配犯のような扱いになっている。それはつまり追われている身だ。当然、連絡など取れるはずがないのだが、連絡を取るのは実の妹(本当に妹だと仮定した場合)なのだ。ISを作った人だから実の妹のみ連絡を受け取るくらいできるだろう。
ふふふ、姉妹一緒に頂いちゃうのもいいわね!
と、考えている間に現在ある人物で自己紹介が止まっていた。
それは一人の
…………。
うん、おかしいよね。だってここ、IS学園は私の記憶では男子生徒は全くいない女の子だけの学園のはず。なのに、男がいる。これは決してIS学園が男の入学を認めたわけではない。
彼、
でも、ただの有名人ではない。ただの有名人では男は入れない。ではなぜ入れるのか。
それは織斑 一夏が男は扱えず、女のみしか扱えないISを扱うことができたからだ。
現在、世界の男の中でISを扱えるのは織斑 一夏のみ。
だから織斑 一夏、ああ、もう! 一々苗字と名前を言うのはめんどくさい! 一夏でいいや。で、一夏は世界的に有名人になり、このIS学園に入ることができて、この教室にいるのだ。
もちろん一夏がISを動かしたことはニュースとなった。ISを唯一使える男として。
だから、クラス中の女子たちが一夏に注目している。それは一夏がISを動かせたからという理由だけではないだろう。一夏の見た目にもあるはずだ。
一夏は簡単に言ってしまえばイケメンに入る部類で、女の子大好きの私から見てもちょっとだけドキッとしまうほどだ。
もし一夏がポッチャリとした体系だったらクラス中の女子たちはきらきらとした目を向けなかっただろう。
やはり見た目は大事なのだ。
私は一夏を見る。私から一夏に対してあるのは負の感情だ。周りの女の子のように正の感情を持っていない。
だって男がいるんだよ! しかも、イケメンの男子! 私はこの学園でハーレムを作りたいと思っているのにこれじゃ逆に奪われてしまう! だから負の感情を持っているのだ!
くそっ、なんで私と同じ歳なんだよ! うう、あと一年違えば!
やはり私にあるのは一夏への負の感情のみだ。もし私が欲しい子を奪われたならば殺意を抱くだろう。そして、実行に移すかもしれない。
「……お、織斑 一夏です。よろしくお願いします」
山田先生に言われてようやく自己紹介を始めた。
ぐぬぬ、イケメンなのは顔だけでなく、声もか!
さらに負の感情が高まる。
さあ、自分の名前の次は自己アピールだ。何を言うのか?
私は一夏を上から目線で思う。
だが、一夏は私の想像していないことを言いやがった!
「以上です」
これだけだ! ほかは何も言わなかった!
お前、自己紹介を舐めているのか!?
自己紹介は見た目という第一印象の次に大事なものである。それをその程度で終わらせるとは。いや、だが待てよ。最後のソレは皆が予想しなかったものだ。逆に多くの者にインパクトを与えた。つまり自己紹介としてはある意味優れているのだ。下手に何かを言うよりは大分ましだと言える!
一夏が言い終わってパァン! という音が教室中に響いた。
それはいつの間にか一夏の後ろに立っていたスーツ姿の、山田先生とは別の教師が一夏を叩いた音だ。
一夏とその教師は言葉を交わす。
それを私たちは眺めるしかない。
その教師を私は、いや私たちは知っている。ISを知っている者ならば知っていて当たり前という常識レベルで知っている人物だ。その教師の名前は織斑
IS世界大会の優勝者で、世間では『ブリュンヒルデ』とも呼ばれる人だ。
私はこの人に対して束さんのようにハーレムに入れようなどとは思ってはいない。私はこの人には尊敬しかない。いや、好きになるかも……。
ま、まさかそんな人がここにいるとは……。
「諸君、私が織斑 千冬だ。私の仕事は君たちを一年で使い物にすることだ。そのためには君たちが私の言うことをよく聴き、よく理解してもらう。できなければできるようになるまで私が教育してやる」
う、うわあ~! 生の千冬さんだ! な、なんだか千冬さんにそんなに上から目線で言われるとドキッてしちゃう!
「「「「きゃああああぁぁぁぁぁっ!!」」」」
と、そのとき私と先生たち、そして一夏以外のほとんどの女の子たちが声を上げた。その声に一瞬頭が揺さぶられる。
「ち、千冬様~!」
「ずっと会いたかったです!」
「私はあなたのために存在します!」
「私の体を好きにしてください!」
「そのきつい目つきで罵ってください!」
皆もやはり千冬さんのことを尊敬しているようだ。
やはり尊敬している人が周りかも尊敬されていると自分もうれしくなる。
「……毎年毎年なぜこれけのバカが集まるんだ? なんだ? それは私のクラスだけなのか?」
だが、さすがにその尊敬は本人にはうっとうしいものらしい。
まあ、確かにやりすぎだと思う。だって周りの子たちって千冬さんのためなら死んでもいいみたいな人たちばっかりだもん。
私はそこまでではない。確かに憧れて尊敬はしているが、さすがに熱心な信者とまではいかない。ただ仏教徒の日本人のような緩い信者だ。
目はきらきらしているけどね!
「全く貴様は満足に挨拶できないのか?」
「いや、千冬姉。俺は……」
再び頭を叩かれる。
「織斑先生だ」
「……はい、織斑先生」
皆が騒ぎ始める。
それは一夏の「千冬姉」という発言が原因だ。
これは一夏が千冬さんのことを姉と言ったようなものだ。
だから周りが騒いだ。
ちなみに私はとっくの昔に同じ苗字ということから推測はしていた。織斑という珍しい苗字だ。全国にいるだろうが、一夏の発言からしても一夏が千冬さんの弟だということは確定だ。
むむむ、まさか恨むべき一夏の姉が千冬さんとは! まさかとは思ったが驚愕の事実だ。
これは尊敬する千冬さんのためにも一夏とは仲良くなったほうがプラスかな? そしたら千冬さんと個人的なお話もできるかもしれない! うん、あまり気が進まないけど千冬さんと仲良くするというためならば、一夏と仲良くしてもいいと思える。
まあ、それは未来の話だ。千冬さんと仲良くなりたいと思ったときでいいだろう。
それ以外で一夏と仲良くするのはちょっと抵抗がある。
「さあ、さっさと自己紹介の続きをしろ。いいな」
千冬さんはそう言って続きをさせた。
私はほかの子の自己紹介をその子の姿を見ながら聞く。
ふむ、今のところ二人以外にハーレムに加えたい子はいないね。確かに可愛い子たちだが、ただそれだけで私の好みには入らない。
そうしているうちにその二人の自己紹介が始まり終わった。
篠ノ之 箒、いや箒は名前を言っていくつか趣味等などを言って終わる簡潔なもので、セシリア・オルコットは名前の後に長々と自分のことを語っていた。