さて、変な茶番は終わりにして、食べ終わった私たちは早速駅へと向かい、帰るために新幹線のチケットを取って、新幹線を待っていた。
周りを見るけど、あまり人はいない。
「今日は土曜日だけど、新幹線に乗る人は少ないみたいだね」
「まあ、今日は休日とはいえ、特別な日ではありませんわ。少なくてもおかしくはありませんわ」
「そっか」
私はこっそりとセシリアと手を繋いだ。もちろん、ただ手を繋ぐのではなくて、指を絡めているけどね。
「帰ったらまずお風呂に入ろうか」
「え、ええ」
セシリアの顔が赤い。
それは今日の夜、何をするのかを理解したからだろう。
その緊張が伝わってくる。
「お風呂は一緒に入る?」
いつもは結構な頻度で一緒に入っているので、初めての夜である今日も一緒に入るのだろうかと思ったのだ。
今日は初めての夜である。
これからすることが分かっているので、一緒にお風呂に入って暴走しないなんてことは保障できない。なので、聞いたのだ。お風呂でちょっとだけするのか、我慢してベッドまで待つか、ということだ。
「そう、ですわね。一緒には入りませんわ。わたくしも準備がありますわ」
「分かった。じゃあ、私が最初に入って待ってるよ。それでいい?」
「ええ」
こんなことを話すのは何だか雰囲気のぶち壊すような感じですが、これが現実というやつですね。こういうのはちゃんとしていないと絶対に失敗する。
こういうのはちゃんと話し合うことが大切なのです! 喧嘩は、問題を溜め込むよりはいい方法なのでしょうが、やっぱり喧嘩をしたくはないので、その問題そのものを少なくしたいのです。
私、ハッピーエンドが好きだからね。
「わ、わたくしちょっと緊張してますわ」
まだ新幹線にも乗ってはいないけど、これからの予定のことを話したせいで、セシリアはもう緊張しているようだ。
まあ、これからのはいつものエッチとは違って、一生の中で大切なことをする日と言っても過言ではないものだ。
そうなっておかしくはない。
「セシリア、言っておくけど、今日絶対にってわけじゃないからね。セシリアの心の準備ができてからでいいんだよ」
無理してやって、セシリアの初めてが嫌な思い出になるよりはマシです。私はラブラブなエッチのほうが好きなのです。嫌な思いをしているセシリアとはしたくはない。
「大丈夫ですわ。心の準備はできていますけど、緊張しているというわけですわ。無理はしてませんのよ」
「分かった」
これ以上は何も言わない。
セシリアは大丈夫だと言ったのだ。それを信じよう。
しばらく待っていると新幹線がついに来た。それに乗り込み、席に着く。
「またあまり人がいませんわね」
「だね。でも、私たちがいちゃいちゃしていても大丈夫だからいいね」
私はセシリアの肩に頭を載せる。
セシリアは何も言わずにそれを許してくれた。
「セシリア、膝枕して」
「ふふふ、肩を枕にしておいて、もう膝ですの? 詩織は我が儘ですわね」
「えへへ、ダメ?」
「いいですわ。いちゃいちゃしても大丈夫なのでしょう? そのくらいは全く問題ないですわ」
許可を貰ったので、さっそく膝枕を。
何度もやってきた膝枕だけど、いつやっても心地よい。
ああ~、やわらかいよ~! 気持ちいいよ~!
別に寝るわけではないので、セシリアの膝、というか、太ももに頬をスリスリとして、堪能する。
「ん、詩織、それはちょっとくすぐったいですわ」
「止めちゃう?」
「べ、別に止めろということではありませんわ」
「じゃあ、もっとやっていいんだ?」
「わ、わたくしは詩織の恋人ですわ。わたくしは詩織のやりたいことに従うだけですわ! ええ!」
そうは言っているが、つまりはもっとやってほしいということだ。
セシリアも素直じゃないねえ。
まあ、セシリアらしいといえばセシリアらしい。それにそんなセシリアを見るのは楽しい。
「そっか。じゃあ、もうちょっとスカートを上げさせてもらうね」
「え!? し、新幹線の中ですわよ!?」
「ふふふ、セシリアは面白いことを言うね。今日の朝も最初のデートのときも似たようなことをしてたじゃん。ね? 今さらだよね?」
「うぐぐっ、そ、そう言われるとそうですけど……。でも、これからは、その、さらに先をのことをしますのよ? 今しなくていいのではありません?」
セシリアが顔を真っ赤にして言う。
うん、この顔を見たくてこういうことをしたいんだよね。それにセシリアはちょっと勘違いしているよ。
「ねえ、セシリア。言っておくけど、私別にお互いに興奮してそういう気分になるまでのことはしないよ?」
「え? し、しませんの?」
その顔には落胆が見える。
ふふふ、本当にエッチな子だなあ。
でも、やらないのは本当である。
「しないよ。だって後からするんだよね? 今しちゃうとお風呂なんて待ってられないし、今日はセシリアとやるって決まっているから本当にここでやりすぎちゃうかもしれないもん。セシリアだってやりすぎちゃってこんなところで大きな声を出したくはないでしょう?」
「そ、そうですわね。浅はかな考えでしたわ。ではなぜスカートを上げますの? 別に肌と肌の間に一枚のスカートがあるだけですわよ。それにこのスカートは透けはしませんけど、薄い布地ですし」
「ふう、セシリアは分かってないなあ。いい? いくらスカートの布が薄かろうが、それは生身じゃないの。あくまでも布なの。私が堪能したいのはセシリアのその肌。特に今は脚のね。セシリアだって服を着た私と着ていない私だったらどっちを触りたい?」
「……変な問いですけど、もちろん何も着ていない詩織ですわ!」
変な質問に答えるセシリア。
うん、やっぱりセシリアってエッチな子だよ。
だって、私、服を着ていないって言ったのに、セシリアは何も着ていないって言ったんだもん。
私は下着姿のことを言っていたんだけどなあ。
私がニヤニヤしながらそれを指摘した。
そうすると別の意味で顔を真っ赤にした。
「わ、わたくしはエッチな子ではありませんわ!」
「そう? 何も着ていない私を指定するあたり、もう十分にエッチな子だと思うけど」
「そ、それは詩織が紛らわしい言い方をしたからで……」
「えー、そんなことはないよ。だってちゃんと『服を』って言ったし。それに対してセシリアは『何も着てない』って言ってたよね?」
「~~っ」
どうやら何も言えなくなった様だ。
「ああっ、もう! 降参ですわ! ええ、そうですわ! わたくしはエッチな子ですわ! 勝手に勘違いして裸の詩織を想像するエッチな子ですわ!!」
開き直ったのか、セシリアはそう言って自分の言葉を認めた。
「へえ、私の裸を想像したんだ」
私がニヤニヤとしながら聞く。
「え、ええ」
セシリアは一瞬躊躇ったが、答えた。
「想像の中の私はどうだった? ちゃんと鮮明に想像できた?」
「……そう、ですわね。想像の中の詩織は現実と同じで綺麗でしたわ。ただ、鮮明かどうかと言われれば違いましたわ……」
最後のほうはとても残念がっているように聞こえた。
「残念そうな声を出さなくても今日はたくさん見れるよ? それに想像なんてしなくても私に頼めばいつだって見せるのに」
私たちは恋人である。よほどの変なことではなければいくらだって願いを叶える。裸を見たいのならばちょっと恥ずかしいけど、もちろんのこと見せる。他の事だって同じだ。叶えられることは叶える。
もちろん、見返りとして甘えさせてもらうけどね。
「そ、そんな、破廉恥ですわ!」
は、破廉恥って……。今さらだよ。
「それに女性のわたくしがあなたの裸を見たいというのは……」
セシリアが遠慮がちに言う。
「別に女性だろうと男性だろうと関係ないよ。女性にだって性欲はあるんだから。だから、見たいって言ってもおかしくはない」
私には前世があって、それも男性だからこの言葉には実はあまり説得力というものがほとんどない。
だってこれが前世の影響なのか、それとも女性でもそうなのかなんて分からないんだもん。
でも、世の中には色んな人がいるし、性欲が女性にもあるのは確かである。間違いではない。
「だから、遠慮しなくていいんだよ。破廉恥とかも気にしなくていいよ。恋人だもん。おかしくはないからね」
私は優しく優しくそう言った。
あっ、ちなみに今現在も膝枕をしてもらっています。
この状態で話しても問題ない内容だしね。
「そう、ですわね。わたくしは詩織の恋人ですものね」
「そうだよ。セシリアは私の恋人。そういう破廉恥なことをしても言ってもいいんだよ。それは恋人の愛情表現の一つなんだもん。言葉だけではなくて、体も使っているというだけ。恋人が仲を深めるんだからそれは間違いじゃないよね?」
「ええ。間違っていませんわ」
何だか洗脳しているみたいな気分だなあ。セシリアの答えも洗脳された人が答えるみたいな答え方だし。
いや、まあ、ただ単にセシリアもそうだと考えているだけってことなんだけどね。
「じゃあ、スカート上げてね」
「しょ、しょうがないですわね。ただ、あまり変なことはなさらないでくださいまし」
「分かってる。やらないよ」
許可は得たので、さっそくセシリアのスカートを下着が見えるギリギリまで移動させる。
それと同時に体の体勢をセシリアのほうが前になるように変えた。ただ、座ったままではちょっと体勢がきつかったので、靴を脱いで丸まっているけど。
で、ギリギリだから、セシリアの膝枕で寝ている私からはがっつりと至近距離から見てるんだけどね。
セシリアの下着、まあ、今見ている下着だからパンツなんだけど、それは少しエッチな下着だった。
「ねえ、セシリア」
「な、何ですの?」
先ほどとは違って、直接肌を枕にされ、しかも、スカートがギリギリまで上げられているせいか、セシリアの体は硬い。
「今日のセシリアの下着、エッチだね」
私がそう言うと、
「なっ!? あ、あなたは何を言いますの!?」
と、羞恥で顔を真っ赤にして言った。
「ほら、寝てるから見えるんだけどね、何だか柄とかがエッチだなって思って」
そう言うと見られていることに気づいたからか、気づいていたけど言われたので羞恥でいっぱいになったからか、セシリアがスカートを元に戻そうとしてきた。
だけど、この状態を維持したい私は当然それを阻止した。
「な、なぜ止めますの?」
「見たいから」
「うぐっ、潔いですわね……」
「私たちの仲だからね。誤魔化す必要はないし」
「何と言えばいいか分かりませんわ……」
ともかく、私はセシリアの下着を眺めながらゆっくりとする。
こんな変態的な体勢だけど、もちろんのこと周り対する警戒はしている。
もし人が来たら、セシリアのスカートは下げる。膝枕という体勢は変わらないけどね。
だって、膝枕をしていても、多くの人は仲のいい友人同士だと思う人が多いからね。
それに大きく体勢を変える動きは逆に怪しまれて、やましいことをしていたんだって思われる可能性がある。
故にこのままで大丈夫。
「セシリアも変なことをしなければ何をしてもいいよ」
「変なことはしませんわ。ただ、そういうことならあなたの髪などを弄りますわ」
セシリアは私の髪を撫でたり、くるくると弄ったりする。
私の髪は基本的に結んでいないので、弄られてもあまり問題ない。ただ、ぼさぼさになるだけだ。まあ、セシリアはそこまでぼさぼさになるほど弄る訳ではないだろう。
ふわあ~、心地いい~。
セシリアは私の頭を撫でてくれる。
まあ、好きにしていいと言ったので、頭を撫でられるのは問題ない。
「可愛いですわ、詩織」
「!? い、いきなり何? び、びっくりするじゃん」
「ふふふ、いつもの恋人としての語らいですわ」
「そ、そうだけど」
いつもは言う側であるので、やっぱりまだ言われるのはまだ慣れない。
でも、もちろんのこと、うれしいのは間違いない。
「ふふふ、顔が真っ赤ですわね。先ほどとは反対ですわね」
「うぐぐっ、もしかしてさっきのやり返し?」
「少しですわ」
「……意地悪」
「詩織には言われたくはありませんわ。詩織だっていつもやるじゃありませんの。わたくしばっかり顔を赤くするのは不公平ですもの。わたくしも、いえ、他の方もきっと同じ意見ですわ」
「そ、そうなの?」
「ええ」
それを想像するとうれしくなる。先ほど言ったようにいつもは言う側である。言われる側は最近は増えてきたけど、やっぱり私のほうが多い。
だから慣れていないというのもある。
なので、恋人たちから私が真っ赤になるようなことをたくさん言われているという想像はとてもうれしいのだ。
あと、興奮もする。
「そういう顔をされるともっと言いたくなりますわね。もっと言ったほうがいいということですの?」
セシリアが先ほど私がしたようにニヤニヤとしながら聞いてきた。
「う、うん。もっと言ってほしい……」
恋人なので、躊躇いもなくそう言った。