精神もTSしました   作:謎の旅人

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第109話 私たちの目的地に着きました

 セシリアの首元を弄って三十分。

 ようやく私はセシリアを解放した。

 別に疲れたからとか、飽きたからとかではない。私もセシリアも互いに興奮してこれ以上続けているとこれ以上のことをやってしまうから。

 私はそんなエッチなデートというか、一日でもいいんだけど、セシリアはそんなことはしたくないみたいだしね。部屋でゆっくりと落ち着いてしたいみたい。まあ、落ち着いてできるのも最初だけなんだけど。

 ごほん、ともかく、そんな軽いいちゃいちゃをして時間を過ごす。

 

「セシリア~」

 

 ちょっとした行為のあとのせいか、私は甘えるようにセシリアに寄りかかる。

 私もセシリアも体が熱いので、少し服をはだけている。

 もちろん、周りを考えている。セシリアのきわどい部分の肌まで見せたくはないもん。というか、本当のことを言えば、他の恋人たちにも見せたくはない。それぐらいだ。

 

「ん、なんですの、詩織」

「えへへ~、なんでもな~い。名前、呼んだだけ~」

 

 行為の後を堪能するように私達はニヤニヤとしながら、そんなアホみたいなことを言ったりした。

 まあ、後からしたら冷静になって、何バカなことをやっていたんだろう、なんて思ったりするのだが。

 でも、今の私達はそんなに濃いエッチなことはしてはいないけど、似たような余韻を味わっていて、そんな羞恥的なものなんて沸くことはない。ただ、この時間を互いに甘えあって、過ごすだけである。

 

「詩織は可愛いですわねえ」

 

 セシリアもそんなことを言いながら私の頭を撫でてくれる。

 つい、気持ちが良くて、頭をセシリアにグリグリと押し付ける。

 ああ、こうやって過ごすのって私が夢見た一部だね。

 そうやってスキンシップをしながら私達は新幹線内での時間を過ごす。

 もちろん私がセシリアに一方的にされるのではなくて、こちらからもしたりする。

 もう今日は満足しちゃうよ。

 そんなことを考えながらいちゃいちゃして数時間。ようやく目的地の駅に到着した。

 その間は本当にいちゃいチャだけをしていた。

 飽きることもなく、ずっといちゃいちゃだ。

 さて、それから駅を降りて、目的地の水族館へと向かうのだけど、その水族館は駅のすぐ近くにあるわけではない。少し遠くにある。

 なので、ここから再び移動する必要があるのだ。

 使うのはタクシーだ。電車があればよかったんだけどね。

 

「わたくし、タクシーも初めてですわ」

「そうなんだ」

「詩織はよく使いますの?」

「ううん、使わない。私も数えるくらいしか使ったことがないよ」

「そうなんですの?」

「うん。毎日使えたら便利だけど、結構高いからね」

 

 お金を持っているとはいえ、毎日使ったら無駄にお金を消費するだけだ。それに学生である私はそんなに遠くに行かないし、私の家があるのはちょっと大きな街で、自転車で大きなスーパーとか、ショッピングモールとかあるし。

 なので、使わない。

 あっても今日みたいな遠出のときくらいだ。

 

「なるほど」

「さあ、中に入ろうか」

 

 タクシー内に入って、運転手に行き先を伝えるとタクシーは水族館へ向かう。

 その間、私達は何もしゃべらずに座っているだけだ。

 だって、目の前に運転手がいるからね。こんなところで手を繋ぐとかはできない。恥ずかしすぎる。

 静かなタクシーが目的地が着いたのはそれから二十分ほど。

 IS学園から目的地までかかったのは本当に長かった。

 料金を出して水族館へ向かう。

 今日が土曜日の休日ということで、人は多い。

 だけど、歩けないほどではない。多少人が並ぶくらいかな。

 さて、ここからは人がいるけど、今はデートなわけなので、恋人らしいことをすることにする。

 周りから見ると変なのだが、そんなのを気にしたらデートができない。なので、躊躇うことなく互いの指を絡ませて繋ぐ、恋人繋ぎをする。

 セシリアはこのような場所で、繋がれたので、最初はびっくりしていたが、周りの目などよりもうれしかったらしく、抵抗もせずに受け入れた。

 あっ、周りの目って言ったけど、別に今、周りからおかしな目で見られているわけではない。

 二人並んで私たちは中へ入った。

 水族館に入ってすぐ、私たちを向かえるのは道の左右にある熱帯魚の水槽である。

 熱帯魚の彩りのあるその体はまるで魚たちが私たちを歓迎しているようだった。

 そんな道を通り抜けると次は噴水のある広場のような部屋に着く。

 噴水の頂点部分にはイルカの像があり、それが吹き出る水で演出されている。中々綺麗だ。

 

「綺麗ですわね」

 

 セシリアも見惚れている。

 

「だね」

 

 この広場には他にもお店などが多くあった。どうやらここは出入り口も含めているためなのか、お土産や軽食を中心としたものが多いようだ。

 お土産は帰りに買うとして、今は移動時間がながかったせいで、十二時になるからまずは昼食にしよう。

 ここは水族館だけど、軽食などではなく、ちゃんとした食事処はある。

 種類は多くないが、水族館の食事処らしく料理には魚などのデザインのある盛り付けがしてあるようだ。

 そこへ向かおう。

 

「まずはご飯をたべようか」

「ですわね」

 

 その食事処にはすでに人でいっぱいである。

 でも、座る席がないほどではない。少し並んで料理を待っても、多分、埋まることはないだろう。

 そのぐらい広かった。

 

「何だか広いですわね」

「うん。でも、おかげで待たずに食べることができるね」

「ええ」

 

 ここは券売機で料理の券を買うという学園と同じシステムだった。

 私が選んだのはカツ丼とから揚げ定食だ。

 え? 水族館に来たのに何でこれか? 水族館要素がない? だ、だって、これが一番お腹が膨れるんだもん。仕方ないよ。

 その代わり、水族館要素はセシリアの料理にある。

 セシリアが選んだのはカレーだ。

 ご飯がイルカ? の形をしていて、その周りはルウである。

 

「し、詩織、今日も多いですわね」

 

 何せ本来は一人前分の料理が二品だからね。

 おかげでテーブルと店員との間を二往復することになった。

 

「いつもの詩織を知っているから何も言いませんけど、他の方からすれば食べられるのか不安になる量ですわね」

「だね」

「だねって……」

「別に食べられるからね。問題ナッシングだよ!」

 

 ではいただきます。

 はむはむはむ。

 食べてみるが、やっぱり美味しい。

 

「ふふ、美味しそうに食べますわね」

「うん! 美味しいからね! セシリアはどう?」

 

 上品に食べるセシリアにも問う。

 

「美味しいですわ」

「良かった」

 

 デートということで、あ~んとかしたかったけど、料理の種類からしてデザートでやるほうがいいということで、やっていない。

 まあ、イメージの問題でやっていないということかな。何かデザートであ~んのほうがいいって思ったし。

 というわけで全ての料理を食べ終わる私たち。

 

「「ごちそうさま」」

 

 食べ終わったので、残った食器を片づける。

 お腹が膨れた私たちはさっそく水族館のメインである、魚たちを見て回ることにした。

 ここの水族館はいくつかのコースで分けられており、一度にすべてを見回ることはできない。と、同時にコースになっているので、人数が分散され、魚たちを見る時間が増えるのだ。そういう利点がある。

 

「どのコースにする?」

「コースは全部で四つですわね」

「うん。深海の生き物、日本周辺の生き物、クラゲ、日本の川の生き物の大きく分けて四つだね。このほかにもコースじゃないけど、アザラシとかイルカとか見れるね」

「いっぱいいますのね」

「だね」

「では、クラゲから見てみたいですわ」

「分かった。じゃあ、クラゲから見て行こうか」

 

 で、早速見てみるのだが、結構面白い。

 実はクラゲのコースということで、大して期待していなかったのだけど、いろんな種類のクラゲがいて、さらに生態の説明などもあったので、結構面白いのだ。特にキラキラと光るクラゲが一番好きだ。

 

「綺麗ですわね」

「うん。海で見たら厄介だけど、こうして見ると何だか可愛いよね」

「ええ。ただ単に漂うだけですけど、これを見ていると愛着がわきますわね」

 

 お互いにクラゲを気に入ったということもあり、結構な時間をクラゲに費やした。

 うん、本当、クラゲの魅力がすごい。思わず虜にされちゃうところだよ。

 将来、本気でクラゲを飼いたいとか思っていたほどだ。

 

「でも、だからと言って海で見つけたのを触っちゃダメだからね、セシリア」

「わ、分かってますわよ」

 

 あっ、どもった。

 冗談で言ったんだけど、触る気だったんだ。

 

「さ、さあ! 行きますわよ!」

 

 恥ずかしさからか、声を高らかにそう言って先導した。

 次に向かうのは日本周辺の生き物だ。

 早速入るとそこは先ほどとは違い、大きな水槽に入った魚たちが群れを成して泳いでいたり、甲殻類たちがのっそのっそと動いている。

 先ほどとは全く違う光景だ。

 あっちは水槽の流れに身を任せているだけだったので、こっちの自らの意思で水槽内を動くのと違う。

 

「うわあ、見て! 鯛だよ! 大きいなあ」

「ええ。こちらに来てから刺身で食べますけど、本当はこんなに大きかったんですのね」

「だね。いつもは刺身になっているから分かんないけど」

 

 水槽で泳ぐ魚を見て、料理の話になるのは仕方がないと思う。

 だって、私たちが知っている魚って全部料理になっているものだし、そうではない魚は熱帯魚くらいしか知らない。ほかは強烈な印象を抱いたような魚くらいだ。

 例えば太刀魚って魚。その名の通り、太刀、つまり刀のような見た目をしている魚だ。これ、結構強烈な印象を与えるよね。

 他にもクエとか。あれ、でっかくて本当にびっくりした。色々と強烈だよ。

 そういう強烈な魚だったから覚えているというのがある。

 

「何かいっぱい魚いるけど、どうしても美味しそうとかの感想が湧くね」

「よく食べる詩織が言うと食いしん坊みたいですわね」

「ひ、否定できない」

 

 で、でも私のは必要な量を食べているのであって、一般的に言われている食いしん坊とは違うと思う。うん、違うはず。絶対に違う。食いしん坊は必要以上の料理を食べるからね。

 うん、だから大丈夫。

 

「そ、それよりもほら! あそこに可愛いのがいるよ!」

 

 さすがの私も食いしん坊というのは心の来るので、これ以上この話を続けたくはない。

 で、私の言う可愛いのというのは『チンアナゴ』という魚である。

 砂から顔だけをひょっこりと出している魚だ。それが水槽にたくさんいた。可愛すぎる。

 

「確かに可愛いですわね。目が大きくて、小さくて、とても可愛らしいですわ」

「うん、クラゲもよかったけど、こっちも可愛い!!」

 

 ただ、砂から出ているのは顔の部分と胴体の一部なので、それよりも下がどうなっているのかが分からない。とても気になる。

 全身を出してくれないかなあと思うが、全てのチンアナゴたちは顔と一部を出すだけなので、全身を見るとしたら結構難しいのだろうなと感じた。時間は有限なので、諦めるしかない。

 というわけで次に行く。

 

「あっ、見て! 今度は触ることが出来るところだよ!」

「え? 触れるんですの?」

「みたいだよ」

 

 触れると言っても、魚をではない。ウニとヒトデの二種類である。

 多分、魚だとすぐに死んじゃうからだろうなあ。

 

「い、行きますの?」

 

 セシリアが何だか嫌そうだ。

 

「うん。セシリアは嫌そうだけどどうしたの?」

「そ、その、どちらも初めて触りますので、ちょっと怖いんですわ」

「あはは、大丈夫だよ。どっちも噛んだりしないから」

「そ、それは分かってますわ。で、でも、そういうのじゃなくて……」

「まあ、どっちにせよ、勇気を出して触ろう!」

「きょ、拒否権は――」

「もちろんないよ! 大丈夫! 私も触るし、隣にいるからね!」

 

 とうわけでセシリアを連れて、そこへ向かう。

 人がいるが、長い時間並ばなければならないほどではなかった。少し待てば私たちの番である。

 私たちの前では小さな子どもたちが様々な反応をして、楽しんでいる。

 ある子どもは初めて触る生き物におどおどをしながら、ある子どもは怖いもの知らずかのようにがっしりと掴みながら、ある子どもは親に持ってもらい、それを突きながら、とそれぞれ楽しんでいた。

 う~ん、新鮮だねえ。私たちくらいの歳になるとそういう新鮮さなんてないんだよなあ。いわゆる純粋というやつがない。全くないとは言わないけど、子どものときと比べたらみんなそうだ。

 まあ、ある意味成長の証なんだろうけどね。


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