真に導く者   作:挫梛道

91 / 101
 
「…あら?
フィーグさんに、『吊られた男』のカードの暗示が…不吉だわ…。」
 



Shu-lover-る

「はぁー、怖かったぁ…

何とか勝てるもんなんですねぇ。

あの魔物の恐ろしかった事!

いやいや、よくもまぁ、皆さん生きてましたよね!

もう、思い出すだけで、背筋がゾクゾクしちゃいますよ!

はてさて…それにしても、黄金の腕輪…というのが気になりますねぇ?」

 

…………………。

旦那、テンション高過ぎ。

バルザックと あの【エスターク擬き(俺命名。姫さんは『紫魔神』と呼んでいた)】を倒し、魔族の気配は完全に絶たれたサントハイム城。

最初は姫さんを先頭に、この戦いに参加した皆で、サランに凱旋する心算だったが、元々の城属の兵士達が「魔物の死骸をこの儘、数日も城内に放置なんて、とんでもない!」等と言い出し、更には この発言を、ウチのパーティーの約3名が支持。

仕方無いので この攻城戦に参加した一部の者をサランに報告の為に帰還させると、残りの者は その儘、城内の戦闘の後片付けに着手となった。

尤も、相手となった魔物の殆どは錬金術で生み出されたホムンクルスで、斃すと同時に その死骸は塩の塊となり、崩れ散っていったので、敵の指揮官的な数名の魔族の死体を処理する程度で済んだけどね。

城内での その塩の掃き掃除は、それなりに大変だったが、あの数の魔物の死骸をリアルに片付けるよりかは、遥かに楽だったと思う。

下のフロアで戦っていた兵士達曰わく、この指揮官の魔族共は、バルザックと命を共有しているとかで、バルザックを倒さない限り、自分は不死身と言っていたとか。

无(ウー)かよ?

…で、仕方無いので、一度〆た際に、その都度ロープ等で縛っていたとか。

とある冒険者曰わく、「不死身では有るが、無敵では無い!」…らしい。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

日が暮れたので、今日の片付け作業は終了、姫様の認可の下、城内の空き部屋…兵士さんの宿直室等で、皆さん休憩です。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「ふむ、黄金の腕輪…か。

そして、またもデスピサロ。

もしや我等は、途轍もない戦いに、足を踏み入れてしまったのか?」

「今更…でしょ?」

…但し、私達は、今回の戦いの際に、魔族との会話から得た情報、進化の秘法と黄金の腕輪の因縁等について、会議室で話し合っています。

 

「進化の秘法は、謂わば父の形見の様な物です。

悪用される訳には いきません。

デスピサロ…。そして魔族。

進化の秘法を利用しようとする者は、私達で止めなくては!」

「えぇ、その通りよ!

偶然だとは云え、父さんの発見した進化の秘法…

父さんは本当は、人々を幸せにする…そんな研究をしていたのに!

これ以上、バルザックの様なバカを出さない為にも、私達が頑張らなくちゃ!」

「…はい。父の、研究から全てが始まったのなら、私達が止めなくては。

そしてバルザック…彼も また…ぃいえ、何でもありません。」

「うむ…。

しかし、あのバルザックでさえも、魔族の手足の1本に過ぎないとは?!

うぅむっ…デスピサロ、恐るべし…!!」

そうです。

魔族が云うには、あのバルザックでさえ、進化の秘法によって生まれる究極生物…その完全体では無いとか。

 

「黄金の腕輪…か。」

「フィーグさん?」

此処で、フィーグさんが口を開きます。

                  

「姫さん、『(偽)姫さん誘拐事件』以降、黄金の腕輪の所在は分からないんだな?」

「「「えぇっ!!?」」」

この台詞に、姫様もブライ様も吃驚です。

本当にこの人は、何処迄知っているのでしょうか?

 

「あの腕輪が、市場に出回ったという話は、聞いた事が無い。

俺は てっきり、件の賊が売りに出したと思っていたのだけどね。

更に言えば、実は俺は、そいつ等は魔族の手引きで、例の誘拐事件を起こしたとばかり思っていたが…

どうやら違ってたみたいだね。」

「ふむ…フィーグ殿は あの腕輪が、単なる装飾品でないのを、知っておられたか?」

「…まぁね。

どんな理屈かは知らないけど、暗黒の力とやらを、増幅させるとか何とか…

フレノール地方に封印されていたのも、元々は それを巡って人々が争うのを鎮める為だったと聞く。

…只の雑学知識さ。」

それは、生まれも育ちもサントハイムである、この私も初耳なのですが?

姫様とブライ様も、同様な顔をしておられます。

特に私は、神の道に身を置いてからは、この国の歴史にも、かなり深く紐解いた心算でしたが…

 

「これは俺の予測だけど、その腕輪は、未だ誘拐犯の手に有ると思う。

何処かの…恐らくは国内の貴族や商人に、大金で売ろうとしたが、怪し過ぎて買い手に恵まれず…かと言って、棄てるのも勿体無くて、とりあえず手元に置いているんだろう。」

「成る程…つまり儂達は、魔族よりも先に、その者共を見つけ出し、黄金の腕輪を抑える…ですな。」

「いぐざくとりー。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

バルザックは もう居ない。

でも、お父さんも帰って来ないのね。

まぁ、当たり前、か…。

 

 

「…マーニャさん?」

「…えっ?な、何?

ごめん、ちょっと気が抜けちゃって…」

話し合いが終わった後、私達も今夜は休む事に。

アリーナとブライは、城内に有る それぞれの自室へ。

クリフトも、城内教会施設の、修道士達が使っていた寝室へと向かって行った。

…って、アリクリ、別々に寝るの?

もう、互いの気持ちは確認してんだから、一緒すれば良いじゃない?

もう、ちゅーだって してるんだし…

本当に王族とか聖職者って、面倒だなぁ…

フィーグも そう思うよね?

そして私とフィーグも、ミネアの「不潔」と言いた気な顔をガン無視して、アリーナに言われた客間へと向かっていた。

その途中の廊下、少し物思いに耽っていたら ぼぉ~っとした顔に なっていたのか、フィーグに声を声を掛けられたのだ。

この旅、まだまだ やらないと いけない事は、沢山あるのだけど、父さんの仇…バルザックを斃した事で、少し緊張の糸が解れたみたい。

そう、父さんの仇を討てたから…

 

「マーニャさん、泣いてる?」

「バルザックを倒した…お父さんの仇を…

そう思ってたら、つい涙が…

…って、ちょ…見ないでよ!

私、泣き顔はブスなんだから!」

ぽん…

……?!

泣き顔を隠そうとする私に、それをフィーグは察したのか無神経なのか、軽く頭の上に手を置くと、

「それなら胸に埋めてりゃ、顔は見られないぜ?」

こ、この男は どうして、平然とした顔で、そんな台詞、言える訳!?

 

「ぅ…うん…」

まぁ、それに肯で応える、私も私だけど。                  

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「♪愛は堕落の下僕也♪

♪這い寄りし私は、誰?♪」

「「♪正気度 \(`∀´\)危険!♪ 」」

「♪愛は堕落の下僕也♪

♪選ばれし貴方の『ネ申』だよ♪」

「「♪正気度 (/´▽`)/危険!♪ 」」 

サントハイム城奪還計画は、アリーナ姫達の活躍により、1人の犠牲者を出す事無く、見事に成功しました。

 

それから5日間…

お城の奪還後に、サランの皆さんや、奪還計画に参加した兵士さん、冒険者の皆さんによる、ボランティアの清掃活動。

その中には奪還計画の中心だったライアン様やフィーグさんは勿論、王族であるアリーナ姫も、自ら参加。

当然ボク達、詩人や芸人の皆さんも、お手伝いしました。

フィーグさん曰わく、お城の魔物の殆どは、『ほむんくるす』だったらしく、死骸の処理は殆ど問題無かったのですが、王様の お部屋の、巨大な『ろぼっと』の残骸の後片付けが、凄く大変でした。

その後片付けが全て終わった今夜…というか今ですが、お城の中庭で、城の奪還と勝利を祝う宴が開催されています。

そして現在、ボクの唄う詩に合わせ、竪琴を携えたマローニさんと、ツインネックリュートを持った、謎の赤髪の仮面の楽師さん(爆)が、バックコーラスに付いてくれています。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「さぁ~てぇ?お次は勝利を祝っての…

花ぁ鳥風月ぅ~!♪」

ぴゅ~…

「「「「「おぉお~っぉお!」」」」」

パチパチパチパチパチパチパチパチ…

 

ふぅ…

ホイミンの詩の後も、次々と詩人や芸人達が、持ち前の芸を披露して喝采を受ける中、中庭に特設されたステージに立ったのは、何と、サントハイム城奪還に参加していた、上級僧侶(アークプリースト)のエヴィア。

水の羽衣を纏い、両手に扇子を持っての華麗な舞から、その扇子から静かに水を噴出させる、水芸へと繋げていく。

ん。お世辞抜きで、かなり上級な舞だ。

ギャラリーも やんやの歓声だぜ。

 

「ほほぅ…このマーニャちゃんの前で、アレ程の踊りを披露するとは…これは私に対する、挑戦状ね?そーなのね?」

そして俺の隣には それを見て、意味不明な対抗意識を燃やして立ち上がる、少しばかり?お酒の入った お姉さんが1人。

 

「ほら、謎の仮面楽師(笑)!

アンタがバックで演奏するのよ!!」

えーーーーーーーっ!!?

…ってゆーか、相手はアマチュアだろ?

一応はプロなんだから、マジになるなよ…

 

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

がしっ!!

「あんた…なかなか、やるじゃないの!」

「貴女も…流石はモンバーバラのトップダンサー!!

こっちは貴女の動きに合わせるのに、一杯一杯だったわ!」

 

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…

ピューピューピューピュー…!

「「「「「うぉおおお~っ!!」」」」」

「「「2人共、最高だったぞ~!」」」

「「いぇ~~い♪!!」」

 

……………。

一通り踊り終え、ステージで がっしりと握手した後、ギャラリーに笑顔で応えるマーニャさんとエヴィア。

最初はマーニャさんが、エヴィアの舞を『喰っちまおう』と、ステージに乱入。

まさかの舞姫の飛び入りで湧く観衆に、艶やかな踊りを魅せつけるが、エヴィアも それに、きっちりと対応。

半ばマジに『潰す』心算っぽかったマーニャさんも、間近での彼女の動きとギャラリーの湧きを見て、この場は潰すよりかは共演の方がベターだと、エンターテイナーのスイッチが入って判断したのか、その後は2人で華麗なダンスセッションを披露。

結果、客席を大いに魅了してしまうのだった。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「「きやははははは!」」

 

………………………。

その後、この2人は(マーニャさんの一方的な)確執は何処へやら、仲良く お酒を飲んでいます。

てゆーか、2人共、ペース速過ぎね?

 

「お~ぃ、のんでるかあ~?」

「……………。」

そんな事を考えていたら、蒼髪の酔っ払いが絡んできたとです。

 

「おいアンタ、呑み過ぎだろ?

眼が危ないぜ?」

「んだとぉ、くぉるぅぁあ~!(ガバッ)

アタシは まだまだ大丈夫ぃっ!!」

グラッ…

「「え゙っ!!?」」

…少し解説が遅れたが、今、勝利の宴が繰り広げられているのは、城の中庭である。

其処に、奪還計画に参加した者だけでなく、サランの皆さん…特に酒場や飲食店を経営してる人達や主婦な皆さんが、この宴の為の料理や酒を振る舞う為に、来城している。

食べ物や飲み物は、この為に持ち込んだテーブルに置かれているが、大人数故に、椅子なんかはセットして居らず、食事自体は皆 立食、或いは芝生に直接に座っての飲み食いな状態なのだ。

 

がったーん!

「「えわっふ!?」」

そんな中、俺に絡んできたエヴィアが いきなり立ち上がると、直後、立ち眩みを起こし、俺の方に押し倒す様な形で倒れ込んできやがった。

 

「「……………………。」」

その勢いで何故か俺は、エヴィアの羽衣、スカートの中に、頭を突っ込んでる状態に在る。…って、ちょっと待て!?

 

「あー…何てゆうか…ごめん。」

「……………。」

慌ててスカートの中から頭を出して、とりあえず謝る俺。

ぶっちゃけ、エヴィアの方から倒れ込んで来たのだから、俺は全然悪くない筈だが、謝ってみると、

「ご…ごごごごご…」

ご?

この蒼髪の上級僧侶(アークプリースト)は涙目な顔を真っ赤にして わなわなと身体を震わせながら拳を握ると、

「ゴォット・ブローーーーーーっ!!」

バキィッ!!

「こ〇すばぁっ!?」

思いっきりナイスな右ストレートを、俺の左頬に抉る様に炸裂させて、更には

「ゴッド・レクイエム!

ゴッド・レクイエム!

ゴッド・レクイエム!

ゴッド・レクイエムーーーーっ!!」

ガンガンガンガン!

痛い痛い痛い痛い!

杖で頭をガンガン叩いてきやがる。

 

「はぁ…ハァ…ハァ、はぁ…」

息を荒げながらも、漸く落ち着いた感のあるエヴィアは その後、

「…ばかぁっ!!」

一言、泣きながら怒鳴りつけると、ぷんぷんしながら去って行き、別のグループに(勝手に)合流して、また酒を飲み始めた。

 

「ん。今のはフィーグが、悪いわよ。

てゆーか、女の子の ぱんつが見たいなら、私に言いなさいよ。

何時も見せてあげてるでしょ?」

え?本当に俺が悪いの?

それよりもマーニャさん、この場で要らん事、カミングアウトせずにヨロシ(切実)。                  

「いや~、兄ちゃん、美味しかったな。」

「羨まけしからん。」

「そっちの姉ちゃんの対応も込みでな!」

「羨ま死ね!」

その後、こっちには今のトラブルを見ていたオッサン兵士や若い冒険者風の男達、数人が話し掛けてきた。

 

「「不潔…」」

コイツ等、お姉さんズがジト目で どん引きしながらハモらせるのも完全スルーで、

「「「「「…で、中、見たんだろ?何色だった?」」」」」

「はぁ?」

何か、アホな事を言ってきやがった。

 

…………………………。

いや、何色かって聞かれたら…

 

「…髪の毛と同じ色?」

「おぉお~!」

「ブルーかぁ!」

「青、キターーー(゚∀゚)ーーーっ!!」

………………………。

仕方無く、質問に応えてやるとコイツ等、何やら喜んで騒いでやがる。

髪の毛と同じ…

ん。「何色か?」って聞かれたら、とりあえずは、こう答えるしか無かったんだよ。        

…てゆーか、何で履いてないし!?

                  

◆◆◆

◇◇◇

ぴちゃぁん…

「ふにぃ~、温泉でも無いのに こんな広い お風呂、初めてですぅ。」

「ん。これは良いわ~♪」

                  

一応 宴も終わり…一部の人達は、未だ飲んで騒いでいますが…ボク達は今、アリーナさんの計らいで、お城の大浴場で湯船に浸かっています。

アリーナさんにマーニャさんミネアさんは勿論、上級僧侶(アークプリースト)のエヴィアさんを始め、今回の戦いに参加したと云う女性の兵士さんや冒険者さん…全部で15人位ですか?この場で疲れを癒やしています。

…てゆーか皆、胸 大っき!!(1人除いて)

そんな事を考えていると、

「ど~らホイミン?

どの位 成長したか、お姉さんが確かめてやろう♪」

がばぁっ!!

「ひぅっ!??」

ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ…

「ふみゃ!? そ…そこわ、らめぇ~!!」

いいい…いきなりマーニャさんが背後から、ボクの おっぱいを鷲掴みからの揺さぶりをしてきました!

ちょ…ダメ…気持ち良…ぢゃあ無くて!!

 

「ほぅ?…これは…なかなか…」

「ま、マーニャさん!

何やってんですかぁ~~~!?」

「だから言ったでしょ?

どれくらい成長したかっ…て、あんた、また少し大きくなってない!??」

「マーニャ~、止めたげなさいよ。

嫌がってるでしょ?」

「不潔です。」

いやいやいや!ミネアさんは兎も角、アリーナさん、顔が笑ってますよ?

 

「…ふむ♪それじゃ、次は…」

「え゙?」

しくしくしく…

ボクの胸を散々と堪能したマーニャさんは、今度はアリーナさんに目を向けると、

がばぁっ!!

「はぁぅ?」

ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ…

ボクに やった様に、やはり背後に回り込んで、鷲掴みからの揺さぶりを。

…って、端から見たら、手の動きが凄く えっちぃんですけど!?

 

「普段のフィーグの仕種の、完全模倣(パーフェクト・コピー)よ。」

きゃー?! フィーグさんの えっちぃいっ!!

                  

「うぅう…」

「ふー♪」

そして、ぐでーんとしたアリーナさんと、凄く艶っ々なマーニャさん。…が、再び こっちに来ると、

ぐぃっ…

…?…またボクの おっぱい…では無くて、右手を掴み、上に上げると

「勝者、ホイミン!」

「「「………………………。」」」

…比べてたんですか??!

 

「別に、悔しくなんかないわよ!

戦う事を考えると、もう少し小さい方が動き易いし…」

多分、アリーナさんは本当に気にしてないみたいですけど、

「あら、戦い戦いって、あんたは もう、それだけじゃないでしょ?

基本、世の中の男って、大きい方を好む傾向に在るのよ?

フィーグとかクリフトとかクリフトとかクリフトとか…」

「~~~~~~~~~~~~~~!」

マーニャさんの この言葉で、顔を赤くして、完全に黙ってしまいました。

 

「…不潔です。」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ちゃぷん…

「………………………。」

「もしかして あんた、さっきのアレ、まだ怒ってんの?」

「別に!」

他の女性達と距離を空け、湯船の角で1人、やや膨れっ面で お湯に浸かっているエヴィアさんに、マーニャさん(…と、ボク)が近付き、話し掛けます。

 

怒ってる…

さっきの宴会の中で、フィーグさんが この人のスカートの中に頭を突っ込んだ件ですよね?

 

「フォローって訳じゃないけどさ、アイツもワザとじゃないしぃ、」

「あの場はフィーグさんが悪いで収まりましたけど、本当言えば、寧ろ あれは、エヴィアさんの自爆でしたよね?」

「うぅ…そうだけど…そうなんだけど…」

「まぁアイツ、昔から らきすけ率高かったからね。

最近は、鳴りを潜めていたから油断してたけど、久し振りだわ~。」

「…そうなの?」

「そーそー♪

パーティー組んだばかりの頃も、あの時は まだ、カノカレな間柄じゃなかったのに、人の胸は触るわ、温泉入った時に ばったり出会すわ、半裸でキスしてくるわ…」

「ボクもフィーグさんには、初めて会った その日に、おっぱい触られましたぁ。

あと この前、ボクも温泉で裸、見られました!」

「あ~、そー言えば あったわよね~♪

だいたい あの男、昨夜も…(以下略)」

「「え?え?え?キャー!きゃー!!」」

…何だかフィーグさんの、普段の えっちぃ振りの暴露の時間に なってきました。

気が付けば、数人の女の人も、話の輪に加わっています。

エヴィアさんだけでなく他の皆さんも、顔を真っ赤にして聞き入ってますぅ…って、自分の彼氏サンの ぷれい内容、其処まで詳しく話しても良いんですか? (*/∇\*)

マーニャさんも、か~な~り、酔ってるみたいですぅ…

あ、ボクは お酒、全然飲んでないですよ?

だってグラスにワインを注いだ瞬間、そのグラスを赤髪の怖い お兄さんが、「お前は まだ早い!」って没収していくんだもん。

 

◆◆◆

…へっきし!誰か、俺の噂してるな?

「大丈夫ですか?」

「あぁ、平気平気。」

俺、ソロ、クリフトは今、城の中の書物庫に居る。

目的は地獄の帝王や、天空の勇者について記されている書物。

サントハイム王族は歴々、預言者の家系。

それ故に、特に過去の王自らの、それ等についての手記が有るかも知れないと思い、探しているのだ。

因みに旦那、ライアン、爺さんは、未だに中庭で飲んでいる。

特に爺さん。

城を奪還出来たのが余程嬉しかったのだろう、普段からは考えられない位、はっちゃけているからねぇ。

 

「ありました…?」

「ソロさん?」

ソロが、何かを見つけた様だ。

 

≫≫≫

「「「……………。」」」

ソロが見つけたのは、正しく今代のサントハイム王…即ち今は行方知れずになっている、姫さんの父親が若い頃に書き記した物だった。

その内容は『地獄の帝王とは、1人の魔族が、外法の技術により、あらゆる生物としての、究極の進化を遂げた存在である』とか、『天空城は実在する』とか、『其処には竜の神様が居る』とか記されていた。

更には其れ等について、『僕の考えた地獄の帝王』とか、俺も原作知識として知らない様な『設定』も、詳しくイラストを添えて、書き記されていたのだが…

いやいや、『天空城は有事には人型に変形して戦える』とか、更には『それが分離さて、巨大化した竜の神様に鎧の様な感じで合体して、【究極機動神竜王城戦士=グレイト・アームド・ゴッド・キャッスル・キング・ドラゴン・ブレイザー】になる』とか…そんなの有り得ないから。

俺は勿論の事、ソロもクリフトも、目が点だよ。

…絶対にコレ、国王が14歳の時に書いたヤツだぜ。

 

それと、自分達が魔族に拉致られるのを、予見していたのには、驚いたな。

それなら対策なり練っておかなかったのかとか、突っ込みたい気持ちは有るが…

「兎に角 これ等は、皆には黙っとくか…」

「はい…陛下の名誉の為にも…」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「これは…?」

次に俺が見つけたのは、この城の設計図面だ。

 

「これは かなり古い…図面ですね。

いえ、図面自体でなくて。」

クリフトが言うには、恐らくは一番最初に、サントハイム城が建てられた時の図面だとか。

 

「ほら、これには城内の修道施設が、記されていません。」

…らしい。

 

「ん?この図面で言えば、今の部屋は、この位置ですよね?」

「え?」「はい?」

ソロが指差した部屋には その奥側に、今の部屋には見当たらない、細い通路が書かれていた。

 

「……………………。」

実際に、図面上の通路が有る辺りに行ってみると、その壁に『隠しスイッチ』を見つけた。

 

ガタガタガタ!

「「「!!?」」」

迷わずにスイッチを押すと、壁内部の仕掛けが作動。

先は暗くて見えないが、奥へと続く道が現れた。

 

「ちょ…暗いですし、危険ですよ!

あの図面も、古くで掠れていたから、この道が何処に続いてるかは、分からなかったじゃないですか!?」

「「良ーから 良ーから♪」」

怖がるクリフトを逃げない様に前後で挟み込み、俺達は この先に、足を踏み入れた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『『『『『『『…………。』』』』』』』

結果から言えば、この道は桃源郷へと続いていた。

暗い道をレミーラで照らしながら、何回か折り曲がった道を進んで行くと、最後は行き止まり。

しかし、壁には やはりスイッチが。

これを押してみると、書物庫同様、隠された扉が開き、俺達の眼前には素晴らしき光景が飛び込んで来たのだった。

 

「ふぃ…フィーグ?」

「や、やぁ…」

「クリフトぉ!?」

「あわゎ…姫様、こ、これわ…

ぷ…ぷふぁあっ!!」

「ソロさん?!」

「いえ、違うんです!

決して そんな心算じゃあ…」

 

はい、隠し扉の先は、大浴場でしたー。

当時の王か、或いは この城の建築指揮に携わった、大臣が文官辺りが、王には内緒で造らせた道だと推測出来る。

尤も、建築当時は この場も、全く別用途のフロアだった可能性も高いけどね。

 

 

それにしても皆様方…

う~む、向かって左から、…前穂高岳 奥穂高岳 槍ヶ岳 富士山 農鳥岳 御嶽山 赤石岳 涸沢岳 北岳 ……平原(涙)… 北穂高岳 ……エベレスト!…だと? 間ノ岳 仙丈ヶ岳 塩見岳…

…って、イメージしてる場合じゃない。

  

ごごごごごごごごごご…

「「「……………。」」」 

鬼女と化した女性陣の怒りの形相に、俺達の正気度は恐怖でガリガリと、生命の危険域まで削られていき、

 

がばっ!!

「「「す、すいませんしたーっ!!!」」」

 

別に示し合わせた訳でも無いのに思わず反射的、3人揃ってのジャンピング猛虎落地勢さ!

 

 

 

 

 

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「いや~、このパターンも、何だか久し振りだな~。」

「…そーですねー(棒)」

「うぅ…姫様ぁ~…」

…この夜、勝利を祝う宴も終わり、誰も居なくなった筈のサントハイム城の中庭の巨木に、布団で簀巻き状態で逆さ吊りにされている、3つの人影が確認出来たと云う。

 

目出度し目出度し。

 

 

 

 

 

 

「「いや、目出度く無いですから!」」

 




 
因みにマーニャは北岳。
つまりは あの場に、マーニャさんよりも上位者が、2人居た事に…
 
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
 
次回『さらばサントハイム!(仮)』
乞う御期待!!
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。