真に導く者   作:挫梛道

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アリーナ戦闘イメージBGM…
【我が心 明鏡止水~されど この掌は烈火の如く(Gガン)】
 
 
 
 
サントハイム城決戦、締めです。
 



たたかう お姫様!!

「キングレオ城以来だな。」

向こうも俺達を覚えていたのか、或いは思い出したのか、蜥蜴顔の魔族が俺達に不気味な笑みを見せる。

神官カロン。

キングレオ城にて、進化の秘法の研究をしていた魔族。

あの時は、秘法の成果であるキングレオ王を倒した後に姿を消したが、今回は やはり、秘法の成果であるバルザックを倒したと同時に、姿を現して来やがった。

                  

「ふん、今は貴様等に用は無い。」

「何だと!?」

そして睨み付ける俺達は眼中無しとばかりに、カロンはバルザックに目を向けた。

 

「おお、カロン、良く来た!

さあ、俺を回復させろ!!」

そのカロンに、瀕死のバルザックが這いながら叫ぶ。

 

「バルザックよ、それは無理だな…」

「なぁ?」

「「「「「!!?」」」」」

その訴えを拒否するカロン。

それには当人だけでなく、俺達も驚いた。

 

「如何に伝説に在る天空の勇者が居たとは云え、人間共に敗れた貴様に、価値は無くなったのだよ。」

「ま、待て、もう一度チャンスをくれ!

黄金の腕輪だ!! アレが有れば…!」

「「!!?」」」

「言いたい事は、それだけか?」

黄金の腕輪と云う言葉にサントハイム3人組が反応する中、用無しの宣告を受けても必死に縋るバルザックに対し、カロンは前に出した右手に炎を纏わせ、言い続ける。

 

「心配せずとも、腕輪なら今、使い魔共に捜索させておる。

近いウチに見つかるだろう。

そうすれば、既に貴様なぞ居らずとも、この儂1人で研究は進められ、進化の秘法は完全な完成に至れるわ!

バルザックよ…貴様の実験動物としての役割は終わりだ。

未完成とは云え、秘法の技術を手土産に、我等魔族に自分を売り込みに来た時には、確かに驚かされた。

人間である貴様如きが、今迄我等魔族の為に よく働いてくれた…とだけは、言っておいてやろう。」

「な…んだと!?

貴様等、最初から この俺を、利用するだけ利用して、棄てる心算だったのか!?」

「当然だ。我々が、本気で貴様の様な人間如きを受け入れるとでも思っていたか?」

そう言うと、カロンは右手で燃え盛っていた炎をバルザックに向けて投げ放ち、

「うぎゃああああああああ!

デ、デス…ピサロォォオッ!!?」

その炎は苦しみ絶叫するバルザックを、最終的には消炭にしてしまう。

マーニャさん達の仇は今、その命を終わらせたのだ。

 

「さて、待たせたな。」

そしてカロンは改めて、俺達の方に顔を向ける。

 

「…………………………。」

これに対し、別に俺は、「仲間を殺ったのか?」とか問う心算は無い。

悪いがバルザックに対しては、憐みの感情は全く浮かんでこない。

はっきり言って、自業自得。

自分の欲望の為に師や兄弟弟子を手に掛け、更には やはり、己の欲の為に人間を裏切り、魔族に取り入ろうとしたのだ。

これは当然の報いだよ。

 

「先ずは不完全ながらも、あのバルザックを斃した事は、褒めてやろう。

褒美に、サントハイムの王族よ。

この城は貴様等に返してやろう。」

「え?」「はい?」「む?」

その言葉に、若干の疑いの目を向けながらも、過敏に反応する姫さん達。                       

「た・だ・し・コイツを相手に、生き延びる事が出来たらな!!」

はい、お約束、キターーーーーーーっ!

 

「ふん!天空の勇者と顔を合わせ、何事も無く戻ったとなると、あの御方から制裁を受けるのは間違い無いのでな!!」

そう言うとカロンは、もはや見慣れたと言っても良い、魔物召喚の魔方陣を展開、キラーマシーン数体、キラーアーマー数体、デーモンスピリット1体、そして動く石像を1体を喚び出した。

まあ、そんな事だろうと思っていたよ。

恐らくは また、合成させるんだろうけど、この組み合わせは…?

正直、俺の原作知識を以ってしても、何が出来るかは分からない。

…が、凄く硬いのが出来上がるのだけは、何となく想像が付く。

 

「ぬぅえい!」「ていやっ!」

そして やはりヤバいと感じたのか、ライアンとソロが飛び出し、1番前に立ちはだかる動く石像の破壊を試みるが、

ガイン!

「か…」「硬い!?」

その硬過ぎる守備力の前に、仕留めきる事は叶わず、

ごごん!

「「うわゎっ!?」」

逆に反撃の一撃を喰らい、吹き飛ばされてしまった。

 

「フハハハハハハ!

出でよ、破壊の化身よ!」

そしてカロンは喚び出した『キラーマシーンとキラーアーマー』に魔力を浴びせ掛けると、その2種の魔物は先程のミステリドールの様に、合体を繰り返して行く。

しまった!

この石像は『壁』役だったか!

 

『……………………………』

そうして出来上がったのは、ダークパープルのボディの、俺の知らないモンスター。

その巨大な容姿は、敢えて原作知識的から準えて言えば、地獄の帝王のボデイに巨大な般若の面を取っ附けた様な…

或いは『Ⅳ』のラスボスの両手に剣を持たせた様な…

そんな風貌に、マシーンシリーズの要素を附け足した感じな…所謂ロボット系のモンスターだった。

ぶっちゃけ少し かっけー。

 

「さあ、仕上げだ!」

このカロンの台詞と呼応する様に、残っていたデーモンスピリットが このエスタークモドキ(仮名・俺命名)に体当たりするかの如く飛び込むと、其の儘吸収される様に、メタルボディの中へと消えていった。

 

『…………………!!』

そして その瞬間、全く動く気配の無かった巨大な機械の人型に、魂が宿ったかの如く、頭部の暗い眼窓の奥に赤いモノアイの様な単眼が点り、その巨大ボディに不釣合いなスピードで、俺達の間合いに近付くと、無言で両手の剣を振り下ろしてきた。

 

どがんっ!

「うわっ!!?」「「きゃあ!」」「くっ…」

その大剣の直撃は避けたが、大理石の床を叩き付けた際に飛び散った石の破片までは避けきれず、ダメージを受けてしまう。

 

ぶぅん…!

「ちぃ!!」「ふんぬ!」

更には動く石像も、拳を振り回し、そして巨大な足での踏み付けを仕掛けてくる。

 

「フィーグさんライアンさん、その石像は、任せて良いですか?」

「任された!」「承知!」

「それじゃ残る皆で、あの紫の奴を!」

「了解!」「「はい!」」

「うむ!」「はいな!」

此方もソロの指示で、2組に別れての戦闘開始だ。

 

「あんた達、そんなのサクッと やっつけて、早く こっちに来なさいよね!」

……………………………。

はいはぃ。 ┐(´д`)┌                         

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「スクルト!」

「ルカニ!」

「バイキルト!」

見るからに、硬い&馬鹿力な魔物。

だからこそ、クリフト達が先に、サポート系呪文で攻守をアップしてくれた。

多分、あのメダリアの古代遺跡で戦った機械系の魔物…フィーグが謂うには【とらうまじんがさま】だったかな?…と同系列みたいね。

 

「駄っ目だ~!効いてないっぽいし!」

どうやらマーニャの守備力減(ルカニ)は、効果が無かったみたい。

「…ならば!」

ジャキ…

この新装備【爆神の拳】の、通常は折り畳んである『爪』のパーツ、これを前側に引き出して、

「ソロ!」「はい!」

ソロと同時に攻撃。

流石に あの硬そうな装甲に、グローブで殴ったりはしないわよ!

 

BuWAaaaaaaH!!

「「!!?」」

でも そんな私達に対して、この紫魔神(私命名よ)は、お腹の口から氷のブレスを吐き出して応戦、更には、

DoGGooooooooohN!!

「「きゃあ!?」」

「「「うぉあ!!」」」

あの赤く光る眼を一段と輝かせると、今度は爆裂呪文でも唱えたかの様な爆発を、後方に控えていたマーニャ達の前で炸裂させた。

 

「くっ…!」

これは不味いと思ったのか、ミネアが静寂の珠を掲げるけど、

Bomb!Bomb!Bomb!

「「「きゃあ!?」」」

この珠から放たれる封魔の翠の光を、全く問題としない様に、紫魔人は さっきの大爆発程じゃないけど、今度は小規模の爆発攻撃を連発してきた。

 

「覇極流千峰塵!!」「大切断!」

ドガァッ!!

「ミネアさん、コイツの あの攻撃は、正確には呪文じゃない!

コイツは謂わば、『生きたマジックアイテム』なんだ!」

そこに現れたのは、フィーグとライアン。

どうやら あっちの石像の魔物は、倒したみたいね。

 

 

どどどどどどどどどど…

「「「「姫様~!」」」」

「「「「アリーナ姫~!!」」」」

…!!

そして更に、下のフロアで魔物の群れと戦っていた筈の、サントハイム兵や冒険者の皆も…じゃないけど、約20人位の人が、この謁見の間にやってきた。

 

「魔物が全て、塩の塊になって消えちゃったから、そっちも全部片付いたと思って、上がって来たんだけど…」

皆を代表する様に、上級僧侶(アークプリースト)の女の子が説明してくれたけど、

ダガッ!

「ひいい!な、何なのよ、あれ~!?」

ん。残念だけど、こっちは まだ、片付いてなんかいないの!

                  

「ふん!」

そしてカロンが、新たに魔物を召喚。

暴れ狛犬の強化種や、白い毛並みの虎男を数匹ずつ、更には もう1匹、背中に羽を生やして6本脚の、ライオン型の魔物を喚び寄せた。

                  

「でぇいや!」

斬!

そんなカロンに、フィーグが斬り込むけど、この魔族の神官は召喚した魔物の1匹を盾代わりにすると、

「くっくくく…それじゃ、そろそろ儂は、お暇させてもらうかの。」

そう言って、この場に現れた時と同じく、空間に『穴』を空けると、その中に入り、姿を消して行った。

…って、逃げられた?!

                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「フィーグ、合流早々で悪いけど、彼等の指揮を、お願い出来るかしら?」

「了解!」

アリーナさんの指示で、フィーグさんが此方のパーテイーから、またも離脱。

 

 

「各グループで、あのワンコとトラオを、各個撃破する!」

「「「「「応!」」」」」

「「「はい!」」」

「「「「了解!」」」」

「サイモン!…それと、アンタ達のチームで あのライオン擬きを叩くぞ!」

「「応!」」「「はい!」」「ふむ!」

「あ、それから そこのキミ!

キミは回復役として、姫さん達のサポートに回ってくれ!」

「分かったわ!」

 

フィーグさんの指示で、あちら側も戦闘が開始され、僕達の側には、

「そんな訳で、よろしくね!」

「あ、はい、よろしくお願いします。

…ぇと…」

「私はエヴィアよ!」

上級僧侶(アークプリースト)のエヴィアさんが回復要員として、メンバーに加わりました。

…って、

Gon!

うっわ、危なかった!

 

「ソロ!アンタ何、余所見してんのよ!」

「キミ、きちんと集中してないと駄目じゃないの!!」

「す、すいません…」

いや、フィーグさんの方が気になっていたなんて、言えないよね…。

 

 

 

 

「猛虎落地勢ーーーーーー!!」

Baki!

「おゎたぁっ!?」

「あ、あんた、いきなりDOGEZAなんかして、何やってんだよ!!?」

 

 

 

…………………………………………。

…だ、大丈夫かな?

何だか、聞いては いけない遣り取りが聞こえた様な…

やっぱり凄く、気になるんですけど?

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ヒャダイン!ぢゃ!」「メラミ!」

どっごおーーーーーーーーん!!

 

お城に突入する時、城門を守っていたゴーレムをやっつけた、ブライとマーニャの合体魔法が再び大爆発。

紫魔人に かなりのダメージを与えた様ね。

どうやら この敵は魔法には、余り強くないのかも知れないわ。

 

「ぷーくすくす!

アイツ、魔法が弱点みたいね!

さあ、ガンガンやっちゃいましょう!」

エヴィアの台詞に応える様に、ブライ達が また魔力を集中させる。

…でも、

 

Mowaaaaaaaaaaaaa…

「べギラマ!…って、え?」

「ライデイン!…~ぅん?」

「ヒャダルコ!ぢゃ…?!」

紫魔人は呪文を唱え終わり、炎を雷撃を、氷を放つ前に、お腹の口から あの魔術師泣かせの、呪文を掻き消す紫の霧を吐き出したわ!

 

「だぁ~~~っ!!アンタが余計な事を言うから、"ふらぐ"が立ったでしょうが!」

「何なの?これは私の せいだって言いたい訳?謝って!今直ぐ謝って!」

あ~、もう!2人ともケンカしてる場合じゃないでしょ!

 

Bomb Bomb!!

「「「「きゃあ!」」」」

「「うわあっ!」」」

そして また、威力は程々だけど、爆裂魔法を連発してきた。

この霧の中、魔法は敵味方関係無く無効化する筈なのに…

どうやらフィーグの言ってた通り、本当に あれは只のモンスターでなく、「生きたマジックアイテム」みたい。

 

「確かにマジックアイテムなら、魔法の無効空間でも、魔法効果を発揮出来ます!」

そう言って、ミネアがタロットを引くと、魔神の足下から(床は土じゃなくて大理石なのに!)無数の茨蔦が生えてきたかと思えば、その巨体に絡み憑き、動きを完全に拘束した!

 

「ナイスよ、ミネア!」

チャンスとばかり、飛び込む物理組。

 

「ほい!」「ぬぅぇい!」「てぇやっ!」

 ガン!   ドガッ!!    バキッ!

トルネコが、ライアンが、私が それぞれ手に取った武器で攻撃、

「疾風迅雷!」

ザシィッ!

そしてソロも、霧の影響を受けない、剣の中に宿った雷での攻撃を繰り出した。

 

「ゴオォォットォ!レクイエム!!

…ゴッドレクイエムとは、女神の(中略)相手は、死ぬ!」

更にはエヴィアもダッシュから、持っていた杖での刺突技!

バキイっ!!

「あーーーーーーーっ!??」

…でも その攻撃は、杖の方が折れちゃって、ダメージは与えられなかったみたい…。

 

Bomb!

この後、魔人は自らに、あの爆裂呪文(みたいな攻撃)を浴びせ、自身を縛っていた茨蔦を爆砕させると、

DOGON!

「ひぃえ~~~~~~~っ!」

巨大な剣をエヴィアに向けて振り落とすけど、彼女は器用に回避。

 

「ううぅ…私の杖ぇ…」

「泣いてる場合じゃないでしょ!

貴女は後ろに下がっていて!」

余程大事にしてたのか、折れた杖を見ながら涙うるうるで凹んでるエヴィアを後衛位置に下げて、

「全方位からの、一撃離脱!」

「「はい!」」「うむ!」

前衛組に指示しての攻撃を試みるけど、

BuWAaaaaaaaaH!

「のわっ?!」「きゃ!?」

逆に正面に立っていた、ライアンと私が氷のブレスの直撃を受けてしまい、

「姫様?!べホイミ!」

慌ててクリフトが回復魔法を唱えるけど、未だ晴れない霧の中、その効果は無い。

 

「どっせい!」

ズバッ!

「フィーグ!」

其処に やってきたのはフィーグ。

 

「雑魚は全て、片付けた!

残るは このデカブツだけだ!」

「皆、大丈夫なの?怪我人は?」

「心配無い。多少、ダメージが大きい者も居るが、死亡者は0だ。

この霧の中じゃ まともに回復も出来ないからな、俺の判断で、ダメージの大きな者と、魔法の専門家は下に降ろしたよ。」

安心したわ!

それでサイモンをはじめ何人か、元気な人達が残ってるけど…

「皆は下がっていて!

フィーグ、行くわよ!」「合点!」

ん。例え全方位からでも、一度に攻撃出来る人数は限られてる。

でもアッチは、広範囲のブレスや爆裂攻撃を繰り出して、一度により大勢にダメージを与えてくる。

ならば、普段からの連携が取れる、最低人数で攻撃を仕掛けるのがベストな筈!

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

BuOoooouh Wa!Wa!Wa!

「うぉい!?」「ひょえっ!」「ぬぉっ?」

ずがんっ!!

「くっ…!!」「わわっ?!」

当たり前の事だけど、敵も黙って攻撃を受けてくれるだけ、な訳じゃない。

反撃とばかりに、氷のブレスに巨大な剣による振り降ろし…尤も これは、脚捌きに比べて、腕の振りなんかは、大したスピードじゃないのを自覚しているのか、斬撃よりも、床の石を叩き割る事で、その破片を飛ばしてダメージを与えるのが狙いみたい。

それにしても、あのブレスは厄介だわ。

さっきのバルザックにしても そうだけど、炎や氷とかのブレスを吐く魔物って、その予備動作として、大きく息を吸い込むのが常。

だからこそ、私達も避けたりとか事前に防御するとかで、まともにダメージを受けるのを免れていたのだけど、コイツには その予備動作が無い。

フィーグが言うには、この魔物は生き物でなく、"ましーん"だから、ゼロモーションでの攻撃が可能だとか。

 

ダッ…

「覇ぁっ!!」

そのフィーグが、今度はダッシュから、紫魔神の間合い手前で、長く持った槍の穂先を床に突き付けると、棒高跳びの様に、槍が撓った反動で、この謁見の間の高い天井ギリギリに迄ジャンプ、そして そこから、

「メテオ・インパクトぉっー!!」

槍を短く持ち直しての、急降下からの一撃を、脳天にヒット!

 

ふぉん!

「…っとぉ?!」

しかし、着地した瞬間を狙われて、大剣の横凪ぎの的に されてしまう。

それを、縦に構えた槍で受け止めて防御はしたけど、パワー負けして、またも吹っ飛ばされてしまうフィーグ。

 

BuWAaaaaaaaaH!

「きゃあっ!」「のゎっ!?」「うっ…!」

更には間髪入れずの氷のブレス!

 

BoWwAaaaaaaaaH!

「冷ぇっ!!」「つっ!」「くぁ…っ!!」

しかも2連発!!

 

Bomub!

「え?」

でも、そのブレスが止んだ瞬間、あの お腹の大きな口の中で爆発が。

 

「姫様!御無事ですぢゃ?」

「ブライ?」

それは、ブライが手にしていたマグマの杖に宿っている、爆裂魔法(イオ)の力を発動させた物だった。

 

Bang! Bang! Bang…

しかも、その爆発は、一度で終わらずに、口の中…体内で小さな爆発を何度か繰り返していく。

 

「そりゃあ、メカの内部で爆発された日にゃ、誘爆しても、おかしくは無いな。」

「フィーグ?」

先程吹き飛ばされた際に、壁か床に痛打したのか、腰を押さえながら戻ってきたフィーグが呟いた。

 

「あ…霧が…?」

更には爆発と関係有るのか、魔法を無効化していた紫も、一緒に消え失せた。

 

「今がチャンスだ!あの口を狙え!!」

「オッケー!…メラミ!!」

そしてフィーグの呼び掛けに、マーニャが大きな炎の弾を投げ放ち、それは見事に、お腹の口の内部に入り込み、

Bwooooooohm!

まるで今度は、炎の息を吐き出すかの様に口から出た炎が、魔神自らの身体全体を包んでいった。

 

ガタン…

そして両手の剣を床に落とし、片膝を着く紫魔神。

 

「せぃやぁっ!」

斬!

そこにクリフトが、

「Kill Them All・Refinemend !!」

バックィッ!!

そしてライアンが斬り付け、

胸から腹を覆っていた、巨大な鬼の様な仮面を粉砕。

その装甲の裏側…素人知識さえも持ってない私でも、とりあえず凄いって事だけは解る、複雑な絡繰り仕掛けの体内部が剥き出しになった。

  

「姫さん!姫さんが決めろ!!」

「ぇ…えぇ!」

それを見て、勝負所と判断したフィーグが、『お城は私自身の手で取り戻せ』とばかりに?トドメの一撃を促してきた。

 

「アリーナさん!」「行っけー!!」

「姫様!」「アリーナ姫!!」

コクン…

続くソロやマーニャにブライ、そしてクリフトの後押しに、無言で頷くと、右腕に装備した【爆神の拳】に その武具に宿る、閃火(ギラ)を纏わせてダッシュ!

狙うのは…人体で云えば、心の臓に位置する、赤い光を放つ水晶玉。

そして繰り出すは、この新しい装備に拠って得た、私の新たなる必殺技!!

 

「私の拳が真っ赤に燃える!

勝利を掴めと轟き叫ぶ!!」

それはギラ系の炎を纏った拳。

その拳打の瞬間と同時に、やはり この武器に宿る もう1つの概念、爆裂系(イオ)の効果を発動させての【二重の極み】!!

 

「爆熱!GOD・DUPLEX!!」

 

どっごぉおおおおおおぉん!!

この一撃で、派手な爆発と爆音と共に、魔神の"こあ"であろう水晶玉は粉々に砕け散り、魔神の頭部、紅い単眼の光が消えた。

膝を着き、剣を手放しても、それでも上半身は…戦闘の構えを取っていた両腕も、だらりと垂れ落として、

ずし…

「……!!?」

ばったーん…

その儘 前のめりに倒れ込み、動かなくなってしまった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

姫さんの新必殺(仕込みは当然、俺w)が炸裂し、エスターク擬きは完全に動かなくなってしまった。

 

「「「「「うぉおおお~っ!!」」」」」

「「「「「姫様~~~~!」」」」」

「「「「「「アリーナ様~!!」」」」」」

決着の瞬間、姫さんの指示で後方待機していたサントハイム兵や冒険者達も、雄叫びの様な歓声を上げ、

どたどたどたどたどたどたどたどたどた…

「「「「姫様~~~~!!」」」」

「「「「「アリーナ様~~~!!」」」」」「「「「「うぉお~っぉお!」」」」」

 

下のフロアで待機していた兵士達も、それを聞きつけ勝利を察すると、挙って この謁見の間に雪崩れ込み、勝利を歓ぶ声を響かせるのだった。

 

 

「ちょっと皆!気持ちは解るけど、少し静かにして!!」

「「「「「「………………!!」」」」」」

 

し~~~~~~~~~~~~~ん…

 

その騒声を収めたのは、やはり姫さん。

 

「本当…本当に皆…」

「……!!」

「皆、ありがとう…。」

「「「「「「………………。」」」」」」皆に声を掛ける途中、泣き崩れそうになるも、傍にクリフトが駆けつけると、さなが勇気を分けて貰ったかの様に立て直し、言葉を続ける。

 

「さあ、英雄達の凱旋よ!!」

 

 




‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
 
「ど~らホイミン?
どの位 成長したか、お姉さんが確かめてやろう♪」
「ふに~!?そ…そこわ、らめぇ~!!」
 
次回『Shu~lover~る(仮)』
乞う御期待!!
 

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