真に導く者   作:挫梛道

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VERTRAUEN

「ほほぅ…思っていた以上の、進展ぶりですねぇ。」

                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

エンドール領北西部に在る旅の扉から、サントハイム領入りした僕達は、サランの街を目指して北上…の前に、西側に寄り道。

砂漠にてホフマンさんが開拓している、新しい街の様子を見に行きました。

                  

僕達が旅先で訪れる街々の店で、移民求募のチラシを貼らせて貰ったり、時事通信で移民募集の記事を載せたりの効果が有ったのでしょう、沢山の…様々な人々が集まり、まだ村のレベルには至っていませんが、ちょっとした集落といった感じです。

それでも、何も…あのオアシスしか無かった頃から比べたら、かなり速い成長だと思います。

トルネコさんも、感心していました。

 

「やあ、ソロさん。」

「あ、どーも、ホフマンさん。

この前ぶりです。」

ホフマンさんと再会。

彼は今、開拓については具体的、直接な指示指導はせずに、極力 移民の自主性に任せ、提示されたアイデアを吟味した上で、それにGOサインを出すか没にするか、決めているらしい。

                  

「まあ、例えば、まるで大岩の内側を刳り貫いた様な怪しげな建物を作ろうとしたら、流石に止めに入りますけどね。

…ところで、フィーグさんに、それにマーニャさん達…女性の皆さんの姿が見られませんが?」

「ああ、フィーグさんとライアンさんは転移酔いで、馬車の中で蹲ってますよ。

あと、マーニャさん達は…

………な、訳です。」

「成る程、それは良い事ですね。」

この人も、マーニャさん達の家事しないっぷりは ある程度は分かっているので、凄く納得して頷いていました。

 

「…に、しても、フィーグさんが、旅の扉で転移酔いですか…大丈夫ですかね?」

「…っんなんですよー。

実は、この前も…

 

 

 

 

        (中略)

 

 

 

 

 

…で、本当に、笑っちゃいますよねーwww

プークスクス!…みたいな?

それから、他にも…」

「…」

ん?どうしたんですか、ホフマンさん?

え?何ですか?後ろ?

………………………………………。

まさか…と思って恐る恐る、後ろを振り返ってみたら…

「ででーん!! ソロ、アウトーーー!!」

(」゚O゚L)…………………!!

修羅です。修羅が顳に浮かべた血管をヒクヒクさせながら、微笑んでいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、タイキックされました。(T_T)

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

…ったく、ソロのヤロー、人が苦しんでる時に、その場に居ないからって好き勝手言いやがって…後で〆る。

 

さて、この【進化する町】だが、世界は狭いと言うか、意外と知ってる人達が居たりした。

 

例えば…

「よ、久しぶりだな。覚えてるか?」

「げ…?お主、フィーグ!?」

おい、「げ…?」とは何だ。失礼な。

嘗てエンドール武術会で戦った、戦士サイモン。

今は その体力腕力を活かし、丸太を担いだりの開拓作業の主戦力だが、いずれは街の護り手候補の筆頭(暫定)になるだろう。                  

例えば…

「この砂漠でも収穫可能な作物の、栽培方法を教えているだよ。」

ソレッタで逢った、農業アドバイザーのグレイト氏。

ソレッタでの仕事を一通り終えた後、時事通の記事を読んで、この地に来たらしい。

尤も彼は、俺達の事は覚えていない様だ。

まあ、彼とは殆ど行きずりだったから、仕方無いと言えば、仕方無い。

 

例えば…

「ども!トルネコはんにフィーグはん!

調子は どないでっか?」

ハスターのパーティーメンバーで、ソレッタ地方で少しの間だが、行動を共にした、商人のゼニー。

 

例えば…

「勇者ソロ様…そして識者フィーグ様…

お久しぶりです。」

キングレオ領の、ハバリア岬の御告げ所に居たシスターのシエスタ。

あの時の俺の『今直ぐ、この場を離れろ』という助言に従い、各地を巡り、此の地に辿り着いたそうだ。

…どうやら彼女の死亡フラグは、無事に折れたみたいだな。良かった良かった。

…って、今、「アレは助言でなくて脅しだろ?ww」って言った奴、前に出ろ。

 

 

そして、例えば…俺自身は面識無いのだが、旦那や爺さん、クリフトの知り合いが数人程、この地に移民として生活しているそうだ。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

人が多くなれば、それなりに衝突や確執も生まれてくる。

その辺りは、ホフマンが上手くフォローしているが、それでも結局は人間関係の果てに、或いは やはり、この砂漠での生活は馴染めなず、去る者も居る様だ。

 

『立派な大聖堂を創るべきです!』

『グレイトな農業都市にするでよ!』

『様々な商品を流通させる、商業都市!

これしか有りませんよ!』

『建物の外観はピンクで統一して、可愛い街並みにするのは どうですか?』

『酒場だ!』『劇場よ!』『カジノだ!!』

『王都にも負けない、城塞都市にするべきであーる!』

…因みに この様に、建設的意見を出し合う者同士では、その意見の ぶつかり合いは有れど、対人関係が崩れる事は無いとか。

皆が互いに真剣に、街の事を考えているのを解っているからだと、ホフマンは言う。

 

「最終的には、エリア分けして皆さんの意見を全て取り入れ、様々な『顔』を持つ街にしたいですね。

その時に師匠と親父を呼んで、自分の『成果』を報告したいです。」

街をどうするかの話し合いが原因で、出て行く者が居ないのはホフマン、お前の人柄だよ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

次の日。

「はぁはぁ…参りました。」

オアシスの前、沢山の移民(ギャラリー)が見守る中、この前みたく、ホフマンと模擬戦。

はい、移民の皆さんは当然ながら全員が、ホフマンの応援、アウェイ100㌫さ!

 

試合開始早々、やっぱりと言うかホフマン君、いきなり繰り出して来ましたよ、無双三段(擬き)。

しかし結果から言えば、ホフマンの打ち下ろしの槍をアッパースィングで弾き返し、その儘 穂先を首筋にピタリと当てて終了。

「まだまだだな…それじゃ只の、斬り突き払うの三連戟だ。」

「…はい。」

「もう少し技の繋ぎを速く…」

その後、ダメ出しとアドバイスをするが、正直、この男の模倣の才能に、内心冷や冷やしたのは秘密だ。

あ~、危なかった!!

 

そして そんな中、次の相手は俺だと言わんばかりに、名乗り出た男が1人。                     

「エンドールでのリベンジ、此の場で果たしてやる!」

サイモンである。

 

ふっ…良いだろう!返り討ちにしてやるから、掛かって来いや!!

…なーんて思う筈が無く、

「いや…別に、良ーや。」

「はああっ!!?ちょ…待て、お前!

其処は受けて立つ場面だろ?普通?」

…俺は其処迄、バトル野郎じゃねーよ。

ぶっちゃけ、面倒いしー。

 

しかし…

「いや、フィーグ殿、それは無いと思うのだが?」

「折角、意気込んでいるのをスルーというのは、どうかと思いますよ?」

…え゙?

 

「あ~、何だかサイモンさん、可哀想。」

「ん、無い…無いわー。」

「普通は意気を酌んで、OKするよな?」

え?えぇ?

何だか身内含む周囲が、絶対零度な視線で、何かを訴えています。

こんなの、俺のグラスハートは耐えられません。

まあ、良いでしょう、俺は空気を読む男ですから…(泣)

結局は勝負を受ける事に。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

現在のサイモンの出で立ちは、鋼の剣に旅人の服、鱗の盾。

それに合わせる様に、俺も方天画戟に旅人の服な装備。

 

「…始め!」

ホフマンの合図で、互いの得物(ぶき)を ぶつけ合い、それを何度も繰り返して有効打を狙う。

…が、サイモンも『あの時』よりかは かなりレベルアップしているみたいだが、悪いが踏んだ場数は、俺の方が上みたいだ。

 

ガキィ!!

「ぬ…!!」

先程の模擬戦の如く、必打を狙ったサイモンの大振りな剣に合わせ、その剣を弾き飛ばした。

 

ザッ…

鋼の剣は砂地に落ちるが、それを拾わせる様な隙を与える程、俺は優しくはない。

「か、格闘戦で勝負だ!!」

前回と同じパターンで、盾を捨てて、ファイティングポーズを構えるサイモン。

前回は それに応じる事無く、槍の間合いで滅多打ちしてやったが、

「良いぜ…」

俺も黒槍を地に置き、お得意のヒットマンスタイル(サウスポー)の構え。

自分から誘ってきた割には、サイモンは決して、素手のファイトが得意な訳じゃあ無かった。

あの後は、互いに武器を持っていた以上に、一方的な展開に。

 

右のフリッカージャブの連打でフラフラになった所を、間合いを詰めての水面蹴り。

更には立ち上がりを狙っての、シャイニング・ケンカキック→フランケンシュタイナーの必殺フルコース。

そしてトドメとばかりに、砂漠…柔い砂地な足場だからこそ躊躇無く放てる、普段は実戦試合問わず、余りにも危険過ぎる為、対人では禁じ手にしている…

「犬神家ドライバーーーーーーーっ!!」

どんっ!!

                  

      (\

      | )  /)

      / /  ( |

      / /  ||

     ( \  / |

      \ \/ /_

       ̄三三三二

「…………………………………。」

                  

「「「「「「………………。」」」」」」

HAHー!皆、余りの俺の無双っぷりに、声も出せずに驚いてるZE!

…いえ、違いますね。

はい、解っていますとも。

余りの荒業に、皆さんドン引いてるんですよね。

そんな中、

「…そ、其処迄!勝者、フィーグさん!」

ホフマンが勝者コール。                          

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ズズズ…

その後、砂に埋まってるサイモンを引きずり出し、

「お~い、生きてるか~?」

「………………………………………。」

…返事が無い。只の屍の様だ。

 

「いや、気を失っているだけですから!」解ってるよ。一度、使(い)ってみたかったんだよ。

 

 

 

 

あの後、目を覚ましたサイモンに、少しばかり殺り過ぎたと、一応は謝ったが、当人は試合の中の事だから、別に気にしていないと言ってくれた。

「尤も、また敗れてしまったのは、普通に悔しいがな。」

ん、サイモン、意外と武人だ。

俺だったら あんなス〇キヨされた日にゃ、その相手を一生怨む自信があるぜ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「じゃ、また来るわ。」

「はい、何時でも遊びに来て下さい!」

 

その後はホフマンに挨拶した後、俺達はサランを目指し東周りに北上、この途上の町、『ファトラウェン』を発つのだった。

 

 




①シスター・シエスタの容姿は…名前で察した人も居るかと思いますが、某ハルケギニアのボブカットきょぬーメイドさんを、15程度、年齢をプラスしたイメージで。

②犬神家ドライバーは、三沢光晴氏(プロレスラー・故人)の必殺技、エメラルド・フロウジョンを連想して下さい。
 
‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡
 
次回:真に導く者『Shu-loveる(仮)』
乞う御期待!!
 

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