真に導く者   作:挫梛道

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※※※ 今回の予習予備知識設定!! ※※※
 
【キメラ便】
通常郵便でなく、キメラの翼やルーラを用いた、所謂『速達郵便』。
この世界では、実はキメラの翼は高級なマジックアイテムであり、また、ルーラの魔法力消費量も決して(ゲームみたいに)少なくはないので、凄く高額な郵送システムである。
 


天空の盾

『さ~てと、昨日の続きだ。

改めてOHANASHI、始めようじゃないの、女・王・様?』

「う、うううぅ…」

『とりあえずは、何故 急に、朝も早よから食事の最中に、呼び出そうとしてくれたのかな?

その説明から して貰いましょうかね?』

 

朝食を終え宿をチェックアウトした後、それから ゆったりと馬車を城に進めた俺達。

女王謁見の間にて、昨日の続きだ。

 

「……………………………………。」

『ちょっとちょっと、黙ってたんじゃ、何も判らんのですが?

複数の国家代表者から、俺達の弁明を書き記した書状でも届きましたか?』

「…………!!!!!?」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

昨日と同じく、フィーグさんのOHANASHIが始まりました。

普段とは少し、違和がある言葉使い…

その、何と表現すれば良いか…『括弧』付けた喋り方とでも言うのでしょうか?

それでいて尚且つ、その「識者」を名乗るに相応しい、相手の言動の一歩先を読んだ反論を赦さない発言に、目の前に居るガーデンブルグの女王様は、顔を赤くしたり青くしたり絶句したり…

 

 

『そもそも朝、俺達を呼びに来たオンナヘイシサンだけど、昨日「あれだけの事」やらかしといて、普通に職務就かせてるって、どーなの?

ブランカ兵なら即クビ&逮捕だぜ?

まさか、姫さんに〆られたから、それでチャラだと思ってる?

それとも、ガーデンブルグ国内に於いては「アレ」は別に犯罪行為でも何でもない、普通に日常茶飯事な行為ってか?

リアルにオークと変わらないなぁ!?』

「~~~~~!!」

 

…そんな明らかに、既に まともに問答出来る様な心況ではないであろう女王様に対して、フィーグさんは初日の尋問の意趣返しとばかり、容赦無くマシンガントークを浴びせています。

…って、オークって何ですか?

 

「(ボソ)それにしても、弁明を書き記した書状って…?」

「(ボソ)あ、それはですね…」

「(ボソ)トルネコさん?」

 

トルネコさんが言うには、城内で私と姫様と別れた後、盗賊のアジトに赴く前に、フィーグさんライアンさんトルネコさん、そしてブライ様が、今迄の旅で知り合えた他国の王族の方々等に、自分達の現状と、そのフォローを要請した手紙をキメラ便で出していたとか。

 

「…キングレオに出した手紙は、フィーグさんが『追伸:女王宛てに手紙出さないと、分かるよね?』…な、かなり脅迫じみた内容を、着払いで送り出していました。」

…だとか。

 

因みに4人が書状を宛てたのは、バトランド王家、ブランカ城兵団、フランベルジュ傭兵団、ソレッタ王家、スタンシアラ王家、キングレオ王家…そして…

 

ドタドタドタドタ…

「し、失礼します、女王様!!」

「な、何事です?」

このタイミングで、兵士さんが、慌てて入ってきました。

 

「また…書状が…!!」

「な…次は、どちら…どなたからです?」

「はい、それが…ブランカ国王にフランベルジュ団長、そして、エンドール次期国王である、元・ボンモール第2王子のリック様より…」

「『はいぃ!!?」」

その言葉に、女王様だけでなく、フィーグさんも吃驚です。

 

「マジかよ…まさか、陛下自らが手紙を書いてくださるとは…!!」

フィーグさんは王城兵団長である お祖父様にフォローを お願いしたらしく、まさか それが、王様に迄伝わり、如何に兵団長の孫とは云え、一介の(実質欠勤中な)自国兵士の為に、王様自らが書状を書くのは予想外だった様で。

『括弧』を付けない、「素」の口調で呟いていました。

 

「ななな…ブランカ国王だけでなく、何故、あのフランベルジュやエンドール次期国王まで…」

『ああ、俺って一応、ゼヴィウスの息子だから。』

「リック王子とモニカ王女の御婚約の橋渡しをしたのは、実は私なんですよ。」

「え?え?えぇーーーーーーーーーっ!?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『チェックメイトだな、女王様?』

「うぅ…」

 

各国の代表者達に宛てた書状には、今回一連の冤罪の不当逮捕や それに伴う怠慢な尋問等、隠さず捏造(つく)らずに その儘を書き留めて、尋問で問われた犯行時期のアリバイ証明や、そもそも俺達が盗みを働く様な人物ではないというのを説得する様に頼み込む内容だった。

ライアンの了解を得て、バトランド王の手紙を拝見させて貰ったが、やはり俺達の人間性を説くだけでなく、キチンと俺達が納得の往く謝罪賠償の上で、許しを得られなくば、姉妹国同盟の撤廃と同時に、少し後にエンドールで開かれるサミットにて、この件を深く追求すると記されていた。

ウチの陛下の書状も、同じ様な内容だ。

ぺーぺーとは云え、自国の臣下が他国で冤罪着せられて、かなり ご立腹な様子。

 

結果から言えば、この女王様は完全に折れて、泣きながら謝罪。

今回の件、今後は旅先での時事通信社に、全てネタとして公開するという一言が決定打となった。

いや、別に俺達は『黙って欲しいなら、金寄越せ』な類な言葉なんて、一言も言ってないぞ。

女王が「お金出しますから!他言は堪忍して下さい!」って泣きながら言ってきたから、仕方無く、本っ当~に仕方無く、了解してやったのだ。

もう一度言う。

俺達は金品の要求は(まだ)していない。

向こうから勝手に、「金を出すから」と言ってきたのだ。

 

∴恐喝でも脅迫でも無い。

 

とりあえずは沢山の賠償金(クリフト〇イプ未遂の件込み)をゲット。

更には盗賊バコタ及び、その配下の盗賊団捕縛、そしてオークィーン討伐の懸賞金も入り、かなり懐は潤う事に。

 

しかし、女王とのOHANASHIは、これからが本番だ。

 

「…ところで、フィーグ…殿…」

ん?

「フランベルジュからの書状に、そなた宛ての手紙も同封されていたが…」

なぬ?親父から?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

バカ息子へ。

 

いいか、コレは貸しだからな。

チャラにして欲しくば、早くマーニャ嬢と孫を作って顔を見せに来い。

                  

父殿は男子、ママは女の子が希望らしいから、この場合は両者の意見を取り入れ、頑張って双子の男女を作れば問題解決だな。

                  

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

                  

                  

ビリビリビリビリ!!

あ、アホかーーーーーーーーーーーーっ!!                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「天空の盾…ですか?」

「はい、この城に保管されていると聞いています。」

これ以上フィーグさんに OHANASHI…じゃなくて、話を進めさせるのは、流石に女王様が可哀相に見えてきたので、僕が変わって前に出て、話し合いする事に。

 

「た、確かに天空の盾は、ガーデンブルグの国宝として、城の宝物庫に仕舞われてはいるが…

確かに今回の件で、貴方方には多大な迷惑を掛けたのは間違い無いが、だからと言って、国の宝を簡単に渡す訳には…」

『国宝って言っても、何代か前の女王が、当時のバトランド王を色仕掛けで堕として、無理矢理に せしめた品だろ?

元からの国宝てな訳じゃないんだから、らしい事を言っても…ねぇ?』

「な、なななな………っ!?」

誰か、この人を縛って黙らせて下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『んふぐぐぐぐー!(ちっくしょ、ソロ!テッメー、後で覚えてろよ!!)』

ふぅ…兵士さん達の協力の下、漸く静かになりました。

 

「そもそも貴方達は、天空の盾をどうする心算ですか?

売却目当てなら、相応の お金を別途、用意しますよ?」

「いえ、勿論、装備する事で この先、旅の戦いに活用する気ですが?」

「はあぁ!??」

僕の応えに、女王様は思いっきり声を上げて驚き、

「あの盾を装備?何を馬鹿な事を!?」

如何にも「お前には無理!」…な、そんな応対をしてきました。

 

カチン…

少しだけ、ほんの少しだけ、キレました。

 

「大丈夫です。今迄、何人の人が装備しようとして断念したかは知りませんが、僕なら必ず、装備出来ます、してみせます。」

しかし、決して それを表に出さずに、出来るだけソフトに、受け応え。

直ぐにキレて、893モード突入となる誰かさんとは違うんです。

 

「ほう…ならば、それを証明して見せよ。

今回の件、如何な、我々に落ち度が有ったと云え、王族に対して其れ程迄に断言してみせるのだ、もしも装備不可能ならば、それなりの代償を払って貰うぞ?」

『上等だよ!万が一 駄目だった日にゃ、今回の賠償金と懸賞金を全額返還、ついでにソロのDTも、女王、アンタにくれてやるよ!!』

「ふん!それで良かろう!」

いや、ちっとも善くないですから!

誰ですか、この人の拘束を解いたのは?

…てゆーか、女王様の目が、凄く怖いんですけどぉ!?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ソロ~、お前を信用してるからこその発言なんだぜ?機嫌直せよ~?」

「それにしても…ですね!!」

 

兵士長らしい女を含む兵士2人を先頭に、その後ろを女王、更に その後ろに俺達と続き、宝物庫に向かっている。

 

「いや、お前も いい加減に卒業しろよ?

そりゃあ、オーク相手は悲惨だけど、あの女王、中身は かなり、残念っぽいけど、外見は かなりな美人の部類に入ってるぜ?

顔といいスタイルといい、ありゃ、なかなかの(ガシィッ!)うげ!?チョークチョーク!

勿論、マーニャさんのが美人で可愛いし、ぼん!きゅっ!ぼーん!!ですからぁっ!!」

「何をやってるんですか?」

「…不潔です。」             

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

カチャン…ギギイィィィ…

 

宝物庫。

警備兵を横目に扉を開け、女王を先頭に俺達は、その部屋の中に入った。

 

「ふっふっふ…

これこそが昔、我が先祖がバトランドより譲られたとされている、天空の盾!

さあ、ソロと申したな、装備出来る物なら、してみせるが良い!」

「「「…………!!?」」」

 

女王が したり顔で、天空の盾とやらの前に立ち、声高らかに言ってのけた。

 

「ほぇ~っ!!」「でっか!?」「わ…凄…」

それは、宝物庫の一番奥、壁に立てかけられ、鎖を張って倒れない様に固定されている、翼を広げたドラゴンをイメージしたかの様な造形の、巨大な盾の形をしたオブジェだった。

工芸美術品としても、かなりなレベルと判る一品。

そして それは、近寄る者を拒絶するかの様に、常時、青白い電流を放出している。

 

「どうやってバトランドから この国迄運んだのか、そっちに興味があるぜ…」

その大きさ、推定約5㍍!!

 

「どうした?

ほれ、さっさと装備して見せろ?

もしも この盾を本当に装備出来たならば、この宝物庫の品、一度に持ち出せる分は一緒にくれてやろう!」

あら、この女王、アホだわ。

装備出来る訳無いと高を括っているのか、急に態度が余裕丸出しで一変してるし。

よっぽど「初ソロ」を美味しく頂けるのが嬉しい様だ。

確かに このサイズだ。

普通に考えたら、装備出来る出来ない以前の問題だろう。…普通なら…ね。

 

「はぁ…、フィーグさん。」

「応っ。」

しかしソロは、左手に持っていたドラゴンシールドを俺に渡すと、この巨大な天空の盾の前に立った。

スゥ…

ソロが盾に、そっと手を差し伸べる。

すると…

 

ピカァッ!!

「な…!」「なな…!?」「ふっ…」

 

なんと言う事でしょう。

天空の盾は一緒、眩い光を発したかと思えば盾からの放電が静まり、その巨大な盾は、縮む様に徐々に小さくなっていき、最終的には世間一般に普及されている、鉄製の盾のサイズと変わらなくなりました。

「凄い!これ程の硬度なのに、凄く軽いです!」

そして当然な如く、難無く盾を装備するソロ君。

 

「「「何…だと!?」」」

そして、ぽっかーんと間抜けに大きく口を広げてる女王と兵士達www

 

天空の兜や鎧の時も、本来の所有者が手にした時、当人の身体のサイズにフィットしていったのを知っている俺達は、あの巨大盾を目にしても、この展開は予想出来ていたが、やっぱし予備知識無しだと、まさかの展開だよねえ。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「あの~、先程の発言は、無かった事にしていただけたら…」

『あ~、聞こえんなぁ!!』

「…でっすよねー。(ToT)」

 

女王が…ガーデンブルグが幸福だったのは、俺達がゲームみたいに〇次元ポケットな袋を持っていなかった事だ。

ちぃ、あれさえ有れば、考え無しに宝物庫の お宝、根刮ぎ持って帰ったのに…

 

そんな訳で一度に持って帰れる量は限られている。

ならば この場は、

「頼みますよ、トルネコさん。」

「はいな、お任せあれ。」

旦那の鑑定眼の出番だ。

なるべく持ち運びし易い、高価値なアイテムから頂戴する事に。                    

…そんな訳で、

 

≫≫≫≫≫≫ 本日の戦利品 ≪≪≪≪≪≪

天空の盾

マグマの杖

奇跡の剣

炎の爪

他、マジックアイテム多数(素材込み)

他、貴金属類多数

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

 

因みに炎の爪だが、装備適性の有る姫さん曰わく、攻撃力は現在装備しているドラゴンキラーに及ばず、封じられている炎の魔力とやらも、炎を爪部に留める事は出来ない上に、ギラっぽい炎を飛ばしたとしても、大した威力も無いという事で、

「はっきり言って、使えないわ!」

…らしい。

姫さん的には、ソロの火炎斬りの様な技が出来るのを、期待していたみたいだ。

そして奇跡の剣は、クリフトが使用する事になった。

マグマの杖は…(原作知識持ちの俺からすれば、此処で登場したか)…とりあえずは爺さんが使う事に。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「それじゃ、また来るかも知れないから、その時はヨロシク♪」

「「「二度と、来ないで下さい!」」」

 

そして俺達は、城を発つ際に女王達に暖かく送られ(笑)、王都を後にした。

馬車を走らせ、数日のキャンプを経てバトランド領へ。

バド河上流で停泊していたトリートーン号と合流して、バトランド王都へ。

 

俺、ソロ、ライアンで城に行ってみたが、国王は多忙で謁見不可だった為、書状の件の礼を、代わって取り次いでくれたベア将軍に頼んでおいた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「そろそろ、サントハイムに乗り込んでも良い頃かもな。」

「「「「「「!!!!!?」」」」」」

 

船の上、この俺の発言で、サントハイム組、お姉さんズ、ソロの目つきが変わった。

「ソロも、所在不明な剣以外の天空の装備は入手出来たし、俺達も かなり、レベルアップしてるし…」

「ついに…お城を…」

「「バルザック…!!」」

決意新たに決めた様な顔をした、姫さんや お姉さんズが呟く。

 

「「……!」」

ライアンや旦那も、顔を引き締めた。

 

「…の、前に、だ…」

ガタガタガタガタッ!

やったぜ!皆コケた!!

やっぱり最高に士気を高めた直後にスカすボケは、鉄板だね!

くっくっく…計画通り!

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「エンドールの隠れ鍛冶屋ですか?」

「ああ。以前、俺のケイジを打ってくれた職人だよ。」

あ痛たたたた…

あの後、あの場に居た全員から、物理的修正(ツッコミ)を受け、少しばかり顔面がボコボコになってしまった。

まあ、これはギャグ補正が働けば、直ぐに元に戻るだろうが…

 

…メタは さて置き、俺はサントハイム城に乗り込む前に、装備の調整をすべきだと主張した。

 

メダリオ格闘トーナメント決勝まで、俺が使用していた、オーダーメイドの朱紅の鋼槍、ルージュ・オブ・ケイジ。

その槍を打った職人に、新しい武器や防具を作って貰おうと。

ガーデンブルグの一件で、素材や資金が沢山 手元に入ったから、可能な限りは装備面をパワーアップしておくべきだと。

 

「最終的に決めるのはソロ、お前だが…

どうする?」

 

 




‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡
 
次回:真に導く者『職人(仮)』
乞う御期待!!
コメントよろしくです。
 

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