真に導く者   作:挫梛道

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別タイトル:女難の相④


その頃のアリクリ

「ブツブツ…うぅ…僕が特別に『可愛い』っていう訳じゃないんだ…

ライアンさんやフィーグさんが、『鬼』だったり『修羅』なだけなんだ…ブツブツ…」

「うわあああっ!!く、来るなーーーっ!!」

 

盗賊団討伐、そしてオークの襲撃を退いた俺達は、クリフト、そして姫さんを迎えにガーデンブルグ王都に馬車を進めていた。

 

その際、洞窟アジト地下にて、『ぴー』丸出しで気を失っていた盗賊団の頭目・バコタを被疑者…参考人とすべく、地上迄ライアンが肩で担ぎ上げ、馬車に乗せたのだが、道中、何か悪夢…例えば、猪の魔物に〇〇〇〇〇されている夢でも見ているのだろうか、凄く魘されている。

…本当に まじにゴメン。

餌食になった盗賊達には、真剣に心のケアが必要だと思う。

ついでにソロも(笑)。

あのオーク共から、身体の方は何とか無事に死守したのだが、マーニャさんの あの、痛恨の一撃な一言で、かなりな精神的ダメージを負っている様だ。

 

こりゃ、王都に戻ったら、元気付けるって意味でカトレアさん辺りに差し出すかな?

WINWINになるだろうし。

ん?待てよ?

ソロは妹属性だから、あの人は駄目か?

ならば、旅人向けの『専門店』にでも連れて行くかな?

ガーデンブルグの店なら、エンドール以上に様々なタイプの女の子が居るだろうから、きっとソロの好みな娘も居るだろう。

 

「誰が、妹属性ですか?!

勝手に人の好みを設定しないで下さい!」

「ソロは兎も角として、(拳ポキペキ)アンタは付いて行くだけよね?(拳パキピキ)」

「不清潔…」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

帰り道、魔物との『戦闘』は無かった。

一番気懸かりだったオークは…本当に あの時、全員集合していたのか、全然現れない。

まさか、あの『カード』の御陰で、リアルに『種族』として絶滅した?

 

そして途中、『森の民』の通り名を持った、リリパットの集団と遭遇。

彼等は武器である弓を背にして両手を上げ、俺達に対して戦闘意志が無いのをアピール、小さな袋詰めを投げ寄越すと去って行った。

中身は、見た事の無い、種や木の実。

そして、何やら古代文字で書かれた紙切れが。

 

「ふむふむ…要約すると『ありがとう。』ですな。」

あー、察し。

彼等も、あのオークには散々な目に遭っていたんだろうねぇ…。

この、恐らくは『力の種』や『命の木の実』は(後で旦那が鑑定)、彼等なりの感謝の気持ちなのだろう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

王都到着後、俺達は早速『専門店』…でわなく、王城にて冤罪で捕らわれの身となっている、クリフトと姫さんを迎えに行ったのだが…

 

……………………………………………。

 

「とりあえず、姫さん説明。」

「うん…」

 

城の地下牢は、何者かの襲撃を受けたかの様に、壁から床から檻迄破壊されていた。

姫さん達以外の囚人は、何か恐ろしい物(者)でも見たかの様にガクブルと震えており、見張りと、そして応援に駆け付けたのであろう、沢山の女兵士達が綺麗に倒されて並べられている。

ついでに何故だか、あのロザリオを盗まれたと言ってたシスターも、一緒に畳まれていた。

 

とりあえずは檻の中から この惨劇の一部始終を見ていたであろう姫さんに、事の起こりを話して貰う事に。

 

それは、俺達が最初に盗賊団のアジトに向かった、少し後位迄遡るらしい…

 

≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「申し訳ありません、姫様…」

「別にクリフトが悪い訳じゃないんだから、気にしないの!」

「…はい。」

 

四畳半。

3方向は石煉瓦で囲まれ、残る1方は鉄格子。

部屋の角に間仕切りが有り、その先は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…御手洗いか。

 

そんな地下牢の一室に今、私とクリフトは2人で閉じ込められている。

 

クリフトは私に謝ってばかり。

自分の巻き添えで、私が牢屋に入ってしまっているのが、申し訳無いみたい。

でも、牢に入る経験なんて何だか新鮮で、私 今、寧ろwkwkなんだけど…

あの尋問の時、私が王族を名乗ろうとした時に、フィーグがストップを掛けなかったら、流石に この展開は無かったかもね?

 

フィーグが出発前に、他にも仕込みはしてあるから、可能な限りはギリギリ迄 身分を隠していてくれって言ってたけど、どんな策を用意してるのかしら?

あの時のフィーグの顔、偶にマーニャと一緒にソロを弄り倒す時の顔だったから、ある意味不安、ある意味期待大(笑&汗)

 

 

「…………………………………。」

「…………………………………。」

 

「「…………………………………。」」

 

う…会話が無い…。

 

Shu Shu Shu…

この、何とも居た堪ろない空気を払拭する意味合いで、シャドーを展開。

体、動かしてないと落ち着かないし。

 

 

暫くすると、最初に街でクリフトに絡んできた兵士のカトレア…だったかしら?…が やってきて、

「ほらよ…」

時間的に夕食なのかしら?パンとスープ、そしてミルクを持ってきた。

…って、この金髪眼鏡女、もう少し丁寧に渡しなさいよ!

 

 

…で、クリフトと一緒に食べてみたけど、パン硬ーい!

スープも豆を煮込んで、少し塩胡椒で味付けしただけ!

正直、余り美味しくなーい!

タムラ料理長の船上料理や、ネネさんの手料理が食べたーい!

フィーグやライアンの野外キャンプ料理、食べたーい!!

 

 

 

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ぱさっ…

「就寝時刻だ、さっさと寝ろ!」

 

そう言って、毛布を投げつけてきたメガネ女。

だ・か・ら!!

もう少し、丁寧に渡せないの!?

私達、まだ一応は容疑者扱いな筈なのに、何なの?その、ぞんざいな態度?!

完全に『黒』扱いじゃないの!

 

こういう事は、余り言いたくはないんだけど、一応は私、王族なのよ!

今はフィーグに伏せてろって言われてるけど、他国の王族に こんな待遇をするなんて、無罪と証明された時の事なんて、考えていないのかしr…!

 

……!!

 

そうか、そういう事か…

あの時のフィーグの、あの邪悪(すてき)な笑みは、そういう意味合いだったんだ…!

……………………………。

OK。

フィーグ、貴方の企み、乗ったわ!                  

「姫様?顔が、何と謂いますか…

フィーグさんが謀(はかりごと)を企てている時の様な顔に なっていますが…?」

え?あら嫌だわ、顔に出てた?

それからクリフト?今は姫様呼ばわりは止めなさい。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

次の日の朝。

え?夜?

別に何も無かったわよ!

確かに、渡された毛布は、1枚1枚が無駄に大きくて、2人で体を寄せたら1枚で充分に包まる事も出来たけど、一緒に居るのは、あ・の・クリフトよ?

「真面目」と書いて「クリフト」って読んでも、違和感皆無なクリフトよ!

それぞれが毛布で身を包んで、肩を並べるのが精一杯だったわよ!

何処かのバカップルじゃあ有るまいし、何事かが有る訳が無いじゃない!!

…ってゆーか、クリフトの へたれー!

 

 

 

カチャ…

「おい、女!

お前は今から、隣の牢に移れ。」

「はい?」

朝一番から このメガネは一体、何を言っているのかしら?

朝食(やっぱり余り美味しくなさそう)を持ってきたと思っていたら、いきなり牢屋(へや)の移動ですって?

 

「よくよく考えてみたら、如何に罪人と云えども、若い男女を同室にするのは芳しくないのでな。」

そんなの今更よ!!

 

結局、問答無用で強制移動させられたわ。

あの女兵士程度、クリフトも そうだけど、如何に装備品没収(馬車預かり)されているからって、その気になれば、瞬殺出来るんだけど、まあ此処は、大人しく従ってあげるわ。

だからクリフト、そんなに心配そうな顔をしないの。

フィーグ達が戻ってくる迄の、辛抱よ。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「ねー、アナタ達は一体、何をして捕まったのー?」

隣の牢に移動させられた後、通路を挟んだ正面の檻に、私より少し上…20歳前半位の男の人が数人程入っていたから、呼び掛けて聞いてみると、

「俺は冤罪なんだ!俺は女兵士の ぱんつなんか、盗んじゃいねー!!」

「俺もだ!」「姉ちゃん、信じてくれ!」

 

……………………………………………。

何だか、必死な顔で訴えられたわ。

…っていうか、信じるも何も…女の ぱんつを欲しがったりするなんて、そんな人がフィーグ以外に存在してるのに(情報源は勿論マーニャよ)驚きよ!

                  

                  

「コラ、貴様等、此処は私語厳禁だ!」

あら、見張りの兵士に注意されたわ。

(≧∇≦)ゝ

                 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

カツン…カツン…

あれから暫くして…もしかしたら そんなに時間は経ってないのかしら?

時計は勿論の事、太陽も見えないから、時間の感覚が判らない。

兎に角、そんな時に階段から降りてきたのは、あのメガネ女…と、クリフトに…いえ、その そっくりさんらしい、盗賊バコタとやらに黄金のロザリオを盗まれたと云うシスター。

                  

2人は私の檻の前を素通りすると、

ガチャン…

隣の牢、つまりはクリフトの居る部屋に入ったみたい。                               

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ひぇえっ!?いきなり、何をしようとしてるんですか?貴女達は?!」

「あらあらあら?勿論、貴方が私のロザリオを隠し持ってないかの、ぼでーちぇっくですわ♪」

「大人しくしていれば、直ぐに終わる。」

「や、止めて下さい!…って、何故、貴女達も脱ごうとしているんですか?!」

……!!?

え゙ぇ? 石煉瓦の壁を挟んで、隣の牢から、クリフトとシスターとメガネ女の…何だか とんでもない会話が聞こえてきたんですけど?

「気にするな、お互いに少しだけ、気持ち良くなるだけだ。

ふむ…どうやら貴様は、本当に まだ新品…未使用な様だしな。

天極を魅せてやるよ♪」

「くすくす…そーゆー事ですわ。

あ、カトレアさん?

約束通り、最初は私ですからね?」

「くっ…仕方無い…。

ちぃっ!!初物と分かっていれば…」

 

…えっ?えぇっ!?

ちょ…待っ…

 

「すいません、本当に勘弁して下さい!

私は本当に、神に仕える身で…」

「あらあらあら?それなら私も聖職者ですから、問題有りませんわ?」

 

…大アリよっ!!

 

「それに我が宗派は、愛さえあれば、悪魔とアンデッド以外は、性別も年齢も種族も…オークでさえも、全てが許されるのよ!

貴方が今、何処の宗派かは、問わないわ!

てゆーか、今直ぐに改宗なさい!!」

…何だか、本当に とんでもない方向に、話が進んでるわね…って、冷静に分析してる場合じゃない!!

 

「ちょっと、アナタ達!クリフトに何しようとしてるのよ!!」

「「ナニ♪」」

「はぁ?!」

「ひm…アリーナ様~っ!!」

「大丈夫だ。直ぐに終わらせてやるさ。」壁越しに声を出してみても、人を馬鹿にしたような返事しか、返ってこない。

 

更には

「何なら貴女も、混ざりますか?

尤も最初、一番は私ですけど~♪」

…………………………………………。

 

 

…ぷちっ!!

「…最期通告よ。

今直ぐ、クリフトから離れなさい!」

「ほう?離れないと?」

「あは♪檻に閉じこめられた中で、何が出来るのかしら?」

「うわわゎっ!?ちょ…コレだけは…」

 

…随分と舐められた物ね。

こんな石煉瓦の壁如きで、この私を本気で閉じ込めた心算に なっていたなんてね!!

 

「でえぃやあああああああああっ!!」

ドッゴォッ!!

「「!!!?」」

「こんな壁、破壊しようとすれば、何時でも出来たのよ?」

「ななな…」「何だ…と…?」

二重の極みで壁に大穴を空け、隣の檻に入ってみたら、2人掛かりで着ている服を剥かれているクリフトが、正に最後の1枚を死守している場面。

 

あぁ~っ、しまった!

乗り込むの、5秒位早かった!!

…で、なくて!!

 

バカッドゴッ

「きゃん!?」「ぬゎっ!?」

クリフトを羽交い締めしているメガネと、下を引きずり降ろそうとしてるシスターを蹴り飛ばすと彼を引き寄せて、

「もう、大丈夫だからね?」

「ひぃ~っ!アリーナ様ぁ!!」

がばぁっ!

 

きゃっ!?

はわわわわわわ…

はぐされた はぐされた はぐされたっ!?

「アリーナ様ぁ~!ひぃい~っ!!」

優しく声を掛け微笑んでみたら、半裸(はだか)のクリフト(おとこ)に はぐされた!!                  

ま…まあ、別に良っか…クリフトだし…

悪気(よこしま)が有るんでなくて、痴女の恐怖から解放された、安心感からだよね?

 

「あ~、ヨシヨシ、もう大丈夫、怖くないから!もう泣かないの、男の子!」

「アリーナ様ぁ~…うぅ…ひっく…」

泣きじゃくって、人の胸に顔を埋めてるクリフトの頭を撫でながら あやす私。

ん、一応はクリフトのが年上なんだけど、やっぱり見えないわ~。

てゆーか、今のクリフト、脅えている小動物みたいで、凄く可愛いんですけど?

 

キッ…

「うぅ…」

「な…何だ?そんな顔しても、ち、ちっとも怖くはないぞ?」

落ち着いたクリフトを後ろに下げ、獣な女2人を睨みつける。

巫山戯けないでよ!

何が、男女同室は芳しくないよ!!

コイツ等、私達を引き離したのは、端からソレが目的だったのね!

…一応、感謝もしておいてあげるわ。

貴女達の御陰で、今迄 頭の中で覆われていた靄が晴れ、ハッキリと気付いた事もあるのだから。

 

私は…クリフトが…

 

だからこそ、ハッキリと言っておく。

 

「な…何だ?」

 

すぅ~…

「クリフト・ランディバーグのDTは、この私の物よ!!」

 

「は?」「あら!?」「ひm…アリーナ様?」

 

 

orz…

じ、自分で言っておいてアレだけど、凄く恥ずかしかったんですけど!!

 

「…と、兎に角もう、これ以上クリフトには、指1本触れさせないんだから!」

そう言って、女兵士とシスターを改めて睨みつけるけど、

スチャ…

「ふん!壁を壊したのは驚いたが、所詮は素手だろ?」

「神は申しております。

汝、汝の敵をシバくべし!…と!」

剣を抜き、杖を構えての抗戦の姿勢。

それなら、こっちも容赦は しないわよ!

 

ダッシュで間合いを詰めてからの…

「銀河火弾拳!!…&、銀河幻影拳!!」

どどんっ!!

「「ぎょえ~~~っ!?」」

左右の必殺拳をお見舞いよ!!

 

「お、お前っ!?」

「レッグ・ラリアート!!」

バシィッ!

「きゃああっ!?」

ついでに それを見て襲ってきた見張りの兵士にも、飛び廻し蹴りを炸裂させてやったわ!!

 

 

 

ダダダダダダダ…

「何だ?今の派手な音は?」

「な…?カトレアにシスター殿?」

「貴様、一体、何をした?!」

 

すると、騒ぎを聞きつけた兵士達が大挙して迫ってきた。

 

何をしたって…一応は正当防衛なんだけどなぁ?

まあ、良いわ。

痛いメに遭う覚悟があるなら、掛かってきなさい!

クリフトは、私が護るわ!!

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「…と、いう訳なの…」

「はぁ…やれやれだな…」

「全く、この国の女って、人間も魔物も、碌なモンじゃないわね!」

「不潔です…」

 

姫さんの説明で、思いっきりドン引きしてしまう俺達。

 

「ま、ヤっちまったモンは仕方無いさ。

バコタは この場の兵士に引き渡す予定だったけど、こうなったら直接、女王の所に連れて行こうぜ。

姫さんとクリフトも、一緒にな。」

 

 




‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡
 
「さあ、女王様?OHANASHIの時間だぜ?」
 
次回:真に導く者『天空の盾(仮)』
乞う御期待!!
コメントよろしくです。
 

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