「ブツブツ…うぅ…僕が特別に『可愛い』っていう訳じゃないんだ…
ライアンさんやフィーグさんが、『鬼』だったり『修羅』なだけなんだ…ブツブツ…」
「うわあああっ!!く、来るなーーーっ!!」
盗賊団討伐、そしてオークの襲撃を退いた俺達は、クリフト、そして姫さんを迎えにガーデンブルグ王都に馬車を進めていた。
その際、洞窟アジト地下にて、『ぴー』丸出しで気を失っていた盗賊団の頭目・バコタを被疑者…参考人とすべく、地上迄ライアンが肩で担ぎ上げ、馬車に乗せたのだが、道中、何か悪夢…例えば、猪の魔物に〇〇〇〇〇されている夢でも見ているのだろうか、凄く魘されている。
…本当に まじにゴメン。
餌食になった盗賊達には、真剣に心のケアが必要だと思う。
ついでにソロも(笑)。
あのオーク共から、身体の方は何とか無事に死守したのだが、マーニャさんの あの、痛恨の一撃な一言で、かなりな精神的ダメージを負っている様だ。
こりゃ、王都に戻ったら、元気付けるって意味でカトレアさん辺りに差し出すかな?
WINWINになるだろうし。
ん?待てよ?
ソロは妹属性だから、あの人は駄目か?
ならば、旅人向けの『専門店』にでも連れて行くかな?
ガーデンブルグの店なら、エンドール以上に様々なタイプの女の子が居るだろうから、きっとソロの好みな娘も居るだろう。
「誰が、妹属性ですか?!
勝手に人の好みを設定しないで下さい!」
「ソロは兎も角として、(拳ポキペキ)アンタは付いて行くだけよね?(拳パキピキ)」
「不清潔…」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
帰り道、魔物との『戦闘』は無かった。
一番気懸かりだったオークは…本当に あの時、全員集合していたのか、全然現れない。
まさか、あの『カード』の御陰で、リアルに『種族』として絶滅した?
そして途中、『森の民』の通り名を持った、リリパットの集団と遭遇。
彼等は武器である弓を背にして両手を上げ、俺達に対して戦闘意志が無いのをアピール、小さな袋詰めを投げ寄越すと去って行った。
中身は、見た事の無い、種や木の実。
そして、何やら古代文字で書かれた紙切れが。
「ふむふむ…要約すると『ありがとう。』ですな。」
あー、察し。
彼等も、あのオークには散々な目に遭っていたんだろうねぇ…。
この、恐らくは『力の種』や『命の木の実』は(後で旦那が鑑定)、彼等なりの感謝の気持ちなのだろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
王都到着後、俺達は早速『専門店』…でわなく、王城にて冤罪で捕らわれの身となっている、クリフトと姫さんを迎えに行ったのだが…
……………………………………………。
「とりあえず、姫さん説明。」
「うん…」
城の地下牢は、何者かの襲撃を受けたかの様に、壁から床から檻迄破壊されていた。
姫さん達以外の囚人は、何か恐ろしい物(者)でも見たかの様にガクブルと震えており、見張りと、そして応援に駆け付けたのであろう、沢山の女兵士達が綺麗に倒されて並べられている。
ついでに何故だか、あのロザリオを盗まれたと言ってたシスターも、一緒に畳まれていた。
とりあえずは檻の中から この惨劇の一部始終を見ていたであろう姫さんに、事の起こりを話して貰う事に。
それは、俺達が最初に盗賊団のアジトに向かった、少し後位迄遡るらしい…
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「申し訳ありません、姫様…」
「別にクリフトが悪い訳じゃないんだから、気にしないの!」
「…はい。」
四畳半。
3方向は石煉瓦で囲まれ、残る1方は鉄格子。
部屋の角に間仕切りが有り、その先は…
…御手洗いか。
そんな地下牢の一室に今、私とクリフトは2人で閉じ込められている。
クリフトは私に謝ってばかり。
自分の巻き添えで、私が牢屋に入ってしまっているのが、申し訳無いみたい。
でも、牢に入る経験なんて何だか新鮮で、私 今、寧ろwkwkなんだけど…
あの尋問の時、私が王族を名乗ろうとした時に、フィーグがストップを掛けなかったら、流石に この展開は無かったかもね?
フィーグが出発前に、他にも仕込みはしてあるから、可能な限りはギリギリ迄 身分を隠していてくれって言ってたけど、どんな策を用意してるのかしら?
あの時のフィーグの顔、偶にマーニャと一緒にソロを弄り倒す時の顔だったから、ある意味不安、ある意味期待大(笑&汗)
「…………………………………。」
「…………………………………。」
「「…………………………………。」」
う…会話が無い…。
Shu Shu Shu…
この、何とも居た堪ろない空気を払拭する意味合いで、シャドーを展開。
体、動かしてないと落ち着かないし。
暫くすると、最初に街でクリフトに絡んできた兵士のカトレア…だったかしら?…が やってきて、
「ほらよ…」
時間的に夕食なのかしら?パンとスープ、そしてミルクを持ってきた。
…って、この金髪眼鏡女、もう少し丁寧に渡しなさいよ!
…で、クリフトと一緒に食べてみたけど、パン硬ーい!
スープも豆を煮込んで、少し塩胡椒で味付けしただけ!
正直、余り美味しくなーい!
タムラ料理長の船上料理や、ネネさんの手料理が食べたーい!
フィーグやライアンの野外キャンプ料理、食べたーい!!
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ぱさっ…
「就寝時刻だ、さっさと寝ろ!」
そう言って、毛布を投げつけてきたメガネ女。
だ・か・ら!!
もう少し、丁寧に渡せないの!?
私達、まだ一応は容疑者扱いな筈なのに、何なの?その、ぞんざいな態度?!
完全に『黒』扱いじゃないの!
こういう事は、余り言いたくはないんだけど、一応は私、王族なのよ!
今はフィーグに伏せてろって言われてるけど、他国の王族に こんな待遇をするなんて、無罪と証明された時の事なんて、考えていないのかしr…!
……!!
そうか、そういう事か…
あの時のフィーグの、あの邪悪(すてき)な笑みは、そういう意味合いだったんだ…!
……………………………。
OK。
フィーグ、貴方の企み、乗ったわ!
「姫様?顔が、何と謂いますか…
フィーグさんが謀(はかりごと)を企てている時の様な顔に なっていますが…?」
え?あら嫌だわ、顔に出てた?
それからクリフト?今は姫様呼ばわりは止めなさい。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日の朝。
え?夜?
別に何も無かったわよ!
確かに、渡された毛布は、1枚1枚が無駄に大きくて、2人で体を寄せたら1枚で充分に包まる事も出来たけど、一緒に居るのは、あ・の・クリフトよ?
「真面目」と書いて「クリフト」って読んでも、違和感皆無なクリフトよ!
それぞれが毛布で身を包んで、肩を並べるのが精一杯だったわよ!
何処かのバカップルじゃあ有るまいし、何事かが有る訳が無いじゃない!!
…ってゆーか、クリフトの へたれー!
カチャ…
「おい、女!
お前は今から、隣の牢に移れ。」
「はい?」
朝一番から このメガネは一体、何を言っているのかしら?
朝食(やっぱり余り美味しくなさそう)を持ってきたと思っていたら、いきなり牢屋(へや)の移動ですって?
「よくよく考えてみたら、如何に罪人と云えども、若い男女を同室にするのは芳しくないのでな。」
そんなの今更よ!!
結局、問答無用で強制移動させられたわ。
あの女兵士程度、クリフトも そうだけど、如何に装備品没収(馬車預かり)されているからって、その気になれば、瞬殺出来るんだけど、まあ此処は、大人しく従ってあげるわ。
だからクリフト、そんなに心配そうな顔をしないの。
フィーグ達が戻ってくる迄の、辛抱よ。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「ねー、アナタ達は一体、何をして捕まったのー?」
隣の牢に移動させられた後、通路を挟んだ正面の檻に、私より少し上…20歳前半位の男の人が数人程入っていたから、呼び掛けて聞いてみると、
「俺は冤罪なんだ!俺は女兵士の ぱんつなんか、盗んじゃいねー!!」
「俺もだ!」「姉ちゃん、信じてくれ!」
……………………………………………。
何だか、必死な顔で訴えられたわ。
…っていうか、信じるも何も…女の ぱんつを欲しがったりするなんて、そんな人がフィーグ以外に存在してるのに(情報源は勿論マーニャよ)驚きよ!
「コラ、貴様等、此処は私語厳禁だ!」
あら、見張りの兵士に注意されたわ。
(≧∇≦)ゝ
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
カツン…カツン…
あれから暫くして…もしかしたら そんなに時間は経ってないのかしら?
時計は勿論の事、太陽も見えないから、時間の感覚が判らない。
兎に角、そんな時に階段から降りてきたのは、あのメガネ女…と、クリフトに…いえ、その そっくりさんらしい、盗賊バコタとやらに黄金のロザリオを盗まれたと云うシスター。
2人は私の檻の前を素通りすると、
ガチャン…
隣の牢、つまりはクリフトの居る部屋に入ったみたい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ひぇえっ!?いきなり、何をしようとしてるんですか?貴女達は?!」
「あらあらあら?勿論、貴方が私のロザリオを隠し持ってないかの、ぼでーちぇっくですわ♪」
「大人しくしていれば、直ぐに終わる。」
「や、止めて下さい!…って、何故、貴女達も脱ごうとしているんですか?!」
……!!?
え゙ぇ? 石煉瓦の壁を挟んで、隣の牢から、クリフトとシスターとメガネ女の…何だか とんでもない会話が聞こえてきたんですけど?
「気にするな、お互いに少しだけ、気持ち良くなるだけだ。
ふむ…どうやら貴様は、本当に まだ新品…未使用な様だしな。
天極を魅せてやるよ♪」
「くすくす…そーゆー事ですわ。
あ、カトレアさん?
約束通り、最初は私ですからね?」
「くっ…仕方無い…。
ちぃっ!!初物と分かっていれば…」
…えっ?えぇっ!?
ちょ…待っ…
「すいません、本当に勘弁して下さい!
私は本当に、神に仕える身で…」
「あらあらあら?それなら私も聖職者ですから、問題有りませんわ?」
…大アリよっ!!
「それに我が宗派は、愛さえあれば、悪魔とアンデッド以外は、性別も年齢も種族も…オークでさえも、全てが許されるのよ!
貴方が今、何処の宗派かは、問わないわ!
てゆーか、今直ぐに改宗なさい!!」
…何だか、本当に とんでもない方向に、話が進んでるわね…って、冷静に分析してる場合じゃない!!
「ちょっと、アナタ達!クリフトに何しようとしてるのよ!!」
「「ナニ♪」」
「はぁ?!」
「ひm…アリーナ様~っ!!」
「大丈夫だ。直ぐに終わらせてやるさ。」壁越しに声を出してみても、人を馬鹿にしたような返事しか、返ってこない。
更には
「何なら貴女も、混ざりますか?
尤も最初、一番は私ですけど~♪」
…………………………………………。
…ぷちっ!!
「…最期通告よ。
今直ぐ、クリフトから離れなさい!」
「ほう?離れないと?」
「あは♪檻に閉じこめられた中で、何が出来るのかしら?」
「うわわゎっ!?ちょ…コレだけは…」
…随分と舐められた物ね。
こんな石煉瓦の壁如きで、この私を本気で閉じ込めた心算に なっていたなんてね!!
「でえぃやあああああああああっ!!」
ドッゴォッ!!
「「!!!?」」
「こんな壁、破壊しようとすれば、何時でも出来たのよ?」
「ななな…」「何だ…と…?」
二重の極みで壁に大穴を空け、隣の檻に入ってみたら、2人掛かりで着ている服を剥かれているクリフトが、正に最後の1枚を死守している場面。
あぁ~っ、しまった!
乗り込むの、5秒位早かった!!
…で、なくて!!
バカッドゴッ
「きゃん!?」「ぬゎっ!?」
クリフトを羽交い締めしているメガネと、下を引きずり降ろそうとしてるシスターを蹴り飛ばすと彼を引き寄せて、
「もう、大丈夫だからね?」
「ひぃ~っ!アリーナ様ぁ!!」
がばぁっ!
きゃっ!?
はわわわわわわ…
はぐされた はぐされた はぐされたっ!?
「アリーナ様ぁ~!ひぃい~っ!!」
優しく声を掛け微笑んでみたら、半裸(はだか)のクリフト(おとこ)に はぐされた!!
ま…まあ、別に良っか…クリフトだし…
悪気(よこしま)が有るんでなくて、痴女の恐怖から解放された、安心感からだよね?
「あ~、ヨシヨシ、もう大丈夫、怖くないから!もう泣かないの、男の子!」
「アリーナ様ぁ~…うぅ…ひっく…」
泣きじゃくって、人の胸に顔を埋めてるクリフトの頭を撫でながら あやす私。
ん、一応はクリフトのが年上なんだけど、やっぱり見えないわ~。
てゆーか、今のクリフト、脅えている小動物みたいで、凄く可愛いんですけど?
キッ…
「うぅ…」
「な…何だ?そんな顔しても、ち、ちっとも怖くはないぞ?」
落ち着いたクリフトを後ろに下げ、獣な女2人を睨みつける。
巫山戯けないでよ!
何が、男女同室は芳しくないよ!!
コイツ等、私達を引き離したのは、端からソレが目的だったのね!
…一応、感謝もしておいてあげるわ。
貴女達の御陰で、今迄 頭の中で覆われていた靄が晴れ、ハッキリと気付いた事もあるのだから。
私は…クリフトが…
だからこそ、ハッキリと言っておく。
「な…何だ?」
すぅ~…
「クリフト・ランディバーグのDTは、この私の物よ!!」
「は?」「あら!?」「ひm…アリーナ様?」
orz…
じ、自分で言っておいてアレだけど、凄く恥ずかしかったんですけど!!
「…と、兎に角もう、これ以上クリフトには、指1本触れさせないんだから!」
そう言って、女兵士とシスターを改めて睨みつけるけど、
スチャ…
「ふん!壁を壊したのは驚いたが、所詮は素手だろ?」
「神は申しております。
汝、汝の敵をシバくべし!…と!」
剣を抜き、杖を構えての抗戦の姿勢。
それなら、こっちも容赦は しないわよ!
ダッシュで間合いを詰めてからの…
「銀河火弾拳!!…&、銀河幻影拳!!」
どどんっ!!
「「ぎょえ~~~っ!?」」
左右の必殺拳をお見舞いよ!!
「お、お前っ!?」
「レッグ・ラリアート!!」
バシィッ!
「きゃああっ!?」
ついでに それを見て襲ってきた見張りの兵士にも、飛び廻し蹴りを炸裂させてやったわ!!
ダダダダダダダ…
「何だ?今の派手な音は?」
「な…?カトレアにシスター殿?」
「貴様、一体、何をした?!」
すると、騒ぎを聞きつけた兵士達が大挙して迫ってきた。
何をしたって…一応は正当防衛なんだけどなぁ?
まあ、良いわ。
痛いメに遭う覚悟があるなら、掛かってきなさい!
クリフトは、私が護るわ!!
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…と、いう訳なの…」
「はぁ…やれやれだな…」
「全く、この国の女って、人間も魔物も、碌なモンじゃないわね!」
「不潔です…」
姫さんの説明で、思いっきりドン引きしてしまう俺達。
「ま、ヤっちまったモンは仕方無いさ。
バコタは この場の兵士に引き渡す予定だったけど、こうなったら直接、女王の所に連れて行こうぜ。
姫さんとクリフトも、一緒にな。」
‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡
「さあ、女王様?OHANASHIの時間だぜ?」
次回:真に導く者『天空の盾(仮)』
乞う御期待!!
コメントよろしくです。