真に導く者   作:挫梛道

73 / 101
 
アリーナの居ないバトルが、こんなにも(私的に)難かったとわ…
 



餓えている獣!

「大丈夫だ。

いざとなったら、地下(した)で縛ってる奴等を人身御供にして逃げよう。」

「アナタは鬼ですか!?」

 

≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪

…あれから俺達は、とりあえず、魔除けの香が効いていて、此方に近寄れないオークの群を無視して、盗賊達をローブで縛った後、バコタと山賊A(仮名)に、外の状況を教えてやった。

 

「「ひぃぃいいぃっ!!?

『奴等』が、『奴等』が来たぁ!?」」

すると、山賊A(仮名)は兎も角、盗賊の頭目も、顔を恐怖に歪めてしまう。

 

盗賊達が言うには、今、洞窟入口周辺を囲んでいる、ピンク色の毛皮を持つオークは『オークィーン』という種族らしい。

この種族、「牝」しか居ないのが最たる特色で、「他の種族」と交わる事で子を成して、種族繁栄維持させているとか。

しかも、某国の女性達と同じく、常に発情期になっているとか。

…で、その「他の種族」てのは、主に人間とか人間とか人間だとか…。

 

……………………………………………。

 

海を渡って、他のオーク系モンスターとヤレや!!

 

因みに俺は、この世界に他のオーク種が存在してるかは、知らない。

てゆーか今日、この『Ⅳ』の世界線にて、初めてオーク種の存在を知った。

 

只、幸いなのか どうなのか、少なくとも命の危険は無いみたいだ。

奴等の目的は『殺す』とは正しく対極的な、『産む』なのだから。

だが それは、俺、ソロ、ライアンからすれば、『くっ殺』以外の何物でもない。

 

因みに奴等が現れた時…俺達が外に出て来る前、最初は爺さんが魔法で追い払おうとしたら、群の中の1体が、身体から紫色の霧の様な物を周囲一帯に撒き散らし、魔法無効空間を作ったとか。

更には

「あのモンスターの奇妙な魔法?で、手持ちのキメラの翼と【においぶくろアンチ】を奪われてしました。」

つまり、奴等の中にも『スティール』の使い手が居る訳だな。

…って、何やってんの旦那!

強行突破しか無いじゃないの!

今、焚いている魔除けの香が尽きたら、この餓えた(性的に背徳的に18禁的に)牝猪の魔獣の集団が一気に雪崩れ込んだ来て、阿鼻叫喚な地獄絵図になるのは必至だぞ!?

 

…そんな訳で、冒頭の発言に至ってみたら、ソロに突っ込まれた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

……………………………………。

オーク達が集団で僕達…いや僕を見ています。

「ぐふふふ…あの緑色な髪のボーヤは、アタシが貰うわよ…!」

「はぁ!?何言ってるのよ!

あのコはアタシが、頂くのよ!」

「いやいやいや、あのコはアタシが…」

…ぞく!

か、勘弁して下さい!

 

「やったなソロ!モテ期到来www」

こんなモテ期、要りません!

「これが入国前に、ミネアさんの占いに出ていた『女難』かー。」

冷静ですねっ!?

 

勿論オーク達は、僕以外にも、フィーグさんやライアンさんに対しても、「アタシが」「いや、アタシが」と、言い合い始め、更には

「アタシは、あの紫のロン毛の美イケメンを貰うわよ!

線が細くて、モロにアタシ好み♪」

「ちょっと待て。あの御方は、アタシが良い事するんだから!!」

……………………………………。

思いっきり、地雷な発言をしてくれてやがりました。                  

恐る恐るチラッと、あの魔物達が言う処の、紫のロン毛の美イケメンサン…(それって形容詞が重複していませんか?)…とやらに目を向けてみると、

「…………………………………………」

はい、完全に目の光が消えています。

背後に『ゴゴゴゴゴ』…と、重低音効果音な文字が見えています。

ぶっちゃけ、あの会話から察するに、僕達の中で一番モテモテです。

 

どうしましょう?

この場合、「この人は女性です」って、教えてあげるべきなのでしょうか?

「ちょっと、ミネアは女よ!!」

…はい、マーニャさんです。

 

「「「「「「「はぁあ!!?」」」」」」」

それを聞いたオーク達が、目の色を緋色に変えて、此方(…と言うか、ミネアさん)を睨み付けてきました。

 

「ちっ…女かよ!」

「何よ!あの胸!!詐欺じゃないの!!?」

「糸目の親父駄女神か!」

 

ぶちぃっ!!

 

あわわわ…(」゚O゚L)…

何か、捻り切り裂ける音が聞こえました。

 

「ちょ…ミネアさん、落ち着いて!」

「そ、そーよ!気にする事ないから!

世の中、それがレアでジャスティスって言う人も、少なくはないから!!」

「むきー!!放して姉さん!

アイツ等を殺して、私も死ぬ!」

夜叉な形相で殺気全開のミネアさんを、フィーグさん達が必死に宥めますが、マーニャさん?それ、フォローなんですか?

 

「おいソロ!あわあわしてないで、お前も手伝え!」

「そーよ!この子、さっきも盗賊に『貧しい』だの『無い』だの『更地』だの、散々に言われて、完全にトドメ刺されたんだから!!」

「むっきーーーーーーーーーーーっ!!」

マーニャさん、ワザとじゃないですよね? 

 

 

 

そして籠城状態の儘、暫く時間が経ち…

「ぐふふふふぉ…どうやら、あの厄介な香も、切れたみたいだねぇ?」

「お楽しみの時間よん!」

「搾り穫ってやるからさ!」

「さあ、孕ませて貰うわよ?」

「カッモォ~~~~~~~~~ン!!♪」

遂に魔除けの香のストックも尽き果て、オークの群が襲い掛かってきました。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ま、待って下さい!洞窟には盗賊団の人達が縄で縛ってる状態、選り取り見取り、無抵抗で犯りたい放題ですよ!」

ソロ…お前 さっき、人に鬼とか言っておいて、それかい…。

 

「ならばソイツ達は、後でデザートとして、美味しく頂くわ!!」

尤も 猪の耳に説法だった様だが。

 

「でやぁ!」「ほいっ!」「どっせぃ!」

 ズザァッ  バシィッ  ビシィッ!

「「「ぎょえーーーーっ!!」」」

ソロ、旦那、俺が迫るオークを迎撃。

そして、

「ふんっ!!」

ドガァッ!

「ぶぎぁああっ!!」

ライアンも、必死にバスタードソードを振り回し、一度に複数匹のオークを蹴散らしている。

「ぬぅ…今迄、数多の戦いを経験したが、此程迄に身の危険を感じたのは、初めてだわい!」

 

「ヒャダイン…ぢゃ!!」

「「フォーティア・ルフィフトーラ!!」」

ブライ爺さんが覚えたての、そして お姉さんズが、前の戦闘で完成させたばかりの合体魔法を唱えるが、

「ずもももも~っ!!」

オークィーンの一体が荒ぶる鼻息と共に、体から紫色の霧を発散、瞬く間に周りが紫一色に包まれた。

「ぅぬ?」「へ?」「嘘…」

すると、3人の放った攻撃呪文が欠き消えてしまう。

 

「魔法が通じない?

ブライさん達は下がっていて下さい!」

「ぬぅ…止むを得んですぢゃ!」

「……………………。」

ソロの指示に、爺さんが、そして納得の往かない表情のミネアさんが無言で退く。

しかし、その指示をガン無視して、前に歩み出る人が1人。

「姉さん?」

そう、マーニャさんだ。

 

シャリ…

両の脇腹に帯刀していた二振りの曲刀…以前、アッテムトでシンちゃんを介して、オーリンから渡されていた『誘惑の剣』を初めて鞘から抜いたマーニャさん。

「覇ぁっ!!」

モンバーバラのトップダンサーと呼ばれるに相応しい、華麗なステップを踏むと同時に、オークの群に突入すると、

「円舞剣!!」

逆手持ちの2本の曲刀を、まるで踊るかの様に、いや、本当に踊りながら振りかざし、次々と敵を切り刻んでいく。

 

「切り札ってのはね、本当に使う必要な時が来るまで、仲間にさえ、ギリギリまで隠しておくから、切り札なのよ!」

マーニャさん、かっけー!!

 

メダリアのトーナメントで、女騎士のコカブリエルが、観客達から その流れる様な剣技を『剣舞』と表現されていたが、それすら足元にも及ばない、その美しい体捌き剣捌きは正しく『剣の舞』、切り札と呼ぶに相応しかった。

ガキィッ!!

「危なっ!?」

「ちぃ!惚けていたからチャンスだと思ったのに!」

…そう。味方でさえ、今が戦闘中だと云うのを忘れさせて、魅了する程に。

 

「フィーグ!何、ぼぉ~っと してるの!

アンタらしくないわよ!!

今のは かなり危なかったじゃないの!」

「いや、まじゴメン!」

『踊り子』のスイッチが入ったのか、本当に若干だが、キャラが変わったマーニャさんに怒られた。

でも まさか、マーニャさんの踊りに見取れていたなんて言えない。

ん。普通に俺が悪い。

 

「調子に乗るな、この雌豚ぁ!!」

ゴン!

「きゃああぁっ!?」

しかし、マーニャさんの快進撃も、やはり長くは続かない。

もともと非力なマーニャさん。

確かに武器のキレ味で、多少のフォローはされてはいるが、彼女の直接の物理攻撃は軽過ぎるのだ。

それはレベルを上げて、何とかなるレベルでは無い程に。

スベリ〇ンのキャッチコピー(違)は、俺達、物理組にしか適用されないのだ。

致命傷を与える事は難しく、例え斬撃で倒れても直ぐに起き上がり、戦列復帰してきたオークに、マーニャさんは背後から肩口に鉄棍棒(メイス)の強力な重い一撃を喰らい、逆に倒されてしまった。

「痛つつつ…」

ざざっ…

「ぶへへ…よくも やってくれたわね!」

「ぼほほほ…覚悟は良いかしら?」

「「「男〇すべし!!女シバくべし!!」」」尻餅を搗き、肩を抑えるマーニャさんに、数匹のオークが滲み寄る。

 

しかしマーニャさんはドヤ顔で、人差し指を立て、ちっちっち…と振ると、

「残念ね…私には まだ、本当に最後の切り札が残っているのよ…!」

「「「「「はあっ?!」」」」」

未だに紫の霧が晴れない、魔法無効空間の中で自信満々に言い放つ。

そして この お姉さんは、声高らかに涙声で叫ぶのだった。

 

「ふぃーぐうー、たすけて~~~っ!!」    

 

ガタタタッ!!

マーニャさんを囲んでいた、オーク達がコケた。

そして、俺もコケた。

 

「巫山戯てるのか、このクソ女ぁっ!!」

「ひぇええ!マーニャちゃんピーンチ!!」

怒り全開の、祟り神モードな猪の獣人(♀)の前、マーニャさんが俺の方を見て、涙目で訴える。

 

「やれやれ、全く…世話の焼ける お姉さんだぜ!!」

ドズガァッ!

俺は目の前のオークを、ブラッディー・スクライドで倒して通路を作ると、

「おらおらぁ!退け退け退け退けぇ!」

無双乱舞を展開しながら邪魔なオークを蹴散らし、マーニャさんの元へ馳せ参じるのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あ、どうやらフィーグさんは、姉さんの救出に、ギリギリ間に合ったみたいですね。凄い勢いで、槍を振り回しています。

 

「ふんぬぉおおおっ!!」「てぇい!」

そして彼方側…ソロさんとライアンさんも、コンビを組む形で、迫るオークの群を迎撃しています。

 

「うぅ…数が多過ぎます!」

断!

「怯むなソロ殿!

怯んだら、その場で負けですぞ!!」

「は、はい!!」

ライアンさんが普通なら、両手で装備する大剣のバスタードソードを片手で振り回しながら、数に圧倒されて、やや気後れ気味なソロさんを、叱咤しています。

 

「何よ!アタシ達は別に、殺したり取って食おうって訳じゃないのよ!」

「そーよ!少し良い事して、お互いに気持ち良くなろうってだけじゃないの!」

「ダグに『R18』が追加されるだけよ!」

「異種共存って言葉、知ってる?」

オークが何かクレームを憑けてきましたが、貴女達はソロさんとライアンさんを、捕って喰らおうとしているんですよね?

そんなのダメです!不清潔です!

 

 

 

「あっーーーーーーーーーーーーー!!」

「嫌だぁーーーーーーーーーーーっ!!」

「「「「「「「…!!?」」」」」」」

そんな時、それは突然の事でした。

私達…と言いますか、フィーグさんソロさんライアンさん、そして姉さんが戦っている中、洞窟の奥から悲鳴が鳴り響いてきました。

聞き覚えのある声です。

あの声…最初に私達が捕らえた山賊A(仮名)サンと、盗賊団のボスのバコタです。

更には次々と、盗賊達の悲鳴が聞こえてきました。

どうやら この戦闘の中、数匹のオークが洞窟内で縛り捕らえていた、盗賊達を先にターゲットとばかりに、侵入して捕って喰らっている…つ、つまり、その…こここ、事に至り及んでいる、真っ最中な様です。

 

「うっわぁ…」

「流石にアレは、同情するわ…」

「非合法とは云え、十分過ぎるくらい、制裁は下されてる模様。

これは情状酌量を訴えてやるべきかも知れませぬな。」

皆さんドン引き。

皆さんが良い人というのは分かってましたが、予想以上に、意外と甘い面を持っていますね。

べ、別に、私が あの人達に散々に、『貧しい』とか『平(たいら)』とか『無い』とか言われて、「ざまあwww」なんて思ってる訳では決して無いですからね!

 

 




 
次でオーク編は締めます。

コメントよろしくです。
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。