アリーナの居ないバトルが、こんなにも(私的に)難かったとわ…
「大丈夫だ。
いざとなったら、地下(した)で縛ってる奴等を人身御供にして逃げよう。」
「アナタは鬼ですか!?」
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
…あれから俺達は、とりあえず、魔除けの香が効いていて、此方に近寄れないオークの群を無視して、盗賊達をローブで縛った後、バコタと山賊A(仮名)に、外の状況を教えてやった。
「「ひぃぃいいぃっ!!?
『奴等』が、『奴等』が来たぁ!?」」
すると、山賊A(仮名)は兎も角、盗賊の頭目も、顔を恐怖に歪めてしまう。
盗賊達が言うには、今、洞窟入口周辺を囲んでいる、ピンク色の毛皮を持つオークは『オークィーン』という種族らしい。
この種族、「牝」しか居ないのが最たる特色で、「他の種族」と交わる事で子を成して、種族繁栄維持させているとか。
しかも、某国の女性達と同じく、常に発情期になっているとか。
…で、その「他の種族」てのは、主に人間とか人間とか人間だとか…。
……………………………………………。
海を渡って、他のオーク系モンスターとヤレや!!
因みに俺は、この世界に他のオーク種が存在してるかは、知らない。
てゆーか今日、この『Ⅳ』の世界線にて、初めてオーク種の存在を知った。
只、幸いなのか どうなのか、少なくとも命の危険は無いみたいだ。
奴等の目的は『殺す』とは正しく対極的な、『産む』なのだから。
だが それは、俺、ソロ、ライアンからすれば、『くっ殺』以外の何物でもない。
因みに奴等が現れた時…俺達が外に出て来る前、最初は爺さんが魔法で追い払おうとしたら、群の中の1体が、身体から紫色の霧の様な物を周囲一帯に撒き散らし、魔法無効空間を作ったとか。
更には
「あのモンスターの奇妙な魔法?で、手持ちのキメラの翼と【においぶくろアンチ】を奪われてしました。」
つまり、奴等の中にも『スティール』の使い手が居る訳だな。
…って、何やってんの旦那!
強行突破しか無いじゃないの!
今、焚いている魔除けの香が尽きたら、この餓えた(性的に背徳的に18禁的に)牝猪の魔獣の集団が一気に雪崩れ込んだ来て、阿鼻叫喚な地獄絵図になるのは必至だぞ!?
…そんな訳で、冒頭の発言に至ってみたら、ソロに突っ込まれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
……………………………………。
オーク達が集団で僕達…いや僕を見ています。
「ぐふふふ…あの緑色な髪のボーヤは、アタシが貰うわよ…!」
「はぁ!?何言ってるのよ!
あのコはアタシが、頂くのよ!」
「いやいやいや、あのコはアタシが…」
…ぞく!
か、勘弁して下さい!
「やったなソロ!モテ期到来www」
こんなモテ期、要りません!
「これが入国前に、ミネアさんの占いに出ていた『女難』かー。」
冷静ですねっ!?
勿論オーク達は、僕以外にも、フィーグさんやライアンさんに対しても、「アタシが」「いや、アタシが」と、言い合い始め、更には
「アタシは、あの紫のロン毛の美イケメンを貰うわよ!
線が細くて、モロにアタシ好み♪」
「ちょっと待て。あの御方は、アタシが良い事するんだから!!」
……………………………………。
思いっきり、地雷な発言をしてくれてやがりました。
恐る恐るチラッと、あの魔物達が言う処の、紫のロン毛の美イケメンサン…(それって形容詞が重複していませんか?)…とやらに目を向けてみると、
「…………………………………………」
はい、完全に目の光が消えています。
背後に『ゴゴゴゴゴ』…と、重低音効果音な文字が見えています。
ぶっちゃけ、あの会話から察するに、僕達の中で一番モテモテです。
どうしましょう?
この場合、「この人は女性です」って、教えてあげるべきなのでしょうか?
「ちょっと、ミネアは女よ!!」
…はい、マーニャさんです。
「「「「「「「はぁあ!!?」」」」」」」
それを聞いたオーク達が、目の色を緋色に変えて、此方(…と言うか、ミネアさん)を睨み付けてきました。
「ちっ…女かよ!」
「何よ!あの胸!!詐欺じゃないの!!?」
「糸目の親父駄女神か!」
ぶちぃっ!!
あわわわ…(」゚O゚L)…
何か、捻り切り裂ける音が聞こえました。
「ちょ…ミネアさん、落ち着いて!」
「そ、そーよ!気にする事ないから!
世の中、それがレアでジャスティスって言う人も、少なくはないから!!」
「むきー!!放して姉さん!
アイツ等を殺して、私も死ぬ!」
夜叉な形相で殺気全開のミネアさんを、フィーグさん達が必死に宥めますが、マーニャさん?それ、フォローなんですか?
「おいソロ!あわあわしてないで、お前も手伝え!」
「そーよ!この子、さっきも盗賊に『貧しい』だの『無い』だの『更地』だの、散々に言われて、完全にトドメ刺されたんだから!!」
「むっきーーーーーーーーーーーっ!!」
マーニャさん、ワザとじゃないですよね?
そして籠城状態の儘、暫く時間が経ち…
「ぐふふふふぉ…どうやら、あの厄介な香も、切れたみたいだねぇ?」
「お楽しみの時間よん!」
「搾り穫ってやるからさ!」
「さあ、孕ませて貰うわよ?」
「カッモォ~~~~~~~~~ン!!♪」
遂に魔除けの香のストックも尽き果て、オークの群が襲い掛かってきました。
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「ま、待って下さい!洞窟には盗賊団の人達が縄で縛ってる状態、選り取り見取り、無抵抗で犯りたい放題ですよ!」
ソロ…お前 さっき、人に鬼とか言っておいて、それかい…。
「ならばソイツ達は、後でデザートとして、美味しく頂くわ!!」
尤も 猪の耳に説法だった様だが。
「でやぁ!」「ほいっ!」「どっせぃ!」
ズザァッ バシィッ ビシィッ!
「「「ぎょえーーーーっ!!」」」
ソロ、旦那、俺が迫るオークを迎撃。
そして、
「ふんっ!!」
ドガァッ!
「ぶぎぁああっ!!」
ライアンも、必死にバスタードソードを振り回し、一度に複数匹のオークを蹴散らしている。
「ぬぅ…今迄、数多の戦いを経験したが、此程迄に身の危険を感じたのは、初めてだわい!」
「ヒャダイン…ぢゃ!!」
「「フォーティア・ルフィフトーラ!!」」
ブライ爺さんが覚えたての、そして お姉さんズが、前の戦闘で完成させたばかりの合体魔法を唱えるが、
「ずもももも~っ!!」
オークィーンの一体が荒ぶる鼻息と共に、体から紫色の霧を発散、瞬く間に周りが紫一色に包まれた。
「ぅぬ?」「へ?」「嘘…」
すると、3人の放った攻撃呪文が欠き消えてしまう。
「魔法が通じない?
ブライさん達は下がっていて下さい!」
「ぬぅ…止むを得んですぢゃ!」
「……………………。」
ソロの指示に、爺さんが、そして納得の往かない表情のミネアさんが無言で退く。
しかし、その指示をガン無視して、前に歩み出る人が1人。
「姉さん?」
そう、マーニャさんだ。
シャリ…
両の脇腹に帯刀していた二振りの曲刀…以前、アッテムトでシンちゃんを介して、オーリンから渡されていた『誘惑の剣』を初めて鞘から抜いたマーニャさん。
「覇ぁっ!!」
モンバーバラのトップダンサーと呼ばれるに相応しい、華麗なステップを踏むと同時に、オークの群に突入すると、
「円舞剣!!」
逆手持ちの2本の曲刀を、まるで踊るかの様に、いや、本当に踊りながら振りかざし、次々と敵を切り刻んでいく。
「切り札ってのはね、本当に使う必要な時が来るまで、仲間にさえ、ギリギリまで隠しておくから、切り札なのよ!」
マーニャさん、かっけー!!
メダリアのトーナメントで、女騎士のコカブリエルが、観客達から その流れる様な剣技を『剣舞』と表現されていたが、それすら足元にも及ばない、その美しい体捌き剣捌きは正しく『剣の舞』、切り札と呼ぶに相応しかった。
ガキィッ!!
「危なっ!?」
「ちぃ!惚けていたからチャンスだと思ったのに!」
…そう。味方でさえ、今が戦闘中だと云うのを忘れさせて、魅了する程に。
「フィーグ!何、ぼぉ~っと してるの!
アンタらしくないわよ!!
今のは かなり危なかったじゃないの!」
「いや、まじゴメン!」
『踊り子』のスイッチが入ったのか、本当に若干だが、キャラが変わったマーニャさんに怒られた。
でも まさか、マーニャさんの踊りに見取れていたなんて言えない。
ん。普通に俺が悪い。
「調子に乗るな、この雌豚ぁ!!」
ゴン!
「きゃああぁっ!?」
しかし、マーニャさんの快進撃も、やはり長くは続かない。
もともと非力なマーニャさん。
確かに武器のキレ味で、多少のフォローはされてはいるが、彼女の直接の物理攻撃は軽過ぎるのだ。
それはレベルを上げて、何とかなるレベルでは無い程に。
スベリ〇ンのキャッチコピー(違)は、俺達、物理組にしか適用されないのだ。
致命傷を与える事は難しく、例え斬撃で倒れても直ぐに起き上がり、戦列復帰してきたオークに、マーニャさんは背後から肩口に鉄棍棒(メイス)の強力な重い一撃を喰らい、逆に倒されてしまった。
「痛つつつ…」
ざざっ…
「ぶへへ…よくも やってくれたわね!」
「ぼほほほ…覚悟は良いかしら?」
「「「男〇すべし!!女シバくべし!!」」」尻餅を搗き、肩を抑えるマーニャさんに、数匹のオークが滲み寄る。
しかしマーニャさんはドヤ顔で、人差し指を立て、ちっちっち…と振ると、
「残念ね…私には まだ、本当に最後の切り札が残っているのよ…!」
「「「「「はあっ?!」」」」」
未だに紫の霧が晴れない、魔法無効空間の中で自信満々に言い放つ。
そして この お姉さんは、声高らかに涙声で叫ぶのだった。
「ふぃーぐうー、たすけて~~~っ!!」
ガタタタッ!!
マーニャさんを囲んでいた、オーク達がコケた。
そして、俺もコケた。
「巫山戯てるのか、このクソ女ぁっ!!」
「ひぇええ!マーニャちゃんピーンチ!!」
怒り全開の、祟り神モードな猪の獣人(♀)の前、マーニャさんが俺の方を見て、涙目で訴える。
「やれやれ、全く…世話の焼ける お姉さんだぜ!!」
ドズガァッ!
俺は目の前のオークを、ブラッディー・スクライドで倒して通路を作ると、
「おらおらぁ!退け退け退け退けぇ!」
無双乱舞を展開しながら邪魔なオークを蹴散らし、マーニャさんの元へ馳せ参じるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あ、どうやらフィーグさんは、姉さんの救出に、ギリギリ間に合ったみたいですね。凄い勢いで、槍を振り回しています。
「ふんぬぉおおおっ!!」「てぇい!」
そして彼方側…ソロさんとライアンさんも、コンビを組む形で、迫るオークの群を迎撃しています。
「うぅ…数が多過ぎます!」
断!
「怯むなソロ殿!
怯んだら、その場で負けですぞ!!」
「は、はい!!」
ライアンさんが普通なら、両手で装備する大剣のバスタードソードを片手で振り回しながら、数に圧倒されて、やや気後れ気味なソロさんを、叱咤しています。
「何よ!アタシ達は別に、殺したり取って食おうって訳じゃないのよ!」
「そーよ!少し良い事して、お互いに気持ち良くなろうってだけじゃないの!」
「ダグに『R18』が追加されるだけよ!」
「異種共存って言葉、知ってる?」
オークが何かクレームを憑けてきましたが、貴女達はソロさんとライアンさんを、捕って喰らおうとしているんですよね?
そんなのダメです!不清潔です!
「あっーーーーーーーーーーーーー!!」
「嫌だぁーーーーーーーーーーーっ!!」
「「「「「「「…!!?」」」」」」」
そんな時、それは突然の事でした。
私達…と言いますか、フィーグさんソロさんライアンさん、そして姉さんが戦っている中、洞窟の奥から悲鳴が鳴り響いてきました。
聞き覚えのある声です。
あの声…最初に私達が捕らえた山賊A(仮名)サンと、盗賊団のボスのバコタです。
更には次々と、盗賊達の悲鳴が聞こえてきました。
どうやら この戦闘の中、数匹のオークが洞窟内で縛り捕らえていた、盗賊達を先にターゲットとばかりに、侵入して捕って喰らっている…つ、つまり、その…こここ、事に至り及んでいる、真っ最中な様です。
「うっわぁ…」
「流石にアレは、同情するわ…」
「非合法とは云え、十分過ぎるくらい、制裁は下されてる模様。
これは情状酌量を訴えてやるべきかも知れませぬな。」
皆さんドン引き。
皆さんが良い人というのは分かってましたが、予想以上に、意外と甘い面を持っていますね。
べ、別に、私が あの人達に散々に、『貧しい』とか『平(たいら)』とか『無い』とか言われて、「ざまあwww」なんて思ってる訳では決して無いですからね!
次でオーク編は締めます。
コメントよろしくです。