ガーデンブルグ編、スタート。
「不潔です。」
いきなり この お姉さん(絶壁の方)は一体、何を言っているのだ?
「え?フィーグさん、ソロさん、クリフトさんに、女難の相が出てるので、不吉だと言ったのですが?」
あ、すいません。聞き間違いでした。
「国民の大多数を女性が占める、ガーデンブルグで女難なんて、嫌な予感しかしません。」
「う~む…」
現在、俺達はバトランド領を南北に分断している大河、通称バド河をトリートーン号で上りきった後、その先にあるガーデンブルグを目指して馬車を進めている。
因みに今、外ではソロに姫さん、ライアンとクリフトが、魔物の群れと戦っていた。
「えぇいやぁっ!」
ズバァッ!
ブランカでの祖父っちゃんや親父による鍛錬の成果か、クリフトも かなり剣技に磨きが掛かっている。
そんな中、俺は馬車の中で、ミネアさんに不吉な発言をされていた。
「そもそも、ガーデンブルグでフィーグさんが女難だなんて、絶対に不潔な展開になるに決まっています(きっぱり)!」
「ちょっと待て!やっぱり さっき、『不潔』って言ってたでしょ!?」
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森の中に建つ一軒家、バトランド⇔ガーデンブフグを行き来する旅人や行商人を客としている、中継地点な宿屋。
日も落ちており、道中、魔物との戦闘もあり、それなりに消耗した体を休める為に、今日は此処に宿泊。
ガーデンブルグへの山岳街道が数年振りに開かれたからか、利用客が多い。
久し振りな賑わいだと言ってるのは、宿屋の主人だ。
明日の朝早く発つとして、順調に行けば、明後日の昼過ぎ頃にはガーデンブルグ入り出来るだろう。
因みに昨日は、俺、ソロ、ライアン、クリフトが馬車の傍で火を焼べて、交代で見張るという、外でのキャンプだった。
明日も そのパターンになると思う。
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「…兎にっ角だ、ガーデンブルグの女性、特に城の兵士は常時、発情期真っ盛りな猫科の猛獣みたいなモンだからな、油断してるとマジに穫って喰われるぞ?」
2部屋を取り、男女で別れた男部屋。
昼間、ミネアさんから聞かされた占いの話を、やはり女難の相が出ているらしいソロとクリフトに説明、注意を促す。
ガーデンブルグの女性の独身率は、その国内の男女比率故に、鬼の様に高い。
何しろ、国の女性が現地を訪れた旅人等との…或いは自身の旅先での行きずりの情事の末で、その人口を保っていると云ったゴシップなネタ話もある程だ。
この人口維持の為云々の真偽は置いておくとしても、旅人等の余所の若い男は、日頃から餓えている現地女性からすれば、絶好の種…もとい、カモなのは間違いない。
「詳しいですね…」
「まるで、その身を以てして、体験したみたいですね…」
「まあな…前に話したろ?
フランベルジュの団員として、復興援助作業に行った事があるって…」
「「あー…」」
うーむ…その時、マジに女兵士のお姉ちゃんに御持ち帰りされたってのは、黙っておいたのが良さそうだな。
「噂には聞いていたが、其処迄なのか?」
「その話はネタ話かとばかりに思っていました。」
「まあ、爺には関係ない話ですな。
ついでに女人である姫様にもな。」
ライアン、旦那、爺さんも、やや引き顔で会話に入ってきた。
「まあ、ミネアさんの占いの時点で、残念ながら信用度は高いんだ。
特にソロ、お前、最近ラキスケ率高いから気をつけろ。」
「はぁ…。」
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その頃…
「…で、結局は どーなのよ?」
「…どうって言われても…
つい此間までは本当に、臣下の1人としか思ってなかったけど、この前のあれで、何てゆーか、急に…意識しちゃって…」
「「ほほぅ…?」」
女子部屋では女子トークが絶賛展開中。
アリーナが双子の姉妹に尋問(笑)を受けていた。
「うりゃ、ハッキリと正直に言え~!」
ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ…
「きゃ!?」
不意の揺さぶり(物理)に、お転婆姫が驚きふためる。
ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ…
「う~ん、柔っこい…ホイミンの時にも多少思ってたけど、これは なかなか気持ち良いかも?
フィーグが普段から お願いしたがる気持ち、何となく解ってきたわ~♪」
「ちょ…ま、マーニャ?」
「姉さん…不潔…
ついでにフィーグさんも。」
「あ、心配しなくても、ミネアには やんないわよ…てか、アンタには無理でしょ?
サイズ的に。」
「むっきーっ!!だ・か・ら・私の胸の事は、放っておいてください!」
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「痛ひ…(涙)」
「「自業自得よ(怒)!」」
頭の天辺を押さえて蹲る涙目のマーニャに、アリーナとミネアが吼える。
「…~で、話を戻すわ。
意識して、どーなのよ?」
「う~、わ、分かんないよぉ…
た、只、そう思ってると、ミントスの事も思い出して、尚更 気になって…」
「ミントス…ですか?」
「あ、クリフトが病気で倒れてた時に、アンタがパデキアの薬、ちゅーしてクリフトに飲ましたアレの事ね?」
「~!!?」
ぼん!!
余りにも遠慮の無い、弩ストレートなマーニャの発言に、瞬時に顔を真っ赤にするアリーナ。
「姉さん、オブラートオブラート!
せめて、口移しとかの表現すべきよ!」
本人はフォローの心算なのだろうが、そのミネアの台詞は、初な お転婆姫の心にトドメを刺し、
ガバァッ
「お、おやすみなさいっ!!」
そう言ってアリーナはベッドに飛び込むと、その儘 毛布を頭から被り、全身を隠してしまう。
「…やれやれ。
今夜はこれ以上、話を進めるのは無理っぽいわね。
でも良~いアリーナ?ガーデンブルグ、占いによると、クリフトにも女難が降り掛かるみたいだから、アンタが しっかりと注意してないとダメだよ?
下手したら、持って行かれちゃうわよ?」
「…。(コクン)」
毛布に包まった儘、無言でアリーナは頷いた。
「姉さん、女難はフィーグさんにも出てるけど、姉さんは大丈夫なの?」
「アイツのラキスケは、今に始まった事じゃないのは理解してるわ。
余程な事じゃない限り、事故だったら赦すのが、年上の余裕てヤツよ。」
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「「「「ひゃっはー!!」」」」
翌日、宿屋を発ち、馬車を進めてると、森の中で魔物…でなく、山賊や盗賊か…そんな輩と遭遇。
宿屋で、最近は此処等辺りに野党の類が頻繁に現れるからと注意を受けていたが、早速に現れたみたいだ。
「シャイニング・ウィザード!!」
「羅刹掌!!」
「佰萬幽幻撃!!」
「Rot-Regen von Berlin!!」
「「「「ぐゎっぱーっ!?」」」」
これを姫さんが1人で、まるで頭の中の迷い事を誤魔化し振り払うかの様な立ち振る舞いで撃退。
何かあったのか?
しかし…所謂ネタ技を、俺が口頭説明とイメージのイラスト描きだけで、鍛錬修行の末に物理的に限界レベルとは云えども、再現実践してみせるとは…本当に才能とは恐ろしいな。
「ふぅ…」
「だ、大丈夫ですか、姫様、お怪我は?
今、回復魔法を!」
「あ…ま、まだ大丈夫、本当に まだ大丈夫だから!!」
「そ、そうですか…無理だけは、しないで下さいね!」
「…ぅ…ん…。」
……………………………………。
何時もなら この過保護な迄のクリフトの対応にも、本当にヤバい時以外は滅っ茶 邪険に突っ張ねるのが、顔を朱くしての、あのソフトな対応…
やはり、何かあったな?
よし、後でマーニャさんに聞いてみよう。
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更に翌日、太陽が1日の内で最も天高く上った頃、嘗ては地震で閉ざされていた山岳街道を抜けて、漸く辿り着いたガーデンブルグの王都、城下町。
「むっ…!おい、その馬車、そこの男、ちょっと待て!!」
「はい…?」
そのフィールドとの境である門を、馬車が通り過ぎようとした其の時、俺達勇者パーティーは、警備していた女兵士に呼び止められた。
※※※※※※※次回予告!!※※※※※※※
「クリフト、漢、魅せてやれ!!」
「何を言ってるんですか!?あなたは?!」
次回:真に導く者『濡れ衣勇者(仮)』
乞う御期待!!
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