真に導く者   作:挫梛道

65 / 101
 


天空の鎧

「この先は、馬車は無理だな…」

 

魔法施錠された扉を姫さんのアバカム(物理)て開いた先は、此迄居た、あのキラーマジンガを暴れさせる前提で作った様な大広間とは打って変わって、天井も低い、6㍍四方程度の小さな部屋だった。

その部屋の角に、ポツンと置いてある大きな宝箱を開けてみると、有りましたよ、天空の鎧。

 

ブランクから貰った地図には、このフロアまでしか書き込まれていない。

恐らくはブランク達も、先の広間に入った時に、マジンガ様に襲われて、あの巨体が入ってこれない、この部屋に逃げ込んだんだろうね。

…で、此処に鎧を置いた後は、「もう、こんな危険な場所、嫌だ(泣)!」…っとばかりに、リレミトでも唱えて、一気に脱出したって処だろ。

 

この部屋から、更に奥のフロアに続くであろう扉があるのだが、既に この部屋が馬車が入らないし、またマジンガ様みたいな化け物が出たら洒落にならない。

そんな訳で、俺達の洞窟探索は終了。

だから姫さん?その扉、破らなくても良いですよ?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「銀河幻影拳!!」

「疾風迅雷!!」

 

洞窟をリレミトで脱けた後、敢えて直ぐにルーラで王都には戻らず、とりあえず日が暮れる迄は、馬車を進める事に。

目的はソロのレベルアップ。

折角、ライデインも覚えた事だし、雷鳴の剣と併せて、確実に使いこなせる様にする為だ。

本音で言えば、この辺りの雑魚に使う技じゃないけど、こういうのは兎に角、実戦で数をこなして より完璧に仕上げるのが常だからね。

 

…ついでに姫さんが、遺跡では(個人的に)不本意な結末だったとかで、そのフラストレーション解消とばかりに、普段以上に、戦闘に積極的に参加している。

ぶっちゃけ、鬱憤晴らしの八つ当たり。

周囲の魔物からすりゃ大迷惑(笑)。

俺とライアンも一応、戦闘要員として馬車の外に居るけれど、全く出番が無いぜ!

 

 

「鷲爪閃光脚!」

「Thunder Victory PhoeniX!!」

ドッコォーン!!

魔物の群れを やっつけた!

 

「ソロー、姫さーん、そろそろ暗くなってきたから、ルーラで帰るよー?」

「はい!」

「う~…まだまだ物足りないけど、仕方無いわね…」

 

正直、今回のバトルで、ソロがライデインを習得したのは予想外のラッキーだった。

聞いた話だと、以前から魔法の師匠に、ライデイン習得の為の手解きは受けていたらしい。

それに加えて今回、雷鳴の剣を媒体に雷撃攻撃を乱発していた事で、心身に刺激を受けて、更に仲間の絶体絶命の危機に、身体の中で くすぶっていた能力が、一気に覚醒した…って処かな?

 

…てか、ソロの奴、何気にもう、刀身に雷のチャージ(しかも剣に宿る雷の力と、自分の魔法の重ね掛け)、出来る様になってないか?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ルーラでメダリオ王都に戻ると、宿屋にチェクインして荷物を降ろし、食事の為に街に…とある姐さんのリクエストで、酒場に繰り出した。

すると、入った店に偶然(?)、戦士ブランクが居たので、無事に天空の鎧を入手出来た事を報せる。

 

「まさか、本当にな…」

ブランク曰わく、やはり あのマジンガ様の事もあり、途中で逃げて帰るか、あの場で果てるかと思っていたらしい。

…とんでもねーオッサンだ。

因みにキラーマジンガを倒した事は、それを教えると、何となくだが、後で面倒くなる気がしたので黙っておいた。

食事の後、ブランクを俺達が泊まる宿まで連れて行き、部屋に仕舞っておいた鎧を実際に見せ、更には その場でソロに装備させた。

 

「参った!リバストの友としてヤツに代わり、お前を鎧の主と認めよう。」

それを見たブランクは、改めてソロを所有者と認めてくれた。

その後、彼は、「飲み直す」と言って、俺達と別れ、酒場に戻って行く。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ブランクと別れた後、俺とソロは、ルーラでアネイルに飛んで行った。

明日は また早くに、トリートーン号を停めている港町を目指して出発する予定。

故に長居するつもりはなく、用事を済ませると直ぐにメダリオにトンボ帰りする予定だったのだが…

「宿屋で待ってれば良かったのに…」

「また この前みたいに、何時に帰ってくるか分からないのを待つ程、私は出来た女じゃなくてよ!」

「この街に、新しい詩のヒントが有る気がして…」

…俺とソロだけで向かうつもりが、マーニャさんとホイミンも着いてきました。

 

「…で、本音は?」

「「温泉が私達を呼んでいる!」」

あー、さいですか。

 

「最近、何故か肩が凝るんですぅ…」

「そーそー、私もなのよー。

だ・か・ら・原因不明の肩凝りを取り払う為に温泉に…」

「「ねーっ♪」」

 

2人共に肩凝り、別に原因不明じゃないでしょ?

…って、それ、間違ってもミネアさんの前で言ったりするなよ?

 

 

 

「フィーグさん達は、温泉には入らないんですかぁ?」

「別に、温泉に浸かりに来た訳じゃないからな。」

「???」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

マーニャさんとホイミンは温泉へ。

そして俺達は…

 

「久しぶりだな、戦士リバスト。」

「ぬ?その鎧は!?

貴公達、本当に我が鎧を手に入れたのか!!

いや、約束は守る。

その鎧は、その少年の物だ。」

「あ、ありがとうございます!」

 

嘗て天空の鎧の所有者だった、戦士リバスト(の墓)を訪ねていた。

理由は、ブランク同様に、鎧入手の報告。

そして、

「率直に聞くぜ、リバスト。

あんた、天空の血を引いているのか?」

「!!?」

「フィーグさん?」

 

最初にアネイルに訪れ、リバストと喪われた鎧の話をしていた時に聞きそびれた事を、改めて聞いてみる。

そう、リバストは生前、天空の鎧を身に纏っていた。

そして その天空の鎧は、文字通り天空人の血を宿す者にしか、装備出来ない。

 

答えから先に言えば、リバストの遥か昔の先祖に、天から降りてきたと謂われる人間がいるらしい…が、詳しい事は本人も知らないと言う。

だが それが真実なら、結論からすると やはりリバストも、既に かなり薄れているとは云え僅かながら、天空の血を引いていた事になる。

 

因みに天空の鎧に関しては、別に彼の家系に代々伝わってきた逸品…と云う訳ではなく、リバスト本人が仲間達との旅の途中で偶然、廃虚となった街の跡地で見つけたそうだ。

天空の兜が そうだったが、やはり他の仲間が着ようとすると、鎧自体が其の者を拒む様に帯電したそうだ。

この辺りは、ブランクとの話とも合致している。

突き詰めてみたら、「だから、何?」っていう話ではあるが、それでも私的に気になっていた点…『何故、リバストが天空の武具を装備出来ていたのか?』が解消された。

 

それからも少し話した後、鎧が持つべき者へと渡り安心したのか、リバストは

「勇者よ…負けるなよ…

勇者は…常に、強くあれ…!!」

そう言うと、まるでニフラムの光を浴びたアンデッドの様に、その姿を静かに消す。

 

「漸く成仏したのか…?」

「はい、リバストさん…僕は…」

へぇ?ソロ君?

リバストの言葉に、何か思う事でも あったかい?

今の お前、少し顔付きが変わって、凄く良い顔してるぜ?

 

「さて、マーニャさん達と合流して、メダリオに戻るかね?」

「…そうですね。行きましょう!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ひぇ~ん!フィーグさ~ん、下ろして下さいよ~(泣)!」

その夜、メダリオの宿、その庭にある巨木には、何故か布団で簀巻きのハングドマンされて半泣き、凄く情けない顔になっているソロがいた。

 

「まあ、仕方無いだろwww」

「納得いかないですよ、何で僕だけ…?

あれ、フィーグさんだって同罪じゃあないですかぁ~!?」

…簡単に説明すると、あれからマーニャさん&ホイミンと合流すべく、温泉に行った際、少しばかりラッキーなイベントが起き、メダリオに戻った後、その件で激(怒)になった2人のレディによって、ソロ君は散々OHANASHIされた末に、無慈悲な鉄槌を与えられたのだった(笑)。

 

「いや、俺と お前を一緒にするなよ…

マーニャさんとは…毎晩アレで今更だし、ホイミンについては、俺は兄枠だからセーフなんだとよ(笑)。

心配しなくても、明日の朝には、下ろしてやるよ。」

「うわ~ん!差別だぁ~!!」

「じゃ、お休み~♪」

 

まあ、彼女達の粛清(笑)が無かったら、この俺が、マーニャさんの柔肌を堪能した時点で有罪(ギルティ)として新技・【冥府頭壊手】の実験台にしていたぜ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌日、パインウインドの引く馬車は俺達を載せて、王都から港町へ。

そして、

「錨を上げろぉ!」

カノン船長の号令の基、久しぶりにトリートーン号が出航する。

 

目指すは姫さん達の故郷…サントハイム! 

 




え?
マーニャさんとホイミンの温泉シーン?
んなモン、無ぇーよ!

次回、真に導く者:『お転婆姫の里帰り』
乞う御期待!
コメントよろしくです。
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。