「フィーグー、薬箱、持って来たよ~♪」
「「誰が、薬箱ですかっ!?」」
準決勝が終わり、決勝戦前のインターバル時、控え室にマーニャさんが やってきた。
この部屋は関係者以外立ち入り禁止な筈だったのだが、どーせ、警備員にONEGAIして無理矢理に入ってきたんだろうねー。
薬箱…もとい、ミネアさんとホイミンの魔法でホウセンとの試合で受けたダメージの回復をして貰いながら、マーニャさんとイチャコラしてたら…いや、俺は別に、そんな気は無いんだけどね、この お姉さんが「フィーグニウム補充」とか、訳分かんない事を言いやがりましてって…うっぷ!?マーニャさん、それは窒息死するから、マジに止めて。
「…せっかく回復呪文してるのに~」
「フィーグさん、不潔です。」
「あ~、すまん、少し、話して良いか?」
そんなミネアさんにジト目で…ってゆーか、控え室内、未だ残っている選手や関係者達に「爆死しろ!!」な顔で睨まれる中、ブランクが何だか、凄く申し訳無さそうに話し掛けてきた。
「また後でね。」
「そ、そうか…邪魔したな…」
マーニャさんに言われて、退散しようとするブランク。
待て!この痴女の言う事を真に受けるな!
因みにウチの親父は、如何にも『後で弄ってやる』って顔で若気ついてやがる。
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「じゃあ、明日、この前の酒場でな。」
「ああ、よろしく頼む。」
天空の鎧の隠し場所を教える為に実力を示す約束の件…
結論から云えば、あのホウセンから白星を穫ったのだから、文句無しの合格と言われ、先日の酒場で明日の昼時に、ウチの仲間全員と纏めて話す事になった。
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「ゼヴィウス選手、フィーグ選手、決勝戦の準備が整いました。
入場お願いします。」
大会スタッフからの入場の要請を受け、
「おぅ!」「よっしゃ!!」
俺達は立ち上がる。
「ふん…フィーグよ、思えば、お前と戦り合うのも、久しぶりだな!
手加減はせんぞ!このバカ息子!」
「…したら、アンタの負けだよ、このクソ親父!」
軽い舌戦を交わし、親父…ゼヴィウスが先に控え室を出て行った。
「フィーグ、勝てよ!」
「「「頑張って下さい!」」」
「壁、ぶっ壊すんだよね?」
仲間達がエールを贈ってくれる。
そして、
「フィーグ、さくっと勝ってこい!」
「応よ!」
マーニャさんも激ってくれたから、それに対して親指を上に向けて応えた。
「ん、よろしい♪
じゃ、勝利のおまじないよ♪ん~」
「ん、んん~~~~~~~~~~?!」
マーニャさんが いきなり『深い』方のヤツをしてきてくれました。
それを見た控え室の奴等、血涙を流しながら、目に見える殺気を俺に向けて放ってくれています。
「フィーグさん、不潔です。」
だから、俺ですか?
「うっ…わぁ~、大人だぁ~…」
そこのボクっ娘、あんまりガン見するな。
お子様には、刺激が強過ぎるぞ。
「な…ソロ君!フィーグ達は普段から、こんな感じなのかい?!」
「いいえ…普段は…」
「もっと周りに遠慮が無いわ…」
いや、遠慮無いのわ、この お姉さんだけですから!!
てゆーか お前等、見てないで この お姉さんを、どうにかしてくれ!!
…結局、俺が解放されたのは、最初から約40秒…約250HITが炸裂した後だった。
不幸中の幸いは、親父が一足先に、退室していた事か。
あれ見られていたら、死ぬ程ネタに、されてるぜ。
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カツーン カツーン…
「「…………………………………。」」
闘技場に通じる狭い廊下を、俺と親父は無言で歩いていたが、
「フィーグよ…」
「ん?」
親父が不意に、話し掛けてきた。
「先程の貴様の戦いを見て、本当に お前とは全力で戦りたくなった。
優勝の肩書きは、お前に くれてやる。
最初から全開で行くから、覚悟しておけ。」
「はあ!?」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ…
わーわーわーわーわーわーわーわーわー…
…既に日は落ちてはいるが、昭光(レミーラ)の呪文を封じられた数個の魔法珠が場内を浮遊、その光に照らされ、昼同様な明るさを見せている闘技場。
「さあ、御来場の皆さん、メダリオ格闘トーナメントとは!
己の信念と野望と名誉を懸けて1年に1度、強者同士が この、メダリオ格闘コロシアムを舞台に戦う武闘大会なのであります!
そして戦って!戦って!戦い抜いて!
最後まで勝ち残った者だけが、『マスター・オブ・ザ・メダリオ』の栄光を手にすることが出来るのです!
そのトーナメントも、残す処、この決勝戦のみとなりました!
その舞台に立つのは、片や、御存知の方も いらっしゃるでしょうが、先日の詩人祭のステージにも上がっていた、漆黒の戦士・フィーグ!
そして片や、世界最強の呼び声も高い傭兵団フランベルジュ…その団長を務めている、最強傭兵"炎の剣"ゼヴィウス!
そして この2人、実の親子だという情報が、大会運営本部に入ってきております。
さて、子が偉大な父親という、高き壁を超える日が来たのか!
それとも、父親の意地とプライドに賭けて、それを阻むのか?!
それでは お待たせ致しました!
メダリオ格闘トーナメント…ファイナル!!
レディィィ~…ゴオォォォォォォォッ!!」
俺達が入場ゲートから姿を見せ、距離を置いて対峙し、互いに得物を構えたと同時に、アナウンサーらしき男がマイク(みたいなマジックアイテム)を持って、客席に向かい、ノリノリに口上を始めた。
…てか、漆黒の戦士ってなんだよ?
それから、マイクを持った手の小指、立てんな。
ドォオオオオォォォン…
そして、その「レディゴー」の掛け声の後、試合開始を告げる銅鑼(ゴング)が鳴り、
「行くぞ、フィーグ!…ベギラマァッ!!」
「へ!?」
何を思ったのか、親父…ゼヴィウスは 魔法使用禁止の この大会で いきなり炎の呪文を唱え、己の大剣・フランベルジュに その炎を附加させた。
…と、思えば、その文字通り、炎の剣と化した切っ先を地に着け、まるで地面を斬るかの様に、その軌跡に炎の線を残しながら、ルージュ・オブ・ケイジを構えた俺に向かって突撃してきた。
…って、ちょっと待て!?
感想よろしくです。