真に導く者   作:挫梛道

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正体

「嗚呼ぁ…姫様…」

まさかのアリーナ、初戦敗退。

クリフト達が茫然としてる中、アリーナは大会スタッフの手により、担架で運ばれての退場、医務室へ直行となった。

そして選手控え室には、その着ぐるみの下の顔は揚々とした物なのであろうベロリンマンが、試合出場の呼び出しを受けて出て行ったソロと、入れ替わりで戻ってくる。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

早速、控え室に戻ってきた、ベロリンマンに近づく俺。

 

「ナイスファイトだ。

オマエは次、俺が〆る。」

宣戦布告。

別に姫さんの敵を取るとか、そんなのでなく、この着ぐるみと単純に戦ってみたくなった。

それだけだ。

何?バトル野郎?否定はしない。

 

「うぉん!俺、オマエ、知ってる。

そこのバルログやサイモンに勝った奴!」

「へぇ?知ってるのか?

そりゃ光栄だな?」

「そして、デスピサロにびびって、逃げ出しt「やかましい!!」

こ、コイツわ…

 

「まーまーまーまー、フィーグ、落ち着きたまえ!!(爆)」

テメー、バルログ!!

お前も嬉しそーに言ってんな!!

べ、別に、あの時は怖くて棄権した訳じゃねーからな、全く勝てる気がしねー上に、死亡フラグがビンビンに立ってたから、それを回避しただけなんだからな!

「まあ、あの時のデスピサロは強さは、確かに普通じゃ無かった、そう気にする事も無いよ(笑)。」

…よし、コイツも後で〆る。

 

「ほう、目の前の敵をスルーして、次の敵に現を抜かすとは、随分と余裕だな?」

そんな会話に割って入る男が1人。

2㍍を超える巨躯に鉄仮面と鋼の鎧に鋼の盾、そして特攻槍(ランス)を装備した、俺の初戦の相手、レオパルドだ。

 

「当然、初戦突破前提で言ってんだ。

お前なんて、眼中無ぇーんだよ、モブ。」

当たり前だ。

てゆーか、もっと ぶっちゃければ、優勝前提の発言だよ。

 

「何だと!!小僧、此処で死にたいのか!?」

「おい、2人共、控え室での乱闘は止したまえ!!」

「うぉぉん!私闘、だめ!絶対!!」

俺は、そんな心算は無いのだが、挑発?と勝手に勘違いした、クリフトとは別ベクトルの妄想エクスプレスなデカブツとの間に、イケメンナルシーと着ぐるみ男が割って入る。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あ痛たた…すいませーん、試合、終わったからホイミ使っていいですかー?」

 

控え室で、そうこうしている内に、闘技場ではソロが、初戦の相手を下していた。

係員の了解を得て、自分より先に、対戦相手に回復呪文を掛けるソロ。

その行動に、観客席からは拍手喝采。

 

「すまねぇな…。オメェ、強いな!

いつか、また戦っぞ!」

「はい、ありがとうございました!

いつか、また!!」

自身も回復した後、対戦相手のキャロットとガッチリ握手、健闘を讃え合うソロ達。

その様子を見た観客席からは、更なる拍手喝采となる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ざわざわざわざわざわざわざわざわ…

「あの赤い髪…」

「あの黒いマスク…」

「昨日の詩人祭の人?」

そして自身の出番となり、コロシアムに姿を現したフィーグ。

その瞬間、観客席が ざわめき立つ。

観客達も、あの赤髪と黒い仮面から、昨夜の詩人祭に登場した、レヴィアタンの弾き手と同一と察した様だった。

 

「やっぱり、気付かれましたね。」

「まあ、仕方有るまい。」

「フィーグさんの あの赤い髪は、珍しいですからね~。」

観客席のミネア達が呟く。

因みにクリフトとブライは現在、医務室のアリーナの元に行っており、この場は不在である。

 

 

「フィーグー!行っけー!!」

「フィーグさーん!!」

マーニャやホイミン達が声援を飛ばす中、フィーグvsレオパルドの試合が始まった。

 

「うおおおおおお!!」

騎兵槍を前に突き出し、突進してくる巨漢に対し、フィーグは槍を長く持ち、必殺の構えを取る。

「牙突!!」

「ギャアアァーっ!!」

そして敵が自身の間合いに入る前に自ら一歩踏み込み、ジョルトカウンター式の牙突の一閃。

オープニングマッチのホウセン同様の瞬殺で、あっと言う間に勝負を決めた。

「「やた!!」」

抱き合って飛び跳ねながら喜ぶ、褐色肌の美女と金髪の美少女。

 

 

「レオパルド、逝きます!…なんてな♪」

ボソッと独り言を呟いたフィーグは、闘技場の上空に魔法力で浮かぶ水晶玉(カメラ)に視線を移し、

ビシィッ!

水晶玉(カメラ)目線で穂先を突き付ける。

それは、次戦の相手への、「次はオマエだ!」のメッセージ。

 

 

「うおぉぉん!コイツ、強い!面白い!!」

それを控え室の水晶玉(モニター)で見ていた、着ぐるみの男は嬉しそうに吼えた。

そんな中、

「バルログ選手、ゼ…X(エックス)選手、試合の準備、お願いします。」

大会スタッフが、次の試合に出場する選手を呼び出しに来た。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カツンカツン…

闘技場入口と控え室を結ぶ廊下で、控え室に戻るフィーグと、これから試合うバルログ、そしてX(エックス)がすれ違う。

 

コン…

無言で左拳を軽くぶつけ合うフィーグとバルログ。

そして…

「(ボソ…)まだ、踏み込みが甘い…」

「……………?!」

すれ違い際に耳元で囁いたX(エックス)の声に驚き、思わず振り返るフィーグ。

「ま、待て!あんた、まさか…?!」

フィーグの呼び掛けに、X(エックス)は無言で闘技場に歩を進めて行った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「おい、ソロ!!って…ん?」

慌てて控え室に戻り、ソロを呼びつけるフィーグ。

しかし、其処にソロの姿は見当たらない。

「うぉ?緑髪のヤツなら、医務室。

アリーナの様子、見てくると言ってた。」

ベロリンマンが、フィーグに そう教えた。

 

「ちぃ…っ!!」

舌打ちするフィーグ。

「どした?」

「X(エックス)の正体が分かった…

バルログには悪いが、多分、アイツじゃ、とてもじゃないが勝てねー。

だからこそ後の為、ソロにも少しでも試合を見させるべきと思ったのだが…」

「うぉ?正体?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「うぅ…」

その試合は一応は、名の知れた試合巧者であるバルログを、一歩も寄せ付けないX(エックス)の独壇場となっていた。

バルログの超スピードと、跳躍からの変幻自在な空中殺法を物とせず、手にした赤い刀身の大剣で悉く打ち払うX(エックス)。

                  

「そう言えば、フィーグが言っていたな…『〇〇先生も言ってたぜ、諦めたら其処で試合終了だよ』って…誰だよ、その人?

凄く良い台詞じゃないか…」

純白の【白夜の仮面】の下から見られる目が鋭く光る。

それは試合を捨てた者の其れではない。

 

「ヒョッオォォーッ!!」

掛け声と共に、助走無しで天高く跳んだ仮面の男が吼える。

「紅く染まれ!

ブラッディーハイクロー!!」

自身の最大必殺の連撃技を繰り出すが、それさえも逆転するには至らず、右手に装備した鍵爪から繰り出される斬撃を全て完全に防御され、技の終了と共に、強烈なカウンターの一撃を喰ってしまう。

それと同時にバルログは倒れ、そして試合終了の銅鑼(ゴング)が鳴った。

 

カラン…

いや、バルログの連撃は全て防がれた事はなく、一撃だけ…

その素顔を頭部全てごと覆っていた、鉄仮面を弾き飛ばしていた。

 

ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ…

 

露わになったX(エックス)の素顔。

 

 

「うぉお?オマエと同じ、赤い髪?」

 

見た目の年齢は40代後半から50代前半。

額にバンダナを巻いた、ボサボサのセミロングの髪の色は赤…。

 

「ちぃ、格闘界関係ばかりしか、頭が回らなかったぜ…

軍とか戦関係も、考えていたら簡単に浮かんでいたかも知れなかった。」

控え室の水晶玉(モニター)から、その様子を窺っていたフィーグが、吐き捨てる様に呟く。

「…てゆうか、こんな大会に出るなんて、一体、何の真似だ?

あのクソ親父が…!!」

 

X(エックス)の正体…

それは、ブランカ地方を拠点とした、最強の呼び声も高い傭兵団『フランベルジュ』…

その団長であり、『最強兵』の異名で世で名を知らしめているゼヴィウス…。

そして、フィーグの父親であった。

 

 




  メダリオ格闘トーナメント・ベスト8
 
        優勝 
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  ホ パ べ フ コ ソ オ ゼ
  ウ ル ロ  ィ カ ロ Ι ヴ
  セ マ リ Ι ブ   ゼ  ィ
  ン Ι ン グ リ     ウ
      マ   エ     ス
      ン   ル     
 

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