真に導く者   作:挫梛道

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今回はパロ&ネタ祭り。
本当は もう少し、マニアックなヤツも組み込みたかったが…(笑)


武闘家!フィーグ

「フィーグ殿、やはり この場は儂が出るべきではないだろうk「あ゙ぁん゙!?」いや、何でもないです。」

あくまでもバトランドの人間通しの問題だと言いたげな強面の髭のオッサンに、893な如き顔で睨みつけて黙らせた。

 

「う~む、ライアンではなく、フィーグ殿が模擬戦に…か…」

今度はベア将軍の顔が渋る。

「立場が有るのは理解出来るが、少なくとも俺は、目の前で自分の大切な人間(ひと)が手を掛けられるのを見て、何の行動も起こせない様な奴は…男として認めん!!」

「う…分かった…」        

「う~、あんな事言って貰える、マーニャが羨ましい…」

「(い、いえ、姫様、私だって、姫様に仇なす者には…)ゴニョゴニョ…」

「?…クリフト、あんた、何をゴニョゴニョ言ってるの?」

「い、いえ!すいません、独り言です!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

将軍に案内され、訓練所控え室に。

 

「ふん!逃げずに やってきたか…この のろま野郎が!」

俺達…正確にはライアンが訓練所に顔を出した途端にフォールドの野郎が、挑発してくる。

それに対して俺が

「おっと、勘違いするなよ?

お前の相手は俺だ。」

「何?はっはっは!情けない奴だな、ライアン!結局は代理を立てて逃げるのか?」

「おい、勘違いするなと言っているだろ?

お前如き、ライアンが出張る迄もない!

…てのは立て前で、単に俺が…」

「きゃっ?」

隣にいるマーニャを抱き寄せ、

「自分の女に手を掛けられ、キレてるだけだから安心しろ。」

「フィーグ…」         

ん、顔真っ赤なマーニャさん、可愛い。

あ、其処の人、『バカップル爆殺しろ』とか言わない。

 

「ふん、良いだろう。

その代わりライアン、このガキを血祭りにした後は、改めて貴様と勝負だ!」

「ふむ…良かろう。

只、フォールドよ…貴様がフィーグ殿に勝てるとは思えんがな…」

「んだと、コラ?!」  

「少し五月蠅過ぎるぞ貴様等!コホン…とりあえずフィーグ殿、今の装備を外し、此方の武具に着替えて貰う。」

余りの過ぎた罵り合いに、見かねたベア将軍が一喝する。

「アンタが一番うっさい」とか言ったら、絶対に殴られるだろうから、黙っておく。

「着替え?」

「うむ、フィーグ殿、城の決まりでな、模擬戦は極力、対等の装備で行う事になっているのだよ。」

成る程ね…どおりでフォールドの野郎も、中庭では青銅や鉄系の装備をしてたのが、皮の鎧に盾と兜で、銅の剣な訳だ。

俺は身に着けているプロテクターを外し、ソロとクリフトに渡すと、

「俺はコイツ(旅人の服)で良いぜ。

そもそも俺はスピード型だからな。

慣れない装備なんかよりは、此だけのが、幾分マシだ。」

…と、城の用意している防具は不要と宣言する。

「…で、本音は?」        

「私物なら兎も角、天日干ししてるだけの汗クッチャい皮鎧なんざ、着れるか!

アンタ等は慣れてるから感じないのだろうが、何のハンデだ?

どーせハンデならまだ、体中に鉄製のリングを嵌め付けられて、スピードを殺された方がマシだ、バカヤロー!」

ソロの問い掛けに、力説で且つ、必死に即

答する俺。            

                 

「まあ、そういう理由なら、良いだろう。

では次に、武器を選んでくれ。

フィーグ殿は槍使いな様だから、この鉄の槍にするか?」

汗クッチャい皮鎧発言に、少しだけ嫌な顔をしたベア将軍が、武器をどれにするか、聞いてきた。

ライアンも少し、顔をしかめている。

あー、少し、口が滑りすぎた。ゴメン。

 

「それじゃ、俺は…

姫さん、グローブ貸して。」

俺が選んだ武器は、姫さんが装備していたパワーグローブだ。

 

 

「き、貴様!俺を舐めているのか?

其処の槍を取れ!素手で戦うなんぞ、俺は認めんぞ!」

納得いかない顔のフォールドが吠える。

「素手?オメー、格闘ディスってんなよ?

俺は別に、槍専門な訳じゃないんだ。

今回は偶々、自分の獲物に自分の拳を選んだ…それだけだ!」

「「「…で、本音は?」」」

ソロ、姫さん、ミネアさんの質問に、

「ん~、素手でフルボッコしたい気分?」

あ゙ぁ?何か文句、あっか?

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ざわざわざわざわざわざわざわざわ…

訓練所の隣にある、模擬戦専用の闘技場…

模擬戦の話を聞いて駆け付けた、戦士達が注目する中、

「始め!」

ベア将軍の号令の下、模擬戦という名目の私闘が始まった。

 

 

フィーグは右脚と右腕を前に出す、サウスポーの構えを取る。

足はやや内股、左の踵を少し上げ、顔は正面を向き顎を引く。

脇を締め背中を少し丸め、右腕は肘を90゚に

曲げて腹の上、左腕は胸元から顔をガードする。

シュシュシュ…

曲げた右腕を振り子の様に左右に振り、

タンタンターン…

独特のステップを踏んでリズムを取り、

「ほら…来なよ…」

左の人差し指でチョイチョイと、フォールドを挑発した。

 

「うらぁ!」

その態度にカチンときたフォールドが斬りつけてきたが、

スカ…

「え?」

その剣は空を切る。

しかし、その空振りに驚いたのは、剣を避けたフィーグである。

 

「えぇい、小癪な!」

スカスカスカスカスカスカスカ…

悉く、空を切るフォールドの剣。

「ぬおお!」

スカッ…ビシィ!カラーン…

縦の大振りの剣を躱したフィーグは その瞬間に拳が届く間合いに入り、剣を手にしたフォールドの右手首を狙い、腕を鞭の様に撓らせ、右のジャブを放つ。

結果、フォールドは剣を手放してしまい、その剣が床に落ちると同時に

ビシビシビシビシビシビシッビシィ!

顔に身体に、鞭の如くな右拳の連打を浴びてしまう。

一応はバトランドの王宮戦士らしく、ダウンだけはしないタフさを見せるフォールドに対し、フィーグは一端 間合いを開け、

「拾えよ、無理するな。」

床に落ちている剣を取る様に指示。

 

「舐めるな!小僧ぉ!」

剣を拾って、再度 猛ラッシュを仕掛けるフォールドだが、大振りを躱された後に武器を手に持った右手を打たれ、剣を手放した瞬間に右拳の連打という、先程の再現の如くな、全く同じ攻撃を喰らい、今度はダウンしてしまう。

「心配するな、俺が強いんじゃねぇ、お前が弱過ぎるだけだ。」

ダウンしているフォールドを見下ろして言葉を放つフィーグは尚も話し続ける。

「ライアンに向かって、あれだけ のろまと連発していたから、どれだけスピードに特化した野郎と思っていたが、全然、大した事ないな。」

「な…何を…巫山戯るな、ガキがぁ!」

そう言うと、起き上がりながらフォールドは懐から取り出した石を、フィーグの足元に投げつけた。

 

ドゴォオオオオン!!

突如、闘技場に響く爆音、そして爆発。

 

「しまった…爆弾石だったか…ぐはっ!」

「グハハハハ!小僧がぁ!今まで散々と、やってくれたなぁ!」

ドゴッ、ドガッ、ズシャッ…

爆発で吹き飛ばされ、うつ伏せに倒れたフィーグの背に、腰に、フォールドのストンピングの雨が降る。

爆弾石…爆弾岩と呼ばれるモンスターが、その名の如く、爆発した際に残った欠片から作られるマジックアイテム。

その欠片に残留した魔力を用いる小型の爆弾である。

まさか、模擬戦でマジックアイテムを使うという発想のなかったフィーグは、爆破は元より、その爆裂の際の破片をまともに浴びていた。

 

「こ、この恥知らずが!!

貴様、それでも誇り高き王宮戦士か?」

「卑怯者!」

「あ?別に、模擬戦で『マジックアイテムを使ってはいけません』なんてルールは無いぞ?勝ちゃ、それが正しいんだよ!」

「うぬ…貴様、何処まで…!」

ライアンやアリーナの文句にも、何処吹く風のフォールド。

 

倒れているフィーグの後頭部を掴み、無理矢理に引き起こし

バキィ!

その顔面を素手の拳で殴り倒す。

そしてフォールドは再び、フィーグの身体を引き起こすと、

「ひゃっはー!コレでトドメだ!」

銅の剣を両手持ちに構え直し、未だにフラフラのフィーグの脳天目掛けて一気に振り下ろした。

「いやぁ!フィーグ?!」

「フィーグ殿!」

「「「フィーグさん!!」」」

仲間達が叫ぶ中、

 

ビシィ!

「な…何だ…と?」

「残念だったな!

これが…真剣白刃取りだ!」

ドゴッ

「うげぇ!」

振り下ろされたた剣を両掌で挟み込む様に受け止めたフィーグは、まるで信じられない物を見るかの様な顔をしているフォールドの腹に喧嘩キックを放つ。

「ぐほっ」

再び剣から手を離して、吹っ飛ばされるフォールド。

フィーグは更に追撃。

右の掌を大きく前に出し、フォールドに向け、左手を手刀の形に構える。

そして前に出した右手の親指と人差し指の間から見える標的の姿を捕らえると、その獲物に向かって突進した。

 

「あ、あの構えは?!」

「素手でも出来るの?」

「フィーグなら…出来るわ。」

「因みに、この やり取り、0.3秒!」

「「「「嘘っ?」」」」

 

フィーグが放つ一撃、それは…

「牙突!」

ガキィッ!!!!

「ほげぇっ!」

素手の牙突がフォールドの顔面に直撃し、闘技場の壁まで吹き飛ばす。

 

「痛てて…散々、調子こいてくれたな…

もう、剣を拾えなんて言わねー。

テメーは見開きで…もとい!

面白い断末魔(当社比)で、ぶっ飛ばす!」

自身の その赤い髪の如く、怒りと闘志の炎を燃やした戦士の反撃の狼煙が上がった。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

右のオーソドックスなボクサースタイルに構えたフィーグが、∞の文字を描く軌道で上半身を振りながら、左右のラッシュで敵を畳み掛ける。

「グフッ、ズサッ、ヅダッ…」

パンチドランカー必至な猛攻の前に、完全にグロッキーなフォールド。

「あたぁ!」

其処にトドメとばかり、裏拳を鼻の上に見舞うフィーグ。

「………………………………………」

ドサッ…

フォールドは無言で地面に両膝を突き、その儘、うつ伏せ前のめりに倒れ込んだ。

 

「そ、其処まで!この模擬戦、フィーグの勝ちとする!」

ベアが大きく右手を挙げ、フィーグの勝利を宣言した。

 

「良っし!」

「やた!」

「フィーグ殿、お見事!」

「「フィーグさん!」」

アリーナが、ミネアが、ライアンが、ソロが、クリフトが、フィーグに駆け寄り、

パシィ!

ハイタッチを交わす。

 

そして、

「フィーグーっ!」

「うわったったった!」

マーニャがフィーグに飛び付き、押し倒してからの…

「フィーグーん~」

Chu…chuchuchuchu…

「ま、マーニャさん、ちょ、此処じゃ…

皆、へーるぷ~っ!…って、お前等、余所向いて、他人の振りしてんな~!」

周囲に大勢居ようが関係無く、唇、頬、額を問わずに何度となく顔に唇を重ね、仲間達を呆れさせる。

そして模擬戦を見学していたバトランドの戦士達は、心を1つにして、

『『『『リア充、爆裂しろ!(泣)』』』』

…と魂の中で叫ぶのだった。

 

「フィーグさん、不潔です。」

「俺?俺だけ?」

漸くマーニャから解放されたフィーグに、ミネアの情け容赦ない一言。

「絶対に何か、間違っている!」

「フィーグさん、どんm「いいから!肩ポンしなくても、いいから!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

バシャア!

「起きろ、フォールド!」

「う…」

闘技場の真ん中で気絶しているフォールドに、水を掛けて起こすベア将軍。

ベアの周りには、その場に居た、バトランド王宮戦士達が脇を固めている。

フィーグ達も、その傍らに居た。

 

「此処は…?」

まだハッキリと意識を戻さないフォールドに対し、ベア将軍が言い放つ。

「フォールドよ、今回の模擬戦、バトランド王宮戦士にあるまじき卑劣な戦い方、並びに今までの数々の民達に対する横暴な行為、目に剰るにも程が在り過ぎる。

既に陛下の了承も得ている。

フォールド、今を以ち貴様をバトランド王宮戦士団から除名する!

何処ぞなりと消え失せるが良い!」

除名…早い話が、クビである。

 

「何だと?巫山戯るな!」

頭に血が上り、ベアに向かうが、

ザザザザ…

すかさず、王宮の戦士達がガードに回る。

 

「クソがぁ!」

バサッ!

被っていた革製の兜を床に叩きつけるフォールド。

そして将軍の隣に立つライアンに向かい、

「ライアン!何時も、貴様だ!

貴様が何時も、俺の邪魔をする!」

数々の怨み節を述べ始めるフォールド。

しかしながら、それは端から聞いた限りでは全て、逆怨み以外の何事でもなかった。

 

「情けないわね~?

んなだから、女性にも、モテないのよ?

大体、例の子供の失踪事件でも、本来は自分が手柄を立てる筈だったとか、勘違いしてるんじゃないの?

自分の無能を棚上げでさ?」

火に油、焼け木杭にガソリン…

呆れ顔で言ったマーニャの一言が、フォールドの怒りに完全に火を点けた。

 

「黙れ、このクソ女ぁ!」

そもそも、婦女子に手を挙げる時点で、戦士以前に男としても失格な気もするが、怒りで自身を見失っている愚者には見えていなかった。

自分が拳を向けた女の隣に立っている、つい先程、自分を完膚無きまでに打ちのめした男の存在を。

 

素早くマーニャの前に回り込んだフィーグは拳を構え、顔面、顎、鳩尾、両脇腹に…

「スペシャル・ローリング・サンダー!!」

ズガォ!

神速の左拳の5連打を放った。

フィーグが得意としている、その槍技の源流である、拳闘の技である。

拳の連打を受け、片膝を着くフォールド。

「フィニッシュ!」

フィーグは その脚を、まるで踏み台の様に駈け上がり、その儘 顔面に跳び膝蹴りを炸裂させる。

グシャ!

「ますからでむえるて!」

フォールドは奇妙な断末魔と共に、其の場に崩れ落ちた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「今回は、ウチの愚か者が色々と迷惑を掛けたな。すまなかった。」

「いや…余り気にしないで…」

 

 

あの後、フォールドはライアンやフィーグに対して、最後まで悪態を吐きながら城を出て行った。

ライアンとフィーグがベアに対し、フォールドの監視を勧め、ベアも無言で頷く。

元より、其の心算なのだろう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「今日は この街に泊まりですね。」

城を出る時には、既に日が落ちていた。

今から王都を発ち、トンネルを抜けてデュ

マに戻るつもりな者は1人も居らず、旦那

が言う通り、俺達は宿屋に足を運んだ。

 

 

「おい、ちょっと待t…」

「それじゃ、ごゆっくり♪」

「お休みなさ~い♪」

 

「「…………………………………。」」

 

宿屋に行ってみると、この日は既に満室寸前で、残った部屋は2人部屋が2つ、5~7人対応の大部屋が1つ程、残っているだけだった。

ミネアさんと姫さんが2人部屋の1つに向かっていき、そして俺を除く男性陣が、大部屋に足を運んだ。

残ったメンバーは、俺とマーニャさん、残った部屋は2人部屋が1つ…

 

「「…………………………………。」」

 

そんな気の利かせ方、要らんし!

…と同時に、「ありがとう!」とも思っていたりするのも、正直な気持ちなのだが…

 

 

「と、とりあえず、部屋に入ろうか?」

「う、うん…」

 

 




※※※※※※※次回予告!※※※※※※※
 
フィーグ達はスタンシアラ王を見事 笑わせ、天空の兜を入手出来るのか?
次回、真に導く者
『天空の兜』乞うご期待!
3話と10話に伏線アリ。要予習!(笑)

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