真に導く者   作:挫梛道

40 / 101
バトルは第三者視点のが書きやすいかも?




vs.キングレオ

「バルザックは?

どうして此処にバルザックが居ないの?」

 

戦士ライアンと共に、キングレオ城謁見の間に踏み込んだフィーグ達。

其処に居たのは、先程、俺達から逃げた、大臣と魔法使いに近衛兵が数人。

そして玉座には、推定20後半から30前半の男が座っていた。

マーニャ達姉妹がキングレオ城主と思い込んでいる、彼女達の父親、エドカン氏の敵、バルザックの姿は何処にもなかった。

                  

「ゲヘゲヘゲヘ…」

「ニャカカカカ…」

王と思われる男の傍らには、大臣と魔法使いが下品な笑みを浮かべている。

先程までは情けなく逃げていたのが、王の側で、安心しきっている様だ。

そして

「おのれ、曲者!?」

フィーグ達、侵入者に対し、近衛兵達が一勢に剣を抜いて襲ってきた処を

ガシャア!

「勇者殿!此奴等は私が引き受けた!

勇者殿達は玉座の男を!」

ライアンが その剣を受け止める。

そしてライアンの言葉通り、フィーグ達は勇者ソロを中心に、玉座に座る男と対峙する。

 

「我が名はキングレオ・バル・ドルス・カワード・キングレオⅣ世。

ある高貴なる御方に代わり、この国を支配する者だ。」

玉座に座る男が口を開いた。

 

「ん?そこの娘!

お前達は確か、以前バルザックを父親の敵とか言って やってきた者だったな?

生憎だが、バルザックは もう此処には居らんぞ!残念だったな!わっはっはっ!」

「だ、黙りなさい!

あたし達からすれば、バルザックの黒幕のアンタだって、立派に敵だわ!」

「あなたを倒して、バルザックの居場所、言って貰います!」

「リベンジよ、リベンジ!」

マーニャとミネアが言い切ると

「ほう…我を討つと言うか?

ハッハッハ…良かろう、面白い!

退屈しのぎに丁度良いわ!

貴様等、人間共の力の無さを思い知らせてやるわ!

人間を その様な脆い生き物に創った神を怨むが良い!」

そう言い放つとキングレオは、人の形をしていた その姿を、蒼い身体に前後計8本の脚を持つ、異形の獅子に変化させた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「Begirama!」

「うぉっ!」「きゃあっ!」

キングレオの掌から巨大な炎が放たれ、それがフィーグとアリーナに直撃した。

 

「固まっては危険です!散りましょう!」

「応!囲むぞ!

クリフト、お前はホイミンをガードだ!」

「はい!…スクルト!」

クリフトの守備力倍増呪文を受けたパーティーが、ソロとフィーグの指示の下にキングレオを囲む。

過去、何度か手強い敵と戦う時に敷いた必勝の布陣だ。

「ゲヘゲヘゲヘ…無駄な足掻きだ!

ささっ!国王様!我が国に楯突く無礼な輩、貴方様の御力で血祭りにしてやって下さいませ!」

大臣が虎の…否、獅子の威を借りる狸が如く、玉座の影に隠れながら声を飛ばす。

                  

「WowUAOooooooooooooh!!」

「う…」「ひぃっ」「きゃっ!」

キングレオの正に獣王の如き雄叫びに、ソロ、クリフト、ホイミンの動きが止まる。

「ほれほれ、チャーンス!…ですぞ!」

大臣が囃したて、そこに

「Mera!」

「うわぁっ!」

大臣同様、玉座の影に隠れていた魔法使いがソロに火の玉を放った。

「こんの…!」

ドゴッ

「うげっ!」

アリーナが その魔法使いに駆け寄り、左の正拳突きを繰り出し、吹き飛ばす。

「ひぃぇ!」

更に返す刀で

「ラリホー!」

ゴンッ!

「ギャン!」

隣で先程から色々と煩かった大臣をラリホー(物理)で眠らせた。

「ナイスだ、姫さん!…でぇいや!」

ズバッ!

フィーグが槍で斬りつけるが、キングレオは効かぬとばかりに鋭い爪を振りかざす。

「っ!ちぃ…!」

直撃は避けたが、獅子王の爪は、掠るだけで大きなダメージを十分に与えられる程の威力だった。

更に

「Begirama!」

「きゃ!」「うわぁあっ!」

巨大な炎の帯がマーニャとクリフトを襲った。

特にクリフトは、後ろのホイミンを庇った為、尚更のダメージを受ける。

「だ、大丈夫ですか?ホイミ!」

「ベホイミ!」

しかし、ホイミンとミネアが回復呪文を唱える。

「あ、ありがとう、ホイミン!」

「ボクは戦闘は全然ですが、回復呪文なら得意です!」

「ナイスだホイミン!回復はミネアさんとホイミン任せた!

マーニャさん!姫さん!ソロ!行くぜ!」

「「「応っ!!!」」」

フィーグの呼び掛けに応じ、間合いを取る4人。

「ルカニ!」

マーニャが守備力ダウンの呪文を唱え、

「凶斬り!」「牙突!」「二重の極み!」

各々が必殺技を放った。…が、

「Begiramax2!」

それも決定打とはならず、左右の腕から放たれた2筋の炎の帯が合わさり、巨大な炎の壁となって、獣王の正面に居た3人を包み込んだ。

「「「うあああああっ…!」」」

「あっ、皆さん!ベホイミx3!」

「くぅ、ホイミンが居なかったら、こりゃ全滅してたな!

腕だか前脚だか知らねーが、あの4本は、飾りじゃないみたいだな!」

                   

「あ、ミネア、あれ!あれ使いなさい!」

何かを思い出したかの様に、ミネアに声を飛ばすマーニャ。

「はい、姉さん!」

そう言うと、ミネアは首飾りの宝玉をキングレオに向け、

「はぁあっ!!!」

宝玉に魔力を込める。

                  

カッ!

すると翠の宝玉が光輝き、その光はキングレオを包み込んだ。

「ウガ?コレは?」

「この宝玉は静寂の珠…

キングレオ!アナタの呪文は封じたわ!」

「おのれぇ!エドカンの遺品かぁ!

WAWoooooooooooooooh!」                  

呪文を封じられたキングレオが吼える。

…が、この雄叫びで怯む者は居なかった。

                  

「残念でした!せぇえいやあぁ!」

ズシャッ!

哮った直後の隙を突き、ソロが素早い踏み込みからの一閃を打ち込んだ。

「バギ!」「ベギラマ!」

そしてミネアが、マーニャが魔法で追撃。

「ぬぅおおお…人間如きがあ…!」

怒りの形相で、4本の豪腕を振りかざすキングレオ。

「うわぁっ!」

これをソロが直撃を喰らい、吹っ飛ばされる。

「ソロ!…くそ、ライアンも早く、こっちに加わってくれないかな…」

 

カシャン!カシャン!

フィーグが ふとライアンの様子を見てみると、3人の近衛兵と未だ鍔迫り合いの真っ最中だった。

(おいおい、いくら3人っと言っても、あのライアンがモブ相手に、彼処まで苦戦するか?…まさか?)

                 

「皆、すまない!

少しだけ保ち堪えてくれ!」

「へ?」

「フィーグさん?」

「直ぐ戻る!」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「覇極流千峰塵!!」

「ぐはぁ!」

急襲で衛兵の1人を倒すと、

「うおりやぁあ!」

ドカ!

「ぐふっ」

不意の援軍に虚を突かれた近衛兵の1人が、ライアンの渾身の一撃の前に倒れる。

そして、

「一閃突きぃ!」

カラーン…

1人、他の近衛兵とは違う、派手な装飾が施された兜が宙を舞った。

「ち…仕留めるつもりだったんだけどな…

あれを躱すかぁ?」

「ぐるるる…小僧…やるな…うがぁあ!」

兜を飛ばされ、顔を露わにした、恐らくは近衛兵長の男が、異様な呻き声を上げながら、フィーグに飛び掛かる。

フィーグは これを紙一重で避け、カウンターの突きを放とうとするが、その前に近衛兵長は、手にしていた剣と盾を捨て、瞬時に鋭く伸びた爪で、逆に斬撃を浴びせた。

「な…これは…」

「貴様…一体…?」

驚くフィーグとライアン。

 

「貴様も魔族か…?」

「ぐるるる…如何にも!」

フィーグの問いに肯で応じた近衛兵長は、金色の毛並みを持つ人狼に姿を変えた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「まさかの山賊ウルフ…いや、これはキラーリカントか?」

いずれにせよ、「Ⅳ」の世界で この前の化け物烏賊に続き、また他のナンバリングの魔物に出くわすとは思わなかったぜ。

キラーリカントと言えば、人狼系の上位モンスターだ。

初代ドラクエでも、所謂ザコとは言え、終盤に登場する強力な魔物。

成る程、コイツなら、現時点のライアン1人じゃ手間取るのも納得だ。

そう、「1人」ならね…。

                  

「ヴ~!ガルルルルルルル!」

「ちぃ!」

突進してきた人狼の、鋭い牙と爪の猛攻を受けるも、

「ライアン、一気に片付けるぞ!」

「う、うむ!」

「行くぜ!雷光流転槍ぉー!!」

金色の人狼の鼻先、喉元、鳩尾、両の脇腹を貫くと、

「どぉおりゃあっ!」

ズガァ!

「ギャワーン!」

気合いの込もった戦士の一撃が、豪快に決まった。

上位種族とは言え、所詮はザコ。

2人掛かりの攻撃に、キラーリカントは呆気なく倒れた。

「よし、ライアン、後は あっちのライオン野郎だけだ!」

「承知!」            

俺達はソロ達が戦っている、キングレオに目を向けた。

                  

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ベホマラー!」

「ありがとう、ホイミン!てぇいやあ!」

「火炎斬り!」

「バギ!」            

「ベギラマ!」

ソロとアリーナが前衛として直接攻撃、マーニャ達姉妹が中衛で魔法での攻撃やサポート、そしてクリフトとホイミンが後衛で回復という布陣。

現在 呪文が封じられているキングレオは4本の前脚…腕からの攻撃か、噛み付きしかなく、基本的に前衛の2人しかダメージを受ける事がない。

それを踏まえ、要所で回復するという戦法を取っていた。          

そこに               

「皆、待たせたな!どっせぇい!!」

ズシャ!               

「バトランド王宮戦士ライアン、参る!

どおおりやあ!」

ズガァ!               

フィーグとライアンが前衛に加わり、更に有利な展開になる。

「フィーグ!ライアン!」

「よし、4人で囲みましょう!」

「「「応ぅ!!!!」」」

ソロの指示に、前衛4人がキングレオの前後左右に散り、

「「スクルトx2」」

クリフトとホイミンが守備力アップの魔法を唱え、

「ルカニ!」            

マーニャが敵の守備力を下げる。

「いくぜ!姫さん!」

「ОК!」            

そしてフィーグとアリーナが左右からの

「爆裂拳!!」            

「覇極流千峰塵!」

拳と槍の連打を放つ。

「グハァ…!おのれぇい、人間ん~!」

ドゴ!バキ!

「きゃっ!」「うわっ!」

しかし、そこに4本腕を豪快に振り回してのカウンターを2人は受けてしまう。

「姫様!」「フィーグさん!」

「「ベホイミ!」」

しかし、クリフトとホイミンが すかさず回復。

                  

「クゾがぁ!忌々しいガキめぇ!」

怒りの表情のキングレオが大きく息を吸い込んだと思えば…

いきなり口から、強力な凍える吹雪のブレスをクリフト達に向けて吐き出した。

回復の要の2人を遠距離攻撃で、先に仕留める手段に出た様だ。

 

「うわわわぁっ!」

「きゃああ!」

先ずはクリフトが吹雪のブレスを受け、膝を床に着いた。

そして…              

「だ、大丈夫か…お嬢ちゃん…?」

「ら、ライアン…様…」

ホイミンの目の前には、巨大な人影…

ライアンが彼女の前に仁王立ちで立ち塞がり、ホイミン自身が受けたであろうダメージを、全て肩代わりしたのだった。

「無事みたい…だな…よ…かっ……」

ガタッ…

崩れ落ちるライアン。

「い…いっやあああああぁっ!ベホイミ!ベホイミ!ベホイミ!」

何かに執り憑かれたかの様に、回復呪文を連呼するホイミン。

 

「うっ…」

「ライアン様っ!」

ホイミンの必死が天に届いたか、意識を取り戻したライアン。

元々、ホイミンを狙った吹雪のブレス、クリフトは謂わば、幸いにも流れ弾程度のダメージしか受けておらず、即座に自らに回復呪文を唱えて戦線復帰。

しかし、メインに狙われたホイミンを庇い、本来なら広範囲に広げる吐息を彼女に向けて凝縮して放たれた吹雪のブレスをまともに直撃し、全身に凍傷を被ったライアンの身体は命は取り留めるも、少なくとも この戦いの中で快復が出来るダメージではなかった。

 

スオォォォォォォォォォォォォ…

再び吹雪のブレスを吐き出す為に、大きく息を吸い込むキングレオ。

「させない!」

ズシャ!

そこにソロが敵の身体に「凶」の文字を書くかの如き斬撃を放つ。

「こ、小僧ォォ!」

ドゴ!

「うっ…」

ブレスの邪魔をされ、怒り狂う獣王が、2本の右腕を使った強烈な横殴りでソロを吹き飛ばし、

「GaowUAOooooooooooooh!!」

雄叫びを上げる。

「「「…っ!!?」」」

これでアリーナ、マーニャ、ミネアの動きが止まり、再びブレスの準備か、大きく息を吸い込もうとした瞬間、

「残念!」

バスッ!

「ギャアアア!」

フィーグの凪払いが決まる。

 

「あの吹雪だけは厄介だ!

あれだけは、何としてでも止めるぞ!!」

「「「はい!」」」

「「「ええ!」」」

 

「二重の極み!」

お転婆姫が異形の獅子の側面に回り込み、その脇腹に左の拳を撃ち込みむと、

「牙突!」

赤髪の槍使いが正面から突進しての突きを繰り出した。

「メラミ!」「バギ!」

更に間髪入れず、双子の姉妹が巨大な火の玉と真空の刃を放つ。

「うおおおおおおおっ!」

そして勇者が再び正面に立ち、獅子の左肩口への袈裟斬りから、そのまま左切り上げに移行する剣技を披露する。

それは、以前からフィーグの仲介で、トリートーン号の船員(クルー)である剣士から師事を受けていた技…その名も…

「鴎返し!」

 

「はっ!此処で御披露目かよ!」

フィーグが嬉しそうに叫ぶ。

 

「グロロロ…ふ、巫山戯るなあ、脆弱な人間如きがぁ…!」

スオォォォォォォォ…

再度、凍えるブレスの予備動作を始めるキングレオに、

「それだけはっ!炎よ!」

ソロが破邪の剣の刀身に、その剣の宿る魔力から成る炎を纏わせ、

「ギラ!」

更に少し前に習得した、自身の魔法の炎を上乗せさせる。

 

ブオアァアアアアアォ!

巨大な炎の渦が刀身を包み込んだ。

「行くぞ!舞え!炎の鳥!」

先の鴎返しとは逆に、右肩からの逆袈裟斬りから、右切り上げに繋ぐ炎の斬撃…

「必殺!Victory・PoeniΧ!!」

斬!!

「フグァアアアアアアゴ!」

斬撃の軌跡が左右に大きく翼を広げた炎の鳥を象り、その激しい炎に全身を包まれたキングレオが、遂に断末魔と共に倒れた。

「どーだあっ!!」

「「「やた!」」」

「す、凄い…」

「か…格好いい…かも?」

仲間達が沸き立つ中、

「(う~む、つい、勢いで仕込んでみたが、趣味に走り過ぎたかも…まあ、本人が、ノリノリで気に入ってるぽいから、好しとするか…)」

その技の発案者でありながら、少し複雑な心境の男が約1名程。

 

「あ、見て!キングレオの体が?」

マーニャが皆にキングレオに注意を促す。

キングレオの身体から、不気味な光が放たれると、その獣の肉体が崩れ落ちて完全な塵となり、その中には人間の男が横たわっていた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。