真に導く者   作:挫梛道

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ぶっちゃけ、大灯台②です?


出航

「よし、突撃!」

「「「「おーーーーーーーーっ!!」」」」

 

俺達が大灯台で死闘を繰り広げた翌日、灯台内部の残った魔物の殲滅掃討を目的とする部隊がコナンベリー警備兵団を中心に組織された。

そして俺は何故か、町の代表者から、その指揮官を任された。

確かに俺達が先に灯台に乗り込んで、突入のきっかけを作る戦果を挙げたとは言え、通りすがりの旅人なんかに任せていい仕事じゃないぜ?

どれだけ人材不足なんだ?この町わ?

 

まあ、指揮官依頼を承諾したのは、少しでも財布の中を暖かくしたいからであるが…

代表者から報酬金額を聞いた瞬間に二つ返事でOKしたよ。…マーニャさんが勝手に。

路銀稼ぎをミネアさんの占いに頼りっきりな訳にもいかないし、稼げる時に稼がねばという理由で、首を縦に振ったのだ。

 

え?モンスターを倒せばゴールドが手に入るんじゃねって?

いやいや、ゲームじゃないんだから…

倒したモンスターからゴールドが得られるならさ、3日くらいあれば、世界中のモンスターは絶滅するよ。

それこそ、それ目当てに人間が魔界に侵攻するだろ。

特にボンモール辺りが。

あー、こりゃあ人間て、滅ぼされてもしゃーないわー。

 

 

 

暫くして、部隊員として参加していたソロとホフマンから掃討終了の報告を受けた。

その際、ソロは灯台内部でメタルスライムを1匹程仕留めたらしいが、やはり飛躍的レベルアップはしてない様だ。

え?マーニャさん?

あのお姉さんが、こんな作戦に参加する訳がないじゃないの。

宿で怠惰な生活をしてるよ。

この町にカジノが無くて本当に良かったというのはミネアさんの弁。

 

 

こうして大歓声の中、俺は掃討部隊指揮官として、正式に大灯台の奪還と港の解放を町の人々の前で宣言したのだった。

これで近日中には、港で船の出入りが再開するだろう。

 

因みに聖なる種火は暫定的に教会預かりという運びなった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆港が解放されても、今現在、港には船がない。

そりゃそーだ、港に停めてあった船は、あの黒い光で全部沈められたんだから。

時事通信で灯台奪還は報じられたから、徐々に定期船や海上流通便が港にやってくるだろうが、それも早くて数日後の話。

今、この町の船と言えば、造船所(ドッグ)で製造中の数台くらいだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「…という訳で、私は船と馬車を提供しますから、あなた方の旅に同行させて貰えないでしょうか?」

その日の夜、トルネコの旦那に呼び出された俺達は、旅の同行を打診された。

曰わく、自分は何故か、モンスターに恨まれているらしいから、強い同行者がいれば安心…との事だ。

まさか、エンドールとブランカを繋ぐトンネルを掘っただけで、魔物に恨まれるとは思わんよね…。

 

「正直、馬車は兎も角、船はありがたい。

だが、旦那の旅の目的は天空の剣だよな?

今回の俺達の旅は、お宝探しでなく、具体的には言えないが、結構ガチで危険なんだが、大丈夫かい?」

「危険?ふっふっふ…

伝説の剣を求めるという時点で、私の旅も充分に危険だという認識はありますよ?

少し前から真しやかに噂されている、地獄の帝王の復活に巻き込まれる位の覚悟はあるつもりですがね?」

「ふぅ…だ、そうだが、ソロ?」

「は、はい、トルネコさん、よろしくお願いします!」

「決まりね。」

「ソロさんの下に集う導かれし光…

また1人、揃いました。

トルネコさん、改めてよろしくお願いしますね。」

正式にトルネコの旦那が仲間に加わった。

 

「それと、もう1つ…」

「フィーグ、まだ、何かあるの?」

「旦那はさっき、馬車も出すと言ったが…

ホフマン?」

「あっ!そうです!

トルネコさん、あなたの船には、俺の馬車も、パトリシアも載せられますか?」

「あ~、はいはい。

船内には馬房を3つ設けていますから、大丈夫ですよ。」

「良かったぁ~!」

「馬車3台収納可能か…

無駄にデカい訳じゃなかったんだな…」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

次の日の朝、俺達は旦那に連れられて造船所にやってきた。

船の完成まで、あと数日掛かるらしいが、その前に同行してくれる船員(クルー)を紹介したいとの事だ。

当たり前な話だが、今のパーティーに船舶免許を持っている者はいない。

航海士もいる筈がない。

船だけでなく、そういった海の専門家達も一緒に雇っている辺りは流石は現在進行形で゙噂の大商人゙と言わしめるだけはある。

麦藁某みたいに、海に出て後で、行き当たりばったりに船員を迎え入れる…なんていう事はなかった。 

船長、副船長、航海士、船医、料理長等…

これからの船旅で世話になる人達と互いに挨拶していった。

因みに考古学者や楽師は居なかった。

まあ、楽師は…いざとなったら、俺がリュートを奏でてやるよ(笑)。

 

それにしても、まさか船長が、「あの男」だったとは…(笑)

 

 

 

「次は馬車ですね。」

旦那の案内で船内の格納庫に行くと、立派な馬車があったのだが…

 

「旦那、馬は?」

「はい、まだ外に預けてますから、今から迎えに行きましょう。」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

次に連れられて来たのは町から少し離れた場所にある牧場。

ここは、商人ギルドと提携しており、野生馬を捕まえては馬車用に調教して、ギルドに引き渡すという仕事もしているそうだ。

 

 

「ふっふっふ…この馬が、今回の旅に用意して貰った馬です。

どうです!素晴らしいでしょう!」

「「「でっか!」」」

旦那が見せた馬は白い鬣の巨大な黒鹿毛…パトリシアよりも遥かに大きい。

所謂、ばん馬クラスだ。

 

「皆さん、このパインウィンドも、よろしくお願いしますね。」

なぬ? Pine-wind…だと?

 

「旦那ぁ、その名前って…」

「ああ、実は一度、キメラの翼でエンドールに帰った時、今度は家族を此処まで連れてきて、その時にネネに名前を付けもらいました。」

やっぱりネネさんかーい!

ちくしょう、ドヤ顔でピースサインくれてる人妻が脳裏に浮かんだわ…。

その後、パインウィンドを連れて戻り、その日は解散となった。

 

そして、数日後…

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「さあ、まだ見ぬ大地を目指して、世界中を巡りましょう!」

「「「「「おーーーーーーっ!!」」」」」

遂に船が完成した。

俺を含め、皆のテンションもこれでもかって位に上々だ。

なんといっても、あのミネアさんですら、ノリノリなのだ。

俺達は揚々と船に乗り込んだ。

船長はじめ、船員達も、久しぶりの航海で御機嫌な様だ。

 

「さあ、先ずは南に行きましょう!

南の町ミントスには、海に詳しく、更には商人の神と言われる方がいるといいます。

その人にお会いして、話を聞いてみて、今後の進路を決定するというのは、どうでしょうか?」

「とりあえずは、トルネコさんにお任せしますよ。」

「それでは船長、先ずはミントスを目指してください!」

「了解!錨を上げろー!

トリートーン号(仮名)、出航する!」

 

船首に三つ叉の矛を模した装飾を施した帆船が、コナンベリーの港から大海原に飛び出した。

 

 




※※※※※※※次回予告!※※※※※※※

「お前達に問おう!
『1辺aの立方体が周期的に並び、其の各頂点と中心に原子が位置する結晶構造を体心立方格子構造という。
Fr(フランシウム)やCs(セシウム)等、アルカリ金属の多くは体心立方格子構造をとる。
体心立方格子構造において、ある原子Aoに刮目した時、a空間内の全ての点の内、他のどの原子よりもAoに近い点の集合が創る領域をXoとする。
この時のXoの体積を求めよ!』
どうじゃ?答えられるかの?」
「「「「「???????」」」」」

次回、真に導く者『難問(仮)』
乞う御期待!

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