「それでは、2日後の朝、よろしくお願いします。」
「おう!」
「了解~!」
エンドール~ブランカ間の地下トンネルが開通した。
同時期に伝説の武器の噂を聞き、それを探し求め、旅立つ決意を固めたトルネコ。
俺と街の傭兵スコットは、ブランカまでの護衛を依頼された。
ブランカまで行けば、後は商人ギルドのキャラバン隊と同行して砂漠越えする手筈になっているという。
その辺りの手際段取りの良さは流石と言ってよいだろう。
「それにしても、マジにあんな嫁さんや子供を残して家を出るかね~?
(原作知識的に)理解ある奥さんで本当に良かったな~、トルネコさん?」
「全くです。正直、荒れる覚悟はしてましたがね…」
因みに武器屋「ネネの聖剣(エクスカリバー)」はアイテムの預かり所を兼ねる形で継続させる事になった。
ネネさんには経営術等を学び、余所から武器や防具を仕入れて営業した方がベターと俺がアドバイス。
やはり美人女将で評判の店を畳むのは得策ではないだろう。
なお、銀行設備は無し。
銀行ってゲーム的には「全滅した時に所持金が半分になった時の保険」な訳であり、既にゲームでないこの世界では、全滅したら終わりだろうから、「プレイヤー」的には存在意義が在るか判らない。
預かり所の兼業は、もしも勇者が「袋」持ちでなかった場合を考えての事。
小さな原作ブレイク(笑)。
この辺りの考えをこっそりとネネさんだけに教えてみたら、凄く納得してくれた。
「お弁当屋さんも選択肢の1つだけど。
ネネさんの手作り弁当だったら、下手すりゃ武器屋より儲かるかもよ?
少なくとも俺は通うわ(笑)。」
と言ってみたら
「ネネの手料理を商売に利用するなんてとんでもない!」
「あなた…」
あちゃ~、この夫婦、何人たりとも近寄らせない様な強固な結界(ラヴ・オーラ)を張りやがったよ。
あー俺、今日はもう帰るわ。
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2日後
「皆さん…よろしくお願いしますぅ…」
「主人をよろしくお願いします。」
「「任せなさい!」」
今から旅立つというのに「オマエ大丈夫?」って突っ込みたくなる程に窶れたトルネコと、これでもかとばかりに艶ってる笑顔なネネさん。
一体、ナニがあった?
まあ、暫くは会えないからね、昨夜はナニがあったんでしょうねー(笑)。
「フィーグ、こりゃガードをしっかりしないとな、いつもみたく旦那にも戦闘に加わって貰う訳にはいくまい。」
スコットが話しかける。
「まあ、依頼主は戦闘には加わらないのが普通なんだけどねー。」
「それじゃ、行ってくるよ、ネネ。」
「はい、あなた…愛してるわ…ちゅ」
「ん~~~~?!」
うおーい!
いくら暫くは会えないからってな、人前で
すんな!このバカップル!
ほら見ろ、スコットも明後日の方向を向いてるよ。
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「大丈夫かよ、旦那?」
「はい~、なんとか…」
「全て搾り執られたか…人妻恐るべし…」
出発前に残り僅かだった体力も嫁さんに全て執られてフラフラなトルネコ。
これってさあ…
ウォォォーン!!!
ももんじゃが現れた!
ももんじゃが現れた!
暴れ狛犬が現れた!
ほら見ろ、やっぱりフラグだったよ…と!
ズシャア!
ドスッ!
バコォ!
「「「フギャーッ!」」」
ま、スコットと2人で瞬殺ですけどね。
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戦闘役立たずな依頼主をガードしながら、
なんとか無事にブランカに到着。(注:お金貰って護衛してるから普通です)
街外れの広場に商人や旅人らしき一団が集まっている。
人もそうだが、馬車や駱駝等の数も、相当な物だ。
今回の遠征は、かなり大がかりな様だ。
「フィーグさんにスコットさん、どうもお疲れ様でした。
コレは約束の報酬です。」
「「確かに」」
「これって出発はいつ頃なのかな?」
「予定では明日の朝に出発ですよ。
では、このキャラバンの団長に挨拶しないといけないので、私はこれにて。」
トルネコは去っていった。
「フィーグ、俺は次の護衛の仕事の約束をしてるので、今からエンドールに戻るが、オマエはどうする?」
「えーと、話した事なかったかな?
俺はここの生まれだからな、久しぶりに家に帰ってみるよ。
懐かしい面々にも会いたいしな。」
「そうか、それなら、ゆっくりしていくがいいだろう。じゃあな!」
スコットは去っていった。
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「ただいま~」
「はい、おかえり…って、フィーグ?!」
「やあ、ただいま(笑)。」
出迎えてくれた母親びっくり。
「そっか~、親父はあのキャラバンに護衛として同行か~!祖父っちゃんは?」
「お義父さんは城の警備や若い兵士さん達の訓練に付きっ切りで帰らないわよ。」
「若い兵士とやらに同情するぜ…」
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「あら~、シンちゃんも旅立ったか~」
「ええ。「立派な神父になるんだ!」って出ていきました。」
「プレヤ、お前は?」
「私はもう少し、この場で修練します。
ハスターにも誘われてますがね。」
昔からの鍛錬仲間のハスターを訪ねてみたら、あいにく留守だったので、やはり知り合いがいる教会に行ってみたら、その内1人は旅立っており、もう1人の知り合いの僧侶プレヤと話していた。
「せっかく久しぶりに帰ってみたら、これかよ~、友達がい無い奴等だな~?」
「まあまあ、私で我慢しなさい(笑)。
ところでフィーグ、あなた、魔力が上がりましたか?」
「そ、そうか?」
「もしかしたら新しい魔法を覚えられるかもしれませんね、祝福の間に行ってみませんか?」
プレヤ曰わく、魔力の器と密度が上がっているという。
そこで俺は、プレヤと教会の神父様に連れられ、地下室に行ってみる。
そこは床に五芒星が画かれた魔法陣を敷いている狭い部屋。
「ではフィーグ、魔法陣の真ん中に立ち、魔力を集中してみなさい。」
「っす。」
魔法の覚え方ってのは様々だが、一般人的に一番普通なのが、教会で神父立ち会いの下で魔法陣を使う方法。
魔法の素質がある者が、魔法陣の中で魔力を高めた状態で、神父を介して神?の祝福を受ける…
新たに魔法を覚える事が出来るか否かは、その者の今までの経験や資質次第であり…
フィーグは「空間認識(フローミ)」を覚えた!
フィーグは「解呪(シャナク)」を覚えた!
フィーグは「照光(レミーラ)」を覚えた!
「うわ、使えねー!」
「しかも最大MPが7ですか…」
「フィーグよ、一応、シャナクは上位呪文なのだが…」
とりあえず、シャナクの事はシンちゃんには黙ってよう。
神父を目指す者からすりゃ、至高の魔法の1つだからねー。
絶対に「私でさえ覚えられないのに、どうしてフィーグがそんな上位呪文が使えるんですかー?!」…って泣きながら問い詰められる展開になるのが目に浮かぶから(笑)。
これにはプレヤも神父様も「うん、うん」と同意してくれた。
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「せぃやぁっ!!」
その日の夜、俺は街の外の森の中で新技の特訓に励んでいた。
「ふぅ…まだまだだな…納得いかねー…」
頭の中のイメージと、実際の身体の動きがイマイチ合致しない。
気を取り直し、もう一度、打ち込みをしようとした時に
「こんばんは♪」
「!!」
声がした方向を振り向くと、そこには独特な形状の三角帽子を被り、セミロングな後髪をカールに巻いた赤茶色い髪の少女が笑顔で手を振っていた。
※※※※※※※次回予定!※※※※※※※
疾風の如く問答無用で襲い掛かる鉄の爪!
フィーグは、この絶対不利の状況を打破する事が出来るか?
次回、真に導く者:「我は識者」
乞う御期待!