「初戦は貴様か…」
「や、やあ…さっきぶり…」
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数時間前の選手控え室…
「ねぇ~、貴方、何処の出身~?」
「……………………………………………」
出番待ちで気持ちを落ち着けていると、部屋の角にいた黒い甲冑の銀髪ロン毛男にバニーちゃんが話しかけていた。
あのバニーちゃん、控え中の選手達に飲み物等を給仕する為に大会運営から配置されたスタッフじゃないな…
まあ、十中八九、彼女がビビアンなのは間違いないだろうな。
てゆーか、女性(バニーちゃん)が、お姫様の婚約者の資格を争奪する大会に出るのはどうなんでしょうかね?
百合ですか百合ですか百合なんですか?
「……………………………………………」
「何よ、つまんない男!」
あー、完全にシカトされたんで怒って行っちゃったよ。
てか、あんなに「俺に近寄るな」オーラ全開してるのを関係なく話しかけれるって、かなりの強者か、或いはKYか、はたまたバカなのか…
「お~ぅ、兄ちゃ~ん、あんな可愛い娘に話しかけらて無視は無いんじゃね?」
「……………………………………………」
あ、バカがいた。
厚苦しい筋肉質なボディに海パン、マントと一体型の覆面を被り、巨大な手斧を持った男が銀髪ロン毛のイケメン男に絡む。
「おぅ、兄ちゃん、何か言えや、コラ」
「……………………………………………」
「あぁあん?!聞いてんのか?ゴラ゙ァ?!」
「…せろ」
「はあ?聞こえんぞぉ?
もっとデカイ声で言ってみろや?」
「……………………………………………
失せろと言っている。クズが!」
ドカァ!
「あじゃぱー!」
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ…
「何だ?今の派手な音?」
「乱闘か?」
「まぢっすか?」
「ドコだ?」
「あ、アッチの角っこ!」
控え室がざわめきだす。
銀髪イケメンに絡んでた巨漢の海パン男が前蹴り一撃で吹っ飛ばされた。
その騒ぎで控え室の中は出入り口から見て最奥の角に注目が移る。
「うう…」
「ゴミが…今すぐ楽にしてやろう」
ぼわぁああっ…
イケメンの右手が炎に包まれる。
「ひぃっ…」
おいおいおい、いくらなんでも火ダルマはやり過ぎだろ?
あの火力、普通に死ねるぜ?
周りの連中もビビってるのかドン引いてるのか、誰も止めに入らないし…
「かっこいい…」
あ、約1名、バニーちゃんがイケメンに見とれてるよ。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…
で、海パンマンは腰抜かして体ガタガタで動けない、と…
「死ね!メr
「ちょおっと待ったー!」
「!?」
嗚呼、ついつい待ったをかけちまった…
「何だ貴様…邪魔をする気か?」
「(こ、怖ぇー!)当たり前だろ?
こんなトコで要らぬ騒ぎ起こして失格になる事もないんじゃね?」
長い沈黙…
「…ふん。良いだろう。」
まだ腰を抜かしている海パン男をムリヤリに起こすと、
「今回はヤツの言葉に乗ってやる。
死にたくないなら、今すぐ失せろ…」
「ヒィイ~!」
海パン男は控え室から逃げ出した!
「やれやれだな…」
「……………………………………………」
いやいや、あの海パンマンじゃないけど、何か喋ろよ。
「貴様も、私には用は無い筈…失せろ…」
心を読まれた?!
「あ、ああ…じゃ、最後に一言だけ」
「ん?」
「無闇矢鱈と簡単に人の命を奪おうとするのは良くないと思うね。
アンタの想い人も悲しむだろう?」
「何故それを…貴様、もしや?!」
ぶおおおぉぉおおおおぉおおぉぉおぉっ!
銀髪男の右手が真っ赤に燃える!
「ま、待て、こんな控え室でメラゾーマぶっ放す気かよ!」
し、しまった!
ロザリーの存在を知っていると思わせる発言はマズった!
このイケメン、俺をエルフ狩りの輩と勘違いしてる!
何とか誤魔化さないと…
「い、いやホレ、モニカ姫様は心優しい御方だから、自分の婚約者を決める大会で死者が出たりしたら悲しむのは普通に想像出来るだろうに!」
「何故、ここで姫君の名前が出る?」
「いや、アンタだって姫様を想っているか
ら、この大会に出てるんじゃないのか?」
単純に俺は腕試しだけどね。
「……………………………………………」
再び長い沈黙…
「……………(頼むから何か喋ってくれ)」
「行け…」
「あ、ああ…」
ふぅ~、切り抜けた~!
さあ、退散退散。
「あぁ、待て、私も1つだけ…」
「?」
「先程、私が唱えようとしたのはメラゾーマではない…メラだ…」
あ、アンタは何処の大魔王だ?!
その後、少なくとも俺に出場のお呼びが掛かるまで、このイケメンの半径3㍍以内に近づく者は居なかった。
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「それでは、試合開s
「すまない、棄権する。」
「え?」
「棄権する。
正直言って、先の2試合のダメージは小さくはないからね。
今日は、ここまでさ。」
「……………………………………………」
「え、えー、フィーグ選手、棄権の為、デスピサロ選手の勝利とします!」
歓声どよめきブーイングの中、デスピサロの勝利が告げられる。
因みに試合放棄に対してのブーイングは、予想以上に少なく感じた。
てか、ブーブー言ってるのは殆どが前の試合で「バルログ様~」とか「うほ」とか言ってた奴等だ。
もう、目の前のイケメン男に鞍替えしていやがる。
「ふ…命拾いしたな…
賢明な判断だ、と言ってやろう…」
敗者はそそくさと退場するのみ。…の前に
「あ、お節介かも知れんが、控え室でも言ったが、アンタは「アンタの姫君」を悲しませる真似は止めとこうぜ~。」
「ふん…」
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「こりゃ、優勝はデスピサロかな?」
「あっとゆー間の5人抜きだからな~」
「いや、まだ分からないぜ?」
「いや…無理…」
「諦めたら、そこで試合終了ですよ?」
「まだだ、まだ終わらんよ!」
「やぁっっっっっっってやるぜえぇ!!!」
「やらせはせん、やらせはせんぞぉ~!」
…その後、デスピサロは難なく5人抜きを決めて決勝進出を果たす。
そして控え室に戻ると「もう此処には用はない」と、さっさと出ていった。
俺との試合の後(不戦勝)に続いた3人を瞬殺の半殺し、そして最後の5人目が、また試合放棄の不戦勝による5人抜き。
俺とのやり取りがあったからか、対戦相手を皆殺しにしたという本来の筋書きから少し外れたみたいだ。
死んだ筈のモブが生きていても、それが物語に影響する事はない…と思う。…多分。
その後は、新たに5人抜きを決めた選手が日没まで出なかった為、大会初日は其処で終了となった。
控え室に残った選手達はデスピサロの強さについて話していた。
あのラスボスな如きの強さを目の当たりにして心が折れた者も若干居るみたいだな。
あれ、皆殺しだったら更に辞退する人数、増えてたんだろうね~。
そんなこんなで控え室で帰り支度を済ませて、コロシアムを出た時に
「待ちたまえ。」
出口で1人の男に呼び止められた。
地味に原作ブレイク(笑)