「詩人祭…か」
モンバーバラ…キングレオ領の歌と踊りの街。
王都より栄えている国内最大都市だ。
今、この街の大劇場では詩人祭というイベントが行われていた。
何でも世界中からメジャーマイナー問わず多数の吟遊詩人が集まり、自慢の唄を披露しているらしい。
今日はその最終日らしく、開場前から沢山の人だかりだ。
街はイベントで盛り上がっているからか、普段なら夕方まではオープンしない酒場も昼前から店の扉を開けている。
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「あ、お久しぶりです。」
「ああ、久しぶり。」
店内で偶然、知り合いの詩人達と会って、一緒のテーブルに付いた。
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「へぇ~、ロレンスが大トリ、んで麻呂がセミか~」
「マローニです!その呼び方、理由は分からないけど、何となく嫌だから止めてくださいと言ってるでしょ!」
「あー、すまない、マロニー」
「ぶぷぷっ!!」
「マローニ!」
突っ込み入れてる詩人の隣で、何が壺に入ったのか口に含んでいた紅茶を吐き出すもう一人の詩人。
「うわ、ロレンス汚ぇーっ!」
「フィーグが変な事を言うからだよ!」
マローニとロレンス。
ロレンスとは数年前、当時、彼がまだ駆け出しの詩人だった頃に詩人でなく「魔術士」として、新米僧侶のシンちゃん、そしてハスターとパーティーを組んで修行の旅を共にした仲だ。
その時に偶々入手した「囀りの蜜」を、やはり当時、詩人としては致命傷的に喉を痛めていたマローニに渡して、それが縁で仲良くなった。
実は二人には前世の所謂現実(リアル)世界の歌を少し教えている。
勿論、ソースは秘密にしているが。
大きな古時計
一週間の歌
この木何の木
愛をとりもどせ!
夢を信じて
虹の都
この道我が道
そして伝説へ
哀戦士
We are
BLESS YoUr NAME
チャンピオン
ドナドナ
…等々。
金子〇すゞや中原〇也、相田み〇をの詩なんかも少し教えた。
二人共、「良い歌だから自分で発表すればいいのに…」と言うが、柄じゃないし、だいたいにして、俺は詩人じゃない。
そもそも他人の歌だからね。
自分の歌として発表て、人としてどーよ?
…な感じだしー。
二人も律儀に誰かは明かせないが、ある人から提供してもらった歌なんて言うから、時事通信社が当事者の俺に断りもなく勝手に「謎の楽曲提供者を探せ!」みたいな企画記事を立ち上げやがる。
川口浩かよ?
まあ、結局は俺まで辿り着けずに企画倒れでコケたけどね。ざまあ(笑)
まあ、そんなこんなで、偶に会っては馬鹿な話をしたりする。
「二人は呑まないの?」
「「これから公演です!!」」
うーむ、残念。
「そう言えば麻呂、読んだぞ?お前、サランのシスターと蜜会…
「ぶーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
マローニは柑橘果汁を吐き出した。
「うわっ、汚いなぁ…」
「ケホッケホッ…あ、貴方が急に話を切り出すからですよ…」
少し前に時事通信でサントハイム領のサランという町のシスターとマローニの蜜会の報が載っていたのだ(爆)。
「あ、それ、私も読みました。
実際、どーなんですか?」
「ロレンス、貴方もですか!?
それから蜜会って字が違います!
…というか密会じゃないですから!」
脳内変換の字に対して何故突っ込めるかは謎だが、本人曰わく、彼女は聖職者故に、俺達が期待してる間柄では断じてないと言い張る。
「「…ちっ」」
「何なのですか?その舌打ちわっ?!」
久しい友との楽しい時間も過ぎ、マローニ達は公演会場に向かう。
その際、ロレンスとは また夜に遊び歩く約束をした。
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夜の劇場は昼の詩人祭と打って変わり、大人の雰囲気、艶やかな衣装を着こなす踊り子達のダンスショーが披露される。
「「マーニャっちゃーーーーーっん♪」」
そこには劇団のトップダンサーの舞に鼻の下を伸ばし筆式松明(※)を振りながら声援を飛ばす二人の男(他多数)がいた。
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「「うぇっぷ…」」
「ふう…二人とも飲み過ぎでしょう…」
酔っ払いに馬車はキツい。
夜明け前に宿に帰った俺は、そのまま荷物をまとめてチェックアウト。
俺は劇団が詩人祭の出演者に用意してくれた馬車にキッチリ便乗してハバリアに向かうのだった。
う…グダグダ話で全っ然進まなかった…
※筆式松明…この世界のペンライト的マジックアイテム(笑)
劇場のグッズ売り場にて販売中。